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【本幕・第6章】あねとん堰止め乱撃っ 中編!
5.下心満載してお泊りの約束しますねっ!
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ベッドの上で背を向け、水着の肩紐を落とした来栖は秘密を教えると言う。
昨日は正面から脱がせ、今日は背面から脱がせる。その違いはなんだろうか。
「おい……来栖! これは……」
「――気持ち悪い……かな?」
それは、水着を少し下にずらすだけで現れた。一〇センチ程の傷痕が見える。
幅は一センチ未満だが、白くきれいな背中には不相応な傷だ。
その傷を取り囲むように、薄く細い線のような傷痕がいくつも見受けられる。
「なんだ、この傷?」
「父親からの虐待痕なの。わたしはね、保護されて児童養護施設で育ったのよ。母は幼い頃に病死したから、祖父の援助で学校に通っていたの」
「今の整形外科手術なら消せるはずだぞ?」
「消さないわ……消せば記憶が風化するし、赦したことになってしまう。負けた気がする」
撫でるように背中の傷痕に触れてみると、滑らかな肌と傷痕の差がよくわかる。
傷を掘り返したくないので聞かないが、これは素手で殴られた痕ではない。
こんなものを見せられて、俺ができることがあるのだろうか……
「さあ、テスト勉強を続け……ひゃっ! な、なに!?」
来栖の二の腕を掴み、背中の傷痕に口づけてみた。
傷痕に舌を這わせるように走らせる。手で触れるより凹凸感がはっきりする。
「これ見せられて、俺がお前にしてあげられることが、思い浮かばない」
「蒼太君、くすぐったいよ」
「来栖! この家は昔――」
「今はその話をしないで……テスト勉強をしないとね」
スルリと水着の肩紐を上げて、痛々しい虐待痕は見えなくなった。
ズキズキとモヤモヤ、そんな気分だ。怒りと悲哀を来栖から感じ取った。
体の傷を消してもいいと思える日が、来るのだろうか?
心に残り続ける傷が癒える日は、いつか来るのだろうか?
◇◇◇
午後八時。来栖による独特の指導が続いている。
来栖は先に必ず答えを教える。教えたあとで、なぜその答えになるのかを説く。
口調はいたって穏やかで、厳しい言葉が出てくることが一切ない。
「うおっ! これはすごい! 数学が全部解けたぞ」
「君は結城加奈子さんの弟でしょ? 姉があれだけ秀才なら、あなたも伸びるはずだわ」
花穂姉ちゃんは、同族嫌悪と嫉妬心から嫌っているが、加奈子さんは秀才だと認めている。そもそも、加奈子さんは実の姉だから、来栖が嫉妬する対象にならないようだ。
「何位ぐらいに入れる?」
一学年三〇〇人前後、入学間もない頃の実力テストは二三七位だった。
これ以下の人々に申し訳ないのだが、中の下ということだ。
「苦手科目の補強と、得意科目の増強で五〇位以内は大丈夫よ」
「よし、二〇位以内目指すぞ! 二〇位入ったら、ご褒美くれるか?」
「ご褒美? 変態凌辱プレイで、わたしをズタボロに弄ぶ権利でいい?」
「いや……ご褒美は、お前が普通の服着ることでいいや……」
あんな傷痕見せておいて、そんなことができるか。
問題はこの来栖有紀に、愛情欲と肉体欲の両方を感じていることだ。
つまり、姉たちと同じ接触行為は非常にまずい。理性の境界線を突破するかもしれない。
午後九時を過ぎ、テスト勉強が終わった。
明日から三日間はテスト期間となる。来栖の提案でここで昼食を済ませ、勉強することになった。その間のテレビ電話着信については、教室や図書館の映像で誤魔化す計略だ。
「蒼太君、ひとつ聞いていい?」
「ん? なに?」
「君は今、わたしのことをどう思ってるの?」
「変態で天才で変人だろ」
それを聞いた来栖は腕を絡めるように寄り添って来た。
俺の胸の辺りに耳を当てて、なにかひとり言をつぶやいている。
「わたしは蒼太君大好きよ!」
「俺は……」
来栖有紀の学校での姿を知っている。知らない頃は地味で態度の悪い女だと思っていた。こうして知ってしまうと、学校での姿が孤独に見えて……複雑な気分だ。
「君の心拍数が少しあがった。声のトーンも高くなった。照れてるの?」
「正直言うと、来栖の孤独感を考えると……よくわからない気持ちになる」
寄り添うように密着した来栖が、さらに距離を詰めて来た。頬と髪、腕と胸、膝同士が触れ合うゼロ距離、パンツ内は牙を向き天を貫く勢いだ。
「孤独には慣れてる。陰口でぼっち呼ばわりされてもいいんだよ……」
「……来栖……」
同情なのか、愛情なのかはわからない。
わからないが、気づくと来栖を抱き寄せている。
気づくと来栖の口に、自分の口を重ねている。
「蒼太君。明日、泊まってくれない?」
昨日は正面から脱がせ、今日は背面から脱がせる。その違いはなんだろうか。
「おい……来栖! これは……」
「――気持ち悪い……かな?」
それは、水着を少し下にずらすだけで現れた。一〇センチ程の傷痕が見える。
幅は一センチ未満だが、白くきれいな背中には不相応な傷だ。
その傷を取り囲むように、薄く細い線のような傷痕がいくつも見受けられる。
「なんだ、この傷?」
「父親からの虐待痕なの。わたしはね、保護されて児童養護施設で育ったのよ。母は幼い頃に病死したから、祖父の援助で学校に通っていたの」
「今の整形外科手術なら消せるはずだぞ?」
「消さないわ……消せば記憶が風化するし、赦したことになってしまう。負けた気がする」
撫でるように背中の傷痕に触れてみると、滑らかな肌と傷痕の差がよくわかる。
傷を掘り返したくないので聞かないが、これは素手で殴られた痕ではない。
こんなものを見せられて、俺ができることがあるのだろうか……
「さあ、テスト勉強を続け……ひゃっ! な、なに!?」
来栖の二の腕を掴み、背中の傷痕に口づけてみた。
傷痕に舌を這わせるように走らせる。手で触れるより凹凸感がはっきりする。
「これ見せられて、俺がお前にしてあげられることが、思い浮かばない」
「蒼太君、くすぐったいよ」
「来栖! この家は昔――」
「今はその話をしないで……テスト勉強をしないとね」
スルリと水着の肩紐を上げて、痛々しい虐待痕は見えなくなった。
ズキズキとモヤモヤ、そんな気分だ。怒りと悲哀を来栖から感じ取った。
体の傷を消してもいいと思える日が、来るのだろうか?
心に残り続ける傷が癒える日は、いつか来るのだろうか?
◇◇◇
午後八時。来栖による独特の指導が続いている。
来栖は先に必ず答えを教える。教えたあとで、なぜその答えになるのかを説く。
口調はいたって穏やかで、厳しい言葉が出てくることが一切ない。
「うおっ! これはすごい! 数学が全部解けたぞ」
「君は結城加奈子さんの弟でしょ? 姉があれだけ秀才なら、あなたも伸びるはずだわ」
花穂姉ちゃんは、同族嫌悪と嫉妬心から嫌っているが、加奈子さんは秀才だと認めている。そもそも、加奈子さんは実の姉だから、来栖が嫉妬する対象にならないようだ。
「何位ぐらいに入れる?」
一学年三〇〇人前後、入学間もない頃の実力テストは二三七位だった。
これ以下の人々に申し訳ないのだが、中の下ということだ。
「苦手科目の補強と、得意科目の増強で五〇位以内は大丈夫よ」
「よし、二〇位以内目指すぞ! 二〇位入ったら、ご褒美くれるか?」
「ご褒美? 変態凌辱プレイで、わたしをズタボロに弄ぶ権利でいい?」
「いや……ご褒美は、お前が普通の服着ることでいいや……」
あんな傷痕見せておいて、そんなことができるか。
問題はこの来栖有紀に、愛情欲と肉体欲の両方を感じていることだ。
つまり、姉たちと同じ接触行為は非常にまずい。理性の境界線を突破するかもしれない。
午後九時を過ぎ、テスト勉強が終わった。
明日から三日間はテスト期間となる。来栖の提案でここで昼食を済ませ、勉強することになった。その間のテレビ電話着信については、教室や図書館の映像で誤魔化す計略だ。
「蒼太君、ひとつ聞いていい?」
「ん? なに?」
「君は今、わたしのことをどう思ってるの?」
「変態で天才で変人だろ」
それを聞いた来栖は腕を絡めるように寄り添って来た。
俺の胸の辺りに耳を当てて、なにかひとり言をつぶやいている。
「わたしは蒼太君大好きよ!」
「俺は……」
来栖有紀の学校での姿を知っている。知らない頃は地味で態度の悪い女だと思っていた。こうして知ってしまうと、学校での姿が孤独に見えて……複雑な気分だ。
「君の心拍数が少しあがった。声のトーンも高くなった。照れてるの?」
「正直言うと、来栖の孤独感を考えると……よくわからない気持ちになる」
寄り添うように密着した来栖が、さらに距離を詰めて来た。頬と髪、腕と胸、膝同士が触れ合うゼロ距離、パンツ内は牙を向き天を貫く勢いだ。
「孤独には慣れてる。陰口でぼっち呼ばわりされてもいいんだよ……」
「……来栖……」
同情なのか、愛情なのかはわからない。
わからないが、気づくと来栖を抱き寄せている。
気づくと来栖の口に、自分の口を重ねている。
「蒼太君。明日、泊まってくれない?」
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