姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛

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【本幕・第4章】あねらぶるーれっとっ

1.高熱で寝込んでチン静化していますっ!

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 暗闇の中、仰向けに寝かされているのがわかる。
着衣は制服のままだろう。ずいぶんと汗をかいているようだ。
玄関で倒れ込んだ俺は、花穂姉ちゃんの肩を借りて自室へ辿りついた。
ベッドに寝かされたあとのことは、よく覚えていない。

(――今、何時だ?)

 腕に装着した端末で確認する。
午後八時半過ぎ、紗月姉からの着信履歴が一件。
体が熱く、呼吸のリズムが狂う。これは微熱ではない。

「蒼太? 起きてる?」

 部屋のドアが開いて、廊下の光が差し込んだ。
花穂姉ちゃんが着替えを持って来てくれたようだ。

「姉ちゃん……身体が熱い」
「小栗内科の先生に診てもらったからね。それより、着替えた方がいいよ? すごい汗かいてる。これ、蒼太の部屋着」

 どうやら眠っている間に、訪問診察を受けたらしい。
夏風邪と診断されたが、時折出す高熱も相まって絶不調だ。

「とりあえず……着替える……ゴホッ! ゴホ!」

 汗でシャツが貼りついて気持ち悪い。下着も替えたいところだ。
起き上がって着替えようとするが、意識が朦朧とする。
ブレザーを脱ぎ、シャツのボタンを外そうとするがうまく外せない……

「大丈夫? お姉ちゃんが着替え手伝うよ」
「悪い……頼むよ」

 汗で湿った衣服が花穂姉ちゃんの介添えで、次々と脱がされていく。
制汗シートで背中や首回りを拭き取って、Tシャツを着せられた。

 制服のスラックスは脱いだが、その下が問題だ。
替えのパンツは持って来ているらしい。

「パンツは自分で替え……って姉ちゃん!?」

 寝転んでいる俺のパンツを、半ば強引に引きおろそうとしている。
止めようとする前に、あっさりとパンツは姉に奪われた。

「パンツもすごい汗……蒼太汁?」
「ゴホッ! 汁じゃない。汗だって! 早く替えのパンツ……ゴホッ!」

 替えのパンツを持った花穂姉ちゃんが心配そうな顔をしている。
俺の顔、股間、俺の顔、股間と視線が移動する。

「姉ちゃん?」
「ほんとに元気ないねっ!」

 名残惜しそうにパンツを穿かせる花穂姉ちゃん……
そっちの元気がないときは、あまり見られたくないものだ。

「腹減った。姉ちゃん、食べたい……」
「そこ元気ないのに、お姉ちゃん食べたいの?」
「……お粥」
「ごめん、冗談。お粥作って来るから、ちょっと待ってて」

 花穂姉ちゃんは、お粥の支度をするために部屋を出て階下に向かった。
俺は端末の着信履歴から、紗月姉の電話を鳴らした。

『蒼ちゃん? どしたの暗い部屋で息荒くして……って、お楽しみの真っ最中?』
「……いつもの高熱だよ。風邪もひいたみたいだ……ゲホッ!ゴホッ!」

 テレビ電話の向こうの紗月姉は、まだ大学構内にいるようだ。

『大丈夫? 蒼ちゃん、今動けないんだね。襲いに……看病しに帰れるといいんだけどね。ちょっとスケジュール確認してみるよ。またあとでねっ!』
「花穂姉ちゃんがいるから大丈夫だって……じゃあ、また」

 看病の前、襲いにって聞こえたような気がするが……空耳か……
そういえば昔から看病は、紗月姉の役割だった。








◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇








 花穂姉ちゃんがお粥をトレーに乗せて、部屋に入って来た。
薬を飲むための水と経口補水液、冷却シートが入った袋を手に引っさげている。

「食べ終わったら薬飲んでね」
「……ありがとう。いただきます」
「食べさせてあげるよ」
「ゴホッ! ゴホッ! うん。お願い」

 咳を堪えながら、姉の方を向いて口を開く。
すると、すぐにフゥフゥと熱を冷ます息の音がする。

「熱いから気をつけて……」

 塩加減がちょうどいいお粥だ。梅干しを崩して混ぜている。
これが花穂姉ちゃんの気配り上手なところだ。
程よい量の一口が、これまた程よいタイミングで口に運ばれる。

「ありがとう。花穂姉ちゃん……」
「蒼太、花穂って呼ぶ約束忘れてる?」
「ゴホッ! ごめん。慣れてる呼び方のがいい……ゴホッ! ゲホッ!」
「わかった。ご飯食べれて安心したよ。お薬用意するね」
「明日、学校無理っぽいな……」
「このままお薬飲んで休んでね。明日はお姉ちゃんが学校に連絡するから」

 食事を終えて薬を飲んだあと、花穂姉ちゃんが立ち上がろうとする。
俺は無意識に、花穂姉ちゃんの服を掴んでいた。

「姉ちゃん……今夜はここで……」
「小さい頃から熱出すと弱気になるよね。今夜はここで看病するよ」
「うん……」
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