私達の『異世界』

姉が面倒な件について

今日は日曜日である


「はぁ……」

ピコリピコリとコントローラーのボタンを忙しなく動かす。
いつもなら、液晶内のゴブリンズに宝箱置いてけとがっついているのだが今日はそんなことを思えな位ぐらいに私の心は遠足している場所で迷子になった状態である。

原因は、昨夜みた『あの夢』である。もうコレしかないけれども

訳の分からない少年兵に出会い早々で見た目をディスられ、帝国だの何だのと刃物で脅されて……

「……あーダメだ。
なんなのアイツ？腹立つ……」

所詮は夢だが、だからこそ無性に苛立ちが生まれる。
現実で疲労が溜まっているのに、夢でも疲労を作るとかないわーとかなんとか。

でも、正直言ってしまえばもう出会うこともないだろうから忘れてしまえ。そもそも夢なんぞそんなにみることなんてないしな

それよりも、今はゲームだ。ゲーム！

今は、クエストでゴブリンズ共を一掃している。
こいつはドロップ率は低いが良いものを落としてくれるため周回する人達が多い。

まとめて五体倒すが、宝箱現れず。

「おぉい……宝箱置いてけよ……」
ガクリと肩を落とす。
クエストクリアのBGMが流れて、また周回しなくては…….と受付に向かい報酬を貰ってからまたクエストを受けて、対象のフィールドに向かうのだった。

……そんなこんなで、今日で早89回目の周回

ボンッと、宝箱が落ちた

「いつもなら、もうちっとかかるはずなんだけどな……！
運がいいなぁ」

いつもなら大体平均で約300回周っても出てこないレアなのに！やはり、神様がいるのだとしたら昨夜の夢のお詫びといったところだろう有り難や、有難や


はわ～と、喜びを噛み締めているとドアが開く音が

「やっほ、我が妹よ！」
「今すぐにでもUターンして、自室に帰れ」

誰も喜ばない降臨こと、姉の降臨である。

左手で中指を立ててそう言えば、相変わらず冷たい奴じゃのぅ……ふぁっふぁっふぁっ！と胡散臭いジジイの真似をする。地味に似ていてウザさが倍増。もう一つ言うなら、めっちゃドヤ顔。うん、腹立つなぁ～

「あれま、まだやってんの？
ホーント好きだよねぇ……うちの翔かけるちゃん愛には負けるけどっ！」
「うるせぇ、この変態」

さらに、この一言である。ちなみに、姉のいう翔かけるとは最近女子に凄い人気の乙女ゲームに出てくる攻略キャラの一人だ。私もやったことがあるが、色々とカオスだったことばかりが頭の中に残っている。

現在では、乙女ゲームにしては長く続いてアニメももう第五期まで来ているらしい。なんというか、女子の愛ってすごいんですなというのが分かる。

「というか、咲雪って軍略考えたりするゲームとかやっていたじゃん？どうしたのよそっちは？」
「…………どうでもいいだろ」
「あっそ」

しばらくの間、姉との間に無言が続いた。
流石にコレはゲームに集中できないなと思い、姉に声をかけることにした。

「……で？
そっちは何の用？」
「んー？
いや、別に」
「なら出てけよ」

でてけと言えば、姉はわざとらしく笑う。厄介な姉はコレだから嫌なのだ。

「ワァオ
おねーちゃんに向かって酷くね？というか、最近扱いが雑になってません？え、反抗期っすか？マジですか？え、ちょ」
「ミンチにすんぞコノヤロー」
「酷いわっ！咲雪ちゃんってば、私を食べても美味しくなくてよっ！？」
「大丈夫大丈夫。誰も食べるだなんて言ってないから」

やがて、めんどくさくなってハイハイと適当に返す。
なんなんだかな、この姉は

「いやーん、咲雪ちゃん可愛くなぁい」
「キモっ」



この人、ホントなんなのだろうか