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【本幕・第11章】あねまっくす真撃っ 後編!
5.姉の手料理で手打ちとなりましたねっ!
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ふてくされて自室のベッドに寝転びながら、DNA鑑定書に目を通す。
何度見ても結果は同じ。結城海斗と青山蒼太は父子であると明記されている。
加奈子さんの伯父で、来栖の養親、俺の実父、塁姉の雇い主。
結城ソフトウェア開発の経営者で、海外出張も多いと言う。
結城海斗なる人物と関わった記憶が微塵もない。
(実はこの鑑定書、間違いだったりしてな)
来栖有紀は、なんの根拠があって、俺と結城海斗のDNA鑑定をしたのか。
肝心なことを聞く前に感情的になり、リビングを出てしまった。
「蒼太君。入っていいかしら?」
コンコンと部屋のドアをノックする音がする。
ドアの向こうに来栖がいる。あいつが俺の部屋に来るのは初めてだ。
「いいぞ。勝手に入れよ」
「ずいぶん、ぶっきらぼうな言い方ね……」
来栖がドアを開いて部屋に入る。物珍しそうに壁や家具を見ている。
部屋の匂いを嗅いでいるのか、鼻をスンスンと鳴らす。
こちらに歩み寄って、ベッドに腰掛けて来た。
「半分怒ってるんだけど、半分は喜んでる。なぜかわかるか?」
「どう見ても、今のあなたは怒ってるじゃない……」
「お前が花穂姉ちゃんと通じてたことだよ。来栖の歩く背中は、いつ見ても寂しかった。孤独を埋めてあげたいと思っていたからな。実際はどうだ? 御子柴先輩に花穂姉ちゃんもいる。お前は俺が思っていた程、孤独ではなかった」
「それが嬉しいの?」
「ああ。全然仲良しには見えないけど、花穂姉ちゃんに協力してくれて感謝する」
起き上がって座したまま、ペコリと来栖に礼をする。
こいつには、中間テスト学年五位の快挙をいただいた。
テスト勉強どころか、食事と発射のお世話もしてもらった。
「疑問に思ってる? なぜ、蒼太君と父のDNA鑑定をしたのか?」
「ちょうど、それを聞きたかったんだよ」
「単純な理由よ。似過ぎてるの! 初めて蒼太君を見たとき、養父とそっくりだと思ったわ。バルコニーから時折見ていたの。歩き方や声、仕草なんかも似てるの」
「なら、もっと早くに花穂姉ちゃんに頼めばよかったのに……」
「それには二つ理由があるわ。一つは自分だけ知る事実にしたかった」
「もう一つは?」
「直接、蒼太君からサンプルを採取したかった!」
来栖有紀の頭に、ポコッと軽いチョップでツッコミを入れる。
「おい。サンプルってあれだよな? 綿棒で口の中――」
「口腔内粘膜と毛髪と、ブルマにたっぷり付着した精液ねっ!」
「この変態女……」
「鑑定は最速五日で可能だからね」
話しているうちに溜飲が下がったのか、心持ちが軽やかになっていた。
やっぱり、来栖有紀は変な奴だ。理解しようとするのは、雲を掴むが如し。
「あれ? 花穂姉ちゃんはいないのか?」
「夕飯の準備するみたいよ。今夜はわたしもご一緒みたい」
「そうか。じゃあ、俺も手伝うかな……」
「さっき、花穂さんに頼まれたわ。弟の話を聞いてやってほしいと」
「なんだかんだ言って、仲良しだな……」
うちの姉二人は友人が多い。持ち前の明るさと面倒見の良さのおかげだ。
だから、来栖有紀のような転校生の一人ぼっちを絶対に放っておかない。
「ねえ。蒼太君の部屋精液臭いわ。せめて、三日に一回にしなさい」
「余計なお世話だっ!」
「今日は、ごめんなさい。なにをどう謝ればいいのかわからないけど……」
来栖は俺の頭をスリスリと撫でる。撫で過ぎて髪がクシャクシャになる。
お姉さんぶっているが、顔が幼いせいで子供にじゃれられている気分だ。
◇◇◇
午後七時前。来栖を交えて三人で食事をすることになった。
花穂姉ちゃんの隣りの席に来栖が座る。俺は向かいの席に座った。
さっきの重苦しい雰囲気を覚悟していたが、姉と来栖は普通に会話している。
「有紀ちゃんてさ、英語は満点取るよね。わたしの苦手科目!」
「そうね。母国語だから解くと言うより、読むだけの感覚なの」
今夜はきんぴらごぼうとポテトサラダ、揚げたてのコロッケがメインだ。
豆腐とワカメの味噌汁は、即席っぽい味がする。
来栖に得意料理を食べさせてやろうと思ったのだろう。
姉が作るコロッケは、マヨネーズ入りで柔らかくて美味しい。
「姉ちゃん。さっきは声を荒らげて悪かった」
「ううん。あれでいいんだって! 蒼太はもっと感情を出さないとねっ」
「花穂さんの言う通りね。君は照れないと言ったでしょう? あれは感情表現が乏しいってことでもあるの」
「俺が? 感情表現ねぇ……してるつもりだけどなぁ」
「蒼太君の場合、欲望表現だけは凄まじいわ」
来栖がそう言うと、花穂姉ちゃんと目を合わせウンウンとうなづく。
たった数時間で、この二人の関係も少し変わったように思える。
「来栖はコロッケ作れるのか?」
「あれほど面白いモノマネ師を人造するとなると難しいわ」
「よし、お前がコロッケを作れないことは把握した!」
「ぷっ! 有紀ちゃんにやっと一個勝てた気がする」
話しているうちに、来栖の顔にも笑顔が見えるようになった。
俺が二人の会話に割り込んで、的確にツッコミを入れる。
実に和やかで楽しい食事会になったものだ。
三人がほぼ同時に夕飯を終える頃、テーブルの上の姉のスマホが鳴った。
視線がスマホに集中する。メッセージ受信、送り主は加奈子さんだ。
「花穂姉ちゃん、もう連絡してたのか?」
「うん。週末にお泊り行っていいかなって? 蒼太も遊びに行くって言った」
「返信はなんて来たんだ?」
「オッケーだって!」
これで約束は取りつけた。あとは話の切り出し方やタイミングの問題だ。
俺が知らない加奈子さんの一面を見たいという好奇心もある。
何度見ても結果は同じ。結城海斗と青山蒼太は父子であると明記されている。
加奈子さんの伯父で、来栖の養親、俺の実父、塁姉の雇い主。
結城ソフトウェア開発の経営者で、海外出張も多いと言う。
結城海斗なる人物と関わった記憶が微塵もない。
(実はこの鑑定書、間違いだったりしてな)
来栖有紀は、なんの根拠があって、俺と結城海斗のDNA鑑定をしたのか。
肝心なことを聞く前に感情的になり、リビングを出てしまった。
「蒼太君。入っていいかしら?」
コンコンと部屋のドアをノックする音がする。
ドアの向こうに来栖がいる。あいつが俺の部屋に来るのは初めてだ。
「いいぞ。勝手に入れよ」
「ずいぶん、ぶっきらぼうな言い方ね……」
来栖がドアを開いて部屋に入る。物珍しそうに壁や家具を見ている。
部屋の匂いを嗅いでいるのか、鼻をスンスンと鳴らす。
こちらに歩み寄って、ベッドに腰掛けて来た。
「半分怒ってるんだけど、半分は喜んでる。なぜかわかるか?」
「どう見ても、今のあなたは怒ってるじゃない……」
「お前が花穂姉ちゃんと通じてたことだよ。来栖の歩く背中は、いつ見ても寂しかった。孤独を埋めてあげたいと思っていたからな。実際はどうだ? 御子柴先輩に花穂姉ちゃんもいる。お前は俺が思っていた程、孤独ではなかった」
「それが嬉しいの?」
「ああ。全然仲良しには見えないけど、花穂姉ちゃんに協力してくれて感謝する」
起き上がって座したまま、ペコリと来栖に礼をする。
こいつには、中間テスト学年五位の快挙をいただいた。
テスト勉強どころか、食事と発射のお世話もしてもらった。
「疑問に思ってる? なぜ、蒼太君と父のDNA鑑定をしたのか?」
「ちょうど、それを聞きたかったんだよ」
「単純な理由よ。似過ぎてるの! 初めて蒼太君を見たとき、養父とそっくりだと思ったわ。バルコニーから時折見ていたの。歩き方や声、仕草なんかも似てるの」
「なら、もっと早くに花穂姉ちゃんに頼めばよかったのに……」
「それには二つ理由があるわ。一つは自分だけ知る事実にしたかった」
「もう一つは?」
「直接、蒼太君からサンプルを採取したかった!」
来栖有紀の頭に、ポコッと軽いチョップでツッコミを入れる。
「おい。サンプルってあれだよな? 綿棒で口の中――」
「口腔内粘膜と毛髪と、ブルマにたっぷり付着した精液ねっ!」
「この変態女……」
「鑑定は最速五日で可能だからね」
話しているうちに溜飲が下がったのか、心持ちが軽やかになっていた。
やっぱり、来栖有紀は変な奴だ。理解しようとするのは、雲を掴むが如し。
「あれ? 花穂姉ちゃんはいないのか?」
「夕飯の準備するみたいよ。今夜はわたしもご一緒みたい」
「そうか。じゃあ、俺も手伝うかな……」
「さっき、花穂さんに頼まれたわ。弟の話を聞いてやってほしいと」
「なんだかんだ言って、仲良しだな……」
うちの姉二人は友人が多い。持ち前の明るさと面倒見の良さのおかげだ。
だから、来栖有紀のような転校生の一人ぼっちを絶対に放っておかない。
「ねえ。蒼太君の部屋精液臭いわ。せめて、三日に一回にしなさい」
「余計なお世話だっ!」
「今日は、ごめんなさい。なにをどう謝ればいいのかわからないけど……」
来栖は俺の頭をスリスリと撫でる。撫で過ぎて髪がクシャクシャになる。
お姉さんぶっているが、顔が幼いせいで子供にじゃれられている気分だ。
◇◇◇
午後七時前。来栖を交えて三人で食事をすることになった。
花穂姉ちゃんの隣りの席に来栖が座る。俺は向かいの席に座った。
さっきの重苦しい雰囲気を覚悟していたが、姉と来栖は普通に会話している。
「有紀ちゃんてさ、英語は満点取るよね。わたしの苦手科目!」
「そうね。母国語だから解くと言うより、読むだけの感覚なの」
今夜はきんぴらごぼうとポテトサラダ、揚げたてのコロッケがメインだ。
豆腐とワカメの味噌汁は、即席っぽい味がする。
来栖に得意料理を食べさせてやろうと思ったのだろう。
姉が作るコロッケは、マヨネーズ入りで柔らかくて美味しい。
「姉ちゃん。さっきは声を荒らげて悪かった」
「ううん。あれでいいんだって! 蒼太はもっと感情を出さないとねっ」
「花穂さんの言う通りね。君は照れないと言ったでしょう? あれは感情表現が乏しいってことでもあるの」
「俺が? 感情表現ねぇ……してるつもりだけどなぁ」
「蒼太君の場合、欲望表現だけは凄まじいわ」
来栖がそう言うと、花穂姉ちゃんと目を合わせウンウンとうなづく。
たった数時間で、この二人の関係も少し変わったように思える。
「来栖はコロッケ作れるのか?」
「あれほど面白いモノマネ師を人造するとなると難しいわ」
「よし、お前がコロッケを作れないことは把握した!」
「ぷっ! 有紀ちゃんにやっと一個勝てた気がする」
話しているうちに、来栖の顔にも笑顔が見えるようになった。
俺が二人の会話に割り込んで、的確にツッコミを入れる。
実に和やかで楽しい食事会になったものだ。
三人がほぼ同時に夕飯を終える頃、テーブルの上の姉のスマホが鳴った。
視線がスマホに集中する。メッセージ受信、送り主は加奈子さんだ。
「花穂姉ちゃん、もう連絡してたのか?」
「うん。週末にお泊り行っていいかなって? 蒼太も遊びに行くって言った」
「返信はなんて来たんだ?」
「オッケーだって!」
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