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【序幕・第2章】可憐な加奈子さんっ
1.純情お嬢様の性知識は大丈夫ですかっ!
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四月二十二日。
今週乗り切れば、ゴールデンウィークがやって来る。
風の音にビクつきながら隣りで眠った花穂姉ちゃんが既にいない。
階下へおりても姿がない。どうやら、生徒会の用事で先に登校したようだ。
(シャワーして行くか……)
脱衣場には洗濯機が設置してあり、その上に洗濯カゴが置いてある。
風呂へ入る前に、脱いだ衣類はそこへ入れるのだが……
「これは……」
洗濯カゴの中でクルクルに丸まっているそれを発見。
昨夜着用していた花穂姉ちゃんのおやすみショーツだ。
ナイトブラも洗濯カゴの中にある。
「手洗いしてあるな」
手に取って匂いを嗅いでみると、石鹸の香りがする。
おそらく、朝シャワーするときに脱いだものだろう。
(花穂姉ちゃんのパンツ……姉ちゃんの……)
食らいつくように匂いを嗅ぎながら、早朝自慰行為にふけった。
サラサラした手触りと石鹸の匂いが相まって興奮度がぐんと増す。
ほとんど無意識だった。あっという間に限界に達したのだ。
「……うっ! やばっ……パンツ汚れた!」
姉のパンツに射精。それを洗面所で手洗いして元に戻す。
こんな変態行為を中学の頃から繰り返している……
風呂に入り着替えを済ませて外へ出ると、門の前で誰かが待っている。
見慣れた顔に、見慣れた制服姿だ。目が合うと、自然に笑みがこぼれる。
「……あ、弟君……おはようございます……」
花穂姉ちゃんの同級生、結城加奈子さんがいる。
建設会社のご令嬢で、誰に対しても物腰柔らかだ。
その容姿たるや、整った顔に艶のある長い黒髪。
肌は透き通るように白く、身体の線が細い。まさにお嬢様と言うに相応しい。
性格は、うちの姉二人とは大違いなのだ。
「加奈子さん、家の前でどうしたの? 姉ちゃんはもう学校行ったけど?」
「これを花穂さんに渡してくれませんか? 生徒会合宿のパンフです。ゴールデンウィーク前半の二日間、新生徒会役員だけで行くんです……」
加奈子さんはそう言って、薄っぺらい生徒会合宿と題されたパンフを手渡してきた。
そういえばこの人、生徒会長のご指名でほぼ無理矢理副会長にされたんだっけ……
「ありがとう。ちょっとこれ、下駄箱の上に置いてくるよ」
「はい。よろしくお願いしますね」
手渡されたパンフを家の中に置いて、加奈子さんと通学路を進んだ。
花穂姉ちゃんとは違ったナチュラルな香り、おそらくシャンプーやコンディショナーの匂いだろう。一歩一歩進むたびにふわりと香りが舞い踊る。
「あの……弟君、ちょっと質問してもいいですか?」
加奈子さんからは青山姉妹の弟という意味で、弟君と呼ばれている。
高く小さめの声で弟君と呼ばれるのが、くすぐったくて心地いい。
「勉強以外の質問なら大丈夫だけど、どうしたの?」
「花穂さんが言ってました。弟君と二人暮らしになって、テッシュの減りが異常に早いことに気づいたと……それと、旧約聖書の創世記三八章、ユダの次男でオナンのお話をされます」
姉ちゃん、なにも知らない親友になにを言ってるんだ……
「か、加奈子さん! 俺、アレルギー性の鼻炎なんだ。だから、テッシュは鼻かむときに使うからね。その旧約聖書ってのは全然知らない!」
「そうでしたか。大変ですね」
「あははは……うんうん。そう、大変なんだ!」
しかし、花穂姉ちゃん……人のこと言えないだろ。
部屋の壁際から時折、艶めかしい声が聴こえてくるのを俺は知っているんだぞ。
自慰行為でティッシュを消費しているのは、絶対俺だけじゃないっ!
◆◆◆◆◆◆
しばらく加奈子さんの隣を歩いて通学路を進むと校舎が見えてきた。
学校が近づくと人通りも多くなる。やはり、加奈子さんは男子の注目を浴びているようだ。花穂姉ちゃんといるときで慣れっこだが、俺への敵意むき出しの視線も感じる……
「あの……弟君、もう一つお聞きしたいのですが……」
真っ白い顔を紅潮させて、モジモジしながら加奈子さんが切り出した。
この時点で嫌な予感しかしない。また花穂姉ちゃんが余計なことを吹き込んだのだろう。
「加奈子さん、聞きにくいことは無理して聞かなくていいよ? もしかして、姉ちゃんが俺に聞いてみろとか言ったんじゃないの!?」
加奈子さんはその場に立ちすくんで、ギュッと目を閉じて言った。
「ギンギンに反り返って、マックス十六センチあるってなんですか!?」
「へ!? は!?」
このお嬢様……こんな往来でいきなりなんてこと言い出すんだっ!
周囲の視線がグサリと矢のように突き刺さる。
この人も一応、校内では人気が高い有名人のひとりなのだ。
妙な噂や誤解を招く前に、人の波から少し早足で距離を置いた。
「……ですから、花穂さんが一言一句違えず弟君に聞くように……」
「ち、ち、力こぶのことだよ、加奈子さん! ほら、俺結構鍛えてるからっ!」
「弟君、鍛えてるんですか?」
「うんうん。毎日ギンギンに鍛えてる。反り返っちゃうよ!」
仰々しく腕を曲げて、力こぶを作るふりをする。
長袖なので力こぶは直接見せられないが……
それにしても、不思議なのは姉がサイズを知っていることだ。
俺でさえ、自分のものを計測したことがないのに……
――花穂姉ちゃん……帰ったらお説教だな……
今週乗り切れば、ゴールデンウィークがやって来る。
風の音にビクつきながら隣りで眠った花穂姉ちゃんが既にいない。
階下へおりても姿がない。どうやら、生徒会の用事で先に登校したようだ。
(シャワーして行くか……)
脱衣場には洗濯機が設置してあり、その上に洗濯カゴが置いてある。
風呂へ入る前に、脱いだ衣類はそこへ入れるのだが……
「これは……」
洗濯カゴの中でクルクルに丸まっているそれを発見。
昨夜着用していた花穂姉ちゃんのおやすみショーツだ。
ナイトブラも洗濯カゴの中にある。
「手洗いしてあるな」
手に取って匂いを嗅いでみると、石鹸の香りがする。
おそらく、朝シャワーするときに脱いだものだろう。
(花穂姉ちゃんのパンツ……姉ちゃんの……)
食らいつくように匂いを嗅ぎながら、早朝自慰行為にふけった。
サラサラした手触りと石鹸の匂いが相まって興奮度がぐんと増す。
ほとんど無意識だった。あっという間に限界に達したのだ。
「……うっ! やばっ……パンツ汚れた!」
姉のパンツに射精。それを洗面所で手洗いして元に戻す。
こんな変態行為を中学の頃から繰り返している……
風呂に入り着替えを済ませて外へ出ると、門の前で誰かが待っている。
見慣れた顔に、見慣れた制服姿だ。目が合うと、自然に笑みがこぼれる。
「……あ、弟君……おはようございます……」
花穂姉ちゃんの同級生、結城加奈子さんがいる。
建設会社のご令嬢で、誰に対しても物腰柔らかだ。
その容姿たるや、整った顔に艶のある長い黒髪。
肌は透き通るように白く、身体の線が細い。まさにお嬢様と言うに相応しい。
性格は、うちの姉二人とは大違いなのだ。
「加奈子さん、家の前でどうしたの? 姉ちゃんはもう学校行ったけど?」
「これを花穂さんに渡してくれませんか? 生徒会合宿のパンフです。ゴールデンウィーク前半の二日間、新生徒会役員だけで行くんです……」
加奈子さんはそう言って、薄っぺらい生徒会合宿と題されたパンフを手渡してきた。
そういえばこの人、生徒会長のご指名でほぼ無理矢理副会長にされたんだっけ……
「ありがとう。ちょっとこれ、下駄箱の上に置いてくるよ」
「はい。よろしくお願いしますね」
手渡されたパンフを家の中に置いて、加奈子さんと通学路を進んだ。
花穂姉ちゃんとは違ったナチュラルな香り、おそらくシャンプーやコンディショナーの匂いだろう。一歩一歩進むたびにふわりと香りが舞い踊る。
「あの……弟君、ちょっと質問してもいいですか?」
加奈子さんからは青山姉妹の弟という意味で、弟君と呼ばれている。
高く小さめの声で弟君と呼ばれるのが、くすぐったくて心地いい。
「勉強以外の質問なら大丈夫だけど、どうしたの?」
「花穂さんが言ってました。弟君と二人暮らしになって、テッシュの減りが異常に早いことに気づいたと……それと、旧約聖書の創世記三八章、ユダの次男でオナンのお話をされます」
姉ちゃん、なにも知らない親友になにを言ってるんだ……
「か、加奈子さん! 俺、アレルギー性の鼻炎なんだ。だから、テッシュは鼻かむときに使うからね。その旧約聖書ってのは全然知らない!」
「そうでしたか。大変ですね」
「あははは……うんうん。そう、大変なんだ!」
しかし、花穂姉ちゃん……人のこと言えないだろ。
部屋の壁際から時折、艶めかしい声が聴こえてくるのを俺は知っているんだぞ。
自慰行為でティッシュを消費しているのは、絶対俺だけじゃないっ!
◆◆◆◆◆◆
しばらく加奈子さんの隣を歩いて通学路を進むと校舎が見えてきた。
学校が近づくと人通りも多くなる。やはり、加奈子さんは男子の注目を浴びているようだ。花穂姉ちゃんといるときで慣れっこだが、俺への敵意むき出しの視線も感じる……
「あの……弟君、もう一つお聞きしたいのですが……」
真っ白い顔を紅潮させて、モジモジしながら加奈子さんが切り出した。
この時点で嫌な予感しかしない。また花穂姉ちゃんが余計なことを吹き込んだのだろう。
「加奈子さん、聞きにくいことは無理して聞かなくていいよ? もしかして、姉ちゃんが俺に聞いてみろとか言ったんじゃないの!?」
加奈子さんはその場に立ちすくんで、ギュッと目を閉じて言った。
「ギンギンに反り返って、マックス十六センチあるってなんですか!?」
「へ!? は!?」
このお嬢様……こんな往来でいきなりなんてこと言い出すんだっ!
周囲の視線がグサリと矢のように突き刺さる。
この人も一応、校内では人気が高い有名人のひとりなのだ。
妙な噂や誤解を招く前に、人の波から少し早足で距離を置いた。
「……ですから、花穂さんが一言一句違えず弟君に聞くように……」
「ち、ち、力こぶのことだよ、加奈子さん! ほら、俺結構鍛えてるからっ!」
「弟君、鍛えてるんですか?」
「うんうん。毎日ギンギンに鍛えてる。反り返っちゃうよ!」
仰々しく腕を曲げて、力こぶを作るふりをする。
長袖なので力こぶは直接見せられないが……
それにしても、不思議なのは姉がサイズを知っていることだ。
俺でさえ、自分のものを計測したことがないのに……
――花穂姉ちゃん……帰ったらお説教だな……
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