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【本幕・第11章】あねまっくす真撃っ 後編!
3.姉の目的を知って驚くばかりですよっ!
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「昔からカエルや爬虫類は超苦手だったけど……なんで、花穂姉ちゃんと四条先輩が気持ち悪いカエルのお肌になるんだ? 俺、加奈子さんが言ってる意味わからない」
困惑する俺の表情を見ながら、姉は一息ついて立ち上がった。
背伸びとアクビをしながら部屋のドアの方へ歩いて行く。
「下でお茶飲もうよ。蒼太はアイスコーヒーでいい?」
「ああ、うん……」
花穂姉ちゃんは軽快に階段を降りていく。
俺の足取りは重い。知らない方が幸せなことって、本当にあるのかもしれない。
「はい。アイスコーヒーねっ」
「あのさ、さっきの話の続きだけど――」
「サブリミナルとか暗示って言うらしいよ。人間の聴覚って、眠っているときも働いてるの。だから、蒼太は寝ていても、脳は加奈ちゃんの声を拾ってる。さっき見せた動画のようにね」
キッチンテーブルに姉と向かい合う形で座り、氷入りのアイスコーヒーを飲む。
「それは無理があるだろ? 暗示は繰り返してないと無理だ」
「小さい頃から繰り返しているとしたら?」
「嘘だろ!? そんな記憶ない……」
俺の記憶はアテにならない。刺激的な出来事や高熱で記憶が飛ぶからだ。
加奈子さんの飴玉口移しでさえ、記憶の片隅で消えかけていた。
「蒼太、記憶がなくても証拠があるじゃない」
「証拠?」
「お姉ちゃんの肌に触れると、残念無念蒼太チンになる!」
花穂姉ちゃんの肌に触れて反応しないのは、強い母性を感じているからだと思っていた。ただ、四条先輩にも同じ現象が起こったのだ。競泳水着に触れると興奮するのに、直接肌に触ると萎えてしまう。
「じゃあ、俺は姉ちゃんと四条先輩の肌に、苦手意識をすり込まれてるのか?」
「四条先輩は小さい頃から蒼太が好きだった。控えめな性格で周囲は気づいてなかったけどね。わたしと加奈ちゃんは敏感にそれを感じ取った」
「だから、暗示に春香ちゃんを加えたのか……」
先日、紗月姉に俺はこう言った。花穂姉ちゃんの行動理念がわからないと……
今度は、実の姉である結城加奈子さんの行動がまったく読めない。
「五月六日、わたしは鈴ちゃんと遊びに出掛けた。蒼太はどこにいた?」
「俺は……加奈子さんが琴を聞いて欲しいって言うから……」
「うん。蒼太を部屋に招待したことは本人から聞いてる」
「なんだ。加奈子さんが報告してるならいいじゃないか」
「弟君とお昼を食べて、琴を聞いてもらいました……だけね」
確かに昼食を食べて、琴を何曲か聞いた。
加奈子さんの報告に偽りはないが、なにか腑に落ちない部分がある。
「そうだ! あの日、俺が少し早めに行ったのが悪かったのか、玄関開けると加奈子さん湯上りでバスタオル一枚だったな」
「あのマンションの入口には、部屋ごとのインターホンがあるのに? 疑問に思わない? 蒼太がすぐに上がって来るのをわかっていて、そんなあられもない姿でいるんだよ?」
「そんな……あれもワザとだって言うのか?」
「他に気づいたことはない? そのあと、加奈ちゃんは着替えたんだよね?」
今日は花穂姉ちゃんのブラコン行為について話し合う予定だったが……
なぜか、取調室のような雰囲気になってしまった。
「ベッドルームで着替えてたんだ。でも、姿見の前で着替えて……意図せずに俺は加奈子さんの裸を見てしまったぞ。あれは仕方ないことだろ?」
「ないよ! 加奈ちゃんのベッドルームに姿見なんて置いてないっ!」
「いやいや。あの日、置いてあったぞ」
「わたしが何回お泊りに行ってると思ってんの? 昨日もその前もなかったの!」
「わざわざ俺に裸をご披露するために用意したってのか!? 冗談だろ……」
花穂姉ちゃんは静かにコクリとうなづいた。
姿見でこちらから見えるということは、あちらも鏡越しにこちらが見える。
俺のチラ見を、加奈子さんは気づいていたことになる。
見られているとわかった上で、その場で着替えだしたのだ。
「加奈ちゃんは、小さい頃から蒼太の気持ちが自分に向いてると知ってる」
「言われてみると、加奈子さんには複雑な思いがある」
「その曖昧な感情が恋愛なの。蒼太は実の姉と愛し合うの? 同じ親から産まれたんだよ! そんな二人が付き合って、キスして、セックスもするんだよ!? 気持ち悪いよ!!」
珍しく花穂姉ちゃんが、怒気を含んだ声を張り上げた。
当初の目的である姉たちのブラコン行為をデフォルトする作戦から、ずいぶん脱線してしまったようだ。姉の思い込みや心配を先に解消する必要がある。
「いいか、花穂姉ちゃん。俺と加奈子さんは姉弟だ。結ばれることは、絶対にない! 昨日、紗月姉にも言ったけど、戸籍上姉弟である姉ちゃんたちとも結ばれることはない!」
「紗月姉の蒼太へのマジ惚れは……唯一の誤算だった」
その誤算のせいで、花穂姉ちゃんは憂慮すべきことが一つ増えた。
紗月姉は俺の欲望を鷲掴みにして、寸止め行為にまで発展したのだ。
初めて味合う肉体的な快楽に、俺は欲のままに流された。
「誤算って……なにもかも計算づくみたいに言うんだな」
「どうして加奈ちゃんを副会長に無理矢理指名したかわかる?」
「監視……なのか……」
「そうだよ。蒼太と帰らせる日もあったけど、ずっと監視してたの」
「ずっと? 帰り道に姉ちゃんが尾行してたのかよ……」
「蒼太。なにか重要なことを見落としてない?」
テーブルの上に置いたスマホを手に持って、姉はメールを打ち始める。
「見落とす?」
「現生徒会役員は、わたしの意思で集めたの」
程なくして玄関が開かれる音が聞こえた。
なんの挨拶もなしに家に入って来る足音がする。
リビングルームのドアが開かれたとき、俺は愕然とした……
困惑する俺の表情を見ながら、姉は一息ついて立ち上がった。
背伸びとアクビをしながら部屋のドアの方へ歩いて行く。
「下でお茶飲もうよ。蒼太はアイスコーヒーでいい?」
「ああ、うん……」
花穂姉ちゃんは軽快に階段を降りていく。
俺の足取りは重い。知らない方が幸せなことって、本当にあるのかもしれない。
「はい。アイスコーヒーねっ」
「あのさ、さっきの話の続きだけど――」
「サブリミナルとか暗示って言うらしいよ。人間の聴覚って、眠っているときも働いてるの。だから、蒼太は寝ていても、脳は加奈ちゃんの声を拾ってる。さっき見せた動画のようにね」
キッチンテーブルに姉と向かい合う形で座り、氷入りのアイスコーヒーを飲む。
「それは無理があるだろ? 暗示は繰り返してないと無理だ」
「小さい頃から繰り返しているとしたら?」
「嘘だろ!? そんな記憶ない……」
俺の記憶はアテにならない。刺激的な出来事や高熱で記憶が飛ぶからだ。
加奈子さんの飴玉口移しでさえ、記憶の片隅で消えかけていた。
「蒼太、記憶がなくても証拠があるじゃない」
「証拠?」
「お姉ちゃんの肌に触れると、残念無念蒼太チンになる!」
花穂姉ちゃんの肌に触れて反応しないのは、強い母性を感じているからだと思っていた。ただ、四条先輩にも同じ現象が起こったのだ。競泳水着に触れると興奮するのに、直接肌に触ると萎えてしまう。
「じゃあ、俺は姉ちゃんと四条先輩の肌に、苦手意識をすり込まれてるのか?」
「四条先輩は小さい頃から蒼太が好きだった。控えめな性格で周囲は気づいてなかったけどね。わたしと加奈ちゃんは敏感にそれを感じ取った」
「だから、暗示に春香ちゃんを加えたのか……」
先日、紗月姉に俺はこう言った。花穂姉ちゃんの行動理念がわからないと……
今度は、実の姉である結城加奈子さんの行動がまったく読めない。
「五月六日、わたしは鈴ちゃんと遊びに出掛けた。蒼太はどこにいた?」
「俺は……加奈子さんが琴を聞いて欲しいって言うから……」
「うん。蒼太を部屋に招待したことは本人から聞いてる」
「なんだ。加奈子さんが報告してるならいいじゃないか」
「弟君とお昼を食べて、琴を聞いてもらいました……だけね」
確かに昼食を食べて、琴を何曲か聞いた。
加奈子さんの報告に偽りはないが、なにか腑に落ちない部分がある。
「そうだ! あの日、俺が少し早めに行ったのが悪かったのか、玄関開けると加奈子さん湯上りでバスタオル一枚だったな」
「あのマンションの入口には、部屋ごとのインターホンがあるのに? 疑問に思わない? 蒼太がすぐに上がって来るのをわかっていて、そんなあられもない姿でいるんだよ?」
「そんな……あれもワザとだって言うのか?」
「他に気づいたことはない? そのあと、加奈ちゃんは着替えたんだよね?」
今日は花穂姉ちゃんのブラコン行為について話し合う予定だったが……
なぜか、取調室のような雰囲気になってしまった。
「ベッドルームで着替えてたんだ。でも、姿見の前で着替えて……意図せずに俺は加奈子さんの裸を見てしまったぞ。あれは仕方ないことだろ?」
「ないよ! 加奈ちゃんのベッドルームに姿見なんて置いてないっ!」
「いやいや。あの日、置いてあったぞ」
「わたしが何回お泊りに行ってると思ってんの? 昨日もその前もなかったの!」
「わざわざ俺に裸をご披露するために用意したってのか!? 冗談だろ……」
花穂姉ちゃんは静かにコクリとうなづいた。
姿見でこちらから見えるということは、あちらも鏡越しにこちらが見える。
俺のチラ見を、加奈子さんは気づいていたことになる。
見られているとわかった上で、その場で着替えだしたのだ。
「加奈ちゃんは、小さい頃から蒼太の気持ちが自分に向いてると知ってる」
「言われてみると、加奈子さんには複雑な思いがある」
「その曖昧な感情が恋愛なの。蒼太は実の姉と愛し合うの? 同じ親から産まれたんだよ! そんな二人が付き合って、キスして、セックスもするんだよ!? 気持ち悪いよ!!」
珍しく花穂姉ちゃんが、怒気を含んだ声を張り上げた。
当初の目的である姉たちのブラコン行為をデフォルトする作戦から、ずいぶん脱線してしまったようだ。姉の思い込みや心配を先に解消する必要がある。
「いいか、花穂姉ちゃん。俺と加奈子さんは姉弟だ。結ばれることは、絶対にない! 昨日、紗月姉にも言ったけど、戸籍上姉弟である姉ちゃんたちとも結ばれることはない!」
「紗月姉の蒼太へのマジ惚れは……唯一の誤算だった」
その誤算のせいで、花穂姉ちゃんは憂慮すべきことが一つ増えた。
紗月姉は俺の欲望を鷲掴みにして、寸止め行為にまで発展したのだ。
初めて味合う肉体的な快楽に、俺は欲のままに流された。
「誤算って……なにもかも計算づくみたいに言うんだな」
「どうして加奈ちゃんを副会長に無理矢理指名したかわかる?」
「監視……なのか……」
「そうだよ。蒼太と帰らせる日もあったけど、ずっと監視してたの」
「ずっと? 帰り道に姉ちゃんが尾行してたのかよ……」
「蒼太。なにか重要なことを見落としてない?」
テーブルの上に置いたスマホを手に持って、姉はメールを打ち始める。
「見落とす?」
「現生徒会役員は、わたしの意思で集めたの」
程なくして玄関が開かれる音が聞こえた。
なんの挨拶もなしに家に入って来る足音がする。
リビングルームのドアが開かれたとき、俺は愕然とした……
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