姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛

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【本幕・第7章】あねしーくれっとっ

4.隣人の秘密は従姉が知っていましたっ!

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まえがき
※ネタバレ注意…この話で、あるヒロインの本名が明かされます。
____________________________

 台所から聞こえる調理音と共に、ベーコンを焼いた香りが食欲を刺激する。
花穂姉ちゃんが、四人分の朝御飯を用意しているようだ。
昨晩は部屋に戻らず、塁姉と美果ちゃんを囲むようにリビングで寝た。
目が覚めて、すぐ左右を見たが二人は寝転んでいない。

「ソータ、おやま!」
「……ん? ああ、よく寝た。リビングで寝たの初めてだな……ん!?」
「蒼太、朝っぱらからこんなもん美果に見せるなよ! こうしてやるっ」

 掛布団が奪われ、朝の生理現象のタワーが塁姉のデコピンで攻撃されている。

「やめろ、塁姉。ふぁっ……ねむっ! 朝はやっぱり出さないとパンパンだ……」
「パンパンして出すって朝からシモネタか? 蒼太寝ぼけてんのか?」
「なに言ってんだよ。オシッコに決まってんだろ!」

 塁姉の行動パターンがうちの姉二人と似ているのは血筋だろうな。
そんなことを考えつつ、トイレと洗顔を済ませ食卓を囲んだ。




 五月二三日。土曜日の午前八時前。
花穂姉ちゃん製のアーモンドトーストとベーコンつき目玉焼きを四人で食べる。
俺は土曜の朝が大好きだ。今日も明日も休みという心理的余裕があるからだろう。

「塁姉の仕事ってなんだっけ? わたし聞いたことあったかな?」
「え? 紗月から聞いてない? アプリ開発する会社の事務員だよ」

 塁姉が事務員をしているという情報は、親から聞いて知っていた。
美果ちゃんが一歳になった昨年、仕事を始めたと言ってた気がする。

「どんな会社か聞くのは初めてだな。俺も知らなかった」
「結城のおじさんの口利きで入社できたんだ。結城ソフトウェア開発だけど?」

 俺はコーヒーをすすりながら、花穂姉ちゃんはパンをかじりながら顔を見合わせた。
塁姉の口から出た結城のおじさんは、加奈子さんの父親の結城社長だ。

「加奈ちゃんのお父さんって他にも会社してたっけ?」
「俺、アプリとか使わないからな……」
「結城建業の社長のお兄さんだ。加奈子ちゃんのおじさんの会社」

 つまり、結城家は兄も弟も会社の社長というわけか。
実の父親かもしれない結城社長に兄がいるとは知らなかったな。

「あっ、加奈ちゃんから一回だけ聞いたことがある! 確か歳が離れたお兄さんで、既婚だけど子供はいないんだっけ?」
「そうそう。うちの社長は五十代だ。子供は養子をもらってるからひとりいるぞ」








◇◇◇








 午前一〇時。食後しばらく談笑したとあとで、塁姉が帰宅することになった。
俺と花穂姉ちゃんは玄関で靴を履く塁姉と美果ちゃんを見送る。
トートバッグを置いたまま、塁姉は美果ちゃんを抱っこして俺に声を掛けてきた。

「悪い、蒼太。ちょっと鞄を車まで運んでくれ」
「ああ、わかった」
「それじゃあ塁姉、またね」
「花穂、また夏休みに紗月と遊びに来な。またなっ!」

 花穂姉ちゃんと挨拶を交わしたあと、塁姉は玄関を出た。
俺は鞄を持ってそれに続く。カーポートには白い軽自動車が駐車してある。
鞄を乗せるためにそこへ向かって歩いているのだが、塁姉は全然別の方向へ歩いて行く。

「おい、塁姉! なんで車に乗らずに道路に出るんだ?」
「ああ、悪いな。ちょっと野暮用があるんだ。蒼太もついて来い」

 美果ちゃんを抱きかかえたままスタスタと歩いて行った先は……
お隣りさんの家だった。俺の持つ鞄にお届けものでも入っているのだろう。呼び鈴を鳴らし、家の主を呼び出す塁姉。すぐに中から足音が聞こえた。

「おはようございます、副社長。頼まれていた資料持ってきました。蒼太、鞄からクリアファイル出してくれ……って、どうした? ハトが豆鉄砲食らったような顔して!」
「あら? 蒼太君、玄関からは久しぶりね。予想外に短い別れだったわ」
「なんで来栖が副社長? 俺、数秒前から意味がわからん」
「結城ソフトウェア開発経営者の養子が副社長だ。蒼太、お前知らなかったのか?」
「来栖がアプリ開発してるのは知ってたけど……」

 これ、うちの変態姉妹は知っているのだろうか……
突然の出来事に少々頭の中を整理する必要がありそうだ。あれこれと思考を巡らせていると、目の前で来栖はニコリと不敵な笑みを浮かべる。

「改めて初めまして、蒼太君。よ」
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