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【本幕・第9章】あねあにみっくす双撃っ 後編 !
1.うらやまけしからん作戦会議しますっ!
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まえがき
※この章では、主人公蒼太のネタバレが含まれます(実父について)
____________________________
自宅を出て数歩、ミコ先輩が進む場所を辿ると見慣れた来栖邸勝手口。
学校でぼっち娘の来栖が、同じ生徒会役員の御子柴龍司と交流があったとは……
「あれ? ミコ先輩?」
声を掛ける前に、無言のまま勝手口を開いて中へ入り込んだ。
「貴様も早く来い。クリスィーナには連絡済みだから大丈夫だ」
来栖が公言していない本名まで知っている。どうなっているんだ。
靴を持って来栖邸の勝手口からキッチンへ入ると、来栖の声が玄関ホールから聞こえる。
「お父さん、帰る前にまた寄ってくださいね」
「飛行機に乗る前に来るよ。またね」
ガチャンと玄関を開閉する音と共に、誰かが外へ出たようだ。
来栖が父と呼んでいたということは、養父の結城社長の兄ということだろうか。
「来栖? 今のは……」
「あら、蒼太君と御子柴君。こちらへどうぞ」
眼鏡を外している制服姿の来栖はこちらを振り返り、俺とミコ先輩を二階の私室へ案内した。お家モードの来栖有紀を知るのは、俺だけの特別だと思っていた。その特別は、たった今普通に変わってしまったのだ。
午後五時、来栖は部屋のテーブルにコーヒーとクッキーを用意してくれた。
ミコ先輩は腹が空いていたのか、それをポリポリかじっている。
「義弟、クリスティ……来栖が助っ人だ。お前とは既知の仲だと聞いている」
「ちょっと待ってくれ! 来栖とミコ先輩は、前から知合いだったのか!?」
「そうよ。昨年度も同じ生徒会、彼が生徒会長でわたしは会計。きっかけはアプリ開発の話題を御子柴君が話して来たときだったかな?」
この二人が昨年も生徒会役員だった。それで話題が合って交流を持つように……
ある疑念が湧きあがって来た。俺と来栖の出会いは来栖自身が仕組んだ。
今回はどうなのか。ミコ先輩との出会いまで、絵図を描いていたのは来栖なのか。
「おい、難しいツラをするな。俺とクリスティーナに頼みがあるんだろ?」
「来栖、以前話した通りだ。共有ボックスの内容を知りたい」
「不可能……と言いたいところだけど、一時的にアカウントを乗っ取ることはできるわ。でも蒼太君、本当にそこまでする必要があるのかしら?」
言われてみて気づく。なぜ姉たちの共有ボックスがのぞき見たいのか。
それは、自分のことが書かれているからだ。なにが書いてあるのか知りたい。
「義弟よ。このセキュリティに喧しい時代に、一時的とは言えアカウント乗っ取りは危険だ」
「ミコ先輩には話すの初めてですけど、姉のブラコン度にはちょっとした矛盾点があるんですよ。ちょっと長い話になりますけど聞いてください」
来栖有紀にはテスト期間中にある程度話した内容をミコ先輩にも話してみた。紗月姉と花穂姉ちゃんは同じブラコン姉妹でも、行動理念に大きな違いがある。
◇◇◇
「うらやま……じゃない、それはおかしい!」
パンと自分の手を叩きながら、ミコ先輩は難しい表情を見せた。
同様に来栖も空を見て、なにか考えにふけっているようだ。
「蒼太君、今言った気分の悪くなるようなブラコン行為が本当なら……姉のうちひとりは確実に本物のブラコンね。しかも、青山姉妹は今も反目し合ってる」
「来栖が言ってた迎撃用の作戦を使うぞ。姉の真意や矛盾を直接確認する!」
空手に寸止めというのがあるが、姉二人と文字通り寸止め行為をする必要がある。
予想が正しければ一方は受け入れ、もう一方は拒絶する素振りを見せるはずだ。
「う、義弟……紗月先輩をうらやまけしからん状態にするのか……うらやま……」
「御子柴君! 青山姉妹のブラコンを諦めさせれば、紗月さんの気持ちが君に動く可能性だってあるのよ? ちょっと我慢して協力しなさい! あと、蒼太君はどんな報告もわたしと御子柴君にすること! 特にひどいブラコン行為についてね」
「そこまで報告するのか……わかった、その代り共有ボックスの件は任せる」
「紗月先輩の気持ちがいつか動くと信じて、今は我慢しよう……」
まずは週末に紗月姉が帰って来る。こちらからアクションを起こさずとも向こうから勝手に来るのだ。そこを迎撃するしかない。ついにグラビアアイドル級の姉を逆誘惑する日がやって来る……
※この章では、主人公蒼太のネタバレが含まれます(実父について)
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自宅を出て数歩、ミコ先輩が進む場所を辿ると見慣れた来栖邸勝手口。
学校でぼっち娘の来栖が、同じ生徒会役員の御子柴龍司と交流があったとは……
「あれ? ミコ先輩?」
声を掛ける前に、無言のまま勝手口を開いて中へ入り込んだ。
「貴様も早く来い。クリスィーナには連絡済みだから大丈夫だ」
来栖が公言していない本名まで知っている。どうなっているんだ。
靴を持って来栖邸の勝手口からキッチンへ入ると、来栖の声が玄関ホールから聞こえる。
「お父さん、帰る前にまた寄ってくださいね」
「飛行機に乗る前に来るよ。またね」
ガチャンと玄関を開閉する音と共に、誰かが外へ出たようだ。
来栖が父と呼んでいたということは、養父の結城社長の兄ということだろうか。
「来栖? 今のは……」
「あら、蒼太君と御子柴君。こちらへどうぞ」
眼鏡を外している制服姿の来栖はこちらを振り返り、俺とミコ先輩を二階の私室へ案内した。お家モードの来栖有紀を知るのは、俺だけの特別だと思っていた。その特別は、たった今普通に変わってしまったのだ。
午後五時、来栖は部屋のテーブルにコーヒーとクッキーを用意してくれた。
ミコ先輩は腹が空いていたのか、それをポリポリかじっている。
「義弟、クリスティ……来栖が助っ人だ。お前とは既知の仲だと聞いている」
「ちょっと待ってくれ! 来栖とミコ先輩は、前から知合いだったのか!?」
「そうよ。昨年度も同じ生徒会、彼が生徒会長でわたしは会計。きっかけはアプリ開発の話題を御子柴君が話して来たときだったかな?」
この二人が昨年も生徒会役員だった。それで話題が合って交流を持つように……
ある疑念が湧きあがって来た。俺と来栖の出会いは来栖自身が仕組んだ。
今回はどうなのか。ミコ先輩との出会いまで、絵図を描いていたのは来栖なのか。
「おい、難しいツラをするな。俺とクリスティーナに頼みがあるんだろ?」
「来栖、以前話した通りだ。共有ボックスの内容を知りたい」
「不可能……と言いたいところだけど、一時的にアカウントを乗っ取ることはできるわ。でも蒼太君、本当にそこまでする必要があるのかしら?」
言われてみて気づく。なぜ姉たちの共有ボックスがのぞき見たいのか。
それは、自分のことが書かれているからだ。なにが書いてあるのか知りたい。
「義弟よ。このセキュリティに喧しい時代に、一時的とは言えアカウント乗っ取りは危険だ」
「ミコ先輩には話すの初めてですけど、姉のブラコン度にはちょっとした矛盾点があるんですよ。ちょっと長い話になりますけど聞いてください」
来栖有紀にはテスト期間中にある程度話した内容をミコ先輩にも話してみた。紗月姉と花穂姉ちゃんは同じブラコン姉妹でも、行動理念に大きな違いがある。
◇◇◇
「うらやま……じゃない、それはおかしい!」
パンと自分の手を叩きながら、ミコ先輩は難しい表情を見せた。
同様に来栖も空を見て、なにか考えにふけっているようだ。
「蒼太君、今言った気分の悪くなるようなブラコン行為が本当なら……姉のうちひとりは確実に本物のブラコンね。しかも、青山姉妹は今も反目し合ってる」
「来栖が言ってた迎撃用の作戦を使うぞ。姉の真意や矛盾を直接確認する!」
空手に寸止めというのがあるが、姉二人と文字通り寸止め行為をする必要がある。
予想が正しければ一方は受け入れ、もう一方は拒絶する素振りを見せるはずだ。
「う、義弟……紗月先輩をうらやまけしからん状態にするのか……うらやま……」
「御子柴君! 青山姉妹のブラコンを諦めさせれば、紗月さんの気持ちが君に動く可能性だってあるのよ? ちょっと我慢して協力しなさい! あと、蒼太君はどんな報告もわたしと御子柴君にすること! 特にひどいブラコン行為についてね」
「そこまで報告するのか……わかった、その代り共有ボックスの件は任せる」
「紗月先輩の気持ちがいつか動くと信じて、今は我慢しよう……」
まずは週末に紗月姉が帰って来る。こちらからアクションを起こさずとも向こうから勝手に来るのだ。そこを迎撃するしかない。ついにグラビアアイドル級の姉を逆誘惑する日がやって来る……
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