178 / 217
【真幕・第1章】あねもね華撃っ 前編!
1.ヤキモキする日常と担任交代ですねっ!
しおりを挟む
※この話から「姉らぶるっ!!真幕」が始まります。
映画の二作目三作目が一作目に劣ったり、アニメの二期が駄作化するように、綺麗に終わらせた物語を続けるのは蛇足です。補完、文章の練習、後日談として執筆していくつもりです。
エロコメから日常・ラブコメ色が強くなると思います。
____________________________________
七月三日。
先週の梅雨入りからまだ一度も雨は降っていない。
いつものようにウェアラブル端末のアラーム音で目が覚めて、次に耳に入ってくる音は姉の生活音である。
両親が海外在住中の我が家の家事全般は次女の花穂が取り仕切る。
俺より一時間ほど早起きして、洗濯をしたり弁当を作ったりと忙しい。
今朝も階下からパタパタと姉の足音が聞こえてくる。
(――いつも通りの朝)
あの日以降、なにか変わったのだろうか。
寝ぼけまなこのまま、あくびをしつつシャツに袖を通して一考する。
紗月姉は夏休みまでは帰らないと言っている。
イタズラや悪ふざけに付き合わされない分、清々するが少し寂しくもある。
花穂姉ちゃんもあれから部屋に侵入しなくなった。
最近は加奈子さんと来栖有紀の三人でいることが多いらしい。
着替えを済ませてウェアラブル端末を装着すると同時にメッセージが届く。
花穂姉ちゃんから朝食の準備完了とのスタンプだ。メッセージを既読にしながら階段をおりていくと、テーブルには既に姉が座っている。女子の夏服は白いブラウスとスカート、男子はワイシャツとスラックスだ。
「おはよう、蒼太」
「おはよう、花穂姉ちゃん」
程よく焼けた薄切り食パンにかじりつく。
少し濃い目で砂糖とミルク多めのホットコーヒーは毎朝の習慣だ。
これを飲んで、パンを咀嚼するうちに目がはっきりと覚める。
「加奈ちゃんとはあれからどうなの?」
「どうって……あれから加奈子さんの近くに姉ちゃんや来栖がいるし……」
加奈子邸ですべての真実を知った。
そして、加奈子さんと気持ちが通じ合っていると確信できた……はずだ。
ところが、俺は肝心な約束をすっ飛ばしている自分にひどく後悔しているのだ。
ちゃんと告白したわけじゃない。交際を申し込んでもいない……
「反対ってわけじゃないんだけどね……」
「うん。言おうとしていることはわかる」
姉二人には俺が代理母出産で加奈子さんと同じ母親から生まれたことを話した。
実の姉弟だと思っていた俺と加奈子さんが、実は従姉弟同士で同じ胎内で育った。
この事実を知った姉二人は驚きと言うより、複雑な表情を浮かべていた。
姉たちが憂慮している部分は血筋云々ではない。加奈子さんと俺の関係性だ。
「父親が兄弟の従姉弟、しかも産みの親は結城藍子さん。代理母とは言え同じお腹で育まれた二人が恋人になる。これがただの従姉弟同士ならいいんだけどね――」
「やっぱり同じ胎内で育つと血縁が濃くなるのかな?」
「うーん。わたしは医学に詳しくないからわかんないよ」
実は少しだけ調べている。いわゆるいとこ婚というやつだ。
近親婚に近く、母親同士が姉妹の場合はより近しい血縁となってしまうらしい。
しかし、俺と加奈子さんは父親同士が兄弟である。
昔は近親同士の結婚で障害を持つ子供が生まれるなどと言われていたが、いとこ婚でそれが起こる可能性は極めて低いという。
「花穂姉ちゃんはさ、俺と加奈子さんが付き合うのイヤ?」
「イヤじゃないよ。賛成も反対もしないけどね」
飲み干したコーヒーカップを置いて姉は一息ついた。
エプロンを椅子に掛け、髪を結び直して登校準備を迅速に済ます。
俺はゆっくりと朝食を続け、皿洗いをして家を出る予定だ。
「姉ちゃ――」
「あ! 有紀ちゃんの家に加奈ちゃん着いたみたい。行ってくるね!」
慌ただしくパタパタとリビングを通り抜けて玄関へ向かって行く。
最近、ずっとこんな感じなのだ。話題が煮詰まってくると姉は逃げる。
そして、会いたい加奈子さんの周囲を守護するようにあの二人がいる……
★★★
住宅街を抜けて学校が近づくと、里志や鈴と出くわす。
くだらない言葉を並べて、笑い合ううちに学校へ到着する。
いつも通りのなんの変化もない日常だと言える。
(これでいいのか?)
加奈子さんとの間は縮まらないまま。関係性も曖昧なまま。
ここ一ヶ月程、誰かが仕組んでいるんじゃないかと邪推するぐらい接点がなかった。
登校は姉と来栖が付き添い、下校もどちらかが付き添うか習い事に行ってしまう。
「まったく……」
花穂姉ちゃんと来栖有紀のことだ。なにか意図があるに違いない。
要するに俺と加奈子さんを接近させないように仕組んでいるのだろう。
一ヶ月は我慢したが、そろそろ現状を打破してもいい頃合だ。
「おーい。蒼太?」
「ん? わっ!」
里志の声で我に返る。
考え事をしているうちに教室内の自分の席に到着していたようだ。
「担任の相野が育休に入るらしいぞ。知ってたか?」
「え? 男の先生でも育休取れるのか?」
「まあ、最近は男でも珍しくないだろ」
相野友久は三七歳の男性教師で担任である。
昨年、結婚したばかりで最近第一子を授かったと人づてに聞いた。
奥さんはそこそこ名のある企業の重役だと自慢していたのを覚えている。
柔らかい言葉遣いとユーモアセンスで人気の高い先生だと言える。
「あれ? それじゃあ担任はどうなるんだ?」
「代打がいるだろ。若い女の先生がいいよな!」
「里志……担任はホームルーム以外接点ないぞ……」
若い女の先生で真っ先に思い浮かんだのは宮本先生だ。
ただ、宮本先生は二年生の体育教師である。一年の担任にはならないはずだ。
育休の話はクラス中の噂になっているようで、みんな代打が誰か気になるようだ。
ざわついていた教室が少しずつ静まっていく頃、相野が教壇の前に立った。
隣りには別の教師が立っている。おそらく、代わりをする担任だろう。
前の席に座る里志が振り返り、満面の笑みでガッツポーズを作る。
俺は静かに首を横に振る。クラスの全員が静まり返ってしまう威圧感。
アタリかハズレで言うと、この代打はハズレだろうな。
(ヤバイのが来た……)
映画の二作目三作目が一作目に劣ったり、アニメの二期が駄作化するように、綺麗に終わらせた物語を続けるのは蛇足です。補完、文章の練習、後日談として執筆していくつもりです。
エロコメから日常・ラブコメ色が強くなると思います。
____________________________________
七月三日。
先週の梅雨入りからまだ一度も雨は降っていない。
いつものようにウェアラブル端末のアラーム音で目が覚めて、次に耳に入ってくる音は姉の生活音である。
両親が海外在住中の我が家の家事全般は次女の花穂が取り仕切る。
俺より一時間ほど早起きして、洗濯をしたり弁当を作ったりと忙しい。
今朝も階下からパタパタと姉の足音が聞こえてくる。
(――いつも通りの朝)
あの日以降、なにか変わったのだろうか。
寝ぼけまなこのまま、あくびをしつつシャツに袖を通して一考する。
紗月姉は夏休みまでは帰らないと言っている。
イタズラや悪ふざけに付き合わされない分、清々するが少し寂しくもある。
花穂姉ちゃんもあれから部屋に侵入しなくなった。
最近は加奈子さんと来栖有紀の三人でいることが多いらしい。
着替えを済ませてウェアラブル端末を装着すると同時にメッセージが届く。
花穂姉ちゃんから朝食の準備完了とのスタンプだ。メッセージを既読にしながら階段をおりていくと、テーブルには既に姉が座っている。女子の夏服は白いブラウスとスカート、男子はワイシャツとスラックスだ。
「おはよう、蒼太」
「おはよう、花穂姉ちゃん」
程よく焼けた薄切り食パンにかじりつく。
少し濃い目で砂糖とミルク多めのホットコーヒーは毎朝の習慣だ。
これを飲んで、パンを咀嚼するうちに目がはっきりと覚める。
「加奈ちゃんとはあれからどうなの?」
「どうって……あれから加奈子さんの近くに姉ちゃんや来栖がいるし……」
加奈子邸ですべての真実を知った。
そして、加奈子さんと気持ちが通じ合っていると確信できた……はずだ。
ところが、俺は肝心な約束をすっ飛ばしている自分にひどく後悔しているのだ。
ちゃんと告白したわけじゃない。交際を申し込んでもいない……
「反対ってわけじゃないんだけどね……」
「うん。言おうとしていることはわかる」
姉二人には俺が代理母出産で加奈子さんと同じ母親から生まれたことを話した。
実の姉弟だと思っていた俺と加奈子さんが、実は従姉弟同士で同じ胎内で育った。
この事実を知った姉二人は驚きと言うより、複雑な表情を浮かべていた。
姉たちが憂慮している部分は血筋云々ではない。加奈子さんと俺の関係性だ。
「父親が兄弟の従姉弟、しかも産みの親は結城藍子さん。代理母とは言え同じお腹で育まれた二人が恋人になる。これがただの従姉弟同士ならいいんだけどね――」
「やっぱり同じ胎内で育つと血縁が濃くなるのかな?」
「うーん。わたしは医学に詳しくないからわかんないよ」
実は少しだけ調べている。いわゆるいとこ婚というやつだ。
近親婚に近く、母親同士が姉妹の場合はより近しい血縁となってしまうらしい。
しかし、俺と加奈子さんは父親同士が兄弟である。
昔は近親同士の結婚で障害を持つ子供が生まれるなどと言われていたが、いとこ婚でそれが起こる可能性は極めて低いという。
「花穂姉ちゃんはさ、俺と加奈子さんが付き合うのイヤ?」
「イヤじゃないよ。賛成も反対もしないけどね」
飲み干したコーヒーカップを置いて姉は一息ついた。
エプロンを椅子に掛け、髪を結び直して登校準備を迅速に済ます。
俺はゆっくりと朝食を続け、皿洗いをして家を出る予定だ。
「姉ちゃ――」
「あ! 有紀ちゃんの家に加奈ちゃん着いたみたい。行ってくるね!」
慌ただしくパタパタとリビングを通り抜けて玄関へ向かって行く。
最近、ずっとこんな感じなのだ。話題が煮詰まってくると姉は逃げる。
そして、会いたい加奈子さんの周囲を守護するようにあの二人がいる……
★★★
住宅街を抜けて学校が近づくと、里志や鈴と出くわす。
くだらない言葉を並べて、笑い合ううちに学校へ到着する。
いつも通りのなんの変化もない日常だと言える。
(これでいいのか?)
加奈子さんとの間は縮まらないまま。関係性も曖昧なまま。
ここ一ヶ月程、誰かが仕組んでいるんじゃないかと邪推するぐらい接点がなかった。
登校は姉と来栖が付き添い、下校もどちらかが付き添うか習い事に行ってしまう。
「まったく……」
花穂姉ちゃんと来栖有紀のことだ。なにか意図があるに違いない。
要するに俺と加奈子さんを接近させないように仕組んでいるのだろう。
一ヶ月は我慢したが、そろそろ現状を打破してもいい頃合だ。
「おーい。蒼太?」
「ん? わっ!」
里志の声で我に返る。
考え事をしているうちに教室内の自分の席に到着していたようだ。
「担任の相野が育休に入るらしいぞ。知ってたか?」
「え? 男の先生でも育休取れるのか?」
「まあ、最近は男でも珍しくないだろ」
相野友久は三七歳の男性教師で担任である。
昨年、結婚したばかりで最近第一子を授かったと人づてに聞いた。
奥さんはそこそこ名のある企業の重役だと自慢していたのを覚えている。
柔らかい言葉遣いとユーモアセンスで人気の高い先生だと言える。
「あれ? それじゃあ担任はどうなるんだ?」
「代打がいるだろ。若い女の先生がいいよな!」
「里志……担任はホームルーム以外接点ないぞ……」
若い女の先生で真っ先に思い浮かんだのは宮本先生だ。
ただ、宮本先生は二年生の体育教師である。一年の担任にはならないはずだ。
育休の話はクラス中の噂になっているようで、みんな代打が誰か気になるようだ。
ざわついていた教室が少しずつ静まっていく頃、相野が教壇の前に立った。
隣りには別の教師が立っている。おそらく、代わりをする担任だろう。
前の席に座る里志が振り返り、満面の笑みでガッツポーズを作る。
俺は静かに首を横に振る。クラスの全員が静まり返ってしまう威圧感。
アタリかハズレで言うと、この代打はハズレだろうな。
(ヤバイのが来た……)
0
お気に入りに追加
924
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。


転校して来た美少女が前幼なじみだった件。
ながしょー
青春
ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。
このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。


手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる