姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛

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【本幕・第10章】あねしーくえんすっ

5.姉の誕生日の贈り物ってなんですかっ!

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 なにか聞き慣れた音が鼓膜に響く。これは端末のアラーム音だ。
毎朝このうるさい音で飛び起きる。土日は少し遅めの九時にセット済みだ。

「――い、痛いっ!」
「蒼太、そろそろ起きろよ!」

 片目を開けると、塁姉がTシャツと短パン姿で立っている。
視線を落とすと美果ちゃんが俺のパンツの膨らみを不思議そうに観察中だ。

「ソータ、デカチン」
「ん……ん!? ん? ここはリビング……?」
「お前、寝惚けてるのか? 昨晩はここで三人で寝たじゃないか」

 またしても変な夢オチだったわけだ。あんな急展開があろうはずがない。
その証拠に、朝からパンツの中身は元気いっぱいではないか。

「うん、よく寝た。目が覚めた」
「おい、美果に変なもん見せるんじゃない! 目が腐る! 早く着替えろ!」

 立ち上がって背伸びする俺の股間を指で小突く塁姉。
今、そこを刺激されると、本当に痛い。

「ソータ、メガチン?」
「さりげなくグレードアップさせたな……次はギガだな」

 布団を畳むのを手伝ったあと、テーブルで朝食を済ませた。
子守りをしに来いと言った割に、塁姉は俺を有効活用していない。
やはり、来栖からなにかしら頼まれていた可能性が高い。

「話せることは昨晩全部話した。どう思うのかはお前の勝手だ」
「うん、ありがとう塁姉!」

 今まで周りだけが知っていて、俺だけが知らなかったことを知った。
それだけで充分だ。掘り返して波風を起こそうという気は毛頭ない。




 五月二九日、午前一一時。
姫咲のデパートへ買い物に出掛ける塁姉と美果ちゃんに付き添った。買い物が終わると、駅の方から歩き慣れた通学路を車で自宅へ向かい、玄関の前でおろしてもらう。

「じゃあ、またな蒼太」
「ソータ、バイバイ」
「塁姉、美果ちゃん、またな」

 手を振って去って行く塁姉と美果ちゃん。車が曲がり角で左折するまで見送った。
踵を返して、玄関へ向かい扉を開くと仁王様……いや、紗月姉が仁王立ち。

「蒼ちゃん……姉ちゃん金曜の晩に帰るって言ったのに! 昨晩いないし!」
「悪い、紗月姉。塁姉が手伝ってほしいことがあるって言うから」

 なにかおかしい気がする。微妙に空気が違う。距離感も違う。
姉の表情がいつもと違って見えるのは気のせいだろうか。

「そっか……」
「紗月姉?」

そっけない返事でリビングへ入る紗月姉。このピリピリ感はあれだ。
滅多に機嫌が悪くならない能天気娘の紗月姉が怒っている。
触らぬあねに祟りなしと言うではないか。変に刺激すれば命に関わる。








◇◇◇








 午後一時半過ぎ。
花穂姉ちゃんが加奈子さんの家に行って不在のため昼食がない。
もちろん、家にいるはずの紗月姉が作るわけでもなく、あれから部屋にすら来ない。
すがるような思いで塁姉に電話を掛けていた。

『もしもし? どうした蒼太。忘れ物か?』
「塁姉。帰ったらいきなり紗月姉が超機嫌悪いんだよ。昨日、帰って来たのに、俺がいなかったから……昨晩は話に夢中で紗月姉に連絡すらしてない……」
『紗月もガキだなぁ……いいか蒼太、女の機嫌をとる方法を教えてやろう』
「おぉっ! そんなのがあるのか!?」

 そのあと、塁姉による女の機嫌を良くする方法を伝授してもらったのだが……
実践が難しいと言うべきか、下手をすれば余計に機嫌を損ねる方法ばかりだった。

『どうだ? 紗月は単純そうに見えて思慮深いし、結構神経質なとこもあるぞ』
「そうだよな……紗月姉は……ああっ!」
『忘れてたな!? 紗月は五月二九日――』
「今日、紗月姉の誕生日じゃないかっ!!」

 ゴロゴロ寝転んで電話を続けていたが、体を起こして部屋のカレンダーを確認。
五月二九日に赤丸印がつけてある。間違いなく今日が青山紗月一九歳の誕生日だ。

『紗月の誕生日忘れてたのか……?』
「プレゼント買いに行かないと……」
『やれやれ、やっぱり忘れてたな。鞄の中を見てみろ。プレゼントは買ってある』

 スクールバックを開くと、可愛らしくラッピングされた小箱が入っている。

「これは?」
『それを、お前からの誕生日プレゼントだと言って紗月に渡せ』

 中身が気になるが……今は塁姉の言葉を信じるしかない。
________________________________
あとがき
※【あねしーくえんすっ】はここで終わりです。
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