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【本幕・番外編】ばっく・にゅう・ざ・ふゅーちゃー 弐
0.競泳水着の中には男の夢がありますっ!
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【前書き】
※四条春香視点のショートストーリーです。
※主人公側から見て五月二四日、日曜日の出来事になります。
___________________________
わたしは四条春香。姫咲高校三年で生徒会会計、剣道部兼水泳部だ。
剣道部では指南役を務める。指南役と言えば聞こえがいいかもしれない。
つまるところ、団体戦に出場する実力がない上級生だ。
段位こそあれど、剣術の才能はない。だから、他に趣味を見つけ出した。
「四条先生、お願いします」
近所の姫咲スポーツクラブの温水プール。週に何度か足を運ぶ。
水泳指導員のバイトで週三度、一週のうち三度以上は必ず足を運んでいることになる。
指導対象は幼児から中学生までだが……
「君は、本当に泳げないのか?」
プールの中でわたしに手を引かれて、泳ぐ練習をしているのは男子中学生だ。
中学三年だと聞いている。どう考えてもこの男の目的は水泳ではない。
「泳げませんっ!」
嘘をつけ。お前の目線は、わたしの胸元に突き刺さっているではないか。
今日は運が悪いようだ。欠勤が出て、こいつの面倒を見るハメになった。
触れる手も恐怖の対象でしかない。チアノーゼを起こしそうだ……
「よし! あとは自分で泳いでみるんだ。見ておいてやろう」
「ええっ!? もう終わり?」
終わりではなく、限界だ。触れたくない手に触れ続ける恐怖。
それになんだ、お前のブーメランパンツの膨らみは。それが教わる者の態度か。
◇◇◇
姫咲スポーツクラブは学校に近いこともあり、見知った顔がやって来る。
今日は厄日だと思っていたが、最良日でもあるらしい。待ち人来たれり。
指導を終えたわたしはプールサイドを走って、その人物に駆け寄った。
「あれ? 四条先輩来てたんですか」
「指導員のバイトだ。蒼太郎、あれ以来熱は出していないか?」
青山蒼太は、わたしの親友で同門の青山紗月さんの弟だ。
青山姉妹は、この弟をたいそう可愛がっている。
「大丈夫ですよ。これから、鍛えることにしたんですよ」
「それはいいことだ。昔から泳ぎは得意だったな」
蒼太郎は、その容姿も内面もたくましく成長したものだ。
線は細めだが、程よい筋肉質。しかし、競泳パンツが小さいのか、中身が大きいのか……
「先輩……目線が下へ泳いでますよ?」
「あ、いや。すまない……その競泳水着、小さくないか?」
「小さいですよ……飛び出してるとこ見たことあるでしょ!」
更衣室のロッカーの中から蒼太郎にすべて見られていた。
かく言うわたしもロッカーの中の蒼太郎の豪刀を見た。
「ああ、そうだな。何度か拝観したな」
「拝観するほど、ありがたいもんじゃないです……」
プールサイドのベンチに座り、髪を拭きながら蒼太郎の泳ぎを見ている。
しなやかで美しい動きだ。それに、力強く早い。わたしより指導員に向いていそうだ。
この機会に誘ってみるのもいいかもしれない。
「蒼太郎!」
「ん? なんですか先輩」
声を掛けるとプールから出て、こちらへ向かって来る。
男性恐怖症ではあるが、肌をむき出しにした蒼太郎が近づくたびに安心するのはなぜかな。
「指導員のアルバイトが週二回からで募集しているんだが、やってみないか?」
「へえ、指導員ですか。なるほど……ブラコン回避の口実にはいいかもしれない……」
「どうだろう? 無理にとは言わないが」
「前向きに考えてみます! 先輩もいることだし」
蒼太郎も男の子だ。やはり、わたしの胸元をチラチラと気にしている。
そこに興味があるから、わたしと同じアルバイトをしたいだけなのだろうか。
「アザ、消えました? あの二人組は、もう来てませんか? 夏本はもうちょっかい出してませんか? それが心配で……」
ああ、訂正しよう。青山蒼太は、わたしにとって他の男性とは違う。
水着の下に隠れている、迷惑客につけられたアザを気にしているのだ。
「ほぼ、治っている。見せようか?」
「ぶっ! なに言ってんですか!」
「もう、何度も見ているじゃないか」
「そうですけど……ところで、その競泳水着ハイレグ過ぎません?」
「今日はワンサイズ小さいのを着用している。競泳水着はこんなものだ。だから、毛の処理もしている。見ただろう?」
そう言うと、蒼太郎の競泳パンツが盛り上がった……
___________________________
あとがき
※次から新章、「四条先輩爆乳要撃っ」が始まります。
※四条春香視点のショートストーリーです。
※主人公側から見て五月二四日、日曜日の出来事になります。
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わたしは四条春香。姫咲高校三年で生徒会会計、剣道部兼水泳部だ。
剣道部では指南役を務める。指南役と言えば聞こえがいいかもしれない。
つまるところ、団体戦に出場する実力がない上級生だ。
段位こそあれど、剣術の才能はない。だから、他に趣味を見つけ出した。
「四条先生、お願いします」
近所の姫咲スポーツクラブの温水プール。週に何度か足を運ぶ。
水泳指導員のバイトで週三度、一週のうち三度以上は必ず足を運んでいることになる。
指導対象は幼児から中学生までだが……
「君は、本当に泳げないのか?」
プールの中でわたしに手を引かれて、泳ぐ練習をしているのは男子中学生だ。
中学三年だと聞いている。どう考えてもこの男の目的は水泳ではない。
「泳げませんっ!」
嘘をつけ。お前の目線は、わたしの胸元に突き刺さっているではないか。
今日は運が悪いようだ。欠勤が出て、こいつの面倒を見るハメになった。
触れる手も恐怖の対象でしかない。チアノーゼを起こしそうだ……
「よし! あとは自分で泳いでみるんだ。見ておいてやろう」
「ええっ!? もう終わり?」
終わりではなく、限界だ。触れたくない手に触れ続ける恐怖。
それになんだ、お前のブーメランパンツの膨らみは。それが教わる者の態度か。
◇◇◇
姫咲スポーツクラブは学校に近いこともあり、見知った顔がやって来る。
今日は厄日だと思っていたが、最良日でもあるらしい。待ち人来たれり。
指導を終えたわたしはプールサイドを走って、その人物に駆け寄った。
「あれ? 四条先輩来てたんですか」
「指導員のバイトだ。蒼太郎、あれ以来熱は出していないか?」
青山蒼太は、わたしの親友で同門の青山紗月さんの弟だ。
青山姉妹は、この弟をたいそう可愛がっている。
「大丈夫ですよ。これから、鍛えることにしたんですよ」
「それはいいことだ。昔から泳ぎは得意だったな」
蒼太郎は、その容姿も内面もたくましく成長したものだ。
線は細めだが、程よい筋肉質。しかし、競泳パンツが小さいのか、中身が大きいのか……
「先輩……目線が下へ泳いでますよ?」
「あ、いや。すまない……その競泳水着、小さくないか?」
「小さいですよ……飛び出してるとこ見たことあるでしょ!」
更衣室のロッカーの中から蒼太郎にすべて見られていた。
かく言うわたしもロッカーの中の蒼太郎の豪刀を見た。
「ああ、そうだな。何度か拝観したな」
「拝観するほど、ありがたいもんじゃないです……」
プールサイドのベンチに座り、髪を拭きながら蒼太郎の泳ぎを見ている。
しなやかで美しい動きだ。それに、力強く早い。わたしより指導員に向いていそうだ。
この機会に誘ってみるのもいいかもしれない。
「蒼太郎!」
「ん? なんですか先輩」
声を掛けるとプールから出て、こちらへ向かって来る。
男性恐怖症ではあるが、肌をむき出しにした蒼太郎が近づくたびに安心するのはなぜかな。
「指導員のアルバイトが週二回からで募集しているんだが、やってみないか?」
「へえ、指導員ですか。なるほど……ブラコン回避の口実にはいいかもしれない……」
「どうだろう? 無理にとは言わないが」
「前向きに考えてみます! 先輩もいることだし」
蒼太郎も男の子だ。やはり、わたしの胸元をチラチラと気にしている。
そこに興味があるから、わたしと同じアルバイトをしたいだけなのだろうか。
「アザ、消えました? あの二人組は、もう来てませんか? 夏本はもうちょっかい出してませんか? それが心配で……」
ああ、訂正しよう。青山蒼太は、わたしにとって他の男性とは違う。
水着の下に隠れている、迷惑客につけられたアザを気にしているのだ。
「ほぼ、治っている。見せようか?」
「ぶっ! なに言ってんですか!」
「もう、何度も見ているじゃないか」
「そうですけど……ところで、その競泳水着ハイレグ過ぎません?」
「今日はワンサイズ小さいのを着用している。競泳水着はこんなものだ。だから、毛の処理もしている。見ただろう?」
そう言うと、蒼太郎の競泳パンツが盛り上がった……
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あとがき
※次から新章、「四条先輩爆乳要撃っ」が始まります。
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