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【真幕・第2章】清純な加奈子さんっ
3.好きな子の水着を嗅いでいいですかっ!
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花穂姉ちゃんの汗だくパンツに鼻先が接地する寸前――――
背後で脱衣場のドアが開かれたのだ。今、ドアを開くのは加奈子さんしかいない。
「弟君……ここに着替えのシャツ置いておきますね」
「う、うん。ありがとう」
胸元に握り締めていた姉のパンツを洗濯機の中に放り込んだ。振り返る一瞬、消失マジックを披露するかのごとく手首のスナップで洗濯槽にジャストミートさせたのだ。この家の洗濯機が正面開閉のドラム式でよかった。
「リビングに冷たい飲み物を用意してます……弟君、アイス食べますか?」
「アイス食べたい!」
二人で脱衣場を出ようとした時、浴室のドアから姉が顔を出した。
「加奈ちゃんはシャワーしないの?」
「わたしは……花穂さんのあとでいいです」
「いっしょに入ればいいじゃない!」
「はい……」
そういえばこの二人、お泊りの日は子どもの頃からいっしょにお風呂に入っている。今日、加奈子さんがよく笑っていた理由は姉が来るのが楽しみだったからなのだろう。本当に昔から仲のいい親友同士だ。これではどっちが邪魔者なのかわからない。
「花穂姉ちゃん……俺もいるんだからさ、もうちょっと隠せよ」
「いいじゃん。見慣れてるくせに! 加奈ちゃんお湯入れてもいい?」
「あ、はい……大丈夫です。では、わたしも入りますね」
「よし! 俺も入ろうかな!」
「蒼太はハウス!!」
「俺を犬扱いするんじゃないっ!」
釣られ混浴を狙って、姉にハウスと言われるやり取りがたまに発生する。
これをやると加奈子さんにウケがいい。今もクスクスと口元を抑えながら笑っている。
「……弟君。アイスは冷凍庫です。好きなのを食べてくださいね」
「はーい」
脱衣場を出てリビングルームへ入り、キッチンへと向かう。
加奈子邸の冷蔵庫はシルバーの中型のものだ。大きいのはスペースの無駄、小さいのは製氷機能や冷凍機能がないため中型にしたそうだ。
(アイスは……)
下段の冷凍庫を開くと小さなカップアイスが五個並んでいる。
バニラが二個、ストロベリー、チョコチップ、抹茶。一つ二五〇円の高いアイスだ。
どれを食べようか少し迷ったが、バニラ味を手に取った。
リビングのガラステーブルの上にデカンタが見える。
中身はルイボスティーかもしれない。姉が最近ハマっているからだ。
お茶は麦茶に限る。どうもあの変わった風味が慣れない。
★★★
花穂姉ちゃんと加奈子さんがお風呂に入って既に三〇分経過。
女性の買い物とお風呂はなぜこうも長ったらしいのだろうと毎回思う。
「うーん。やっぱり独特の風味」
用意してあった飲み物は予想通りルイボスティーだった。
キンキンに冷えてのどごしは良いが、味や香りが少し苦手だ。
(暇だな……)
ガラステーブルの前でゴロリと横になる。
すると、テーブルの向こう側に加奈子さんの通学鞄が見えた。
そのすぐそばに水色の半透明なボーダー柄のプールバッグが置いてある。
「プールだったのかな?」
この時期の体育の授業はプールだ。これは必修授業で単位を取らないといけない。
今朝、姉はプールバッグを用意していなかった。加奈子さんだけがプールバッグを持っているということは補習である。必修授業は何度か見学や欠席すると補習となる。特にプールの場合は女子の体調も考慮され、その辺りで男子と不公平にならないようにしているようだ。
(加奈子さんが補習か……珍しいな)
運動が得意なほうではないが、泳ぐことはできたはずだ。
加奈子さんが最近体調を崩したと聞いた覚えもない……とすると……
たぶん、男には絶対にわからない女の子の日である。
「あっ! これも洗濯ものじゃ――」
脱衣場からゴウゴウと聞こえる洗濯機の音。
立ち上がると同時に加奈子さんのプールバッグを右手に携えていた。
中には大きめの薄ピンクのバスタオルと濃紺の水着が入っている。
キッチリ折り畳まれているところは、几帳面な加奈子さんらしいと言える。
(まだ湿ってるな)
思わずバッグの中の水着に手が伸びてしまう。
ツルツルとした滑らかな生地はまだ水分を帯びている。
姉のパンツを手にした時以上の性衝動に駆られる。
「ダメだ……」
我慢できずにプールバッグから水着を取り出してしまった。
数時間前まで加奈子さんが着用していた水着だ。ワンピース型で校名の刺繍がある。
(戻さないと……)
言葉とは裏腹に鼻元に近づける自分がいる。
どこを嗅いでもプールの塩素の匂いしかしない。
ちなみにプールの匂いというのは、結合塩素という人の汗や汚れが水に溶けて生じたアンモニア性窒素のことだ。だから、このスクール水着に加奈子さんの匂いが付着する可能性は低いはず……
少しばかり罪悪感を感じながら、元通りに水着を畳んでいて気付いた。
加奈子さんは水着を洗濯機に入れ忘れたのではなく、あとで別々に洗うつもりだったのだ。
その部分だけは他の部分と違う匂いがする。
「俺……加奈子さんのこと、女の子のこと、なにもわかってないな……」
裏地に血の付いた水着をプールバッグに戻す。
罪悪感は自責の念に変わった。衝動は情けなさと悲しさに変わる。
鼻腔に残った鉄サビのような匂いがしばらく心を打ち据えた……
背後で脱衣場のドアが開かれたのだ。今、ドアを開くのは加奈子さんしかいない。
「弟君……ここに着替えのシャツ置いておきますね」
「う、うん。ありがとう」
胸元に握り締めていた姉のパンツを洗濯機の中に放り込んだ。振り返る一瞬、消失マジックを披露するかのごとく手首のスナップで洗濯槽にジャストミートさせたのだ。この家の洗濯機が正面開閉のドラム式でよかった。
「リビングに冷たい飲み物を用意してます……弟君、アイス食べますか?」
「アイス食べたい!」
二人で脱衣場を出ようとした時、浴室のドアから姉が顔を出した。
「加奈ちゃんはシャワーしないの?」
「わたしは……花穂さんのあとでいいです」
「いっしょに入ればいいじゃない!」
「はい……」
そういえばこの二人、お泊りの日は子どもの頃からいっしょにお風呂に入っている。今日、加奈子さんがよく笑っていた理由は姉が来るのが楽しみだったからなのだろう。本当に昔から仲のいい親友同士だ。これではどっちが邪魔者なのかわからない。
「花穂姉ちゃん……俺もいるんだからさ、もうちょっと隠せよ」
「いいじゃん。見慣れてるくせに! 加奈ちゃんお湯入れてもいい?」
「あ、はい……大丈夫です。では、わたしも入りますね」
「よし! 俺も入ろうかな!」
「蒼太はハウス!!」
「俺を犬扱いするんじゃないっ!」
釣られ混浴を狙って、姉にハウスと言われるやり取りがたまに発生する。
これをやると加奈子さんにウケがいい。今もクスクスと口元を抑えながら笑っている。
「……弟君。アイスは冷凍庫です。好きなのを食べてくださいね」
「はーい」
脱衣場を出てリビングルームへ入り、キッチンへと向かう。
加奈子邸の冷蔵庫はシルバーの中型のものだ。大きいのはスペースの無駄、小さいのは製氷機能や冷凍機能がないため中型にしたそうだ。
(アイスは……)
下段の冷凍庫を開くと小さなカップアイスが五個並んでいる。
バニラが二個、ストロベリー、チョコチップ、抹茶。一つ二五〇円の高いアイスだ。
どれを食べようか少し迷ったが、バニラ味を手に取った。
リビングのガラステーブルの上にデカンタが見える。
中身はルイボスティーかもしれない。姉が最近ハマっているからだ。
お茶は麦茶に限る。どうもあの変わった風味が慣れない。
★★★
花穂姉ちゃんと加奈子さんがお風呂に入って既に三〇分経過。
女性の買い物とお風呂はなぜこうも長ったらしいのだろうと毎回思う。
「うーん。やっぱり独特の風味」
用意してあった飲み物は予想通りルイボスティーだった。
キンキンに冷えてのどごしは良いが、味や香りが少し苦手だ。
(暇だな……)
ガラステーブルの前でゴロリと横になる。
すると、テーブルの向こう側に加奈子さんの通学鞄が見えた。
そのすぐそばに水色の半透明なボーダー柄のプールバッグが置いてある。
「プールだったのかな?」
この時期の体育の授業はプールだ。これは必修授業で単位を取らないといけない。
今朝、姉はプールバッグを用意していなかった。加奈子さんだけがプールバッグを持っているということは補習である。必修授業は何度か見学や欠席すると補習となる。特にプールの場合は女子の体調も考慮され、その辺りで男子と不公平にならないようにしているようだ。
(加奈子さんが補習か……珍しいな)
運動が得意なほうではないが、泳ぐことはできたはずだ。
加奈子さんが最近体調を崩したと聞いた覚えもない……とすると……
たぶん、男には絶対にわからない女の子の日である。
「あっ! これも洗濯ものじゃ――」
脱衣場からゴウゴウと聞こえる洗濯機の音。
立ち上がると同時に加奈子さんのプールバッグを右手に携えていた。
中には大きめの薄ピンクのバスタオルと濃紺の水着が入っている。
キッチリ折り畳まれているところは、几帳面な加奈子さんらしいと言える。
(まだ湿ってるな)
思わずバッグの中の水着に手が伸びてしまう。
ツルツルとした滑らかな生地はまだ水分を帯びている。
姉のパンツを手にした時以上の性衝動に駆られる。
「ダメだ……」
我慢できずにプールバッグから水着を取り出してしまった。
数時間前まで加奈子さんが着用していた水着だ。ワンピース型で校名の刺繍がある。
(戻さないと……)
言葉とは裏腹に鼻元に近づける自分がいる。
どこを嗅いでもプールの塩素の匂いしかしない。
ちなみにプールの匂いというのは、結合塩素という人の汗や汚れが水に溶けて生じたアンモニア性窒素のことだ。だから、このスクール水着に加奈子さんの匂いが付着する可能性は低いはず……
少しばかり罪悪感を感じながら、元通りに水着を畳んでいて気付いた。
加奈子さんは水着を洗濯機に入れ忘れたのではなく、あとで別々に洗うつもりだったのだ。
その部分だけは他の部分と違う匂いがする。
「俺……加奈子さんのこと、女の子のこと、なにもわかってないな……」
裏地に血の付いた水着をプールバッグに戻す。
罪悪感は自責の念に変わった。衝動は情けなさと悲しさに変わる。
鼻腔に残った鉄サビのような匂いがしばらく心を打ち据えた……
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