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第1話:勇者参上!
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ソレに飛びつかれたF-15は失速し錐揉み状態で地上に落下していった。
『くそっ、こいつめ、離れろ、離れるんだー!』
パイロットは叫ぶが、ソレはF-15から手を離さなかった。結局F-15とソレは、そのまま地面に墜落して行き、巨大な火柱が上がった。
「墜落地点に確認の機体を一機向かわせろ。残りは引き続き宇宙機怪獣の追跡を続けるんだ!」
命令無視し攻撃を仕掛けたF-15のマーカーがモニターから消えるのを見て、河野空将は苦虫をかみ潰したような顔で指示を出した。
「現在、墜落したF-15とロッテのF-35が向かっています」
河野空将がモニターを見上げると、一機のF-35がF-15が消えた地点に向かっていた。
「(対宇宙機怪獣戦で初めての戦死者が出てしまったな。これで野党やメディアに総理は叩かれるだろう。しかし、自衛隊機の墜落…もし民間人に犠牲が出ていたら…その場合は自分は辞任するしか無いだろうな)」
河野空将はそんな事を思いながら、再び宇宙機怪獣の方に注意を戻した。
一方宇宙機怪獣は、F-15を撃墜したことなど何とも思ってないかのように西に向かって飛行を続けていた。
「このままだと、北陸地方を通り過ぎて日本海に抜けてしまうぞ。奴さん日本海でUターンするつもりか?」
「民間機じゃあるまいし、日本海でUターンするわけがないだろう。もしかして、奴の狙いは日本ではなくC国なのか?」
今までと異なった宇宙機怪獣の行動に、司令部の人員がざわめき始めた。
「(核を使ったC国を再度襲撃するつもりか? それなら日本の被害は最小限で済むが…)」
『ターゲットが上昇を始めました』
周囲の声から、河野空将も「C国に向かっているのでは?」と疑いだしたところで、宇宙機怪獣を追跡していたF-35のパイロットから通信が入った。
「上昇だと。まさか、このまま何もせずに離脱するのか?」
「何とか追尾しろ。振り切られるな!」
パイロットに対して司令部は指示を出す。
『追跡しようにも上昇速度が違いすぎて、このままでは振り切られます』
F-35はアフターバーナーを使用してフルパワーで宇宙機怪獣を追跡するが、それでも追いつくことはできなかった。
司令室がざわめく中、
『駄目です。完全に振り切られました。それに燃料切れが近い。これ以上の追跡は不可能です!』
F-35のパイロットから泣きそうな声で通信が入ると同時に、レーダーの索敵範囲から外れてしまったか、宇宙機怪獣のマーカーがモニターから消失する。
都市を襲撃しないという前例の無い宇宙機怪獣の行動に、司令部は沈黙してしまった。
『墜落地点上空です』
静まりかえった司令室に唐突に通信が入った。それはF-15の墜落地点に向かったF-35パイロットからの通信であった。
それを聞いた河野空将を始め司令部の面々は、我に返った。
「どこに墜落したんだ、それと墜落地点はどうなっている?」
河野空将は、F-15が墜落した地点を精査するように命じた。司令部のオペレーターは、はF-35の位置情報を確認し北陸のどの地点に墜落したかを調べ始めた。
『F-15が墜落したのは公園のようです。墜落地点の近くに巨大なチューリップを模した建物が見えます』
墜落地点確認のために低空飛行をしているF-35のパイロットから次々と状況報告が入り、墜落地点がディスプレイの地図に表示された。
「北陸…あそこは富山か。それで、チューリップの建物がある公園とは何処なんだ?」
河野空将の問いかけに、オペレータの一人が口を開いた。
「恐らく、富山県の砺波市にあるチューリップ公園ではないでしょうか。自分は富山の出身なのでよく知っています。毎年ゴールデンウィークの時期にチューリップがたくさん咲いている場所で…」
「そんな観光案内のような情報は良い。その公園に墜落したとして民間人に被害が出たかどうかが重要だ」
河野空将はオペレーターの解説に口を挟み、問い返した。
「今は七月の後半ですから、特別なイベントが無ければ人気は少ないはずです。ただ近くには県立高校や住宅地がありますので、そちらに被害が無いか、調査する必要があると考えます。幸いと言ってはおかしいのですが、近くに陸上自衛隊の駐屯地があります。出動を要請してはどうでしょうか?」
オペレータの返答に、河野空将は頷く。
「陸自に連絡を取れ。直ぐに調査に向かわせるんだ」
河野空将は陸上自衛隊に出動要請を出すように命令するのだった。
『くそっ、こいつめ、離れろ、離れるんだー!』
パイロットは叫ぶが、ソレはF-15から手を離さなかった。結局F-15とソレは、そのまま地面に墜落して行き、巨大な火柱が上がった。
「墜落地点に確認の機体を一機向かわせろ。残りは引き続き宇宙機怪獣の追跡を続けるんだ!」
命令無視し攻撃を仕掛けたF-15のマーカーがモニターから消えるのを見て、河野空将は苦虫をかみ潰したような顔で指示を出した。
「現在、墜落したF-15とロッテのF-35が向かっています」
河野空将がモニターを見上げると、一機のF-35がF-15が消えた地点に向かっていた。
「(対宇宙機怪獣戦で初めての戦死者が出てしまったな。これで野党やメディアに総理は叩かれるだろう。しかし、自衛隊機の墜落…もし民間人に犠牲が出ていたら…その場合は自分は辞任するしか無いだろうな)」
河野空将はそんな事を思いながら、再び宇宙機怪獣の方に注意を戻した。
一方宇宙機怪獣は、F-15を撃墜したことなど何とも思ってないかのように西に向かって飛行を続けていた。
「このままだと、北陸地方を通り過ぎて日本海に抜けてしまうぞ。奴さん日本海でUターンするつもりか?」
「民間機じゃあるまいし、日本海でUターンするわけがないだろう。もしかして、奴の狙いは日本ではなくC国なのか?」
今までと異なった宇宙機怪獣の行動に、司令部の人員がざわめき始めた。
「(核を使ったC国を再度襲撃するつもりか? それなら日本の被害は最小限で済むが…)」
『ターゲットが上昇を始めました』
周囲の声から、河野空将も「C国に向かっているのでは?」と疑いだしたところで、宇宙機怪獣を追跡していたF-35のパイロットから通信が入った。
「上昇だと。まさか、このまま何もせずに離脱するのか?」
「何とか追尾しろ。振り切られるな!」
パイロットに対して司令部は指示を出す。
『追跡しようにも上昇速度が違いすぎて、このままでは振り切られます』
F-35はアフターバーナーを使用してフルパワーで宇宙機怪獣を追跡するが、それでも追いつくことはできなかった。
司令室がざわめく中、
『駄目です。完全に振り切られました。それに燃料切れが近い。これ以上の追跡は不可能です!』
F-35のパイロットから泣きそうな声で通信が入ると同時に、レーダーの索敵範囲から外れてしまったか、宇宙機怪獣のマーカーがモニターから消失する。
都市を襲撃しないという前例の無い宇宙機怪獣の行動に、司令部は沈黙してしまった。
『墜落地点上空です』
静まりかえった司令室に唐突に通信が入った。それはF-15の墜落地点に向かったF-35パイロットからの通信であった。
それを聞いた河野空将を始め司令部の面々は、我に返った。
「どこに墜落したんだ、それと墜落地点はどうなっている?」
河野空将は、F-15が墜落した地点を精査するように命じた。司令部のオペレーターは、はF-35の位置情報を確認し北陸のどの地点に墜落したかを調べ始めた。
『F-15が墜落したのは公園のようです。墜落地点の近くに巨大なチューリップを模した建物が見えます』
墜落地点確認のために低空飛行をしているF-35のパイロットから次々と状況報告が入り、墜落地点がディスプレイの地図に表示された。
「北陸…あそこは富山か。それで、チューリップの建物がある公園とは何処なんだ?」
河野空将の問いかけに、オペレータの一人が口を開いた。
「恐らく、富山県の砺波市にあるチューリップ公園ではないでしょうか。自分は富山の出身なのでよく知っています。毎年ゴールデンウィークの時期にチューリップがたくさん咲いている場所で…」
「そんな観光案内のような情報は良い。その公園に墜落したとして民間人に被害が出たかどうかが重要だ」
河野空将はオペレーターの解説に口を挟み、問い返した。
「今は七月の後半ですから、特別なイベントが無ければ人気は少ないはずです。ただ近くには県立高校や住宅地がありますので、そちらに被害が無いか、調査する必要があると考えます。幸いと言ってはおかしいのですが、近くに陸上自衛隊の駐屯地があります。出動を要請してはどうでしょうか?」
オペレータの返答に、河野空将は頷く。
「陸自に連絡を取れ。直ぐに調査に向かわせるんだ」
河野空将は陸上自衛隊に出動要請を出すように命令するのだった。
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