姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛

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【本幕・第5章】あねしゃんぶる連撃っ 前編!

5.夜の罰ゲームは台詞付きのキスですっ!

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 新築から間もない青山邸わがやの浴室は無駄に広い。
その広さが今回は仇となったようだ。姉は手をつく壁に届かなかった。
鏡に映し出された姿は、交わる前の男女が抱擁するかのような状態だ。

「セーフ、危なかったな! 姉ちゃん」
「両手がアウトだよ……でも、助かった。ありがと蒼太」
「うん、早く流してくれよ。次、俺洗うからさ」
「……で、このいやらしい手はいつ離すのかな?」

 背後から抱きつくように、左手は姉の左胸を、右手は股の間に触れている。
柔らかい感触と体温が両手の平に伝わってくる。
左は先端の突起をとらえ、右は未踏の地をとらえているが……
毛の感触以外は、どこがどうなっているのか未知だ。

「うわっ! ごめん!」
「別にいいよ。前も寝ぼけて触ったくせに……」

 前回も今回も不慮の事故だ。触ろうと思って触ったのではない。
しかし、目の前の花穂姉ちゃんは、冷静な言葉と裏腹な表情を見せている。

「姉ちゃん?」
「蒼太の手大きいね。恥ずかしいけど、なんだか嬉しいな……」

 バスチェアに腰掛けてシャワーを流す姉の顔は、明らかに照れている。
ここで大概の男なら、もう一度背後から抱きすくめ一気に行為に移行するだろう。
しかし、俺は花穂姉ちゃんの体に反応が薄く、肉体欲がない。
残念無念蒼太チンなのだ。







◇◇◇








 午後九時過ぎ。入浴後、花穂姉ちゃんの部屋でテスト勉強開始。
俺に勉強を教えながら、自らの課題や勉強をサクサク済ませている。
本当にこの姉は、頭と容姿だけは最高なのだと実感する。

「なあ、姉ちゃんって学年一位じゃないの?」

 姫咲高校はテストの採点が全教科終わると、上位五〇名だけが掲示される。
各学年が二四〇名前後、その中で花穂姉ちゃんと加奈子さんは上位らしい。

「え? 一位じゃないよ。一位は隣りの――」
「まさか、加奈子さんが一番なのか?」
「ううん。加奈ちゃんとは同じぐらいかなっ」
「俺、どっちかが学年一番だと思ってた。中学の頃そうだっただろ?」
「うーん。まあね。上には上がいるってことだよ」

 この姉の頭の良さを昔から知っている分、想像できないが……
花穂姉ちゃんや加奈子さんより、さらに上がいるということだ。

 話が一段落すると、もう筆を走らせている。
いつの間にか、ノートが字でいっぱいだ。
花穂姉ちゃんの集中力は凄まじい。鬼気迫るものを感じる。
ちょっと実験をしてみようか。

「花穂姉ちゃん、愛してる!」
「アイスクリーム食べたいなら、冷蔵庫にお姉ちゃんのあるから食べていいよ」

 どういう変換機能が頭に搭載されているのか、おかげで俺はアイスをゲット。
今回のテスト勉強は、すごく力が入っている気がする。

 どこかいつもと様子が違う。まるで勝負に挑む人間の顔つきだ。
姉と加奈子さんは、切磋琢磨してきた仲だが、成績で争うような仲ではない。
時には手を取り合って、共にテスト勉強をする姿も目にしたことがある。








 午後一一時半、今日のテスト勉強は終わりを迎えた。
俺が部屋から出ようとすると、手を掴んで首を横に振る花穂姉ちゃん。

「ん? 俺、寝るけど?」
「テスト終わるまでここで寝るの!」
「姉ちゃん……」
「昨晩と違って今夜はチューが罰ゲームねっ! 間違えると蒼太にチューする!」

 やれやれと言った感じだが、この姉は気づいているのだろうか。
ここ何日かで花穂姉ちゃんは少し変わった。甘えるようになったのだ。
それにより俺自身も変化した。今までは、花穂姉ちゃんに世話を焼かれたい一心だったはずの気持ちが、世話を焼きたいと思うようになった。

「布団持って来るよ。シングルじゃ狭いから」
「うん。じゃあ、今夜は蒼太の布団で寝るっ!」

 自室のセミダブルの布団を運び込んで敷くと、部屋は消灯された。
布団に潜り込んだ花穂姉ちゃんが手招きしている。
脇に脱ぎ捨てられた部屋着の上下……まさか……

「姉ちゃん、なんで下着なんだよ? 服は着ろって。約束しただろ!?」
「今日は蒸し暑いからいいじゃない。蒼太も上は脱いでねっ」
「自分の部屋で寝るときは脱いでるけど……ここで脱ぐ必要あるの?」

 渋々Tシャツを脱いで布団に入ると、純白の下着姿で花穂姉ちゃんが人間を襲う前の熊のようにスタンバイしている。直後、タックルに近い勢いで俺の体の上に覆いかぶさって来た。

「さっきの言葉、もう一度言ってくれる? アイスクリームじゃなかったよね?」
「聞こえてたのか……あれ、冗談で言ったんだけど」
「それじゃあ、問題開始ねっ! 罰ゲームはさっきの言葉とチューのセット!」
「却下だな。全部正解して回避するっ!」

 そのあと……暗い部屋の布団の中で熾烈な戦いが始まった。
花穂姉ちゃんは次々と問題を繰り出して、俺は五割程の正答率……

「はい、不正解。ちゅっ」
「花穂愛してる」

 棒読みのセリフと、顔面を唾液だらけにする勢いのキス攻撃が始まる。
妖怪接吻娘からの一方的なキス地獄は、眠るまで続けられた……

________________________________
あとがき
【あねしゃんぶる連撃っ 前編!】終了です。
 次からは長女が登場します。
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