転生魔王は地球を防衛するのか?

お化け屋敷

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第1話:勇者参上!

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 良美は作の死体を格納空間にしまい込むと、作の入ったスマートフォンを手に周囲を見回した。

「まずこの状況を何とかしなくちゃ駄目だよね」

 良美の横には、頭にたんこぶを作った留美が気絶して倒れていた。恐らく校舎の破片があったのだろうが、単なるたんこぶであり命に別状はない状態であった。
 校舎の方は、宇宙機怪獣の巨人が倒れ込んだことで三階から二階にかけて窓側の壁が崩れていた。三階には三年生のクラスがあるのだが、勉強合宿というイベントで学校にいなかったため、被害は出ていなかった。

「クラスのみんなは…重傷者が十名に、死んでいる人が三名っと。これは急がないと不味い状態だよね」

 良美達のクラスメートは、何とか廊下に逃げ出した人以外は崩れてきた校舎に潰されて死傷者が多数出ていた。

巨人あれは、こっちに来なさそうだね」

 良美が外を見ると、巨人は校舎や生徒に興味が無かったのか、グラウンドを横切って市街地の方に向かって進んでいた。

「じゃあ、急いでみんなを助けましょうか」

 良美は再び格納空間へ手を伸ばすと、今度は透明なクリスタル結晶を三つ取り出した。

「ごめんね、賢者の石は在庫が少ないの。今はこれ結晶で魂だけは保管しておくよ」

 良美が手を振ると、結晶は死亡が確定している二人の男子生徒と女子生徒の死体の上に飛んでいく。

「我は彼の者達の魂を♪牢獄に捕らえん♪ ×3!」

 作の時とは異なった呪文を唱えると、死体からクリスタル結晶に炎の塊が飛び込んだ。

「戻れ!」

 良美が再び手を振ると、クリスタル結晶は良美の手に戻ってきた。戻ってきたクリスタル結晶の中には小さな炎がゆらゆらと揺れていた。

「窮屈だけど、しばらく我慢してね」

 良美は格納空間にクリスタル結晶をしまうと、三人の死体も近寄って格納空間に収納した。

「後は重傷の人達だけど、この世界でヒール・ポーションって効果あるのかな?」

 良美は格納空間から香水の瓶のような物を取り出すと、その中身を重傷者に振りかけた。瓶の中身は異世界の魔法薬で、傷を負った体をたちどころに癒やしてくれるという便利な物だった。
 何故魔王である良美がこんな魔法薬を持っているかというと、魔王良美が、切り傷を治すぐらいの回復魔法しか使えないからであった。
 魔王良美は、膨大な魔力を持ち、攻撃魔法やゴーレムの作成など様々な魔法を使えたのだが、回復魔法は最低レベルの呪文しか使えなかった。そこで、いざという時のためにヒール・ポーションを持っていたのだ。

「完全に回復はしないけど、これで死ぬことは無くなったかな?」

 ポーションを掛けられた重傷者の呼吸が落ち着いたのを見て、良美は安堵のため息をついた。

「良美さん、貴方何をしているの…」

「良美さんが触った人が、消えちゃったよ?」

「えっ、もしかして魔法? 良美チャンってもしかして魔法使いなの?」

 校舎の倒壊から逃れた人や軽傷だったクラスメートが、ここまでに良美が行ってきた事を見て騒ぎ出した。もちろん良美が魔法を使ったこともしっかりと見られていた。

『こりゃ大騒ぎになるな~』

「うーん、私が魔王ってばれるのは不味いかな。事が済むまでみんなには寝てもらおうかな」

『えっ? よっちゃん、何をするつもり?』

「騒ぎにならない様に、みんなを眠らせようかな~っと。うん、この魔法で良いかな。眠りの雲よ♪」

 良美が呪文を唱えると、まるで煙幕のような白い煙が渦を巻いてクラスメートを包み込んだ。するとクラスメート達は次々と倒れて眠ってしまった。

「眠りの雲よ♪ 眠りの雲よ♪ 眠りの雲よ♪」

 良美は続けて魔法を詠唱し、眠りの魔法白い煙が校舎全て包み込むと、学校の中の生徒と先生を全て眠らせてしまった。

『よっちゃん、凄いな~』

「へへっ、だって私は魔王だもの。見ててね、今から校舎も直しちゃうから」

 作の賞賛の声に良美は照れ笑いを浮かべながら、次の呪文を唱えた。

「出でよ、クレイ・ゴーレム! 出でよ、ストーン・ゴーレム」

 呪文の詠唱と共に校舎が巨大な魔法陣に覆われる。すると破壊された校舎の破片が変形を始め、小さな人型のゴーレムに変わっていった。

「さあ君たち、早く下の形に戻って…って、あれれ?」

 良美が作り上げたゴーレム達は命令に従い校舎の形に戻ろうと動き始めた。しかしその動きはぎこちなく、まるで酔っ払いのような動きであった。
 何が悪いのだろうと頭を抱える良美に対し、ゴーレムの動きを観察していた作は、その理由にいち早く気付いていた。

『よっちゃん、ゴーレムの手足のサイズがちぐはぐだよ』

「本当だ! ええっどうして? 魔王がゴーレムの作成で失敗するなんてあり得ないよ~」

 ゴーレム作成に失敗した魔王良美は、空に向かって絶叫するのだった。
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