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【本幕・第10章】あねしーくえんすっ
1.従姉の家に緊急お泊り行ってきますっ!
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まえがき
※少しずつ最終話へ向けた話が進みます。
※今回は従姉の塁が登場する回です。
____________________________
俺は青山蒼太。姫咲高校に通うごく普通の高校一年生のはず。
家族は海外赴任中の両親と姉が二人いる。姉の紗月と花穂は超ブラコンである。
ブラコンとはなにか、それは愛情の度合いや本気度で違うと言える。
姉のうちのひとりは確実に俺を狙っている。それを確認する日が近い。
「眠っ」
五月二八日の六時間目。
黒板に書き出される数式がさっぱり頭に入らない。
今後、成すべきことを考えると、頭がパンクしそうになるからだ。
(――不倫の子だから、養子なのかな?)
なぜ、同じ町内に住む青山家へ養子に出されたのか。
父親が結城建業の社長ではなく、その兄なのか……
(――姉ちゃん)
姉の紗月と花穂、この二人のうちひとりは本物のブラコンのようだ。
本物というか危険度が高いというべきか。姉妹同士で意思の疎通ができていない。表面上はうまくやっているようで、一方が裏切ろうと虎視眈々と狙っている。
「んー……塁姉に聞くか」
唯一、話を聞けそうなのが塁姉だ。
今日か明日に青山の祖父母の家に行く約束を取りつけるしかない。
父や母が帰省すればいいが、しばらくは多忙らしい。
(帰りに電話するか……塁姉、会社かな?)
午後四時過ぎ。校門を出て、姫咲スポーツクラブの方角へ歩きながら塁姉の電話を鳴らす。この時間だとおそらく仕事中だろう。電話は仕事中でも対応できると、以前言っていた気がする。
『ん、蒼太か?』
「塁姉、週末時間あるかな? そっち遊びに行きたいんだけど」
『よし! 美果の子守りがしたいんだな? 今夜来い!』
「子守りって、じいちゃんやばあちゃんいるんだろ?」
『昨晩から町内会の慰安旅行でいないんだな……人手不足でさ』
電話の向こう側が騒がしい。どうやら会社内のようだ。
「わかった。今夜行くよ」
『じゃあさ、仕事終わったら迎えに行くよ。副社長の勝手口に七時でどうよ?』
副社長と言うのは、来栖有紀のことである。
来栖邸の勝手口なら花穂姉ちゃんに見つからない。
「オッケー。塁姉にお願いがあって……今夜詳しい話をするよ」
『そ、そうか……ついに筆おろしを頼まれる日が来たか!』
「筆……は? 違うって。じゃあ、七時に待ってる」
『着替え用意しとけよ。じゃあ、あとで!』
公園前に着いたとき通話が終了。引き返して通学路に戻った。
◇◇◇
午後六時、しばらく部屋でくつろいでお泊りの準備をし始める。
お泊りと言っても、塁姉の住む青山の実家に行くだけなのだが。
着替えをスクールバッグに詰め込んで、ファスナーを閉める手の動きが重苦しい。
「気が重いな」
塁姉にコンタクトを取る理由はひとつ。俺がなぜ養子に来たのかを知りたい。
うちの父と結城社長は昔からの知り合いだ。
互いに子を持つ身でありながら、俺だけを養子に出す理由がなにかあるはずなのだ。
「蒼太? どこか行くの?」
ドアの前に制服姿で花穂姉ちゃんが立っている。
遅くまで生徒会の仕事をしていたようだ。
「じいちゃんとばあちゃんが旅行でいないって塁姉から電話があって……子守り手伝ってくれって言うからさ……ちょっと力仕事があるから俺のがいいんだって」
「そうなんだ……わたしも行ってあげたいけどね。紗月姉が帰って来るかもしれないし」
「そういえば、紗月姉が今週帰るって言ってたな……」
忘れるところだった。エロエロな報酬の約束を果たしてもらわなければいけない。いや、この下心がダメなんだろうな。つい期待してしまう。
「蒼太、バスで行くの?」
「大通りの方まで塁姉が迎えに来るらしい」
「夕飯はどうする? いらない?」
「うん。姉ちゃんも今日遅くて疲れただろ? 夕飯はいいよ」
「了解。それじゃあ、わたしは加奈ちゃんの家に行くから用意するね」
花穂姉ちゃんの週末行事、加奈子邸にお泊りのようだ。
女の子は不思議な生き物だな。何回もお泊りして、話が尽きないのだろうか。
(一五分前に来栖邸の勝手口前で待つか)
刻一刻と迫って来る。なにかが確実に、足音を殺しながら迫って来ている。
俺だけが未だ知らない、身近だけど遠い過去の話となる。
根拠はないが、そんな予感がする……
※少しずつ最終話へ向けた話が進みます。
※今回は従姉の塁が登場する回です。
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俺は青山蒼太。姫咲高校に通うごく普通の高校一年生のはず。
家族は海外赴任中の両親と姉が二人いる。姉の紗月と花穂は超ブラコンである。
ブラコンとはなにか、それは愛情の度合いや本気度で違うと言える。
姉のうちのひとりは確実に俺を狙っている。それを確認する日が近い。
「眠っ」
五月二八日の六時間目。
黒板に書き出される数式がさっぱり頭に入らない。
今後、成すべきことを考えると、頭がパンクしそうになるからだ。
(――不倫の子だから、養子なのかな?)
なぜ、同じ町内に住む青山家へ養子に出されたのか。
父親が結城建業の社長ではなく、その兄なのか……
(――姉ちゃん)
姉の紗月と花穂、この二人のうちひとりは本物のブラコンのようだ。
本物というか危険度が高いというべきか。姉妹同士で意思の疎通ができていない。表面上はうまくやっているようで、一方が裏切ろうと虎視眈々と狙っている。
「んー……塁姉に聞くか」
唯一、話を聞けそうなのが塁姉だ。
今日か明日に青山の祖父母の家に行く約束を取りつけるしかない。
父や母が帰省すればいいが、しばらくは多忙らしい。
(帰りに電話するか……塁姉、会社かな?)
午後四時過ぎ。校門を出て、姫咲スポーツクラブの方角へ歩きながら塁姉の電話を鳴らす。この時間だとおそらく仕事中だろう。電話は仕事中でも対応できると、以前言っていた気がする。
『ん、蒼太か?』
「塁姉、週末時間あるかな? そっち遊びに行きたいんだけど」
『よし! 美果の子守りがしたいんだな? 今夜来い!』
「子守りって、じいちゃんやばあちゃんいるんだろ?」
『昨晩から町内会の慰安旅行でいないんだな……人手不足でさ』
電話の向こう側が騒がしい。どうやら会社内のようだ。
「わかった。今夜行くよ」
『じゃあさ、仕事終わったら迎えに行くよ。副社長の勝手口に七時でどうよ?』
副社長と言うのは、来栖有紀のことである。
来栖邸の勝手口なら花穂姉ちゃんに見つからない。
「オッケー。塁姉にお願いがあって……今夜詳しい話をするよ」
『そ、そうか……ついに筆おろしを頼まれる日が来たか!』
「筆……は? 違うって。じゃあ、七時に待ってる」
『着替え用意しとけよ。じゃあ、あとで!』
公園前に着いたとき通話が終了。引き返して通学路に戻った。
◇◇◇
午後六時、しばらく部屋でくつろいでお泊りの準備をし始める。
お泊りと言っても、塁姉の住む青山の実家に行くだけなのだが。
着替えをスクールバッグに詰め込んで、ファスナーを閉める手の動きが重苦しい。
「気が重いな」
塁姉にコンタクトを取る理由はひとつ。俺がなぜ養子に来たのかを知りたい。
うちの父と結城社長は昔からの知り合いだ。
互いに子を持つ身でありながら、俺だけを養子に出す理由がなにかあるはずなのだ。
「蒼太? どこか行くの?」
ドアの前に制服姿で花穂姉ちゃんが立っている。
遅くまで生徒会の仕事をしていたようだ。
「じいちゃんとばあちゃんが旅行でいないって塁姉から電話があって……子守り手伝ってくれって言うからさ……ちょっと力仕事があるから俺のがいいんだって」
「そうなんだ……わたしも行ってあげたいけどね。紗月姉が帰って来るかもしれないし」
「そういえば、紗月姉が今週帰るって言ってたな……」
忘れるところだった。エロエロな報酬の約束を果たしてもらわなければいけない。いや、この下心がダメなんだろうな。つい期待してしまう。
「蒼太、バスで行くの?」
「大通りの方まで塁姉が迎えに来るらしい」
「夕飯はどうする? いらない?」
「うん。姉ちゃんも今日遅くて疲れただろ? 夕飯はいいよ」
「了解。それじゃあ、わたしは加奈ちゃんの家に行くから用意するね」
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女の子は不思議な生き物だな。何回もお泊りして、話が尽きないのだろうか。
(一五分前に来栖邸の勝手口前で待つか)
刻一刻と迫って来る。なにかが確実に、足音を殺しながら迫って来ている。
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