大型犬との同居

射手座

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~迫り来る魔の手~

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◇道中◇

-大喜視点-

「小太郎さん、今頃はイベントで頑張ってるんだろうな~♪」

今日、小太郎さんは自身の新刊のBL小説発売記念のイベントで、アメニイト日本橋店へ行っている。

イベント内容は、トークショー&サイン会。

「それと、夕飯はどうしよう……ッ!?」

夕飯を買いに外へ出て、5分くらい歩いたとこで前方に借金取り3人組が、辺りをキョロキョロしてるのを見かける。

「ヤバい、引き返さないと…。」

変装してるとはいえ、声をかけられたら危ない…。

この場を引き返して一旦、マンションの方へ引き返す。

◇梅田マンションの前◇

「しかし、何であそこまで来てたんだ…?」

今まで捜索してた、範囲に居ないと判断して範囲を広げてきたのか…?

俺は、今日は向こうの方へは行かずに反対側の方へ、買い物しに行く事にした。

◇アメニイト日本橋店5階・イベント会場◇

-小太郎視点-

「犬飼リトル先生が描く、ワンコ攻めの作品が凄く大好きで、ワンコ攻めシリーズ本全部読みました♪」

「ありがとうございます!
これからも、僕の本よろしくお願いしますね♪」

BL小説にサインして、女性ファンの人に渡す。

「次の方、どうぞ」

プリン頭の剥がし用のスタッフ1、梶研磨(かじけんま)さんが次のファンの人を呼ぶ。

列の先頭に立つ、高校生くらいの男の子がBL小説を持って、僕の前までやって来る。

「あの、僕…。
ずっと、先生のファンなんです!」

そう言いながら、僕にBL小説を渡す高校生くらいの男の子。

「へぇ~、かなり嬉しいです♪
高校生ですか?」

「はい!
高校1年生です」

渡されたBL小説に、サインしながら男子高校生と会話をする。

「腐男子高校生のファンも居るなんて、超幸せな気持ちになります」

腐男子高校生に限らず、腐男子のファンが居る事に超幸せな気持ちになる。

腐女子のファンは多い。

腐男子ファンは居るには居るけど、腐女子ファン程に多くは居ない。

だから、腐男子ファンは貴重なのだ。

ましては、同じ腐男子の同士。

腐女子のファン達と一緒に、大事にしたい。

「周りに、腐男子友達が居ないし変な目で見られそうだから、腐女子友達や知り合い以外には隠してるんです」

「あ~、それわかります
腐男子は、いろいろと大変ですよね」

僕は、サインしたBL小説を腐男子高校生に渡す。

「これからも、僕の作品をよろしくお願いしますね
腐男子高校生君」

「はい!♪」

腐男子高校生が立ち去り、剥がし用スタッフ2の日向歩(ひなたあゆむ)さんが列の先頭に並んでる、女性ファンの方を見る。

「次の方、どうぞ」

こうして、イベントが順調に進んでいって無事終了した。

◇アメニイト日本橋店2階・スタッフルーム◇

「犬飼先生、僕達の分のサインをお願いします」

「先生の作品、俺達も大好きなんすよ」

「ありがとうございます」

イベント後、2階のスタッフルームへ移動して休憩していると、歩さんと研磨さんがBL小説を持ってサインをお願いしてきた。

僕は、2人のBL小説にもそれぞれサインした。

この2人とは、イベントを通じて何回か会ってる内に仲良くなって、アドレスも交換して連絡も取り合ってる。

2人は、僕の貴重な腐男子仲間だ。

あと、犬飼リトルって言うのは僕がBL作家で、活動する上での作家名。

意味は、犬を飼ってる小さい人って意味で付けた。

今となっては、犬(大喜君)を飼ってる小さい人(僕)って意味的に合ってる。

「先生、そろそろ帰りましょうか」

スタッフルームのドアが開き、郁君が入って来た。

「郁も、お疲れ様」

「郁君、お疲れ様」

「歩さん、研磨さんお疲れ様です」

郁君は、歩さんと研磨さんとも知り合いなのだ。

ちなみに、僕達4人は腐男子同盟というLINEグループを組んでいる。

「それじゃあ、僕達はそろそろ失礼します」

僕と郁君は、2人に挨拶をしてからスタッフルームを出て、アメニイトを出て駐車場へ向かう。

◇505号室・台所◇

-大喜視点-

「もうちょっとで、小太郎さんが帰って来る頃だな」

夕飯の買い物から帰った俺は、冷蔵庫に入れるモノは全部入れてから風呂を沸かして、夕飯の準備をしている。

「……。」

反対側の方の道から、買い物行ったらから借金取り3人組と遭遇する事がなかったから良いけど…。

「徒歩5分くらいの距離のとこに居たって事は、いずれこの近辺にも現れるかもしれない…。」

もし、小太郎さんが俺を匿ってる事が、奴らにバレたら小太郎さんにも危害が…。

「せっかく、居場所が出来たのに…。」

小太郎さんに、危害が及ぶ事だけは絶対に避けないと…。

◇車の中◇

「……。」

車のミラー越しに、後ろの車を確認する。

「あの借金取り達か…。」

郁さんを途中まで送ったあと、マンションへ向かって車で帰っている最中。

梅田に着いた頃、途中から黒い車が後ろから追いかけて来るのが気になった。

信号が止まり、車のミラーで後ろの黒い車を確認すると車内に、借金取り3人組の姿があった。

「もしかして、僕が大喜君をあの時に連れ去った人物って事がバレたのか…?」

僕はスマホを取り出して、大喜君に電話をかける。

『もしもし、小太郎さん?』

「大喜君、今どこに居る!?」

『家で、夕飯作ってますけど』

良かった、家の中なら安心だ…。

「大喜君、今日はもう家から出たら駄目だよ!」

『え、何かあったんすか?』

「今、梅田で車の中で信号待ちなんだけど、借金取り3組に車で尾行されてるんだ」

『えっ!?
小太郎さん、大丈夫なんですか!?』

通話越しでもわかるように、大喜君が驚きながら慌てる。

「大丈夫、落ち着いて
車は一台で、3人が乗ってる
今から、奴らを撒いて帰るから少しだけ遅くなるかも」

上手く撒ければの話だけど、それを言うと大喜君が不安がるから言わないでおく。

『あの、すみません!
俺のせいで迷惑を…。』

「僕は大丈夫だから安心して
絶対に無事に帰って来るから、大喜君は美味しい夕飯を作って待っててね」

我ながら、フラグを建ててしまった。

『はい、わかりました…。
絶対に、無事に帰って来て下さい…。』

「うん、それじゃあ」

僕は、通話ボタンを切った。

◇505号室・リビング◇

「小太郎さん…。」

俺は、スマホをテーブルの上に置く。

「もしかして…。
夕飯の買い物の時にあの辺に居たのも、俺じゃなくて小太郎さんの車を何度か見かけたからか…?」

小太郎さんの心配をしつつ、無事を願いながら夕飯の続きを作り始めた。

◇車の中1◇

-小太郎視点-

「……カーチェイスは始めてだけど、いっちょ頑張るか…。」

信号が青になり、車の運転を再開させる。

◇車の中2◇

-借金取り1視点-

「あの車を追い続ければ、きっと犬尾大喜を匿ってる場所に着く筈だ」

俺は、運転しながら前の車を追いかける。

「犬尾大喜め、今度こそ逃がさねえぞ」

 「あの車の運転手を捕まえて、痛みつけて居場所を吐かせてやるぜ」

前の車を見つめながら言う、後部座席に座ってる仲間の2人。

◇車の中1◇

-小太郎視点-

「しつこいなぁ~」

かれこれ10分以上も運転してるのに、借金取りの車はまだ追って来る。

「仕方ない…。
荒っぽい運転は嫌いだけど、本気で行かせてもらうよ」

僕は、車のスピード違反に引っかからない程度に、ギリギリにスピードを上げて横の車線に入り、他の車を追い抜いて行く。

◇車の中2◇

-借金取り1視点-

「なッ!?」

「何で、急に猛スピードに!?」

「まさか、尾行に気づかれた!?」

とにかく、俺も猛スピードで他の車を追い抜かし、あの車を追いかける。

◇505号室・リビング◇

-大喜視点-

「小太郎さん、遅いなぁ…。」

まだ、カーチェイスの最中なのか…?

「俺のせいで、小太郎さんに迷惑を…。」

小太郎さん、どうか無事で居て下さい…。

◇車の中1◇

-小太郎視点-

「ったく、しつこい連中だ!」

遠回りしたけど、少しずつ反対側からマンションに近付いている。

「あそこなら!」

左の路地に入り、少しスピードを落としてゆっくり進む。

◇車の中2◇

-借金取り1視点-

「チッ」

奴と同じく、左の路地へ入ろうとした時に運悪く他の車が何代か割り込み、今回の追跡を断念せざる負えなくなった。

「ん?」

あの、方角のマンション…。

「どうした?」

「何か見つけたのか?」

「いや、確証ってわけじゃねえんだが…。」

……なる程な。

もしも、俺の予想が正しければ犬尾大喜を匿ってる、さっきの車の運転手の住処がわかったぞ…。

◇梅田マンション・エレベーターの中◇

-小太郎視点-

「ふぅ、何とか撒けたな…。」

運良く、他の車が何台も割り込んでくれて助かった…。

「大喜君、かなり心配してるだろうから、早く安心させてあげないと」

30分ちょっと、アイツらとカーチェイスをしてたから、途中で連絡する暇もなかったし…。

◇梅田マンション5階・505号室の前◇

僕は、ドアの鍵を開けて中へ入った。

◇505号室・玄関◇

「ただいま」

玄関に入り、ドアの鍵を閉める。

「小太郎さ~ん!」

すると、リビングから慌てながら大喜君がやって来て、勢い良く僕を思い切り抱き締める。

「大喜君、く…苦しい…。」

「あっ、すみません…。」

僕から少し離れる大喜君。

「ゴメンね、心配かけて」

不安そうに、僕を見る大喜君に謝った。

「謝るのは、俺の方ですよ!
すみません、俺のせいでとんだご迷惑を…。」

「別に、きみのせいじゃないよ」

靴を脱ぎ、部屋に鞄を置いたあとリビングに向かう。

◇505号室・リビング◇

「でも、俺の事でひょっとしたら小太郎さんに危害が…。」

「まあ、過ぎた事を気にしても仕方ないし
僕は、無事だったんだから気にしない気にしない
終わり良ければ全て良しだよ」

背伸びして、大喜君の頭を撫でた。

「それより、お腹空いちゃった」

「はい、今から温めますね」

僕は、大喜君と一緒に夕飯を食べ始める。

「えっ、じゃあアイツらこっちの方まで来てたんだ」

「はい、俺も驚いて…。」

大喜君から、借金取り達がマンションから5分くらい向こうの、距離まで来ていた事を聞いた。

「車で何回も移動してて知らない内に、気付かれて捜索範囲を絞って尾行までに嗅ぎつけたってところか」

「多分、俺を助けた時に車の形状とかナンバーを、覚えていたのかもしれないっすね…。」

意外と、面倒くさい事になってきたな…。

「これからは、なるべく自分の車での移動は避けた方が良いかもね
幸い、顔は見られていないっぽいし」

外からは、中が見えないようにしてあるから少なくとも、車を使わなければまだ安全な筈…。

「小太郎さん、本当に迷惑かけてすみません…。」

大喜君は、また申し訳無そうに僕に謝る。

「もう、だから別に良いって言ってるじゃん
この話は、これで終わりね」

夕飯を食べている最中、話題を変えて会話しながら食べたが、大喜君の表情は少し暗いままだった。

◇505号室・大喜の部屋◇

-大喜視点-

「はぁ…。」

小太郎さんは、別に良いって言ってくれてるけど…。

やっぱり、落ち込むよなぁ…。

夕飯後。

食器を洗ってる間、小太郎さんに先に風呂に入ってもらい、俺は食器洗いを全部終えてから入って、自分の部屋に戻ってベッドに寝転んでいる。

◇505号室・小太郎の部屋◇

-小太郎視点-

「結局、大喜君
元気がないままだったな~」

明日には、元気になってくれてると嬉しいな。

元気がない大喜君を見るのは辛い。

自分の事で、責任感じてるのはわかる。

でも、それでも僕は気にしてないから、大喜君も気にしないでほしい。

って、何度言っても気にしたままで効果がなかった。

明日、気晴らしに大喜君誘って、どこか出かけようかな。

「……いや、それはまた別の日にするか…。」

先に片付けるべき問題を、片付けて全部解決してからだ…。

今日は、このまま別々で寝て1日が終了した。

◇505号室・リビング◇

「大喜君、今日昼飯食べたあと少し出かけて来るね」

「わかりました♪」

翌日。

昨日寝て落ち着いたのか、いつものように元気になってる大喜君。

今日の昼飯の材料は、僕が自転車で買いに行く事に決めた。

◇梅田マンション付近◇

昼飯の材料を買いに、マンションの自転車置き場まで自転車を取りに行く。

「ッ!?」

マンション付近を漕いでる最中、向こうの方で借金取りの車が止まっているのが見えた。

僕は、何食わぬ顔でそのまま買い物に向かった。

◇道中◇

「……完全に撒いたと思ったのに…。」

何でバレた…?

「いや、バレたと言うより…。」

逃げた方角で大体の行き先を絞って、ここまで辿り着いたか…。

◇505号室・リビング◇

「うん!
やっぱり、中華丼は味濃い方が美味しいね♪」

今日の昼飯は、味濃い目の中華丼。

「俺も、味濃い方が好きっす」

大喜君には、マンション付近に奴らの車が止まっていて、匿ってる事がバレてる事は言っていない。

これ以上、不安になって暗い表情の大喜君は見たくない。

◇505号室・玄関◇

「それじゃあ、出掛けて来るね」

「はい♪」

靴を履き終わると、大喜君は笑顔で僕を抱き締める。

「大喜君?」

「えへへ♪
昨日、小太郎さんを抱き締めてなかったので、昨日の分も小太郎さんを補給してます♪」

大喜君は、1日に1回はこうして僕を抱き締める。

大喜君曰く、小さくて可愛いモノや抱き心地が良さそうな物を、抱き締めるのが大好きらしい。

「大喜君、行って来るね」

「小太郎さん、行ってらっしゃいです♪」

◇505号室・地下の駐車場◇

「その車、きみの車か?」

「え……ッ!?」

車の前まで来ると、借金取り3人組がこっちに近付いて来る。

やっぱり、ココがバレてたか…。

「そうですけど…。」

「フッ、ていう事は昨日の運転してたのもお前だろ?」

「昨日の、カーチェイス楽しかったぜ~」

「でもよ、あんな荒い運転を続けてたって事はよ
俺達の追跡してた理由と、目的わかってんだろ?」

3人は、少しずつ僕に近付く。

「……何の事かわかりませんね…。」

そう言うと、借金取り1が僕の胸ぐらを掴む。

「とぼけてんじゃねえぞぉ!!」

借金取り1は、拳を振りかざす。

「うッ…。」

僕は、殴られて地べたに倒れる。

「お前が、犬尾大喜を車で連れ去ったって事も、荒い運転で逃げ回ったって事は、奴を匿ってる可能性があるって事もわかってんだよ!」

「がはッ…。」

借金取り2が、僕のお腹を蹴った。

「オラァ、立てよ!」

借金取り3は、僕の腕を引っ張って立ち上がらせる。

「なあ、犬尾大喜をお前のとこで匿ってんだろ?」

「これ以上、アイツを庇って痛い目に合いたくねえよな?」

「正直に言って、アイツを差し出せばこれ以上ボコったりしねえからよぉ」

「……。」

くッ、借金取りって本当に暴力的で荒い奴らだな…。

だけど、ここで大喜君の事を白状するわけには…。

「確かに、あの日にあの子を車で連れ去ったのは僕だ…。
でもあの日、応急手当てをしたあと、あの子はすぐに出て行ったよ…。」

「あぁ!?」

「嘘つくな!」

「昨日の荒っぽい運転で逃げ回ってたので、アイツを匿ってんのはわかってんだよ!」

「うぐッ」

借金取り1は、僕を殴り倒して他の2人と一緒に、殴ったり蹴ったりし出す。

「ぐ、がはッ…。」

唇に、微かな痛みが走る。

多分、殴られた拍子に切れて血が出たんだろうな。

「さっさと、白状しろよ!」

「うッ…。」

借金取り2に頭を蹴られる。

「仮に、知ってたとしても……絶対に…言う、もんか…。」

「おい、兄ちゃん
まだ、痛い目を見ないとわかんねえか!?」

「ぐぁあッ…。」

借金取り3が、倒れてる僕のお腹を踏みつける。

「おい、お前ら何やってるんだ!!」

 「大人しくしろ!!」

向こうの方から、2人の警備員達がこっちに向かって走って来た。

「チッ、面倒くせえ!」

「おい、一旦ズラかるぞ!」

「おい、兄ちゃん
また来るからな!」

借金取り達は、車に乗り込むとこの場から離れて行った。

「おい、きみ!
大丈夫か!?」

「酷い、あちこち怪我してるしボロボロじゃないか…。」

「ゲホッ、ゲホッ…いてて……だ、大丈夫です…。」

警備員2人に、体を起こしてもらって立ち上がる。

「505号室の小泉君じゃないか」

「今の奴らは、一体何なんだ?」

「いきなり因縁付けられて絡まれただけで、どこの誰かはわかりません…。」

警備員の人達には、借金取り達と大喜君の事は言わない事にした。

「あと、警察とかは良いです…。
あまり、騒ぎにしたくないんで…。」

「そうか…。」

「だけど、次にまたアイツらが来たらその時は、警察に連絡するからね」

「はい、すみません…。」

とりあえず、家に戻る事にした。

駐車場の中から、エントランスホールに入ってエレベーターに乗った。

◇梅田マンション5階・505号室の前◇

「……。」

この有様じゃ、下手に嘘ついて言い訳してもバレるよね…。

「大喜君、自分を責めて悲しむだろうな…。」

家の鍵を開けて中へ入る。

◇505号室・玄関◇

「ただ…ッ!?」

さっき、胸辺りも蹴られたからか急に痛みが襲い、この場でうずくまる。

「おかえ…ッ!!
小太郎さん!?」

リビングから急いで、僕のそばに駆け寄る大喜君。

-大喜視点-

「小太郎さん、どうしたんですか!?」

胸を抑えながら、うずくまる小太郎さんに駆け寄る。

「実は…。」

俺は、小太郎さんから事情を全て聞かされた。

昼飯の材料を買いに行った時、借金取り達の車が付近に止まっていた事。

俺に、余計な不安を抱かせないために黙ってた事。

2回目に出掛けた時に、駐車場に奴らがやって来た事。

俺の居場所を聞かれて言わなかったら、殴り蹴るの暴力を何度も何度も受けた事。

途中、警備員2人が来て奴らが車で逃げて助かった事。

警察に言わないでほしい事を、警備員2人に頼んだ事。

気が緩んだとこで、蹴られた場所が痛みが襲ってきた事。

「ゴメンね、結局は不安がらせて…。」

苦痛な表情を浮かべながら、俺に謝る小太郎さん。

「何で、小太郎さんが謝るんですか!?
謝るのは、俺の方じゃないですか!!」

小太郎さん、あなたはどこまで優しいんですか…。

「俺を庇って、アイツらに暴力振るわれて…。」

気が付けば、俺は涙を流していた。

「俺を助けたばかりに……俺を匿ったばかりに、俺を…俺を庇ったせいで……小太郎さんが傷ついて…うぅっ…。」

「大喜君、泣かないでよ…。
僕は、大丈夫だから…。」

この期に及んで、自分より俺の心配をする小太郎さん。

「何で、自分の事より俺の事を心配してるんですか!?
俺の事で迷惑かかって巻き込まれたのに、何で俺を責めないんですか!?」

小太郎さんは、困った表情をする。

「正直言って、自分でも何故だかわからないんだ…。
大喜君を責める気になれない…。」

そう言いながら、小太郎さんは立ち上がって靴を脱ぐ。

「ちょっと座りたいから、話の続きはリビングで…。
あと、救急箱持って来て…。」

「……わかりました…。」

俺は、小太郎さんを支えながらリビングに向かい、小太郎さんがソファーに座るのを確認してから、救急箱を取りに行った。
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