姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛

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【真幕・第5章】あねったい遊撃っ 前編!

2.看病という名目の下半身襲撃ですねっ!

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 意識を取り戻して、最初に気づいたのは匂いだ。
アクアソープの香りが鼻腔を蕩かす。最も落ち着く空間、俺の部屋だ。
細目を開いて天井を見ると、シーリングライトの常夜灯が点いていた。

(廊下で倒れたはず……)

 誰かの手によって運ばれ、ベッドの上に寝かされている。
肌に感じる質感が倒れる前と違う。制服を脱がされて、アンダーシャツとパンツだけのようだ。

 嗅ぎ慣れた自分の部屋の中に、別の香りが混じっている気がする。
どこか覚えのある香りだ。デオドラントシートと汗の匂い、嫌な香りではない。

(暗くて見えない。ライトのリモコンどこやったっけ?)

 部屋の暗さに目が慣れていないのもあるが、意識がまだはっきりしない。
シーリングライトのリモコンは、ベッドの枕元に設置している。ゆっくりと右手を掛け布団から出して、ベッドの支柱を探ろうとしたとき、なにか別の物に指先が触れた。見なくても、それがリモコンでないことは明白だ。

「――るな」
「え? 誰……?」

 薄闇の中で目を凝らして、自分の右手を見る。ベッド脇に誰か座っている。
最初に視界に入ったのは、鮮血のように赤い半袖Tシャツだ。二つの膨らみが張り出していて、その右側に俺の手が触れた状態である。

「おい! 起き抜けに人の乳をいじくるな!」
「へ?」

 視線をTシャツから少し上に移すと、リップグロスを塗った口元が見える。
紗月姉が帰って来たのだと思ったが、話し方がまったく違う。しかし、姉とよく似た服装と、同じような気配。

「大丈夫か?」
「明石先生……なんでここに?」
「栗栖有紀から学校に電話があってな、あたしにお前の世話を押し付けやがった!」

 人選ミスではないのか。なぜ、栗栖は明石先生をヘルプに呼び出しのだろうか。
この人は基本的に面倒くさがり屋で、こういう看病には絶対に向かない人間だ。
紗月姉と趣味趣向や行動パターンが似ていても、中身はまるで違う。

「先生が俺をここまで運んだんですか?」
「ああ、そうだ」
「ありがとうございます。助かりましたよ」
「それで、青山弟。この手はいつ離すんだ?」

 リモコンを探す旅に出掛けたはずの右の手は、柔らかな山に不時着したままだ。
あまりにも感触が良くて、吸い付いたように離せなくなっていた。

「すいません……シーリングライトのリモコンを取ろうと思って……」
「リモコン? ああ、これか?」

 渡されたリモコンを操作して、シーリングライトを点灯する。
赤いシャツと紺のジャージパンツ、手にはコンビニ袋を持った明石先生がベッド脇に座っていた。エアコンで部屋を冷やしているはずなのに、汗ばんで暑そうに見える。

「明石先生、なんでそんなに汗かいてるんですか?」
「お前をここに運んで寝かせたあと、買い出しに行ったんだ。その様子じゃ、まだ熱も下がってない。晩メシも食ってないだろ?」
「腹も減ったんですけど……喉がカラカラです」
「よし! 飲め飲めっ!」
「うぶぉあっ!」

 明石先生は袋の中から瓶の飲み物を取り出して、素早く俺の口に突っ込んだ。
喉を潤わすのにちょうど良い冷たさだ。味から察するに、栄養ドリンクの類だろう。
俺が熱を出したときに、姉たちが買ってきてくれるサポビタンAに似た味だ。

「よっしゃ! 次、にぎり飯行っとくか!?」

 コンビニのおにぎりをベリベリと雑にめくって、破れた海苔を雑に巻く。
この荒っぽさは、紗月姉以上だ。手つきを見ていると、明石先生が不器用な人間だと一目で理解できる。

「夕飯まですみません。遣ったお金は払います。お金は姉から預かっているので」
「しょーもないこと気にするな! これは、お前への個人的な礼だ」
「お礼……ですか? 俺、先生になにかしました?」
「変質者捕縛の手柄をあたしに全部譲っただろ。あれのおかげで女子生徒から評判がいいんだ。最近、親しくなった子も何人かいてな――」

 満面の笑みを浮かべて、仲良くなった女子生徒たちの話を始める。
こんな先生の表情を見るのは初めてのことだ。紗月姉が俺に課したミッション『明石先生のイメージアップ作戦』は、これで完璧にコンプリートしたと言える。









★★★









 忘れないうちに、成功報酬について念を押すことにした。
成功報酬は、加奈子さんとの仲を邪魔しそうな姉たちの味方をせず、俺の側につくこと。特に愛弟子である紗月姉の味方をされては厄介極まりない。

「明石先生。作戦の成功報酬の件ですけど……」
「ああ! もちろん、わかっている! そろそろ効き始めるだろ?」
「え? どういう――」

 体中から発している熱が、下半身の一部分に集中するようだ。
パンツの中でムクムクと肥大化していくのがわかる。先ほど、先生の胸に触れたが反応はしなかった。それなのに、時間差で津波のような性衝動が押し寄せてくる。

「ドーンッと来ただろ!? ズッドーンだろ!?」
「なに言ってんですか……」
「あれ!? おかしいな。薬局のオヤジに一番ビンビンになるの出せっつったのに!」

 明石先生は袋からドリンクのパッケージを取り出して見ている。
金のギラギラした文字で、『金剛争覇 ~勃海の炎将~朝までギンギンMAX』。明らかに普通の栄養ドリンクとは毛色が違う。元気になるのはなるが、別の意味で元気になってしまうドリンクだ。熱の苦しみからは少しだけ解放されたが、パンツの中で勢いを増した部分が痛い。

「変なもんを飲ませないでくださいよ!」
「おっ、効いてきたんだなっ!?」
「先生。はぐらかさないで、報酬の話をさせてください」
「だから、今から報酬やるって言ってんだろ?」

 そう言いながら、明石先生は俺が寝転ぶベッドに上がって来た。
なぜか俺の腰部に跨っているため、重さをモロに感じて少し辛い。

「なにをしてるんですか!?」
「心配するな。二分か三分間だけ目を閉じてりゃすぐ終わる」
「整体でもするんですか?」
「整体? お前、絶不調で腰振れないだろ? 騎乗位で済まそうと思ってな」

 先生はジャージのポケットから、黒い小箱を取り出した。
さっき買って来たばかりなのか、ナイロン梱包されて開封した形跡がない。

「ちょっと待ってください! 病人になにしてるんですか!?」
「痛くしないから安心しろ。お前は天井のシミでも数えてろ!」
「うわっ! もう、ほんとベッドから降りてくださいってばっ!!」
「じっとしろ! こら、パンツが脱がせられんだろうが!」

 ベッドの上でジタバタともがいているうちに、俺のボクサーブリーフは奪われた。
どさくさに紛れて、明石先生もいつの間にかジャージを脱いでいる。驚きなのは、ジャージの下にパンツを穿いていないことだ。ワサッと茂った毛が丸見えで、その奥の部分も視界に入る。

「なんで、ノーパンなんですか!?」
「あー。部活で着替えるときに、穿き忘れたな」
「というか……先生、もうやめてください!」
「すぐ終わる。じっとしてろ」

 明石先生は掛け布団をめくり上げて、ドーピングで肥大化した俺の股間の上でポジショニングした。お互いの性器が接触するまでの距離は約五センチ。羞恥心と強い性衝動、明石先生への恐れが抵抗を拒む。まるでロボットアニメの合体シーンのように、カチコチ棒に肉壺が大接近、その距離はゆっくりと縮まっていく……

「先生っ! 俺の報酬は一発券でもパコることでもないです!」
「え!? そうだっけ? 性交報酬って言ったよな?」

 先端と先生の外性器が触れそうになったところで、俺はストップをかけた。
ドリンクの効果なのか、それとも熱のせいなのか、先生に触れてもヘニャチンにならない。あわや大結合事故を起こす寸前だ。

「あられもない姿で脅しはやめてください。だいたい、避妊具みたいな箱を持ってる割には使おうとしないし、最初から寸止めする気だったでしょう!?」
「あちゃー! バレたか。でも、薬局のオッサンが勧めるだけあって、すっげぇよな!」

 人生最大の貞操に危機で、人生最悪の絵ヅラだと思う。学校の担任の教師が、俺のベッドで下半身丸出しなのだ。俺も無理矢理パンツを奪われて、抵抗する気力さえない。さすが、姉の師匠。紗月姉よりも、暴君度は数弾上だろう。

「勃ち過ぎて痛い……」
「お前の報酬ってアレだろ? 要するに結城加奈子といい感じだけど、姉たちが邪魔しそうだから味方になってくれってことだよな?」
「理解が早くて助かります。そうです」
「いいぞ。その件では、紗月の味方もしない。青山弟につく」
「よかった。じゃあ、先生も服着てください。俺のパンツも返してほしいです……」

 高熱が続いている影響なのか、体の動作がやや鈍い。思考力も低下して、本能的な欲求が出やすい状態だ。いちいち視界に入る先生の陰毛や生尻に、心の底をえぐられるような衝動を覚える。

「いやー。悪い悪い。おふざけが過ぎたな!」
「病人相手にとんでもないです! 紗月姉より過激な女性は初めてですよ」
「出すもん出さなくて大丈夫か?」
「いや、このコンディションではもうすぐ収まりますよ……それより、俺は先生が暴れさせるから、疲れて眠気がすごいでです……」

 明石先生は、ジャージズボンを手に持って、ベッド脇に腰掛けた。
俺は奪われたパンツを穿き直して、シーリングライトを再び常夜灯に落とす。
微睡みが波のように寄せては引いてを繰り返す。意識を保っているのは無理がある。

「――から」

 明石先生がなにか俺に言っているのだが、寝落ち寸前ではっきりと聞こえない。
下半身がモゾモゾする感覚、陰茎小帯うらすじにネットリとした生温さを感じる。しかし、眠気が勝って、その違和感を確認することは不可能だ。

 完全に意識を失う前に微かに知覚したのは、パイプベッドがギイギイと軋む音だった。下半身に感じる重み、急激に増した快感は、津波のごとく押し寄せた睡魔に意識ごと流されたのだ。
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