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第1話:勇者参上!
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2/6 ロボット名をダゾーンからブレイブガインに修正しました。
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「いでよ、最終兵器●▽※…」
良美は右手をかざして椅子から立ち上がった。そして右手を振り下ろそうとして、目の前には勇者ではなく、しょぼくれたオジサンが立っていることに気づいた。
「あれ?」
良美は首をかしげて目の前のオジサンをじっと見つめた。
「それで、櫻井良美君、その最終兵器とは何だね?」
しょぼくれたオジサンは、良美そう言った。しょぼくれたオジサンは、もちろん勇者ではない。彼は良美が通う高校の先生である。
そこでようやく良美は、自分が魔王などではなく普通の女子高生であり、そして今現在この時間は現代社会の授業中であることに気づくのだった。
「…えっと、最終兵器とは…」
良美は手を振り上げたまま、固まってしまった。背後にいるクラスメートは、立ち尽くす良美を見てクスクスと笑っていた。
身長が145センチという小学生並みに小柄な良美は、先生を見上げて冷や汗を垂らすしかなかった。
「最終兵器とは…何だね?」
しょぼくれたオジサンこと、現代社会の原田先生は、台詞の続きを言うように良美を促した。
「…えーっと、やっぱり核兵器でしょうか?」
「ふむ。確かに核兵器は最終兵器と言っても良いとは思うが、それはこの授業で必要なものかね?」
五十代独身の、そろそろ頭の上が寂しくなってきている原田先生は、威圧するようにじろりと睨んできた。
「…いえ、必要ではありません」
良美は原田先生の眼光にひるみ、小さな体を更に縮こまらせた。
「まあつい最近核兵器を使ってしまった国があるが、現代社会の授業に最終兵器なんてものは必要ない。だが、別な最終兵器は必要だと私は思っている…」
「べ、別な最終兵器ですか?」
原田先生の不穏な言い回しに、良美はゴクリと唾を飲み込んだ。
「高校生にもなって最終兵器を使うとは思わなかったが…廊下で立ってなさい」
先生は、静かにそう言うと廊下を指さした。
「…はい」
良美は、肩を落としてとぼとぼとと教室を出て行くしかなかった。
◇
お昼休み、良美は廊下での『立ちんぼ』という高校生にあるまじき罰則からようやく開放された。
「仏の原田先生をあそこまで怒らせるとは、私にはまねできないわ~」
「そうだな。俺もあんな事できないわ。しかし俺はそんな良美にシビれる!あこがれるゥ~ぜ! 」
「ううぅ、なおくん、シビれなくてよいし、あこがれないでよ~」
お昼休み、良美は女友達の松原留美と幼なじみの物部作にからかわれていた。
物部作は良美と家が隣同士の幼なじみで、保育園からのつきあいである。
作は身長二メートル、体重110キロという巨漢で、良美と並ぶと大人と保育園児のように見えてしまうほどの体格差がある。学生服ならまだしも、私服で街を並んで歩くと作が誘拐犯として通報されたこともあるぐらいだ。
作はラグビー部に入っており、その恵まれた体格からフォワードとして活躍していた。一年から花園に出場して活躍しており、既に幾つかの大学から声がかかっている。
ラグビーというと厳つい男達の汗臭いスポーツというイメージがあるが、作はきれい好きであり、巨漢に似合わぬ整った顔つきと穏やかな性格から、女子生徒に人気があった。
留美は、高校に入ってすぐに仲よくなった良美の女友達である。身長170cm、ショートカットのボーイッシュな美少女である。明るく気さくな性格であり、面倒見も良いため、一年の女子生徒にお姉様として人気がある。
勉強もスポーツも得意で、現在はバスケ部のエースとして活躍中である。
そんな二人に対して、良美は長い黒髪をおかっぱに切りそろえ、背が低く童顔であることから小学生と間違われることが日常茶飯事である。運動も得意ではなく性格も内向的であり、友達を作るのも苦手であった。
恐らく作がいなければ、ぼっちであっただろうと良美は思っていた。
しかし実のところ良美は、保護欲をそそる目の大きい美少女であり、クラスメートの女子や男子からも妹のように思える同級生として、暖かい目で見守られている事を良美だけが知らなかった。
「よしよし…。原田先生は優しいから内申には響かないでしょ」
留美はそう言って、良美の頭を撫でるのだった。二人の身長差からまるで年下の妹を慰めるお姉さんという構図にしか見えない光景であり、それはこのクラスでは日常的な光景であった。
「仏の授業は内職してる奴が多いけど、先生も分かってて普通に見逃してくれてるからな。あんなことしなきゃたとえ最前列で居眠りしててもスルーしてくれてただろうに…」
作は留美に撫でられている良美をしばらく生暖かい目で見ていたが、ふと思い出したかのように急に真顔になった。
「それで、よっちゃんはまたあの夢を見たのか?」
高校生になっても作は、良美を子供の頃と同じように「よっちゃん」と呼ぶ。そう呼ばれるのは良美にとって嬉しくもあり、周囲のクラスメートに聞かれるのは恥ずかしいものであった。
「…うん、なおくん、またあの夢を見たの」
良美は作の問いかけにこくんと頷いた。
良美は小さい頃から時々異世界の魔王として勇者に倒される悪夢をみていた。もちろん幼なじみの作にはそのことを包み隠さず話している。
作も最初は「気にするな」と言っていたのだが、中学・高校と学年が進むにつれ、その夢を頻繁に見るようになってから、ひどく心配するようになっていた。
「夢って、二人が前に話していたあの魔王になって倒される悪夢?」
「うん、るみちゃんにも話したよね」
「授業中に叫び出すほどの悪夢ね~」
留美は、良美が見る悪夢について二人から話を聞いていた。只、留美は悪夢にうなされると言う体験が無いため、今日までそんなにも気にしていなかった。
そして留美は授業中の良美の寝言を思い出して、
「そりゃ作が良美を心配するのも分かるわ」
と一人椅子の背もたれに寄りかかり、上を向いてうんうんと頷いた。
「まあ、所詮夢じゃん。気にしなきゃ良いんじゃないかな~」
そして頷くのをやめてパック牛乳をストローでズズッと飲み干すと、にっこり笑ってそう言うのだった。
留美はポジティブ思考の女子高生である。「悪夢など気にするな」と良美に言うのだった。
「でも…」
「…留美の言う通りかな。やっぱり、よっちゃんは気にしすぎなんだよ。それに、授業中に夢を見るとか、また夜更かししたんだろ? 昨日もWeb小説でも読んでいて、夜更かししてたんじゃないの?」
「ウッ…。だって、昨晩は面白そうな話が幾つも更新されてたんだよ~」
良美は、自分の夢が魔王と勇者というファンタジー小説にありがちな展開と気づいた。そして、高校生となってスマフォを入手してから自分と同じような夢を見る人や同じような話がないかと、Web小説投稿サイトを覗くようになった。そしてものの見事にその手の創作物にはまってしまったのだった。
「Web小説で異世界転生モノだっけ…。あたしはそんなの読まないからな~」
留美は、スマフォは連絡手段だと割り切って使っておりSNSもたしなむ程度であった。当然Web小説など読むことはない。
「よっちゃん、寝不足になるほどはまって授業中に居眠りするのは駄目だな。夜更かしするぐらいなら授業中に読めば良いじゃん」
作の方は、良美の寝不足に駄目だしをするが、その後に言った内容は呆れるものだった。
「ええっ、なおくん、それは余計に駄目じゃないの? 見つかったらスマフォ没収だよ」
「まあ、仏なら大丈夫じゃないかな。内職どころか早弁している奴もいるぐらいだし」
原田先生の授業中に次の授業の予習などと言った内職をしている生徒は多かった。
「俺なんて、これ組み立ててたしな」
そう言って作が机の中から取り出したのは、白と黒を基調としたパトライトが肩についたロボットのイラストが描かれたプラモデルの箱であった。
「なおくん、授業中にそんなモノ作ってたの?」
良美は、作が取り出したプラモデルの箱を見て目を丸くする。
「…勇者ブレイブガインって、懐かしいわね。そのアニメ、あたしが小学生ぐらいに兄貴が見ていた覚えがあるわ。でも作はどうしてそんな古いアニメのプラモデルを作ってるのよ?」
留美は、プラモデルのイラストを懐かしむよう見た後、呆れたような目を作に向けた。
「いや、ついこの前BANZAIが復刻版って銘打って発売したんだよ。俺も昔はこのアニメにはまっていたから、懐かしさのあまり思わずポチってしまったんだ」
作が箱の蓋を開けると、中には勇者ブレイブガインが素組みされた状態で入っていた。
ちなみに素組みとは、プラモデルパーツを切り出して組み立てた状態のことである。最近のプラモデルはパーツ毎に彩色されており、接着剤も不要で組み上げることが可能なのだ。
「なおくん、本当に人形とかプラモデル好きだよね~」
「最近は部活が忙しくて、なかなか作れないからな~」
良美は、作がその大きな体に似合わず手先が器用である事をよく知っており、小学生の頃にはガン○ラのジオラマ写真が雑誌に載るレベルの腕前であることを知っていた。
実は良美もプラモデルに興味があったのだが、彼女は致命的に不器用であった。作に教えを請いながら何度か作ったのだが、どこかで致命的な失敗をしてしまうのだった。その手際の悪さは、作に言わせれば「呪いレベル」であった。
そのため、良美は作が作った物を鑑賞するだけとなった。そして今も作の手にある勇者ブレイブガインをキラキラとした目で見ていた。
「私はそんなモノに興味は無いけど、いくら何でも仏の授業中に作る事はないんじゃないかな。あと食事中なんだから、そんなモノ早くしまってよ」
一方留美の方は、普通の女子でありその手の物には全く興味が無かったので、「片付けろ」とばかりにシッシと手を振るのだった。
「そんなモノとか言うなよ」
作はそう言って勇者ブレイブガインを大事そうに箱にしまった。自分も触ってみたかった良美は、プラモデルが箱にしまわれるのを残念そうな目で追いかけていた。
そして三人は、中断していた昼食を再開しようとしたのだが、校舎を揺るがす衝撃によってそれは再び中断されることになるのだった。
2/6 ロボット名をダゾーンからブレイブガインに修正しました。
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「いでよ、最終兵器●▽※…」
良美は右手をかざして椅子から立ち上がった。そして右手を振り下ろそうとして、目の前には勇者ではなく、しょぼくれたオジサンが立っていることに気づいた。
「あれ?」
良美は首をかしげて目の前のオジサンをじっと見つめた。
「それで、櫻井良美君、その最終兵器とは何だね?」
しょぼくれたオジサンは、良美そう言った。しょぼくれたオジサンは、もちろん勇者ではない。彼は良美が通う高校の先生である。
そこでようやく良美は、自分が魔王などではなく普通の女子高生であり、そして今現在この時間は現代社会の授業中であることに気づくのだった。
「…えっと、最終兵器とは…」
良美は手を振り上げたまま、固まってしまった。背後にいるクラスメートは、立ち尽くす良美を見てクスクスと笑っていた。
身長が145センチという小学生並みに小柄な良美は、先生を見上げて冷や汗を垂らすしかなかった。
「最終兵器とは…何だね?」
しょぼくれたオジサンこと、現代社会の原田先生は、台詞の続きを言うように良美を促した。
「…えーっと、やっぱり核兵器でしょうか?」
「ふむ。確かに核兵器は最終兵器と言っても良いとは思うが、それはこの授業で必要なものかね?」
五十代独身の、そろそろ頭の上が寂しくなってきている原田先生は、威圧するようにじろりと睨んできた。
「…いえ、必要ではありません」
良美は原田先生の眼光にひるみ、小さな体を更に縮こまらせた。
「まあつい最近核兵器を使ってしまった国があるが、現代社会の授業に最終兵器なんてものは必要ない。だが、別な最終兵器は必要だと私は思っている…」
「べ、別な最終兵器ですか?」
原田先生の不穏な言い回しに、良美はゴクリと唾を飲み込んだ。
「高校生にもなって最終兵器を使うとは思わなかったが…廊下で立ってなさい」
先生は、静かにそう言うと廊下を指さした。
「…はい」
良美は、肩を落としてとぼとぼとと教室を出て行くしかなかった。
◇
お昼休み、良美は廊下での『立ちんぼ』という高校生にあるまじき罰則からようやく開放された。
「仏の原田先生をあそこまで怒らせるとは、私にはまねできないわ~」
「そうだな。俺もあんな事できないわ。しかし俺はそんな良美にシビれる!あこがれるゥ~ぜ! 」
「ううぅ、なおくん、シビれなくてよいし、あこがれないでよ~」
お昼休み、良美は女友達の松原留美と幼なじみの物部作にからかわれていた。
物部作は良美と家が隣同士の幼なじみで、保育園からのつきあいである。
作は身長二メートル、体重110キロという巨漢で、良美と並ぶと大人と保育園児のように見えてしまうほどの体格差がある。学生服ならまだしも、私服で街を並んで歩くと作が誘拐犯として通報されたこともあるぐらいだ。
作はラグビー部に入っており、その恵まれた体格からフォワードとして活躍していた。一年から花園に出場して活躍しており、既に幾つかの大学から声がかかっている。
ラグビーというと厳つい男達の汗臭いスポーツというイメージがあるが、作はきれい好きであり、巨漢に似合わぬ整った顔つきと穏やかな性格から、女子生徒に人気があった。
留美は、高校に入ってすぐに仲よくなった良美の女友達である。身長170cm、ショートカットのボーイッシュな美少女である。明るく気さくな性格であり、面倒見も良いため、一年の女子生徒にお姉様として人気がある。
勉強もスポーツも得意で、現在はバスケ部のエースとして活躍中である。
そんな二人に対して、良美は長い黒髪をおかっぱに切りそろえ、背が低く童顔であることから小学生と間違われることが日常茶飯事である。運動も得意ではなく性格も内向的であり、友達を作るのも苦手であった。
恐らく作がいなければ、ぼっちであっただろうと良美は思っていた。
しかし実のところ良美は、保護欲をそそる目の大きい美少女であり、クラスメートの女子や男子からも妹のように思える同級生として、暖かい目で見守られている事を良美だけが知らなかった。
「よしよし…。原田先生は優しいから内申には響かないでしょ」
留美はそう言って、良美の頭を撫でるのだった。二人の身長差からまるで年下の妹を慰めるお姉さんという構図にしか見えない光景であり、それはこのクラスでは日常的な光景であった。
「仏の授業は内職してる奴が多いけど、先生も分かってて普通に見逃してくれてるからな。あんなことしなきゃたとえ最前列で居眠りしててもスルーしてくれてただろうに…」
作は留美に撫でられている良美をしばらく生暖かい目で見ていたが、ふと思い出したかのように急に真顔になった。
「それで、よっちゃんはまたあの夢を見たのか?」
高校生になっても作は、良美を子供の頃と同じように「よっちゃん」と呼ぶ。そう呼ばれるのは良美にとって嬉しくもあり、周囲のクラスメートに聞かれるのは恥ずかしいものであった。
「…うん、なおくん、またあの夢を見たの」
良美は作の問いかけにこくんと頷いた。
良美は小さい頃から時々異世界の魔王として勇者に倒される悪夢をみていた。もちろん幼なじみの作にはそのことを包み隠さず話している。
作も最初は「気にするな」と言っていたのだが、中学・高校と学年が進むにつれ、その夢を頻繁に見るようになってから、ひどく心配するようになっていた。
「夢って、二人が前に話していたあの魔王になって倒される悪夢?」
「うん、るみちゃんにも話したよね」
「授業中に叫び出すほどの悪夢ね~」
留美は、良美が見る悪夢について二人から話を聞いていた。只、留美は悪夢にうなされると言う体験が無いため、今日までそんなにも気にしていなかった。
そして留美は授業中の良美の寝言を思い出して、
「そりゃ作が良美を心配するのも分かるわ」
と一人椅子の背もたれに寄りかかり、上を向いてうんうんと頷いた。
「まあ、所詮夢じゃん。気にしなきゃ良いんじゃないかな~」
そして頷くのをやめてパック牛乳をストローでズズッと飲み干すと、にっこり笑ってそう言うのだった。
留美はポジティブ思考の女子高生である。「悪夢など気にするな」と良美に言うのだった。
「でも…」
「…留美の言う通りかな。やっぱり、よっちゃんは気にしすぎなんだよ。それに、授業中に夢を見るとか、また夜更かししたんだろ? 昨日もWeb小説でも読んでいて、夜更かししてたんじゃないの?」
「ウッ…。だって、昨晩は面白そうな話が幾つも更新されてたんだよ~」
良美は、自分の夢が魔王と勇者というファンタジー小説にありがちな展開と気づいた。そして、高校生となってスマフォを入手してから自分と同じような夢を見る人や同じような話がないかと、Web小説投稿サイトを覗くようになった。そしてものの見事にその手の創作物にはまってしまったのだった。
「Web小説で異世界転生モノだっけ…。あたしはそんなの読まないからな~」
留美は、スマフォは連絡手段だと割り切って使っておりSNSもたしなむ程度であった。当然Web小説など読むことはない。
「よっちゃん、寝不足になるほどはまって授業中に居眠りするのは駄目だな。夜更かしするぐらいなら授業中に読めば良いじゃん」
作の方は、良美の寝不足に駄目だしをするが、その後に言った内容は呆れるものだった。
「ええっ、なおくん、それは余計に駄目じゃないの? 見つかったらスマフォ没収だよ」
「まあ、仏なら大丈夫じゃないかな。内職どころか早弁している奴もいるぐらいだし」
原田先生の授業中に次の授業の予習などと言った内職をしている生徒は多かった。
「俺なんて、これ組み立ててたしな」
そう言って作が机の中から取り出したのは、白と黒を基調としたパトライトが肩についたロボットのイラストが描かれたプラモデルの箱であった。
「なおくん、授業中にそんなモノ作ってたの?」
良美は、作が取り出したプラモデルの箱を見て目を丸くする。
「…勇者ブレイブガインって、懐かしいわね。そのアニメ、あたしが小学生ぐらいに兄貴が見ていた覚えがあるわ。でも作はどうしてそんな古いアニメのプラモデルを作ってるのよ?」
留美は、プラモデルのイラストを懐かしむよう見た後、呆れたような目を作に向けた。
「いや、ついこの前BANZAIが復刻版って銘打って発売したんだよ。俺も昔はこのアニメにはまっていたから、懐かしさのあまり思わずポチってしまったんだ」
作が箱の蓋を開けると、中には勇者ブレイブガインが素組みされた状態で入っていた。
ちなみに素組みとは、プラモデルパーツを切り出して組み立てた状態のことである。最近のプラモデルはパーツ毎に彩色されており、接着剤も不要で組み上げることが可能なのだ。
「なおくん、本当に人形とかプラモデル好きだよね~」
「最近は部活が忙しくて、なかなか作れないからな~」
良美は、作がその大きな体に似合わず手先が器用である事をよく知っており、小学生の頃にはガン○ラのジオラマ写真が雑誌に載るレベルの腕前であることを知っていた。
実は良美もプラモデルに興味があったのだが、彼女は致命的に不器用であった。作に教えを請いながら何度か作ったのだが、どこかで致命的な失敗をしてしまうのだった。その手際の悪さは、作に言わせれば「呪いレベル」であった。
そのため、良美は作が作った物を鑑賞するだけとなった。そして今も作の手にある勇者ブレイブガインをキラキラとした目で見ていた。
「私はそんなモノに興味は無いけど、いくら何でも仏の授業中に作る事はないんじゃないかな。あと食事中なんだから、そんなモノ早くしまってよ」
一方留美の方は、普通の女子でありその手の物には全く興味が無かったので、「片付けろ」とばかりにシッシと手を振るのだった。
「そんなモノとか言うなよ」
作はそう言って勇者ブレイブガインを大事そうに箱にしまった。自分も触ってみたかった良美は、プラモデルが箱にしまわれるのを残念そうな目で追いかけていた。
そして三人は、中断していた昼食を再開しようとしたのだが、校舎を揺るがす衝撃によってそれは再び中断されることになるのだった。
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