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【本幕・第12章】清廉な加奈子さんっ
1.姉と一緒に姉の部屋へ行ってきますっ!
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波風の立たない穏やかな日々が数日過ぎ、金曜の夕方を迎えた。
リビングで花穂姉ちゃんが、お泊りの準備の最中だ。
上は白の半袖カットソー、下はライトグレーのフレアスカートを着用している。
俺の服装が、白いシャツとライトグレーのチノパン。
微妙に色がかぶってしまったが、気にしないでおこう。
いつもの加奈子邸へのお泊りは、車でのお迎えが来る。
姉はそれを上手に固辞して、俺と自転車でマンションまで行く手筈だ。
タイミングを見計らって、姉は理由をつけて一旦帰宅する。
俺は加奈子さんにDNA鑑定書を見せて、話を聞き出す。
加奈子さんが知らない事情なら、当人である結城藍子さんに直に聞くしかない。
「姉ちゃん、用意するのが長い!」
「蒼太の荷物が少な過ぎるだけでしょ!」
女の子のお泊りセットは、なぜにこうも大荷物になるのか。
姉はお気に入りの下着セットや、ヘアーケア用品を詰めている。
花穂姉ちゃんのお泊りの準備を待っていると、端末にメッセージが入った。
来栖からのメールだ。『一人で外に出て来てほしい』と書いてある。
俺はさり気なく、トイレに行くフリをしながら玄関から外へ出た。
門の前に学校モードの来栖有紀が、制服姿で立っている。
「蒼太君。これも、前に言ったことなんだけどね」
「なんだ?」
「『ゴムつきソータセージチュパラブ作戦』を覚えてる?」
凄まじいネーミングセンスだけあって、記憶に焼きついて離れない。
ただ、作戦の内容までは、詳しく覚えていないようだ。
「お前、あのときはこう言ったぞ。青山姉妹との『関係のデフォルト計画』を実行するための最後の手段が『ゴムつきソータセージチュパラブ作戦』だって。これだと、ブラコンに花穂姉ちゃんも入ってるよな?」
「花穂さんは、ブラコンではないわ。でもね、蒼太君といる時間が一番長い。加奈子さんの邪魔をするために、体を張って君と接触していた。年頃の男女がこれほど近い距離感を保つ意味がわかる?」
「つまり、花穂姉ちゃんはワザとブラコンを装っているうちに、気持ちが揺らぎ始めているかもしれないってことだろ?」
「そうよ。大事なのは、蒼太君の意思。三人の姉のペースに乗らないこと」
来栖が俺の胸に、ポコンと軽く拳を当てる。
もう一方の手で、スカートのポケットから魚肉ソーセージを取り出した。
胸元に当てられた拳を開くと、コンドームが二個。
二つのアイテムが俺の手に渡される。
「おい。これって本当に意味あるのか……」
「あくまでも対抗手段で最終手段。予防、防御の策だと思って」
『ゴムつきソータセージチュパラブ作戦』の全容。
ブラコン姉が、いよいよ性行為を迫って来たときの対処法だ。
ソーセージを偽チンコに見立てて、興奮しているフリをする。
一見、あっさりバレそうな作戦だが、相手は性経験がない姉たちだ。
部屋を暗くしてしまえば、一度ぐらい誤魔化せるかもしれない。
重要なのは、挿入せずに先に射精して終わらせてしまうことだ。
これで相手の本気度をうかがうことができる。
「いろいろ悪いな」
「わたしもなにか見返りを要求しようかしら?」
「よし、いいぞ。ブルマでもスク水でも来い!」
「それ、蒼太君が要求してるじゃない……」
玄関の内側で姉がパタパタと走る音が聞こえる。
もうすぐ出てくるようだ。来栖はその音を聞いて、自宅の方へ歩き出した。
「来栖。帰ったら報告しに行くからな」
「気をつけて。報告を待ってるわ」
◇◇◇
自転車で青山家から結城家のマンションへ向かう。
花穂姉ちゃんとこうして自転車で移動するのは久しぶりだ。
住宅街の狭い道を抜けて、国道へ出る。
「姉ちゃん、どんな理由で一旦家に戻る?」
「そうね……あっ!!」
「どうしたんだ?」
「別の鞄に入れた着替え全部忘れた!」
「それ、ワザと忘れたの? 本気のど忘れ?」
隣りで風を切って颯爽と自転車をこぐ姉がニヤリと笑みを浮かべる。
やはり、来栖も花穂姉ちゃんも策士だ。手抜かりはない。
国道に出て真っ直ぐ一分程進むと、結城家のマンションが見えてくる。
広い駐輪場に姉と自転車を置いて、エントランスへ向かった。
花穂姉ちゃんが加奈子邸の呼び鈴を鳴らす。
二度目を鳴らしたあと、加奈子さんの声が聞こえて来た。
「ロック開けますね……どうぞ、上がってきてください」
正面の自動ドアが開き、中へ入ってエレベーターを待った。
これからなにが起こるのか、なにを聞かされるのだろうか。
エレベーター内の鏡に映った自分の顔が、いつもと違って見える。
「蒼太。加奈ちゃんは、繊細で気の小さい子なの。一番の親友だから、今までキツイことも言えなかった。だから、今回も穏便に済ませたいと思ってる。勝手なお願いだけど――」
「わかってるよ。加奈子さんは絶対に傷つけない。誰も傷つかない」
もし、心に傷を作る人間がいるとしたら……
それはもう、俺だけで充分だ。ただ、真実のみ知りたい。
俺と花穂姉ちゃんは、加奈子邸のドアを開いた。
リビングで花穂姉ちゃんが、お泊りの準備の最中だ。
上は白の半袖カットソー、下はライトグレーのフレアスカートを着用している。
俺の服装が、白いシャツとライトグレーのチノパン。
微妙に色がかぶってしまったが、気にしないでおこう。
いつもの加奈子邸へのお泊りは、車でのお迎えが来る。
姉はそれを上手に固辞して、俺と自転車でマンションまで行く手筈だ。
タイミングを見計らって、姉は理由をつけて一旦帰宅する。
俺は加奈子さんにDNA鑑定書を見せて、話を聞き出す。
加奈子さんが知らない事情なら、当人である結城藍子さんに直に聞くしかない。
「姉ちゃん、用意するのが長い!」
「蒼太の荷物が少な過ぎるだけでしょ!」
女の子のお泊りセットは、なぜにこうも大荷物になるのか。
姉はお気に入りの下着セットや、ヘアーケア用品を詰めている。
花穂姉ちゃんのお泊りの準備を待っていると、端末にメッセージが入った。
来栖からのメールだ。『一人で外に出て来てほしい』と書いてある。
俺はさり気なく、トイレに行くフリをしながら玄関から外へ出た。
門の前に学校モードの来栖有紀が、制服姿で立っている。
「蒼太君。これも、前に言ったことなんだけどね」
「なんだ?」
「『ゴムつきソータセージチュパラブ作戦』を覚えてる?」
凄まじいネーミングセンスだけあって、記憶に焼きついて離れない。
ただ、作戦の内容までは、詳しく覚えていないようだ。
「お前、あのときはこう言ったぞ。青山姉妹との『関係のデフォルト計画』を実行するための最後の手段が『ゴムつきソータセージチュパラブ作戦』だって。これだと、ブラコンに花穂姉ちゃんも入ってるよな?」
「花穂さんは、ブラコンではないわ。でもね、蒼太君といる時間が一番長い。加奈子さんの邪魔をするために、体を張って君と接触していた。年頃の男女がこれほど近い距離感を保つ意味がわかる?」
「つまり、花穂姉ちゃんはワザとブラコンを装っているうちに、気持ちが揺らぎ始めているかもしれないってことだろ?」
「そうよ。大事なのは、蒼太君の意思。三人の姉のペースに乗らないこと」
来栖が俺の胸に、ポコンと軽く拳を当てる。
もう一方の手で、スカートのポケットから魚肉ソーセージを取り出した。
胸元に当てられた拳を開くと、コンドームが二個。
二つのアイテムが俺の手に渡される。
「おい。これって本当に意味あるのか……」
「あくまでも対抗手段で最終手段。予防、防御の策だと思って」
『ゴムつきソータセージチュパラブ作戦』の全容。
ブラコン姉が、いよいよ性行為を迫って来たときの対処法だ。
ソーセージを偽チンコに見立てて、興奮しているフリをする。
一見、あっさりバレそうな作戦だが、相手は性経験がない姉たちだ。
部屋を暗くしてしまえば、一度ぐらい誤魔化せるかもしれない。
重要なのは、挿入せずに先に射精して終わらせてしまうことだ。
これで相手の本気度をうかがうことができる。
「いろいろ悪いな」
「わたしもなにか見返りを要求しようかしら?」
「よし、いいぞ。ブルマでもスク水でも来い!」
「それ、蒼太君が要求してるじゃない……」
玄関の内側で姉がパタパタと走る音が聞こえる。
もうすぐ出てくるようだ。来栖はその音を聞いて、自宅の方へ歩き出した。
「来栖。帰ったら報告しに行くからな」
「気をつけて。報告を待ってるわ」
◇◇◇
自転車で青山家から結城家のマンションへ向かう。
花穂姉ちゃんとこうして自転車で移動するのは久しぶりだ。
住宅街の狭い道を抜けて、国道へ出る。
「姉ちゃん、どんな理由で一旦家に戻る?」
「そうね……あっ!!」
「どうしたんだ?」
「別の鞄に入れた着替え全部忘れた!」
「それ、ワザと忘れたの? 本気のど忘れ?」
隣りで風を切って颯爽と自転車をこぐ姉がニヤリと笑みを浮かべる。
やはり、来栖も花穂姉ちゃんも策士だ。手抜かりはない。
国道に出て真っ直ぐ一分程進むと、結城家のマンションが見えてくる。
広い駐輪場に姉と自転車を置いて、エントランスへ向かった。
花穂姉ちゃんが加奈子邸の呼び鈴を鳴らす。
二度目を鳴らしたあと、加奈子さんの声が聞こえて来た。
「ロック開けますね……どうぞ、上がってきてください」
正面の自動ドアが開き、中へ入ってエレベーターを待った。
これからなにが起こるのか、なにを聞かされるのだろうか。
エレベーター内の鏡に映った自分の顔が、いつもと違って見える。
「蒼太。加奈ちゃんは、繊細で気の小さい子なの。一番の親友だから、今までキツイことも言えなかった。だから、今回も穏便に済ませたいと思ってる。勝手なお願いだけど――」
「わかってるよ。加奈子さんは絶対に傷つけない。誰も傷つかない」
もし、心に傷を作る人間がいるとしたら……
それはもう、俺だけで充分だ。ただ、真実のみ知りたい。
俺と花穂姉ちゃんは、加奈子邸のドアを開いた。
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