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【本幕・第2章】あねちゃんぷる迎撃っ 前編!
4. 変態姉妹の淑女同盟やめてくださいっ!
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五月九日土曜日、午後二時過ぎ。
紗月姉の汚部屋の掃除を終えた。
共有ボックスという謎の淑女同盟で、花穂姉ちゃんから紗月姉へ追加された条件がいくつかある。もちろん、そのすべてが俺に関係することだ。
条件の一つ、共有ボックスに蒼太となにをしたかを偽らず書く。
二つめ、蒼太を寮に呼ぶとき、花穂姉ちゃんもいっしょに呼ぶこと。
三つめ、これはもうあれのこと。過度な誘惑と誘爆禁止令だ。
「……おもちゃだ!」
「蒼太、なにか言った?」
「姉ちゃんたち、その共有ボックスってのやめてくれよ!」
小ぎれいに片付いた紗月姉の八畳間、今朝のあの出来事もどこ吹く風の様相で、姉二人は丸テーブルを挟んでくつろいでいる。
「蒼ちゃん?」
「怒ってるの? 蒼太」
「怒るよ……俺はおもちゃかよ!? なんだよ、蒼太の共有ボックスって! いい加減にしろっ! 昔、母さんに叱られたときと変わらないじゃないかっ!」
昔から俺は姉二人に反抗しなかった。何故なら俺が弱いから。
ヘタレンジャーな青山蒼太。紗月姉に逆らおうものなら力ずくで、花穂姉ちゃんに反抗すればあらゆる悪知恵を駆使されてイタズラされる。
「違うんだ、蒼ちゃん。花穂頼むよ。理解できるように、説明してあげて」
「昔、わたしたちが毎日のようにひどい取り合いをしたせいで、女性に対する微妙な感情がトラウマになってるの。そのトラウマがさらに歪んでね、蒼太はわたしに愛情を、紗月姉には欲情を求めるようになってるんだよ……」
「……それは俺の血縁に関係する?」
「うん、関係するかも。紗月姉と奪い合いをしているとき、よく蒼太を助ける子がいたんだ。もうわかってるよね? 加奈ちゃん、蒼太の実のお姉さんだよ」
「姉ちゃんたち、体育倉庫で俺を追わなかったのは、加奈子さんが連れて行ったから?」
「その通りだよ、蒼ちゃん……川原でもそう、あたしがワザと負けた」
「それで加奈子さんにだけ、ずっと複雑な思いがあったのか……」
この姉妹に感じる好意とは別の好意、恋のようで恋ではない感情。
これはおそらく、家族愛、姉弟愛みたいなものだろう。
「共有ボックスをやめてもいい。いいけど、蒼太のトラウマは放置することになる……わたしたち姉妹が作り出したトラウマなら、わたしたちにしか治せない」
「蒼ちゃんは成長して、姉ちゃんと花穂にまったく別のものを求めるようになった。それ、今も感じてるよね? 花穂に構ってほしい、紗月姉に触れてほしいって思ってるよね?」
「正直言うとそうだ。俺、変態かな? 花穂姉ちゃんには俺に構ってほしい、パンツを嗅ぎたい。紗月姉には触れ合いたい、エロいことしたいと思ってる……」
正直な気持ちを吐露したとき、姉二人は少し安堵した表情に変わった。
そして、ニコニコと笑みを浮かべながら……
「うん、蒼ちゃん変態!」
「うん、蒼太は変態っ!」
思わぬ変態姉妹によるダブルパンチ。どうやら俺も変態決定らしい。
「じゃあ、結局俺はどうすればいい?」
「今まで通りでいいんだよ。紗月姉、あんまりエロいの禁止ね。今朝のはちょっと見たくない……蒼太も自制するようにね」
「それ、花穂姉ちゃんもそうだろ? 自制しろよ」
「でも、蒼ちゃんの主砲は花穂に反応しないキカン棒だからなぁ」
それは、俺も前から気にしていることだ。
花穂姉ちゃんにだけは、俺の主砲……もとい股間の反応が持続しない。
これは特別だからなのか、それともまったく逆なのかわからない。
「蒼太に恋をさせるには、わたしと紗月姉に感じてる気持ちを一つにしないといけない」
「そのために二人は自分なりに、俺のために愛情を注いでるってことか? 変態だけど」
「蒼ちゃん、変態は余計。だけど、その通りだよ」
「でも、紗月姉も蒼太もいやらしいこと禁止! 次、見つけたら乱入するからねっ!」
「おっ! 言うねぇ花穂! 蒼ちゃん、姉妹丼だよ」
「花穂姉ちゃん……そこは、普通に止めろよ……」
二人の話を聞きながら昨晩のことを思い返すと、記憶が一部分だけない。
紗月姉と刺激的ななにかを行った痕跡は残っていた。
精液臭いティッシュ、汚れたパンツ、全裸で目覚めた姉。
「蒼太? ボーッとしてどうしたの?」
「いや……小さい頃から言ってるあれだよ。昨晩のこと覚えてない」
紗月姉と花穂姉ちゃんは、心配げな表情を俺に向けた。
こうして記憶の一部分が飛ぶことは、昔からよくあった。
「あんなに激しくて、刺激的な夜を過ごしたのに覚えてな――あっ!」
「紗月姉……それは、ダメだって。蒼太には、その刺激が逆効果なの」
「解離性健忘って言うんだろ。俺の記憶、穴だからけだからな」
里志に言われるまで、殴り合いの大喧嘩を小学生の頃にしたことを忘れていた。
小さい頃、紗月姉と常に一緒にいた取り巻き数人の姿や名前も出て来ない。
姉妹でよく俺を取り合いしていたが、その後どう決着したのか……
加奈子さんがいつも俺を助けて、どこへ連れ去っていたのか……
重要なシーンの記憶が、真っ黒で思い出せない。
「昨晩の蒼ちゃんね、すごかったんだよ」
「え? どうすごかった?」
花穂姉ちゃんがお茶を入れに席を立った瞬間、紗月姉が耳打ちして来た。
「全然覚えてないかぁ……」
「教えてくれよ。俺、姉ちゃんと格闘戦やってから風呂入って、ベッドに寝転んだとこまで覚えてるんだ。でも、それ以降の記憶がない」
「蒼ちゃんがさ、いっぱい腰動かして姉ちゃんをKOさせたの」
「俺が? 自分から?」
「そうだよ。やめてって言ってるのに……気持ち良すぎて失神寸前」
魅惑ボディの紗月姉を、俺が失神寸前まで刺激した。聞くだけで勃起ものの話だというのに、その部分だけ完全に抜け落ちているようだ。
「蒼太、紗月姉。お茶入れたよ」
花穂姉ちゃんが白いティーポットを、トレーに乗せて持って来る。
なにも思い出せないまま、紗月姉との秘密の会話は途切れてしまった。
「あ! 花穂、あれ持ってきた?」
「うん。渡しそびれてたけど、わたしたちから蒼太に高校入学のお祝いがあるの」
「ん? 俺に入学祝い?」
「今日、それ持って来てるから、つけてみてねっ!」
花穂姉ちゃんが箱から取り出したものは……
今、俺が最も欲しくないものだった!
紗月姉の汚部屋の掃除を終えた。
共有ボックスという謎の淑女同盟で、花穂姉ちゃんから紗月姉へ追加された条件がいくつかある。もちろん、そのすべてが俺に関係することだ。
条件の一つ、共有ボックスに蒼太となにをしたかを偽らず書く。
二つめ、蒼太を寮に呼ぶとき、花穂姉ちゃんもいっしょに呼ぶこと。
三つめ、これはもうあれのこと。過度な誘惑と誘爆禁止令だ。
「……おもちゃだ!」
「蒼太、なにか言った?」
「姉ちゃんたち、その共有ボックスってのやめてくれよ!」
小ぎれいに片付いた紗月姉の八畳間、今朝のあの出来事もどこ吹く風の様相で、姉二人は丸テーブルを挟んでくつろいでいる。
「蒼ちゃん?」
「怒ってるの? 蒼太」
「怒るよ……俺はおもちゃかよ!? なんだよ、蒼太の共有ボックスって! いい加減にしろっ! 昔、母さんに叱られたときと変わらないじゃないかっ!」
昔から俺は姉二人に反抗しなかった。何故なら俺が弱いから。
ヘタレンジャーな青山蒼太。紗月姉に逆らおうものなら力ずくで、花穂姉ちゃんに反抗すればあらゆる悪知恵を駆使されてイタズラされる。
「違うんだ、蒼ちゃん。花穂頼むよ。理解できるように、説明してあげて」
「昔、わたしたちが毎日のようにひどい取り合いをしたせいで、女性に対する微妙な感情がトラウマになってるの。そのトラウマがさらに歪んでね、蒼太はわたしに愛情を、紗月姉には欲情を求めるようになってるんだよ……」
「……それは俺の血縁に関係する?」
「うん、関係するかも。紗月姉と奪い合いをしているとき、よく蒼太を助ける子がいたんだ。もうわかってるよね? 加奈ちゃん、蒼太の実のお姉さんだよ」
「姉ちゃんたち、体育倉庫で俺を追わなかったのは、加奈子さんが連れて行ったから?」
「その通りだよ、蒼ちゃん……川原でもそう、あたしがワザと負けた」
「それで加奈子さんにだけ、ずっと複雑な思いがあったのか……」
この姉妹に感じる好意とは別の好意、恋のようで恋ではない感情。
これはおそらく、家族愛、姉弟愛みたいなものだろう。
「共有ボックスをやめてもいい。いいけど、蒼太のトラウマは放置することになる……わたしたち姉妹が作り出したトラウマなら、わたしたちにしか治せない」
「蒼ちゃんは成長して、姉ちゃんと花穂にまったく別のものを求めるようになった。それ、今も感じてるよね? 花穂に構ってほしい、紗月姉に触れてほしいって思ってるよね?」
「正直言うとそうだ。俺、変態かな? 花穂姉ちゃんには俺に構ってほしい、パンツを嗅ぎたい。紗月姉には触れ合いたい、エロいことしたいと思ってる……」
正直な気持ちを吐露したとき、姉二人は少し安堵した表情に変わった。
そして、ニコニコと笑みを浮かべながら……
「うん、蒼ちゃん変態!」
「うん、蒼太は変態っ!」
思わぬ変態姉妹によるダブルパンチ。どうやら俺も変態決定らしい。
「じゃあ、結局俺はどうすればいい?」
「今まで通りでいいんだよ。紗月姉、あんまりエロいの禁止ね。今朝のはちょっと見たくない……蒼太も自制するようにね」
「それ、花穂姉ちゃんもそうだろ? 自制しろよ」
「でも、蒼ちゃんの主砲は花穂に反応しないキカン棒だからなぁ」
それは、俺も前から気にしていることだ。
花穂姉ちゃんにだけは、俺の主砲……もとい股間の反応が持続しない。
これは特別だからなのか、それともまったく逆なのかわからない。
「蒼太に恋をさせるには、わたしと紗月姉に感じてる気持ちを一つにしないといけない」
「そのために二人は自分なりに、俺のために愛情を注いでるってことか? 変態だけど」
「蒼ちゃん、変態は余計。だけど、その通りだよ」
「でも、紗月姉も蒼太もいやらしいこと禁止! 次、見つけたら乱入するからねっ!」
「おっ! 言うねぇ花穂! 蒼ちゃん、姉妹丼だよ」
「花穂姉ちゃん……そこは、普通に止めろよ……」
二人の話を聞きながら昨晩のことを思い返すと、記憶が一部分だけない。
紗月姉と刺激的ななにかを行った痕跡は残っていた。
精液臭いティッシュ、汚れたパンツ、全裸で目覚めた姉。
「蒼太? ボーッとしてどうしたの?」
「いや……小さい頃から言ってるあれだよ。昨晩のこと覚えてない」
紗月姉と花穂姉ちゃんは、心配げな表情を俺に向けた。
こうして記憶の一部分が飛ぶことは、昔からよくあった。
「あんなに激しくて、刺激的な夜を過ごしたのに覚えてな――あっ!」
「紗月姉……それは、ダメだって。蒼太には、その刺激が逆効果なの」
「解離性健忘って言うんだろ。俺の記憶、穴だからけだからな」
里志に言われるまで、殴り合いの大喧嘩を小学生の頃にしたことを忘れていた。
小さい頃、紗月姉と常に一緒にいた取り巻き数人の姿や名前も出て来ない。
姉妹でよく俺を取り合いしていたが、その後どう決着したのか……
加奈子さんがいつも俺を助けて、どこへ連れ去っていたのか……
重要なシーンの記憶が、真っ黒で思い出せない。
「昨晩の蒼ちゃんね、すごかったんだよ」
「え? どうすごかった?」
花穂姉ちゃんがお茶を入れに席を立った瞬間、紗月姉が耳打ちして来た。
「全然覚えてないかぁ……」
「教えてくれよ。俺、姉ちゃんと格闘戦やってから風呂入って、ベッドに寝転んだとこまで覚えてるんだ。でも、それ以降の記憶がない」
「蒼ちゃんがさ、いっぱい腰動かして姉ちゃんをKOさせたの」
「俺が? 自分から?」
「そうだよ。やめてって言ってるのに……気持ち良すぎて失神寸前」
魅惑ボディの紗月姉を、俺が失神寸前まで刺激した。聞くだけで勃起ものの話だというのに、その部分だけ完全に抜け落ちているようだ。
「蒼太、紗月姉。お茶入れたよ」
花穂姉ちゃんが白いティーポットを、トレーに乗せて持って来る。
なにも思い出せないまま、紗月姉との秘密の会話は途切れてしまった。
「あ! 花穂、あれ持ってきた?」
「うん。渡しそびれてたけど、わたしたちから蒼太に高校入学のお祝いがあるの」
「ん? 俺に入学祝い?」
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