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【本幕・第7章】あねしーくれっとっ
1.従姉が我が家にお泊りしに来ましたっ!
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まえがき
※この新章から、従姉の青山塁が登場します。
※ここから最終話に向け、ネタバレ要素が含まれてきます。
__________________________
五月二二日、金曜日の午後七時半。
来栖邸を出たあと、寝不足分を補てんするように長めの昼寝をして六時前に起床。
起きてすぐに花穂姉ちゃんの横で夕飯の支度を整えた。
こうして姉ちゃんと食卓を囲むのは、ずいぶん久しぶりに思える。
「今回のテストはどう? 一位取れそう?」
「一位!? 無理かな……わたしも加奈ちゃんも二位か三位に入るぐらいだよ」
もちろん、わかっていて聞いた。
一位という言葉に過敏な反応を示すのも想定内。花穂姉ちゃんも認めたくないのだろうが、来栖有紀は越えられない分厚い壁のようだ。
「姉ちゃんでより成績いい奴がいるのか……」
「いるっ! 加奈ちゃんでも毎回勝てない。隣りに住む来栖さん」
「生徒会役員の読書ばっかりしてる眼鏡ぼっちの人だよな?」
「教室や生徒会室で声は掛けてるんだけどね、反応が薄いというか……」
一応、花穂姉ちゃんの性格からして、ああいうタイプは放っておけないはずだ。加奈子さんもそうだ。どちらかというと、二人は世話焼きタイプなのだ。だからこそ、俺はこの二人の姉に存分に甘えている。そこから脱却せねばならない。
「俺そういう人、ちょっと苦手だな……」
「蒼太の周囲は里志君とか鈴ちゃんとか、騒がしいタイプ多いからね」
こんな話、来栖の耳に聞こえてたら、関節技のオンパレードだろうな。
しかし、これで確信した。俺と来栖有紀の関わりは、姉に一切漏れていない。
◇◇◇
午後八時、食後の片づけを手伝っているとき、インターホンが鳴った。
モニターに映っているのは見知った顔の親子の姿。すぐに玄関へおもむいた。
「久しぶり! 蒼太、元気だったか?」
「塁姉! 久しぶりだな。美果ちゃんも」
青山塁は、父さんの兄のひとり娘だ。従姉にあたる。隣町の青山家の実家で祖父母と暮らす、二十三歳のシングルマザーである。塁姉の娘の美果ちゃんは、今年で二歳になるはずだ。
塁姉は、白無地のトレーナーとスキニーデニム姿。
美果ちゃんは、ピンクのキャラクターもののスウェット上下を着ている。
「ソータちん、でかちん」
「おい、変なこと教えるなよな……紗月姉のしわざだな?」
やはり、あの姉は無垢な子供にも容赦なく下品だ。
そもそも、紗月姉の強烈粗暴な性格は塁姉の影響が大きいと言える。
「蒼太の話を紗月からいろいろ聞いてさ」
「とりあえず、あがってくれよ。花穂姉ちゃんもいるから」
前に会ったのは年末年始だった。
そのときより髪が伸びた……違うな、エクステか。塁姉は一五三センチと細見でペチャパイだが、昔から紗月姉も一目置くやんちゃ娘だ。
「あっ、塁姉と美果ちゃんだ。久しぶりっ!」
二人をリビングへ案内すると、花穂姉ちゃんが台所から出て来た。
セミロングの髪を束ねて、薄ピンクのエプロンと上下黒の部屋着姿だ。最近よく思うのだが、花穂姉ちゃんの体型が紗月姉に似てきた。まあ、要するに胸の成長が著しいということだ。
「花穂、お久っ! 先月から蒼太と同棲生活だって?」
「いや、同棲じゃないからな!」
「掃除、洗濯、食事、蒼太のお世話。毎日が戦争だよ。塁姉、お正月以来だね」
花穂姉ちゃんが紗月姉をお姉ちゃんと呼ばないのは、昔から塁姉と分けるためである。俺もそうだ。俺の場合、塁、紗月、花穂といるから、名前のあとに姉を付けて呼ぶ。
「今日はこっちの町に用事があってさ、近くまで来たから寄ったんだ」
「塁姉、今日は泊まって行きなよ。着替えはわたしの服でも紗月姉の服でもサイズ合うの着ればいいよ。美果ちゃん、もうお風呂の時間じゃないの?」
食卓を囲むように椅子に腰掛け、お茶をすすりながら花穂姉ちゃんが言った。従姉の塁姉は時折ぶらりと我が家に立ち寄り、姉たちが宿泊を勧める。
「ソータ、お風呂!」
「ん? 俺がお風呂?」
「そうだな、お言葉に甘えてお泊りしよっか。ね、美果? 蒼太とお風呂入りたいか?」
「ソータ、お風呂!」
美果ちゃんをお風呂に入れてあげたことは何度かある。
浴槽で膝の上に乗っけて、遊ばせてあげるだけでいいのだが……
「しょうがないな……俺と入るか?」
「おっ、蒼太。親子丼希望か!?」
※この新章から、従姉の青山塁が登場します。
※ここから最終話に向け、ネタバレ要素が含まれてきます。
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五月二二日、金曜日の午後七時半。
来栖邸を出たあと、寝不足分を補てんするように長めの昼寝をして六時前に起床。
起きてすぐに花穂姉ちゃんの横で夕飯の支度を整えた。
こうして姉ちゃんと食卓を囲むのは、ずいぶん久しぶりに思える。
「今回のテストはどう? 一位取れそう?」
「一位!? 無理かな……わたしも加奈ちゃんも二位か三位に入るぐらいだよ」
もちろん、わかっていて聞いた。
一位という言葉に過敏な反応を示すのも想定内。花穂姉ちゃんも認めたくないのだろうが、来栖有紀は越えられない分厚い壁のようだ。
「姉ちゃんでより成績いい奴がいるのか……」
「いるっ! 加奈ちゃんでも毎回勝てない。隣りに住む来栖さん」
「生徒会役員の読書ばっかりしてる眼鏡ぼっちの人だよな?」
「教室や生徒会室で声は掛けてるんだけどね、反応が薄いというか……」
一応、花穂姉ちゃんの性格からして、ああいうタイプは放っておけないはずだ。加奈子さんもそうだ。どちらかというと、二人は世話焼きタイプなのだ。だからこそ、俺はこの二人の姉に存分に甘えている。そこから脱却せねばならない。
「俺そういう人、ちょっと苦手だな……」
「蒼太の周囲は里志君とか鈴ちゃんとか、騒がしいタイプ多いからね」
こんな話、来栖の耳に聞こえてたら、関節技のオンパレードだろうな。
しかし、これで確信した。俺と来栖有紀の関わりは、姉に一切漏れていない。
◇◇◇
午後八時、食後の片づけを手伝っているとき、インターホンが鳴った。
モニターに映っているのは見知った顔の親子の姿。すぐに玄関へおもむいた。
「久しぶり! 蒼太、元気だったか?」
「塁姉! 久しぶりだな。美果ちゃんも」
青山塁は、父さんの兄のひとり娘だ。従姉にあたる。隣町の青山家の実家で祖父母と暮らす、二十三歳のシングルマザーである。塁姉の娘の美果ちゃんは、今年で二歳になるはずだ。
塁姉は、白無地のトレーナーとスキニーデニム姿。
美果ちゃんは、ピンクのキャラクターもののスウェット上下を着ている。
「ソータちん、でかちん」
「おい、変なこと教えるなよな……紗月姉のしわざだな?」
やはり、あの姉は無垢な子供にも容赦なく下品だ。
そもそも、紗月姉の強烈粗暴な性格は塁姉の影響が大きいと言える。
「蒼太の話を紗月からいろいろ聞いてさ」
「とりあえず、あがってくれよ。花穂姉ちゃんもいるから」
前に会ったのは年末年始だった。
そのときより髪が伸びた……違うな、エクステか。塁姉は一五三センチと細見でペチャパイだが、昔から紗月姉も一目置くやんちゃ娘だ。
「あっ、塁姉と美果ちゃんだ。久しぶりっ!」
二人をリビングへ案内すると、花穂姉ちゃんが台所から出て来た。
セミロングの髪を束ねて、薄ピンクのエプロンと上下黒の部屋着姿だ。最近よく思うのだが、花穂姉ちゃんの体型が紗月姉に似てきた。まあ、要するに胸の成長が著しいということだ。
「花穂、お久っ! 先月から蒼太と同棲生活だって?」
「いや、同棲じゃないからな!」
「掃除、洗濯、食事、蒼太のお世話。毎日が戦争だよ。塁姉、お正月以来だね」
花穂姉ちゃんが紗月姉をお姉ちゃんと呼ばないのは、昔から塁姉と分けるためである。俺もそうだ。俺の場合、塁、紗月、花穂といるから、名前のあとに姉を付けて呼ぶ。
「今日はこっちの町に用事があってさ、近くまで来たから寄ったんだ」
「塁姉、今日は泊まって行きなよ。着替えはわたしの服でも紗月姉の服でもサイズ合うの着ればいいよ。美果ちゃん、もうお風呂の時間じゃないの?」
食卓を囲むように椅子に腰掛け、お茶をすすりながら花穂姉ちゃんが言った。従姉の塁姉は時折ぶらりと我が家に立ち寄り、姉たちが宿泊を勧める。
「ソータ、お風呂!」
「ん? 俺がお風呂?」
「そうだな、お言葉に甘えてお泊りしよっか。ね、美果? 蒼太とお風呂入りたいか?」
「ソータ、お風呂!」
美果ちゃんをお風呂に入れてあげたことは何度かある。
浴槽で膝の上に乗っけて、遊ばせてあげるだけでいいのだが……
「しょうがないな……俺と入るか?」
「おっ、蒼太。親子丼希望か!?」
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