姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛

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【序幕・第7章】あねとりばー毛撃っ

1.卑猥な長女の計画は止められませんっ!

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 五月二日午後五時過ぎ。
学校から家に着くと、家の中から騒がしい声が聴こえる。
脱いだ靴を下駄箱にしまっていると、居間から母が出て来た。

「おかえり、蒼太。高校はどう? 楽しい?」
「ただいま、母さん。学校はまあ楽しんでる方かな……」

 どうやら父と母が一時帰国しているらしい。
青山静乃あおやま しずの、四十四歳。一七〇センチの長身で実年齢より五歳以上若く見える青山家自慢の母である。

 この母の遺伝情報を大いに受け継いだのが、紗月姉と花穂姉ちゃんだ。
三人で歩くと三姉妹に間違えられることもあったという。

「蒼太っ! さっきなんで逃げたの!?」
「蒼ちゃん、加奈子ちゃんと禁断の逃避行なのか!? そうなのか?」

 うるさい姉妹あねたちが揃って出てきた。しかし、しばらく安心だろう。
この二人が一番恐れているのは、我が家の母である。

「襲われそうだった哀れな俺を、加奈子さんが救ってくれたんだよ!」










 着替えを済ませ、リビングへ足を運ぶと数ヶ月ぶりに見る父の顔があった。
海外の気候のせいか、かなり日焼けしているようだ。

「おおっ、蒼太! 帰って来たか! これで久しぶりに家族全員集合だな」
「父さん、肌どす黒いぞ。バーナーで焼かれたのか?」
「そうそう、こんがり……って違うわっ! 向こうは暑いぞ! でも、こっちは湿気が多いなあ、五月だってのに暑い暑い」

 青山賢悟あおやま けんご、四十五歳。一六七センチでややメタボってきたが、その温厚な顔と性格は青山家の平和の象徴なのである。しかし、この父は生来の無精者で生活力がない。若い頃から仕事だけに心血を注いできた男だ。

「海外での仕事はどう?」
「言葉の壁はあるけどな、楽しいぞ。結城社長に感謝だな」

 父は結城加奈子さんの実家、結城建業株式会社の中間管理職だ。今年からアジア支社でリゾート開発の技術指導役として海外に派遣された。期間は二年から三年、帰国後は役員になる予定らしい。








◆◆◆◆◆◆








「蒼ちゃん、明日はバーベキューに行くよっ!」
「え? バーベキュー?」

 数ヶ月ぶりの一家揃っての夕飯中、紗月姉が提案してきた。

「いいな、昔みんなで行った上流の川原にでも行くか?」

 青山家の行楽行事はこうして長女紗月が発案、父が同意して決まる。

「蒼太、いっしょに紗月姉を海まで流そうねっ」

 そして、必ずつっこみを入れてくる花穂姉ちゃん……
数日前までの姉妹の暴走が嘘のような光景だ。

「あ、そうだ。お前たち、結城社長のお嬢さんも誘ってみなさい。社長にはわしから連絡入れるから」
「じゃあ、加奈ちゃんはわたしが誘うね」

 加奈子さんへのお誘いの連絡は、花穂姉ちゃんがすることになった。

「じゃあ、あたしは春香呼ぼうかな?」

 数時間前、蹴りと竹刀で干戈を交えたものの、紗月姉と四条先輩は昔から仲の良い友人だ。

「俺はいいや。里志は家族でどこか行くらしいからな」
「加奈ちゃんオッケーだって! 父さんも社長さんに連絡して了承もらったらしいよ!」

 加奈子さんが来るだけで、不毛の大地に花が一輪咲くようなものだ。
母がいて自制しているとはいえ、姉二人がいつ牙をむくかわからない。

「よかったわね蒼太、お父さん。明日は若い女の子だらけね、お母さんも含めてね」

 確かに母さんは若く見える。見えるが、若さの度合いが違うんだよ……




「加奈子さん、紗月姉、花穂姉ちゃん、先輩か」

 このメンツで思い出すのは夕方の体育倉庫だ。
加奈子さんはいいとして、残りの三つ巴……俺がいることで争わないだろうか。
取り合うほどの価値が自分にあるとは思えないのだが……

「明日は女子だけで競技を行うっ!」

 紗月姉がまたなにか提案し始めた。
おそらく、ろくでもない企画だ。

「紗月姉、なんで俺は参加できないんだ?」
「賞品が競技に参加してどうするの? 蒼ちゃんは優勝賞品なんだからねっ!」
「紗月姉! 蒼太になにさせるつもりなの?」

 花穂姉ちゃんが過敏に反応した。

「優勝者は一〇分間、蒼ちゃんになにをしてもオッケー!」
「俺になにをしてもって……なにする気だよ!?」
「あたしなら蒼ちゃんとラクロスかパクロスかセクロス」

 こちらに親指を突き立てて、笑顔で答える紗月姉。
その三つ、どれもおかしいだろ。特に最後のひとつ……


――俺は忘れていた……
――紗月姉は親の前でも平然と、俺と一発やるとかいう人間だった……
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