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【本幕・番外編】あねあね探検隊っ 参
0.弟を探る変態姉妹の近況報告ですねっ!
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まえがき
※間に挟むショートストーリーです。姉妹の話になります。
※本編より一日先の話になります。
____________________________
五月二七日。青山家二階、花穂の私室。
時計の針は午後五時を指している。弟の蒼太は、まだ学校から帰っていない。
姉妹はテレビ電話の向こうで、お互いにほくそ笑んでいた。
「紗月姉、今日テストの順位が出てね。わたしは二位で加奈ちゃん三位」
『そうかぁ……一位は壁が分厚いね。来栖有紀さんだっけ? 隣りの子だよね?』
「うん。同じ生徒会役員だよ。あ、蒼太の順位も見せようか?」
『蒼ちゃんの? 全然勉強してないんじゃないの?』
花穂は紺のスクールバッグから学内専用のタブレット端末を取り出して、今日発表された中間テストの順位を、テレビ電話の向こうにいる紗月に見えるように映した。
「見えるかな? 中間テスト一年生の順位」
『……え!? これ、マジなの!? 蒼ちゃんが?』
テレビ電話の向こう側、寮の部屋で紗月は驚きの顔を見せている。
「初のテストだからって気合入れてたからね。毎日図書館で御子柴先輩に教わってたみたい。紗月姉は御子柴先輩よく知ってるよね?」
『ミコっちは小さい頃から知ってるよ! アホそうに見えるけど頭はいいんだ』
「図書館で偶然会って紗月姉の話をしているうちに、いっしょに勉強するようになったらしいよ。里志君や御子柴先輩は昔から紗月姉大好きだからね」
『ミコっちか……蒼ちゃんを助けてくれたなら、礼をしないとな』
午後五時過ぎ、電話の話題はテストの結果報告から弟の近況報告に変わった。
花穂には一つ、気がかりがあったのだ。
しかし、紗月に相談するのをためらっていた。
「実はね、紗月姉……」
『どうしたの? 難しい顔して』
「蒼太がテスト勉強中、ほとんど家で晩御飯を食べなかったんだ」
『そりゃ、ミコっちと食べ――』
紗月はなにかを閃いたように、出掛けた言葉をいったん飲み込んだ。
「え、なに? 紗月姉?」
『ミコっちは母子家庭だ。母親は遅くまで働いてるから、夕飯は自炊……いや、あいつ料理できなかったような……それに、家計助けるためにバイトもしてる』
「そうなんだ……お弁当でも買って食べたのかな? 泊まった日もあったし」
『泊まる!? ミコっちは狭いアパート暮らしで、友達も呼ばなかったのに』
「紗月姉、わたしが鼻がいいの知ってるよね? 匂いに超敏感なの」
『花穂は犬並みに嗅覚が優れてるよね』
「テスト勉強中に帰宅した蒼太から、御子柴先輩の匂いがしなかったの。御子柴先輩は剣道の防具と汗が混じった匂いがするから……」
『テスト期間中は部活中止だよね? その匂いはアテにならないよ』
「でもね、気にしてるのはそこじゃない。濃厚な匂いをつけて帰って来たの、ある女の子の匂い。香水とかじゃなくて、シャンプーやコンディショナーの香りかな」
『つまり……蒼ちゃんがミコっちと勉強していたって言うのは嘘?』
姉妹は画面の向こう側で、お互いに難しい表情を浮かべながら思案していた。
午後五時半、紗月はある仮説を立ててみた。
「蒼太が四条先輩から勉強を?」
『うん。ミコっちと蒼ちゃんは、ほとんど面識がなかった。紹介したのは春香だと思うんだ。三年で蒼ちゃんと接点があるのは、春香ぐらいじゃないかな』
「でも違う。四条先輩の匂いじゃないよ?」
『え? 違うの?』
「お隣の来栖有紀さんと同じ匂いが蒼太からしたんだ……」
『ええっ!? 来栖さんって大人しくて、いつもひとりでいたような……』
「蒼太と来栖さんは接点があるのかもしれない。怪しい関係になってるかも?」
『花穂、それはないよ。蒼ちゃんは恋愛感情がないのに』
「お泊りした次の日、帰って来た蒼太から来栖さんの匂いと栗の花の匂いがしたんだよ……いやらしいことしないと出ないよね? 男の子のアレは」
『うーん、寝てるときでも出るって言うし……それに匂いだけじゃアテにはならないけどね。似たような匂いあるし』
「来栖さんに直接聞くべき?」
『それは、聞かなくていいんじゃない? 今週わたしが蒼ちゃんに確かめるよ』
「週末加奈ちゃんの家行くんだけど、蒼太とあんまりエッチなことしないでよ?」
『わかってるって。微エロで行くよ』
姉妹は画面越しに目を合わせて、悪い顔でほくそ笑んでいる。
※間に挟むショートストーリーです。姉妹の話になります。
※本編より一日先の話になります。
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五月二七日。青山家二階、花穂の私室。
時計の針は午後五時を指している。弟の蒼太は、まだ学校から帰っていない。
姉妹はテレビ電話の向こうで、お互いにほくそ笑んでいた。
「紗月姉、今日テストの順位が出てね。わたしは二位で加奈ちゃん三位」
『そうかぁ……一位は壁が分厚いね。来栖有紀さんだっけ? 隣りの子だよね?』
「うん。同じ生徒会役員だよ。あ、蒼太の順位も見せようか?」
『蒼ちゃんの? 全然勉強してないんじゃないの?』
花穂は紺のスクールバッグから学内専用のタブレット端末を取り出して、今日発表された中間テストの順位を、テレビ電話の向こうにいる紗月に見えるように映した。
「見えるかな? 中間テスト一年生の順位」
『……え!? これ、マジなの!? 蒼ちゃんが?』
テレビ電話の向こう側、寮の部屋で紗月は驚きの顔を見せている。
「初のテストだからって気合入れてたからね。毎日図書館で御子柴先輩に教わってたみたい。紗月姉は御子柴先輩よく知ってるよね?」
『ミコっちは小さい頃から知ってるよ! アホそうに見えるけど頭はいいんだ』
「図書館で偶然会って紗月姉の話をしているうちに、いっしょに勉強するようになったらしいよ。里志君や御子柴先輩は昔から紗月姉大好きだからね」
『ミコっちか……蒼ちゃんを助けてくれたなら、礼をしないとな』
午後五時過ぎ、電話の話題はテストの結果報告から弟の近況報告に変わった。
花穂には一つ、気がかりがあったのだ。
しかし、紗月に相談するのをためらっていた。
「実はね、紗月姉……」
『どうしたの? 難しい顔して』
「蒼太がテスト勉強中、ほとんど家で晩御飯を食べなかったんだ」
『そりゃ、ミコっちと食べ――』
紗月はなにかを閃いたように、出掛けた言葉をいったん飲み込んだ。
「え、なに? 紗月姉?」
『ミコっちは母子家庭だ。母親は遅くまで働いてるから、夕飯は自炊……いや、あいつ料理できなかったような……それに、家計助けるためにバイトもしてる』
「そうなんだ……お弁当でも買って食べたのかな? 泊まった日もあったし」
『泊まる!? ミコっちは狭いアパート暮らしで、友達も呼ばなかったのに』
「紗月姉、わたしが鼻がいいの知ってるよね? 匂いに超敏感なの」
『花穂は犬並みに嗅覚が優れてるよね』
「テスト勉強中に帰宅した蒼太から、御子柴先輩の匂いがしなかったの。御子柴先輩は剣道の防具と汗が混じった匂いがするから……」
『テスト期間中は部活中止だよね? その匂いはアテにならないよ』
「でもね、気にしてるのはそこじゃない。濃厚な匂いをつけて帰って来たの、ある女の子の匂い。香水とかじゃなくて、シャンプーやコンディショナーの香りかな」
『つまり……蒼ちゃんがミコっちと勉強していたって言うのは嘘?』
姉妹は画面の向こう側で、お互いに難しい表情を浮かべながら思案していた。
午後五時半、紗月はある仮説を立ててみた。
「蒼太が四条先輩から勉強を?」
『うん。ミコっちと蒼ちゃんは、ほとんど面識がなかった。紹介したのは春香だと思うんだ。三年で蒼ちゃんと接点があるのは、春香ぐらいじゃないかな』
「でも違う。四条先輩の匂いじゃないよ?」
『え? 違うの?』
「お隣の来栖有紀さんと同じ匂いが蒼太からしたんだ……」
『ええっ!? 来栖さんって大人しくて、いつもひとりでいたような……』
「蒼太と来栖さんは接点があるのかもしれない。怪しい関係になってるかも?」
『花穂、それはないよ。蒼ちゃんは恋愛感情がないのに』
「お泊りした次の日、帰って来た蒼太から来栖さんの匂いと栗の花の匂いがしたんだよ……いやらしいことしないと出ないよね? 男の子のアレは」
『うーん、寝てるときでも出るって言うし……それに匂いだけじゃアテにはならないけどね。似たような匂いあるし』
「来栖さんに直接聞くべき?」
『それは、聞かなくていいんじゃない? 今週わたしが蒼ちゃんに確かめるよ』
「週末加奈ちゃんの家行くんだけど、蒼太とあんまりエッチなことしないでよ?」
『わかってるって。微エロで行くよ』
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