私達の『異世界』

蜩 輪廻

文字の大きさ
上 下
8 / 15

出会い?変だったな

しおりを挟む



今日は仕事がないから、と休みをもらった


いつもお疲れ様。と言われるのを聞いてそう思われていたのか、とだけ知った。
特に頑張った事なんてないけど、まぁ褒めてくれたのだろうからそれで良しと心の中で決める。

別に、休みもらったからといって特にこの1日を使うほどの事はやることはないが
でも、小さいけどやる事はある。

ここでは、ちゃんと働くとそれに見合った金が貰える。
だから、ちゃんと収入を確認して今の自分の手持ち金は幾らか確認する。

「えっと、今回は銀二十枚の収入があって……?
今は、合計で金十五枚分あるから……もうすこしか」
金は銀が100枚で一枚。銀は銅が100枚で一枚らしくて、今の俺の手持ち金は銀で千枚ある。レジスタンスに入ってコツコツと貯めて、約八年。なかなかに頑張ったものだと自分の中でも自負している。

「これなら、もうすぐで、五十枚が貯まる……」
俺は決めていることが一つある。
金貨分で、五十枚貯まったらレジスタンスを辞めて何処か遠い国でひっそりと生きていくことだ。

何も、人生全てを使ってこの戦争に戦う必要などないのだから。
でも、戦っている以上は死ぬということがある。その時は潔く死んで、次は平和な国で生まれたいと願う事にしている。

この世界で七柱しかいないとされる神様のうちの平和の女神ミカコーヤ様や早く戦が終わるように戦神の神様であるショウスガ様がいるとするならば、祈ることしかできないが……まぁ、無い物ねだりかもしれないけれども

祈りを終えると、とても眠くなってきた。
時間は大体お昼頃。すると、ふつと思い出した事が。前にサカハ達が昼寝は格別の睡眠だとか言ってた思い出だ
その時は特に眠くもなくて眠れなかったが、今日は丁度いいから昼寝でもしてみよう。

目を閉じて、深呼吸をする様に息をする。
すると途端に眠気が全身に襲いかかり、まどろみが生まれ、意識を手放した


と、思った矢先


真白な所にいつのまにか、座っていた。

あり得ない。どういうことだ。いきなり、なんでこんな所に俺はいるんだ!?
敵の魔法メーガルに掛かったのか?
でも、そんなのどこでだろーー

「ーー誰だ」

反射的に出てきた言葉
ひっ、と目の前にいた黒髪の変な服装の恐らくは女に持っていた剣を向ける。
女は途端にガクガクと全身が震え出していたのを見て、妙に嫌な気持ちが湧いた。こんな反応されたのはいつだったか……

あぁ、そうだ
前に変な男どもがガキ扱いされた時に怒って剣を向けてしまった時以来だ!
あれは、とてもいい感じだったのにな…………今は、彼女に対して罪悪感があった。

ん?まてよ?

服装が見たこともない→貴族?→どこの?→帝国

この女、帝国の貴族か?

あれ?ならなんで魔法メーガル使わないんだ?聞く所なら貴族は嗜みとやらで魔法メーガルを習うって聞いたんだが?
え、なに、嘘だったのか?これは初耳……

「わ……私は普通の人間です
気づいたらここにいました
あ……あ、あなたは誰なんですか!?」

彼女の返答を聞いて、思わず笑いそうになってしまった。普通の人間って何だよ。変なこと言うな……貴族ってそんなもんか。
いやいや、油断を誘ってるだけかも知れないないし

「……………普通の人間だって?
俺の知ってる普通の人間とは違うな」
「っ、本当だよ!
ただの高校生だし、危ない人たちと関わったことなんてしていないし、刀剣を持つ人たちとなんてなおさらっ……!」
あ、なんか言葉使いが崩れた。これが彼女の元々の喋り方なのだろう
その言葉使いはどこか、サカハに似ている気がした。
というか、コウコウセイってなんだ?貴族の役職か?階級?

「……と、すると
お前は帝国の貴族かなんか?
コウコウセイってのは聞いたことのない階級だがもしかして、あの美人だっていうオヒメサマだとか?
あ、いや……でもオヒメサマは金髪だって言ってたし
あー……世間一般の美人っていまいち分からないからなぁ…….」
俺から見て彼女は、なんだかパッとしない。
美人というのは目がさめるくらいすごい容姿らしいから違うだろう

「……どうやら、近くに帝国の騎士どもはいないが、お前は魔法メーガルが使えないみたいだな」

つまり、害はないと見た。油断はしないけれども。
ゆっくりと剣を降ろすと、彼女はその場に崩れ落ちた。
いつまでもこんな状況をプライドが天の山くらい高い貴族が耐えられるわけない。魔法メーガルを使えないのも、本当ということか……

「ん……すまないな
本当に何も知らねぇぽさそうだし。

サカハからは女性は丁寧に扱えって言われたんだが、帝国の魔法メーガルを使えない女性は丁寧に扱っていいのか分からなくてな」

貴族ではあるが俺は過激派ではないし、彼女を脅したのは可哀想に思える。だが、理解してもらいたいということもあった

「さっきから………………なんなの」
「え?」
よく聞こえなかった。
彼女は何を言いたかったのだろうかと、聞いてみようとした瞬間
彼女は目尻に涙をためた状態できつく俺を睨みつけて怒鳴った

「だから、どこの帝国ですかって聞いているんですよ。分かります?
日本人っぽい顔をしているけれどその髪とか目とか色々と常識人的にはあり得ない色をしていますよね?
帝国っていうから外国の人だというのは分かります」
「あ……えっと?」
彼女の言葉が理解できないのが多くて返答に詰まる。
ひとつひとつ整理しようとするが、だめだ。ついていけない
彼女のいうニホンってところの国は聞いたことがない。もしかして、ここがそのニホンで彼女はこの国の者?
ぜいぜいと息が荒い彼女の姿をみて、気づいたことがひとつ。俺は初めて『こんな女』をみた
俺の知っている、女達はみんな弱々しい人ばかりだ。医療に特化しているけれど、あまり物申せなさそうだった。
そうか。こんなヤツもいるんだな

「…………これが見かけによらず、ってやつなのか?さっきまでかなり震えていたのに今はとても……すごい?気が強いのな」

国が違えば、こんなにも変わるのか。
この真白な世界で生きていたというのに、彼女はまるで正反対の色とりどりの性格の持ち主だと思った。

「いきなり何の罪もないはずなのに、死刑にさせられそうになったら誰でも怒るに決まっとるがなこの野郎!
そして、よっぽどの事情じゃないのなら五発殴るからな!」

これまた初耳だ。

「そうか…………間違って殺しそうになったのなら事情を言い、納得されないのなら五発殴られるのか」
「五発じゃ足りない時もあるけどな!!
相手に対して失礼すぎるわ、お前!」

ジトリ、と音がつくくらい彼女に睨みつけられてしまった。……相手とは、彼女のことか?というか、失礼……しつれい……?

「失礼?……馬鹿にしすぎのほうの意か?
ならば、分からない。俺はいつ、お前を馬鹿にしたんだ?」
思わず首を傾げる。
それを見る彼女は、少しの間だけ驚愕の表情を浮かべた後に元の表情に戻った……若干顔を引きつらせていながら。

「………………私をその帝国の王女と間違えたあたりよ。そして、このことを私に言わせるのも失礼だと知れこの野郎」
「そ、そうなのか。それはすまないことをした」
……漸く分かった
女性は顔が美しい、美しくないだとか言われるのを嫌がるものか。
思ったことの7割は、人に向けるべきではないとか何とか誰かが言っていたような気がするな

「…………………………。
……ごめん。多分言いすぎた
失礼な部分とかその他諸々は確実に君が悪いが、質問責めしたのは私の落ち度なはず。そこは謝る」
「……そう、なのか?
よく分からないが、そうなのか?」
「さてね。そんなの私に聞くな
……で?何で私にその剣を向けた?」
ん?なぜ彼女が謝るんだ?という疑問は残るが、話は変わったので、そちらの質問に答えなければ

「その質問の返答なら簡単だ
お前を俺の、いや違うか。
俺の入っている……レジスタ?の敵である帝国の貴族だと思ったんだ」
話している途中、自分の入っている場所の名前が出てこなくなったが、即座に彼女がレジスタンスでは?と返してくれたおかげで思い出せた。こういうのはうっかりだと彼女に言う。前にカショウが教えてくれたことが覚えていてよかった、助かった……彼女はまた微妙な顔をしているが。

少しの間を置いて

「…………そうだ!
ねぇ、ここってどこなの!?」
「いや、分からないな
俺も気づいたらここにいた。ここに来た時には既にお前がいたからてっきり知っていると思ったんだが……」

何ということだ。彼女の国のニホンという場所ではないのか

さて、どうやって帰られるのか?そもそもどうして、ここに来たのか考える必要がある。
落し物を探すときみたいに、ゆっくりここに来る前のことを思い出そうと眼を瞑り、意識の闇の中をさまよう

………………

…………

……


「ん……あれ?」

次に目を開ければ真白な部屋は無くなり、天幕にいた。
…….どうやらなんとか戻ってこれたのか。良かったと安堵の息が漏れる。



なんだったのだろうあれは。サカハやカショウに聞けば分かるだろうか?


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白紙の冒険譚 ~パーティーに裏切られた底辺冒険者は魔界から逃げてきた最弱魔王と共に成り上がる~

草乃葉オウル
ファンタジー
誰もが自分の魔法を記した魔本を持っている世界。 無能の証明である『白紙の魔本』を持つ冒険者エンデは、生活のため報酬の良い魔境調査のパーティーに参加するも、そこで捨て駒のように扱われ命の危機に晒される。 死の直前、彼を助けたのは今にも命が尽きようかという竜だった。 竜は残った命を魔力に変えてエンデの魔本に呪文を記す。 ただ一つ、『白紙の魔本』を持つ魔王の少女を守ることを条件に……。 エンデは竜の魔法と意思を受け継ぎ、覇権を争う他の魔王や迫りくる勇者に立ち向かう。 やがて二人のもとには仲間が集まり、世界にとって見逃せない存在へと成長していく。 これは種族は違えど不遇の人生を送ってきた二人の空白を埋める物語! ※完結済みの自作『PASTEL POISON ~パーティに毒の池に沈められた男、Sランクモンスターに転生し魔王少女とダンジョンで暮らす~』に多くの新要素を加えストーリーを再構成したフルリメイク作品です。本編は最初からすべて新規書き下ろしなので、前作を知ってる人も知らない人も楽しめます!

異世界帰りの【S級テイマー】、学校で噂の美少女達が全員【人外】だと気付く

虎戸リア
ファンタジー
過去のトラウマで女性が苦手となった陰キャ男子――石瀬一里<せきせ・いちり>、高校二年生。 彼はひょんな事から異世界に転移し、ビーストテイマーの≪ギフト≫を女神から授かった。そして勇者パーティに同行し、長い旅の末、魔王を討ち滅ぼしたのだ。 現代日本に戻ってきた一里は、憂鬱になりながらも再び高校生活を送りはじめたのだが……S級テイマーであった彼はとある事に気付いてしまう。 転校生でオタクに厳しい系ギャルな犬崎紫苑<けんざきしおん>も、 後輩で陰キャなのを小馬鹿にしてくる稲荷川咲妃<いなりがわさき>も、 幼馴染みでいつも上から目線の山月琥乃美<さんげつこのみ>も、 そして男性全てを見下す生徒会長の竜韻寺レイラ<りゅういんじれいら>も、 皆、人外である事に――。 これは対人は苦手だが人外の扱いはS級の、陰キャとそれを取り巻く人外美少女達の物語だ。 ・ハーレム ・ハッピーエンド ・微シリアス *主人公がテイムなどのスキルで、ヒロインを洗脳、服従させるといった展開や描写は一切ありません。ご安心を。 *ヒロイン達は基本的に、みんな最初は感じ悪いです() カクヨム、なろうにも投稿しております

メサイアの劣等

すいせーむし
ファンタジー
記憶喪失の少年チヨは真っ白な病室で目覚める。何かの病気で入院を余儀なくされたようだ。また、チヨその病のせいで特殊な力を持っていた。記憶を取り戻すため、他の患者を救うため、患者兼医者助手として"現の夢病院"で過ごす話。

アサの旅。竜の母親をさがして〜

アッシュ
ファンタジー
 辺境の村エルモに住む至って普通の17歳の少女アサ。  村には古くから伝わる伝承により、幻の存在と言われる竜(ドラゴン)が実在すると信じられてきた。  そしてアサと一匹の子供の竜との出会いが、彼女の旅を決意させる。  ※この物語は60話前後で終わると思います。完結まで完成してるため、未完のまま終わることはありませんので安心して下さい。1日2回投稿します。時間は色々試してから決めます。  ※表紙提供者kiroさん

夢うつつ

平野 裕
ファンタジー
夢でみた不思議な情景をもとに書いています。とても短いSSです。 ※1話完結でゆっくりと続きます ※夢日記のようなものです

元銀行員の俺が異世界で経営コンサルタントに転職しました

きゅちゃん
ファンタジー
元エリート (?)銀行員の高山左近が異世界に転生し、コンサルタントとしてがんばるお話です。武器屋の経営を改善したり、王国軍の人事制度を改定していったりして、異世界でビジネススキルを磨きつつ、まったり立身出世していく予定です。 元エリートではないものの銀行員、現小売で働く意識高い系の筆者が実体験や付け焼き刃の知識を元に書いていますので、ツッコミどころが多々あるかもしれません。 もしかしたらひょっとすると仕事で役に立つかもしれない…そんな気軽な気持ちで読んで頂ければと思います。

レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~

裏影P
ファンタジー
【2022/9/1 一章二章大幅改稿しました。三章作成中です】 宝くじで一等十億円に当選した運河京太郎は、突然異世界に召喚されてしまう。 異世界に召喚された京太郎だったが、京太郎は既に百人以上召喚されているテイマーというクラスだったため、不要と判断されてかえされることになる。 元の世界に帰してくれると思っていた京太郎だったが、その先は死の危険が蔓延る異世界の森だった。 そこで出会った瀕死の蜘蛛の魔物と遭遇し、運よくテイムすることに成功する。 大精霊のウンディーネなど、個性溢れすぎる尖った魔物たちをテイムしていく京太郎だが、自分が元の世界に帰るときにテイムした魔物たちのことや、突然降って湧いた様な強大な力や、伝説級のスキルの存在に葛藤していく。 持っている力に振り回されぬよう、京太郎自身も力に負けない精神力を鍛えようと決意していき、絶対に元の世界に帰ることを胸に、テイマーとして異世界を生き延びていく。 ※カクヨム・小説家になろうにて同時掲載中です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...