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出会い?変だったな
しおりを挟む今日は仕事がないから、と休みをもらった
いつもお疲れ様。と言われるのを聞いてそう思われていたのか、とだけ知った。
特に頑張った事なんてないけど、まぁ褒めてくれたのだろうからそれで良しと心の中で決める。
別に、休みもらったからといって特にこの1日を使うほどの事はやることはないが
でも、小さいけどやる事はある。
ここでは、ちゃんと働くとそれに見合った金が貰える。
だから、ちゃんと収入を確認して今の自分の手持ち金は幾らか確認する。
「えっと、今回は銀二十枚の収入があって……?
今は、合計で金十五枚分あるから……もうすこしか」
金は銀が100枚で一枚。銀は銅が100枚で一枚らしくて、今の俺の手持ち金は銀で千枚ある。レジスタンスに入ってコツコツと貯めて、約八年。なかなかに頑張ったものだと自分の中でも自負している。
「これなら、もうすぐで、五十枚が貯まる……」
俺は決めていることが一つある。
金貨分で、五十枚貯まったらレジスタンスを辞めて何処か遠い国でひっそりと生きていくことだ。
何も、人生全てを使ってこの戦争に戦う必要などないのだから。
でも、戦っている以上は死ぬということがある。その時は潔く死んで、次は平和な国で生まれたいと願う事にしている。
この世界で七柱しかいないとされる神様のうちの平和の女神ミカコーヤ様や早く戦が終わるように戦神の神様であるショウスガ様がいるとするならば、祈ることしかできないが……まぁ、無い物ねだりかもしれないけれども
祈りを終えると、とても眠くなってきた。
時間は大体お昼頃。すると、ふつと思い出した事が。前にサカハ達が昼寝は格別の睡眠だとか言ってた思い出だ
その時は特に眠くもなくて眠れなかったが、今日は丁度いいから昼寝でもしてみよう。
目を閉じて、深呼吸をする様に息をする。
すると途端に眠気が全身に襲いかかり、まどろみが生まれ、意識を手放した
と、思った矢先
真白な所にいつのまにか、座っていた。
あり得ない。どういうことだ。いきなり、なんでこんな所に俺はいるんだ!?
敵の魔法に掛かったのか?
でも、そんなのどこでだろーー
「ーー誰だ」
反射的に出てきた言葉
ひっ、と目の前にいた黒髪の変な服装の恐らくは女に持っていた剣を向ける。
女は途端にガクガクと全身が震え出していたのを見て、妙に嫌な気持ちが湧いた。こんな反応されたのはいつだったか……
あぁ、そうだ
前に変な男どもがガキ扱いされた時に怒って剣を向けてしまった時以来だ!
あれは、とてもいい感じだったのにな…………今は、彼女に対して罪悪感があった。
ん?まてよ?
服装が見たこともない→貴族?→どこの?→帝国
この女、帝国の貴族か?
あれ?ならなんで魔法使わないんだ?聞く所なら貴族は嗜みとやらで魔法を習うって聞いたんだが?
え、なに、嘘だったのか?これは初耳……
「わ……私は普通の人間です
気づいたらここにいました
あ……あ、あなたは誰なんですか!?」
彼女の返答を聞いて、思わず笑いそうになってしまった。普通の人間って何だよ。変なこと言うな……貴族ってそんなもんか。
いやいや、油断を誘ってるだけかも知れないないし
「……………普通の人間だって?
俺の知ってる普通の人間とは違うな」
「っ、本当だよ!
ただの高校生だし、危ない人たちと関わったことなんてしていないし、刀剣を持つ人たちとなんてなおさらっ……!」
あ、なんか言葉使いが崩れた。これが彼女の元々の喋り方なのだろう
その言葉使いはどこか、サカハに似ている気がした。
というか、コウコウセイってなんだ?貴族の役職か?階級?
「……と、すると
お前は帝国の貴族かなんか?
コウコウセイってのは聞いたことのない階級だがもしかして、あの美人だっていうオヒメサマだとか?
あ、いや……でもオヒメサマは金髪だって言ってたし
あー……世間一般の美人っていまいち分からないからなぁ…….」
俺から見て彼女は、なんだかパッとしない。
美人というのは目がさめるくらいすごい容姿らしいから違うだろう
「……どうやら、近くに帝国の騎士どもはいないが、お前は魔法が使えないみたいだな」
つまり、害はないと見た。油断はしないけれども。
ゆっくりと剣を降ろすと、彼女はその場に崩れ落ちた。
いつまでもこんな状況をプライドが天の山くらい高い貴族が耐えられるわけない。魔法を使えないのも、本当ということか……
「ん……すまないな
本当に何も知らねぇぽさそうだし。
サカハからは女性は丁寧に扱えって言われたんだが、帝国の魔法を使えない女性は丁寧に扱っていいのか分からなくてな」
貴族ではあるが俺は過激派ではないし、彼女を脅したのは可哀想に思える。だが、理解してもらいたいということもあった
「さっきから………………なんなの」
「え?」
よく聞こえなかった。
彼女は何を言いたかったのだろうかと、聞いてみようとした瞬間
彼女は目尻に涙をためた状態できつく俺を睨みつけて怒鳴った
「だから、どこの帝国ですかって聞いているんですよ。分かります?
日本人っぽい顔をしているけれどその髪とか目とか色々と常識人的にはあり得ない色をしていますよね?
帝国っていうから外国の人だというのは分かります」
「あ……えっと?」
彼女の言葉が理解できないのが多くて返答に詰まる。
ひとつひとつ整理しようとするが、だめだ。ついていけない
彼女のいうニホンってところの国は聞いたことがない。もしかして、ここがそのニホンで彼女はこの国の者?
ぜいぜいと息が荒い彼女の姿をみて、気づいたことがひとつ。俺は初めて『こんな女』をみた
俺の知っている、女達はみんな弱々しい人ばかりだ。医療に特化しているけれど、あまり物申せなさそうだった。
そうか。こんなヤツもいるんだな
「…………これが見かけによらず、ってやつなのか?さっきまでかなり震えていたのに今はとても……すごい?気が強いのな」
国が違えば、こんなにも変わるのか。
この真白な世界で生きていたというのに、彼女はまるで正反対の色とりどりの性格の持ち主だと思った。
「いきなり何の罪もないはずなのに、死刑にさせられそうになったら誰でも怒るに決まっとるがなこの野郎!
そして、よっぽどの事情じゃないのなら五発殴るからな!」
これまた初耳だ。
「そうか…………間違って殺しそうになったのなら事情を言い、納得されないのなら五発殴られるのか」
「五発じゃ足りない時もあるけどな!!
相手に対して失礼すぎるわ、お前!」
ジトリ、と音がつくくらい彼女に睨みつけられてしまった。……相手とは、彼女のことか?というか、失礼……しつれい……?
「失礼?……馬鹿にしすぎのほうの意か?
ならば、分からない。俺はいつ、お前を馬鹿にしたんだ?」
思わず首を傾げる。
それを見る彼女は、少しの間だけ驚愕の表情を浮かべた後に元の表情に戻った……若干顔を引きつらせていながら。
「………………私をその帝国の王女と間違えたあたりよ。そして、このことを私に言わせるのも失礼だと知れこの野郎」
「そ、そうなのか。それはすまないことをした」
……漸く分かった
女性は顔が美しい、美しくないだとか言われるのを嫌がるものか。
思ったことの7割は、人に向けるべきではないとか何とか誰かが言っていたような気がするな
「…………………………。
……ごめん。多分言いすぎた
失礼な部分とかその他諸々は確実に君が悪いが、質問責めしたのは私の落ち度なはず。そこは謝る」
「……そう、なのか?
よく分からないが、そうなのか?」
「さてね。そんなの私に聞くな
……で?何で私にその剣を向けた?」
ん?なぜ彼女が謝るんだ?という疑問は残るが、話は変わったので、そちらの質問に答えなければ
「その質問の返答なら簡単だ
お前を俺の、いや違うか。
俺の入っている……レジスタ?の敵である帝国の貴族だと思ったんだ」
話している途中、自分の入っている場所の名前が出てこなくなったが、即座に彼女がレジスタンスでは?と返してくれたおかげで思い出せた。こういうのはうっかりだと彼女に言う。前にカショウが教えてくれたことが覚えていてよかった、助かった……彼女はまた微妙な顔をしているが。
少しの間を置いて
「…………そうだ!
ねぇ、ここってどこなの!?」
「いや、分からないな
俺も気づいたらここにいた。ここに来た時には既にお前がいたからてっきり知っていると思ったんだが……」
何ということだ。彼女の国のニホンという場所ではないのか
さて、どうやって帰られるのか?そもそもどうして、ここに来たのか考える必要がある。
落し物を探すときみたいに、ゆっくりここに来る前のことを思い出そうと眼を瞑り、意識の闇の中をさまよう
………………
…………
……
「ん……あれ?」
次に目を開ければ真白な部屋は無くなり、天幕にいた。
…….どうやらなんとか戻ってこれたのか。良かったと安堵の息が漏れる。
なんだったのだろうあれは。サカハやカショウに聞けば分かるだろうか?
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