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第1話:勇者参上!
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「クミチョウロボって、パイロットの威勢は良いけど噛ませ犬って扱いで、いつも簡単に負けてたんだよな~。だから俺は、人型の宇宙機怪獣に負ける気がしないのか」
ブレイブガインと一体化した作は、その力に酔いしれていた。ブレイブガインは、人型の宇宙機怪獣をクミチョウロボと呼ぶことに決めると、にやりと笑った。
「主役メカと脇役メカの違いを見せてやるぜ」
ブレイブガインは、某格闘ゲームのまねをして、ちょいちょいと手招きをしてクミチョウロボを挑発した。
「グォ? グ…グガァァァ!」
最初クミチョウロボは、ブレイブガインが何をしているのか理解できず、首を傾げていた。しかし手招きが挑発行為だと気づくと、怒りをあらわにしてうなり声を上げて襲いかかってきた。
「ははっ、あいつ怒ってるよ。宇宙機怪獣って、ロボットのくせに感情あるんだな」
ブレイブガインはクミチョウロボが振り回す棍棒を軽やかに、まるでアニメの勇者ロボのように紙一重で回避した。
「すごい、まるで人間のような素早い華麗な動きだよ。ゴーレムなのに、どうしてあんなに軽やかに動けるの」
バックネット裏から戦いを見ていた良美は、ブレイブガインの動きを見て驚きの声を上げていた。
良美が驚くのも当然で、全高十メートルもあるゴーレムはとても重く、その重量が架せとなり機敏な動作ができないのが当然だった。そのため巨大なゴーレムは攻城戦などに使い、人間との戦いに使用するゴーレムは、精々で五メートルぐらいの大きさにするのが普通であった。しかしブレイブガインは、その常識を破って人間と同じような軽やかな動作をしていた。
「うーん、なおくんがゴーレムの核となっているみたいだし、それが影響しているのかな~」
良美は、賢者の石をゴーレムの核としたことが原因と判断したが、ブレイブガインの動きが人間のように軽やかなのは、それだけが理由ではなかった。
良美が、ゴーレムマスターのスキルで土や石からゴーレムを作る場合、体の大半はぎっしりと身が詰まった状態で作っていた。それが魔王のいた異世界では普通であり、常識であった。
だが、作はそんな異世界の常識は知らずプラモデルを参考にして、ブレイブガインを1/1プラモデルとして作成した。つまりブレイブガインの中身は詰まっておらず、プラモデルのようにスカスカの状態であった。実際ブレイブガインの重量は、同じサイズのゴーレムと比較すると半分以下であった。重量が軽い、それが軽快な動きにつながっていた。
そして人間らしい動きが可能な理由だが、それは最近のプラモデルで採用された球体関節にあった。
異世界のゴーレムは、駆動するための動力を持たず魔力によって腕や足を変形させて動かしていた。つまり、関節などが無くとも動けた。しかし関節が無く素材その物を変形させるため、反応速度が遅くなるという欠点があったのだ。魔王もその点を改良しようと色々工夫を凝らしたが、人間の骨格ぐらいしか参考にできない状況では、そこまで自由度の高い関節を作る事はできなかった。
その点、作が参考にしたのは最近の技術で作られたプラモデルである。プラモデルに様々なポーズを取らせることを可能とし、変形まで可能とした球体関節の技術は、ブレイブガインに人間と同じような、いやそれ以上の動きができる能力を与えたのだった。
そんな高性能な体に人間の魂が宿った賢者の石が核として組み込まれたのだ、ブレイブガインは異世界のゴーレムとは比べものにならない運動性能を持ってしまったのだ。
「そろそろ、こちらも反撃させてもらうかな」
クミチョウロボの攻撃をしばらく回避し続けたブレイブガインは、腰に手を伸ばすと、ヒップホルスターから『ニュー南部カノン』を取り出した。ニュー南部カノンは、口径50ミリ口のリボルバー式の大型拳銃で、アニメではブレイブガインの必殺武器の一つであった。
「これで終わりだぜ。ニュー南部カノン、発射」
ブレイブガインが、ニュー南部カノンの引き金を引き絞ると、轟音と共に必殺の弾丸が発射される…はずだった。しかしニュー南部カノンは、「カチッ」と音を立ててシリンダーが回るだけだった。
「なんですとー!」
慌ててブレイブガインは何度も引き金を引くが、ニュー南部カノンから弾は発射されなかった。
「どうして弾が出ないんだ。…って弾が入ってない!?」
クミチョウロボが振り下ろした棍棒をごろごろと横に転がって避けたブレイブガインは、ニュー南部カノンのシリンダーをスライドさせると弾が装填されていない事に驚いた。
「たっくん、○ンダム・○ルドファイターじゃないんだから、プラモデルの銃から実弾が出るわけないでしょ」
「そりゃそうかーーーっ!」
良美の突っ込みにブレイブガインは、頭を抱えて絶叫してしまった。ブレイブガインを組み上げたとき、ニュー南部カノンが動くように作った覚えがあるが、実弾まで入れてはいなかったことを作は思い出した。
ニュー南部カノンを構えてフリーズして隙を作ったブレイブガインに対し、クミチョウロボは全速で駆け寄ってきて棍棒を振り下ろした。
「たっくん、危ない!」
「しまった、油断した! ええぃ、また受け止めてやる」
回避が遅れたブレイブガインは、クミチョウロボの棍棒を再び左手で受け止めた。
「なんですとーーっ!」
ブレイブガインは、完璧に棍棒を受け止めたはずだった。しかし受け止めた瞬間、左手は肩から外れてしまった。
実は、プラモデルの動きの自由度を高めた球体関節には大きな欠点があった。それは負荷をかけすぎると外れてしまうという欠点であった。そして、最初に棍棒を受け止めたとき、球体関節には若干の歪みが生じていた。それに作が気付いていれば、ゴーレムマスターのスキルで治せたのだろうが、彼は気付かず、逆に調子に乗って動き回っていた。その動きの負荷も影響し、棍棒を受けた衝撃によって、肩は球体関節部分ですっぽりと抜け落ちてしまったのだった。
「ちょっと、タンマ」
右手のニュー南部カノンをクミチョウロボに投げつけて、ブレイブガインは左手を持って逃げ出した。
「グホッ、グホッ」
投げつけられたニュー南部カノンに怯むことなく、へっぴり腰で逃げ惑うブレイブガインをクミチョウロボは追いかけ回し始めるのだった。
ブレイブガインと一体化した作は、その力に酔いしれていた。ブレイブガインは、人型の宇宙機怪獣をクミチョウロボと呼ぶことに決めると、にやりと笑った。
「主役メカと脇役メカの違いを見せてやるぜ」
ブレイブガインは、某格闘ゲームのまねをして、ちょいちょいと手招きをしてクミチョウロボを挑発した。
「グォ? グ…グガァァァ!」
最初クミチョウロボは、ブレイブガインが何をしているのか理解できず、首を傾げていた。しかし手招きが挑発行為だと気づくと、怒りをあらわにしてうなり声を上げて襲いかかってきた。
「ははっ、あいつ怒ってるよ。宇宙機怪獣って、ロボットのくせに感情あるんだな」
ブレイブガインはクミチョウロボが振り回す棍棒を軽やかに、まるでアニメの勇者ロボのように紙一重で回避した。
「すごい、まるで人間のような素早い華麗な動きだよ。ゴーレムなのに、どうしてあんなに軽やかに動けるの」
バックネット裏から戦いを見ていた良美は、ブレイブガインの動きを見て驚きの声を上げていた。
良美が驚くのも当然で、全高十メートルもあるゴーレムはとても重く、その重量が架せとなり機敏な動作ができないのが当然だった。そのため巨大なゴーレムは攻城戦などに使い、人間との戦いに使用するゴーレムは、精々で五メートルぐらいの大きさにするのが普通であった。しかしブレイブガインは、その常識を破って人間と同じような軽やかな動作をしていた。
「うーん、なおくんがゴーレムの核となっているみたいだし、それが影響しているのかな~」
良美は、賢者の石をゴーレムの核としたことが原因と判断したが、ブレイブガインの動きが人間のように軽やかなのは、それだけが理由ではなかった。
良美が、ゴーレムマスターのスキルで土や石からゴーレムを作る場合、体の大半はぎっしりと身が詰まった状態で作っていた。それが魔王のいた異世界では普通であり、常識であった。
だが、作はそんな異世界の常識は知らずプラモデルを参考にして、ブレイブガインを1/1プラモデルとして作成した。つまりブレイブガインの中身は詰まっておらず、プラモデルのようにスカスカの状態であった。実際ブレイブガインの重量は、同じサイズのゴーレムと比較すると半分以下であった。重量が軽い、それが軽快な動きにつながっていた。
そして人間らしい動きが可能な理由だが、それは最近のプラモデルで採用された球体関節にあった。
異世界のゴーレムは、駆動するための動力を持たず魔力によって腕や足を変形させて動かしていた。つまり、関節などが無くとも動けた。しかし関節が無く素材その物を変形させるため、反応速度が遅くなるという欠点があったのだ。魔王もその点を改良しようと色々工夫を凝らしたが、人間の骨格ぐらいしか参考にできない状況では、そこまで自由度の高い関節を作る事はできなかった。
その点、作が参考にしたのは最近の技術で作られたプラモデルである。プラモデルに様々なポーズを取らせることを可能とし、変形まで可能とした球体関節の技術は、ブレイブガインに人間と同じような、いやそれ以上の動きができる能力を与えたのだった。
そんな高性能な体に人間の魂が宿った賢者の石が核として組み込まれたのだ、ブレイブガインは異世界のゴーレムとは比べものにならない運動性能を持ってしまったのだ。
「そろそろ、こちらも反撃させてもらうかな」
クミチョウロボの攻撃をしばらく回避し続けたブレイブガインは、腰に手を伸ばすと、ヒップホルスターから『ニュー南部カノン』を取り出した。ニュー南部カノンは、口径50ミリ口のリボルバー式の大型拳銃で、アニメではブレイブガインの必殺武器の一つであった。
「これで終わりだぜ。ニュー南部カノン、発射」
ブレイブガインが、ニュー南部カノンの引き金を引き絞ると、轟音と共に必殺の弾丸が発射される…はずだった。しかしニュー南部カノンは、「カチッ」と音を立ててシリンダーが回るだけだった。
「なんですとー!」
慌ててブレイブガインは何度も引き金を引くが、ニュー南部カノンから弾は発射されなかった。
「どうして弾が出ないんだ。…って弾が入ってない!?」
クミチョウロボが振り下ろした棍棒をごろごろと横に転がって避けたブレイブガインは、ニュー南部カノンのシリンダーをスライドさせると弾が装填されていない事に驚いた。
「たっくん、○ンダム・○ルドファイターじゃないんだから、プラモデルの銃から実弾が出るわけないでしょ」
「そりゃそうかーーーっ!」
良美の突っ込みにブレイブガインは、頭を抱えて絶叫してしまった。ブレイブガインを組み上げたとき、ニュー南部カノンが動くように作った覚えがあるが、実弾まで入れてはいなかったことを作は思い出した。
ニュー南部カノンを構えてフリーズして隙を作ったブレイブガインに対し、クミチョウロボは全速で駆け寄ってきて棍棒を振り下ろした。
「たっくん、危ない!」
「しまった、油断した! ええぃ、また受け止めてやる」
回避が遅れたブレイブガインは、クミチョウロボの棍棒を再び左手で受け止めた。
「なんですとーーっ!」
ブレイブガインは、完璧に棍棒を受け止めたはずだった。しかし受け止めた瞬間、左手は肩から外れてしまった。
実は、プラモデルの動きの自由度を高めた球体関節には大きな欠点があった。それは負荷をかけすぎると外れてしまうという欠点であった。そして、最初に棍棒を受け止めたとき、球体関節には若干の歪みが生じていた。それに作が気付いていれば、ゴーレムマスターのスキルで治せたのだろうが、彼は気付かず、逆に調子に乗って動き回っていた。その動きの負荷も影響し、棍棒を受けた衝撃によって、肩は球体関節部分ですっぽりと抜け落ちてしまったのだった。
「ちょっと、タンマ」
右手のニュー南部カノンをクミチョウロボに投げつけて、ブレイブガインは左手を持って逃げ出した。
「グホッ、グホッ」
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