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第1話:勇者参上!
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「球体関節の弱点を忘れてるとか、俺はモデラー失格だ!」
クミチョウロボから逃げ回りながら、ブレイブガインは、左肩をはめ直した。しかし一度抜けた関節部の調子は悪く、左手は動きが鈍く精密な動作は難しくなってしまった。
「しかし、飛び道具が使えないとなると格闘を挑むしかない。俺にそれができるのか?」
ブレイブガインはひとしきり悩んだが、
「俺がいまできるのは…タックルしかない!」
ラグビー部に所属している作にできる選択…それはタックルだった。接近戦を決意したブレイブガインは、追いかけてくるクミチョウロボに振り返ると、肩をおとし中腰で向かっていた。
向かってくるブレイブガインに対して、当然クミチョウロボは、攻撃をしてくる。しかし、クミチョウロボの棍棒が振り下ろされるタイミングは単調であり、ブレイブガインは既にその間合いを掴んでいた。
「タックルと言っても、正面からぶつかったら体重差で負ける。確実に引き倒すには、後ろからだ」
間合いを計り、紙一重で棍棒を回避したブレイブガインは、そのスピードを生かしてクミチョウロボの背後に回り込んだ。そして、クミチョウロボの足下をすくうようにタックルを仕掛けた。
「ウゴーーッ」
背後に回り込まれブレイブガインを見失ったクミチョウロボは、突然足下を救われて地面に倒れ込んだ。二大の巨大ロボットが倒れ込んだ衝撃で、土煙が舞い上がり周囲は一瞬何も見えなくなっていた。
そして土煙が収まった後には、うつぶせに地面に引き倒されたクミチョウロボと、背後からのし掛かりマウントポジションを取ったブレイブガインの姿があった。
「悪いが、このまま殴らせてもらうぜ」
暴れるクミチョウロボを脚で押さえつけて、ブレイブガインは両手を組んで頭部を殴りつけた。
ガッ、ガッ、ガキッ
高校のグラウンドに金属と金属がぶつかり合う音が響き渡る。核爆発にも耐える宇宙金属製のミチョウロボを殴りつけても、ブレイブガインの拳は砕けなかった。本来校舎の瓦礫から作られたブレイブガインの拳は、金属にぶつければあっという間に砕けてしまう強度しかないはずだった。しかし賢者の石がコアとなった時、ブレイブガインの体は魔力で原子変換され強靱な魔法金属に組成が変化していた。
「こんな野蛮な戦い方は格好悪いぞ。それに暴れるなよ!」
宇宙金属と魔法金属、どちらの強度が優れているかだが、今回は引き分けであった。つまり、ブレイブガインの拳は砕けず、そして何度殴ってもダメージが入った様には見えなかった。頭を殴られながらもクミチョウロボは、起き上がろうと暴れていた。
「クミチョウロボのくせに、頑丈すぎる。恐らく、このまま殴っていてもクミチョウロボは倒せないな。何かクミチョウロボにダメージを与えられる武器が必要だ」
ブレイブガインがあたりを見回すと、目の前にクミチョウロボが持っていた棍棒が落ちていた。ブレイブガインが手に持ってみると、ずっしりと重さを感じるが、扱えないほどの重さではなかった。
「棍棒ならクミチョウロボを倒せる…はず。しかし棍棒を振り回すとか…勇者ロボらしくない。ゴーレムマスターのスキルで変形させられないかな?」
妙なこだわりで、作はゴーレムマスターのスキルを発動させた。すると棍棒を握っている部分に魔法陣が現れた。
「(ブレイブガインは、合体するサポートメカに剣が着いていた。だからブレイブガインのプラモデルには、剣のパーツが無かった。合体した後の剣を使った必殺技、頭にしっかり刻まれているぜ!)」
何機かのサポートメカと合体し、ブレイブガインはグレート・ブレイブガインとなる。グレート・ブレイブガインが繰り出す剣の必殺技で毎週敵は倒されていた。子供の頃に見た剣の形を作は覚えており、それをイメージしてゴーレムマスターのスキルを使った。
魔法陣が移動すると、棍棒が徐々に剣の形に変わっていく。そして完成した剣は、ブレイブガインの全高に匹敵する長さを持っていた。黒光りするその剣は、勇者ロボが持つには禍々しいデザインであった。
ブレイブガインは、巨大な剣を両手で持ちあげ、クミチョウロボから離れた。
「(作るのには成功したが、これをブレイブガインは上手く振るえるのか?)」
引きずっていた剣をブレイブガインは全力で持ち上げた。肩が剣の重さで外れそうになるが、刀身を肩から胴体にずらして乗せることで、何とか剣を構えることができた。
一方、ブレイブガインから解放されたクミチョウロボは、のろのろと起き上がろうとしていた。剣を振るうには今がチャンスであった。ブレイブガインは飛び上がると、技の名乗りと共にクミチョウロボに剣を振り下ろす。
「いくぜ、必殺雷光唐竹割り」
ズガガガガッガガガガッ
ブレイブガインが振るった斬撃は、クミチョウロボの頭頂部から股下まで真っ二つに切り裂いていた。
「フィニッシュだぜ!」
ブレイブガインが剣を担いで決めポーズを取ると、その背後でクミチョウロボが左右に分かれて倒れるのだった。
クミチョウロボから逃げ回りながら、ブレイブガインは、左肩をはめ直した。しかし一度抜けた関節部の調子は悪く、左手は動きが鈍く精密な動作は難しくなってしまった。
「しかし、飛び道具が使えないとなると格闘を挑むしかない。俺にそれができるのか?」
ブレイブガインはひとしきり悩んだが、
「俺がいまできるのは…タックルしかない!」
ラグビー部に所属している作にできる選択…それはタックルだった。接近戦を決意したブレイブガインは、追いかけてくるクミチョウロボに振り返ると、肩をおとし中腰で向かっていた。
向かってくるブレイブガインに対して、当然クミチョウロボは、攻撃をしてくる。しかし、クミチョウロボの棍棒が振り下ろされるタイミングは単調であり、ブレイブガインは既にその間合いを掴んでいた。
「タックルと言っても、正面からぶつかったら体重差で負ける。確実に引き倒すには、後ろからだ」
間合いを計り、紙一重で棍棒を回避したブレイブガインは、そのスピードを生かしてクミチョウロボの背後に回り込んだ。そして、クミチョウロボの足下をすくうようにタックルを仕掛けた。
「ウゴーーッ」
背後に回り込まれブレイブガインを見失ったクミチョウロボは、突然足下を救われて地面に倒れ込んだ。二大の巨大ロボットが倒れ込んだ衝撃で、土煙が舞い上がり周囲は一瞬何も見えなくなっていた。
そして土煙が収まった後には、うつぶせに地面に引き倒されたクミチョウロボと、背後からのし掛かりマウントポジションを取ったブレイブガインの姿があった。
「悪いが、このまま殴らせてもらうぜ」
暴れるクミチョウロボを脚で押さえつけて、ブレイブガインは両手を組んで頭部を殴りつけた。
ガッ、ガッ、ガキッ
高校のグラウンドに金属と金属がぶつかり合う音が響き渡る。核爆発にも耐える宇宙金属製のミチョウロボを殴りつけても、ブレイブガインの拳は砕けなかった。本来校舎の瓦礫から作られたブレイブガインの拳は、金属にぶつければあっという間に砕けてしまう強度しかないはずだった。しかし賢者の石がコアとなった時、ブレイブガインの体は魔力で原子変換され強靱な魔法金属に組成が変化していた。
「こんな野蛮な戦い方は格好悪いぞ。それに暴れるなよ!」
宇宙金属と魔法金属、どちらの強度が優れているかだが、今回は引き分けであった。つまり、ブレイブガインの拳は砕けず、そして何度殴ってもダメージが入った様には見えなかった。頭を殴られながらもクミチョウロボは、起き上がろうと暴れていた。
「クミチョウロボのくせに、頑丈すぎる。恐らく、このまま殴っていてもクミチョウロボは倒せないな。何かクミチョウロボにダメージを与えられる武器が必要だ」
ブレイブガインがあたりを見回すと、目の前にクミチョウロボが持っていた棍棒が落ちていた。ブレイブガインが手に持ってみると、ずっしりと重さを感じるが、扱えないほどの重さではなかった。
「棍棒ならクミチョウロボを倒せる…はず。しかし棍棒を振り回すとか…勇者ロボらしくない。ゴーレムマスターのスキルで変形させられないかな?」
妙なこだわりで、作はゴーレムマスターのスキルを発動させた。すると棍棒を握っている部分に魔法陣が現れた。
「(ブレイブガインは、合体するサポートメカに剣が着いていた。だからブレイブガインのプラモデルには、剣のパーツが無かった。合体した後の剣を使った必殺技、頭にしっかり刻まれているぜ!)」
何機かのサポートメカと合体し、ブレイブガインはグレート・ブレイブガインとなる。グレート・ブレイブガインが繰り出す剣の必殺技で毎週敵は倒されていた。子供の頃に見た剣の形を作は覚えており、それをイメージしてゴーレムマスターのスキルを使った。
魔法陣が移動すると、棍棒が徐々に剣の形に変わっていく。そして完成した剣は、ブレイブガインの全高に匹敵する長さを持っていた。黒光りするその剣は、勇者ロボが持つには禍々しいデザインであった。
ブレイブガインは、巨大な剣を両手で持ちあげ、クミチョウロボから離れた。
「(作るのには成功したが、これをブレイブガインは上手く振るえるのか?)」
引きずっていた剣をブレイブガインは全力で持ち上げた。肩が剣の重さで外れそうになるが、刀身を肩から胴体にずらして乗せることで、何とか剣を構えることができた。
一方、ブレイブガインから解放されたクミチョウロボは、のろのろと起き上がろうとしていた。剣を振るうには今がチャンスであった。ブレイブガインは飛び上がると、技の名乗りと共にクミチョウロボに剣を振り下ろす。
「いくぜ、必殺雷光唐竹割り」
ズガガガガッガガガガッ
ブレイブガインが振るった斬撃は、クミチョウロボの頭頂部から股下まで真っ二つに切り裂いていた。
「フィニッシュだぜ!」
ブレイブガインが剣を担いで決めポーズを取ると、その背後でクミチョウロボが左右に分かれて倒れるのだった。
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