姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛

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【序幕・番外編】ばっく・にゅう・ざ・ふゅーちゃー 壱

1.誇りと爆乳を守るために戦いますよっ!

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まえがき
※本編前のショートストーリーです。
※【序幕・第五章】四条先輩爆乳初撃っ「3.大きな乳が木の下で悩み暴露しますっ!」の会話に出て きた二人組を撃退する話です。
______________________________


 五月六日、ゴールデンウィーク最終日。
加奈子さんの家を出て、自宅への道を歩いていると携帯電話が鳴った。
背面サブディスプレイで確認。メール着信、差出人は四条春香。

「これは……」

 メインディスプレイからメールボックスを開き、内容を確認する。
メッセージを見た瞬間、怒りのロウソクに火が点いた。

 脱兎の如しという孫子の言葉がある。
全速力で走って自宅に戻り、自転車に乗って姫咲スポーツクラブを目指した。
先輩からのメールはたったの五文字。

『助けてくれ』

 なぜだ、なぜだと自問自答が始まる。
先日、四条春香から相談を受けたときに打ち合わせ済みだ。
二人組がプールに来たら、他のスタッフに助けを求めるようにと。

「なんで助けてくれなんだ! もう絡まれているのか!?」

 二人組が現れたら、必ず教えるようにと約束した。
次はあいつらを俺と先輩で追っ払ってやろうと息巻いていたではないか。
先輩は短文メールしか打てない切迫した状況にあると言うことだ。

 姫咲高校が見えてきた。スポーツクラブまではあと少し。

(――イライラする!)

 昼は加奈子さんの家で、様々な感情が浮かんでは消えた。
その中に怒りだけはなかった。今は怒りだけしかない。

 駐輪場に自転車をぶん投げるように停めて中へ入る。
自販機でプールのチケットを購入、同時に水着のレンタルを申し込む。

「急がないと!」
「ちょっとお客様! お着替えは更衣室で――」

 スポーツクラブ一番奥のプールへ廊下を疾走する。
受付の女性が声をあげたのは、俺が着替えながら走っているからだ。
上のシャツを脱いで、下もパンツごと瞬間脱衣クロスアウト

(子供の頃も里志とこんな着替え方してたな……)

 フリチン状態を入場客に目撃されると非常にまずい。
人助けに来てお縄頂戴ではシャレにならない。
サポーターを穿く暇もなく、直にレンタル水着を着用した。

「先輩はどこだ」

 ドアを開き、学校と同じサイズのプールを見渡す。
手前に年配の人たちが水中ウォーキング、指導者もいっしょだ。
真ん中のレーンは競泳選手だろうか。若い女性が二人で競争中だ。

(あそこだ!)

 入口から見て一番右奥に先輩が小さい子どもに泳ぎを教えている。
プールサイドに二人組がいるのが見える。先輩になにか言ってるようだ。

「おいっ! 聞いてるのか四条春香! プールから出て来い!」
「でっかいおっぱいに挟まれたいなぁ俺!」

 一人は俺より身長が低い。一六〇センチほどで体格はガッチリ。
もう一人は短い金髪の長身細身で明らかに年上だ。大学生かもしれない。
ゆっくりとその場所に近付きながら、一通のメールをある人物に送信した。

「四条先輩。バイトお疲れ様です」
「蒼太郎! 早いな! なかなかしつこいんだ……今日も」
「そこのお前! 四条春香の知り合いか? 邪魔だどけ!!」

 ガチムチのチビが俺の前に立ちふさがった。
その直後、背中に鈍い痛みが走ってプールに突き落とされる。
金髪の長身男に、背中を蹴られたようだ。

「大丈夫か!? 蒼太郎!」
「いてて……このガチムチビとヒョロキンパツ!!」

 ガチムチビが顔を真っ赤にして反応した。

「なんだと! もう一回言ってみろ!!」
「帰れっ! 先輩にもう近寄るな! クソ! 背中いてぇ……」

 怒声は他の客の喋り声にかき消されて、プールに響くことはなかった。
二人組はゲラゲラと笑い始める。ウケルウケルと連呼している。

「すまない、蒼太郎。この子が大声に怖がっている」

 先輩は教え子の小さな女の子の身を案じている。
その様子を見て怒りのロウソクはキャンプファイヤーの炎と化した。

「あのさぁ、四条春香ちゃんが俺らについて来てくれれば話は済むんだけど?」

 ヒョロキンパツがギロリと睨みをきかせる。
ガチムチビは後ろに控えて、指や首をポキポキ鳴らしたり威嚇中だ。

「四条先輩を連れて行ってどうするんだ? 夏本に頼まれたのか?」
「うるせぇ! 夏本さんに頼まれたわけじゃねぇ!」
「今、って言ったよな? さん付けするってことは知り合いだろ!」
「おい、クソガキ! 表へ出ろっ!」

 身を乗り出してガチムチビが声を張り上げた。
ここにいては先輩の仕事の邪魔になるし、子供が怯えてしまっている。
俺はプールサイドへ上がって、テラスがあるドアへ歩いた。

 二人組もすぐ後ろに続いて来る。
作戦は一つだけしかない。成功するかは助っ人次第。
それがなければ覚悟を決めて特攻あるのみ。
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