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【本幕・第7章】あねしーくれっとっ
3.ブラコン姉妹との血縁の謎解明ですっ!
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まえがき
※注意…この話は主人公蒼太の血縁のネタバレが含まれます。
__________________________
五月二二日、金曜日の午後九時過ぎ。
青山家で一番広い居間に客用の布団を敷いて、塁姉は娘を寝かしつけている。なぜか俺も川の字状態で、美果ちゃんを挟むようにゴロ寝タイムだ。
「ソータ、おはなし」
美果ちゃんから、俺へのリクエスト。名前だけ知っている昔話は多数ある。しかし、子供に言い聞かせるには、内容を知らないと話にならない。ここは、あれだ。ド定番の桃太郎さんにご登場いただくしかあるまい。
「昔々、あるところに……おじいさんとおばあさんが住んでいました」
「おおう、おじいとおばあがいい歳こいて、ヌッポシ愛し合っていたと?」
塁姉からの余計なちゃちゃが入るが、気にせず進めようか。
美果ちゃんは、眠そうな顔で俺を見上げている。
「……おばあさんは川へ洗濯に……おじいさんは山――」
「おじいさんは山にしばかれに行きましたっ! めでたしめでたし。はい、美果もう寝ようね」
「ソータ……おじい……しばか……れ」
まさかのおじいさん強制流血エンド。全然めでたくない終わり方だな。
タイミングを見計らって話を切ったようだ。美果ちゃんが寝息を立て始めた。
「塁姉……話が滅茶苦茶だな」
「いいじゃん。美果眠そうだったから。それよりここからは……」
「ん? なに?」
「大人の時間の始まりっ!」
午後一〇時前。眠りに入るには、少しばかり早い。
花穂姉ちゃんは入浴を済ませ、二階の自室へ戻った。
俺は消灯した居間で、塁姉が言う大人の時間の真っ最中だ。
揉んだり、突いたりする。
「ここか? 塁姉、気持ちいいか?」
「んん……ああっ、気持ちいい……もっとそこ突いて、蒼太」
「こうか? ここがいいの?」
「そ、そこっ……すごくいいっ……出ちゃいそう」
布団にうつ伏せる塁姉の小さな肩と背中をマッサージ中だ。
デスクワーク族の職業病と言うべきか、肩凝りも首の凝りもひどい。
「おい、変な声出すなって。なにが出るんだよ……」
「おなら」
クスクスと小さな声で笑いながら、起き上がって俺の肩に寄り掛かって来る。
小柄でつり目、肌は白く、顔は青山姉妹と少し似ている。
「塁姉、すごい肩凝りだな。仕事大丈夫か? 痩せた気がするけど……」
「事務職は肩凝る。痩せたのはダイエットだって」
「……で、なんでくっついてるんだ?」
「蒼太は恋愛しないのか?」
「しないわけじゃない。そういうのが、よくわからない」
「ほら。チューしてもいいぞ」
暗がりで俺を見上げる塁姉。
昔はきつめの顔と性格だったが、一児の母になってずいぶん変わったもんだ。エクステをつけた明るめの髪、透き通るような白い肌。桜色の唇が誘っているように見えて……いや、誘っていると確信した。
「塁姉っ」
「こらっ! 蒼太、お前の悪いところはそこだ!」
唇を近づけた瞬間、塁姉の口から出た意外な言葉。
ポコンと軽めのチョップを額に押しつけられつつ、鋭い目で睨まれる。
「え?」
「そうやって、簡単に雰囲気に飲まれるな。未だに紗月や花穂のブラコン行動に巻き込まれてるんじゃないのか? 蒼太、恋愛感情がなくても人間は生きていけるし、生殖行為も可能だ」
高校入学前後から激しさを増した姉二人の行動について塁姉に相談してみた。
花穂姉ちゃんはもちろん、あの紗月姉でさえ塁姉には逆らわないからだ。
「ベッドに縛りつけられて、避妊具つけられそうになったり……風呂で股間を顔面に押しつけられたり……携帯電話も破壊されたな」
「相変わらずの馬鹿姉妹だな。蒼太の恋愛感情の有無なんて、あいつらがどうやって推し量れるんだ? お前は、それをおかしいと思わないのか? 疑問に思わないか? 一応、戸籍上は姉弟なんだぞ……」
「戸籍上は……か? 血縁はどうなんだ? 俺と塁姉や姉二人は……」
「蒼太と青山家に血縁は……ない。これ以上、なにも聞くな」
「教えてくれ。塁姉! 俺は、なんでこの家に来――ぶっ」
吐き出しかけた言葉は、塁姉の柔らかな唇により遮られた。
青山家の姉妹、紗月と花穂。薄々感じていたが、俺との血縁はなかった。
「……雰囲気に流されてるのはどっちだよ……」
「今のは、美果をお風呂に入れてくれたお礼! あと口封じ!」
ここで気づいたことがある。青山塁は俺にとって、敬慕する従姉でしかない。
愛情欲も肉体欲もまったく感じない。キスもその場の雰囲気だけの行為だ。
「塁姉、ひとつ質問」
「なに? さっきの血縁とかの話以外な」
「セックスって気持ちいいのか?」
「山にしばかれに行く?」
※注意…この話は主人公蒼太の血縁のネタバレが含まれます。
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五月二二日、金曜日の午後九時過ぎ。
青山家で一番広い居間に客用の布団を敷いて、塁姉は娘を寝かしつけている。なぜか俺も川の字状態で、美果ちゃんを挟むようにゴロ寝タイムだ。
「ソータ、おはなし」
美果ちゃんから、俺へのリクエスト。名前だけ知っている昔話は多数ある。しかし、子供に言い聞かせるには、内容を知らないと話にならない。ここは、あれだ。ド定番の桃太郎さんにご登場いただくしかあるまい。
「昔々、あるところに……おじいさんとおばあさんが住んでいました」
「おおう、おじいとおばあがいい歳こいて、ヌッポシ愛し合っていたと?」
塁姉からの余計なちゃちゃが入るが、気にせず進めようか。
美果ちゃんは、眠そうな顔で俺を見上げている。
「……おばあさんは川へ洗濯に……おじいさんは山――」
「おじいさんは山にしばかれに行きましたっ! めでたしめでたし。はい、美果もう寝ようね」
「ソータ……おじい……しばか……れ」
まさかのおじいさん強制流血エンド。全然めでたくない終わり方だな。
タイミングを見計らって話を切ったようだ。美果ちゃんが寝息を立て始めた。
「塁姉……話が滅茶苦茶だな」
「いいじゃん。美果眠そうだったから。それよりここからは……」
「ん? なに?」
「大人の時間の始まりっ!」
午後一〇時前。眠りに入るには、少しばかり早い。
花穂姉ちゃんは入浴を済ませ、二階の自室へ戻った。
俺は消灯した居間で、塁姉が言う大人の時間の真っ最中だ。
揉んだり、突いたりする。
「ここか? 塁姉、気持ちいいか?」
「んん……ああっ、気持ちいい……もっとそこ突いて、蒼太」
「こうか? ここがいいの?」
「そ、そこっ……すごくいいっ……出ちゃいそう」
布団にうつ伏せる塁姉の小さな肩と背中をマッサージ中だ。
デスクワーク族の職業病と言うべきか、肩凝りも首の凝りもひどい。
「おい、変な声出すなって。なにが出るんだよ……」
「おなら」
クスクスと小さな声で笑いながら、起き上がって俺の肩に寄り掛かって来る。
小柄でつり目、肌は白く、顔は青山姉妹と少し似ている。
「塁姉、すごい肩凝りだな。仕事大丈夫か? 痩せた気がするけど……」
「事務職は肩凝る。痩せたのはダイエットだって」
「……で、なんでくっついてるんだ?」
「蒼太は恋愛しないのか?」
「しないわけじゃない。そういうのが、よくわからない」
「ほら。チューしてもいいぞ」
暗がりで俺を見上げる塁姉。
昔はきつめの顔と性格だったが、一児の母になってずいぶん変わったもんだ。エクステをつけた明るめの髪、透き通るような白い肌。桜色の唇が誘っているように見えて……いや、誘っていると確信した。
「塁姉っ」
「こらっ! 蒼太、お前の悪いところはそこだ!」
唇を近づけた瞬間、塁姉の口から出た意外な言葉。
ポコンと軽めのチョップを額に押しつけられつつ、鋭い目で睨まれる。
「え?」
「そうやって、簡単に雰囲気に飲まれるな。未だに紗月や花穂のブラコン行動に巻き込まれてるんじゃないのか? 蒼太、恋愛感情がなくても人間は生きていけるし、生殖行為も可能だ」
高校入学前後から激しさを増した姉二人の行動について塁姉に相談してみた。
花穂姉ちゃんはもちろん、あの紗月姉でさえ塁姉には逆らわないからだ。
「ベッドに縛りつけられて、避妊具つけられそうになったり……風呂で股間を顔面に押しつけられたり……携帯電話も破壊されたな」
「相変わらずの馬鹿姉妹だな。蒼太の恋愛感情の有無なんて、あいつらがどうやって推し量れるんだ? お前は、それをおかしいと思わないのか? 疑問に思わないか? 一応、戸籍上は姉弟なんだぞ……」
「戸籍上は……か? 血縁はどうなんだ? 俺と塁姉や姉二人は……」
「蒼太と青山家に血縁は……ない。これ以上、なにも聞くな」
「教えてくれ。塁姉! 俺は、なんでこの家に来――ぶっ」
吐き出しかけた言葉は、塁姉の柔らかな唇により遮られた。
青山家の姉妹、紗月と花穂。薄々感じていたが、俺との血縁はなかった。
「……雰囲気に流されてるのはどっちだよ……」
「今のは、美果をお風呂に入れてくれたお礼! あと口封じ!」
ここで気づいたことがある。青山塁は俺にとって、敬慕する従姉でしかない。
愛情欲も肉体欲もまったく感じない。キスもその場の雰囲気だけの行為だ。
「塁姉、ひとつ質問」
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「山にしばかれに行く?」
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