姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛

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【真幕・第4章】あねだーくねす心撃っ 後編!

1.脱ぎたてスク水を嗅いで干しますよっ!

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 土日が休みの学生にとって、金曜日の晩は最も気が休まる時間だ。
帰宅して、部屋でゴロゴロしたあと、姉と夕食を共にする。本日のメニューは、スパゲティとカットサラダというシンプルなものだった。テスト期間中は、我が家の食事がやや質素になる傾向だ。

 今夜は加奈子さんも花穂姉ちゃんとテスト勉強に励むらしく、先ほどからキッチンで食事の後始末を手伝っている。この二人は昔からの大親友だが、成績上ではライバル関係にあると言える。毎度、栗栖有紀に一位をかっさらわれ、辛酸を舐めているのだ。共同戦線で次こそ巻き返しを図るつもりだろうか。

「蒼太! 先にお風呂入ってねっ」
「わかった。加奈子さんも一緒にどうかな?」

 言葉を発すると同時に、姉が着用していた薄ピンクのエプロンが顔面に吹っ飛んできた。一方の加奈子さんは、チラリとこっちを見てクスクスと笑みを浮かべる。夏バージョンの制服に黒いエプロン、うしろで束ねたロングヘアがよく似合う。

「加奈ちゃんとテスト勉強終わったら、蒼太の勉強見てあげるね」
「そういや、加奈子さんは家からお迎えが来るの?」

 加奈子さんの青山家訪問パターンは二種類。
宿泊なしで夜にお迎えが来て帰るパターン、もう一つは姉の部屋に宿泊するパターン。週末はお泊りすることが多い。

「うん。もう遅いからね。加奈ちゃんは泊まるよ」
「はい……お泊りです。弟君」

 別段珍しいやり取りではない。加奈子さんが自宅に泊まるのは、これまで数え切れないほどあった。ただ、テンションと股間の盛り上がりがいつもと違う。

 姉の友人が泊まるのではない、が泊まるのだ。
以前と今日とでは、認識がまるで違う。世界観そのものがひっくり返ったように違う。手を伸ばせば、すぐそこにいる。視界に入る距離、触れられる距離に加奈子さんがいる。

 花穂姉ちゃんは、俺と加奈子さんが既に交際関係にあることを知らない。
時々、怪しんでいるような素振りを見せるが、確信には至っていない。青山花穂は策士だが、加奈子さんも姉の知恵に引けを取らない。上手に俺との間を隠し通しているはずだ。








◆◆◆








 食後しばらくリビングで姉たちと談笑したあと、風呂場に向かった。
二階からは時々姉の笑い声が聞こえる。学校では絶対にしない品のない大笑いだ。

「あれ……」

 脱衣場の定位置にあるカゴの中には、既に洗濯物が入っていた。
大きめのバスタオルのようだ。ハンドタオルも何枚か入っている。姉が先に入浴した形跡はないし、これだけのタオルを使用した様子もなかった。

(――これは!)

 バスタオルを手に取ってみると、その中から水着が一枚出てきたのだ。
姫咲高校の指定水着だが、ネームは結城と書いてある。どうやら、加奈子さんは今日も水泳の補修授業を受けていたらしい。

 白パイピングの競泳型ワンピース水着だ。
胸の裏地にはパットが縫い付けられている。湿り気と共に、プール独特の匂いがする。お尻の部分には、やや毛羽立ちが目立つ。

「ごめん! 加奈子さん!」

 うるさいほどの鼓動と、一気に高まったボルテージ。
その一枚の紺の布を鼻先に押し当てて嗅いでいた。どこを嗅いでも、プールの匂いしかしないのは承知の上だ。それでも、大好きな女の子がつい数時間前まで着用していたという事実が、どうしようもなく衝動リビドーを掻き立てる。

 この場所で花穂姉ちゃんのパンツを散々汚してきた俺だが、加奈子さんの水着に対しては現段階で罪悪感が拭えない。だから、これ以上のことは無理なのだ。擦りつけたり、着用したり、姉のパンツで行っている発射儀式ができない。

(……加奈子さん。補修終わったのかな)

 ギンギンに反り返ったペニスと、手にはスク水という異様な光景が洗面台の鏡に映し出される。パンツを脱ぎ終わり、水着の肩紐を直立した自分の竿に引っ掛けてみた。なんとも馬鹿な姿だと、我ながら少し情けなくなる。

「モロ干し竿ざおっ!」

 鏡の前で体を揺らし、引っ掛けた水着を振り回してみる。
当然ながら、こんなチンコ乾燥機では一秒も早く乾くわけがない。
冷めぬ興奮を風呂に入って、落ち着けようと考えたときだった。

 脱衣場のドアが音もなく、開かれて加奈子さんが立っていたのだ。
俺は全裸でフル勃起。おまけに竿には加奈子さんのスクール水着を干している。
目が合った瞬間、加奈子さんは勢いよくドアを閉めた。

「あの……弟君。ごめんなさい……」
「いや、その、あの……ごめん、加奈子さん!」

 水着を元のカゴに戻して、俺は即座にバスタオルを巻いた。
醜態を晒すどころではない。よりによって、本人に見られてしまった。
言い訳できないほどの肉の物干し竿だったはずだ。加奈子さんはどう思っただろうか。俺は軽蔑されてしまうのかと、ふと自己嫌悪に陥った。

「弟君。花穂さんが買い出しに出掛けました。その間に洗濯をしようと思って……急に開けてごめんなさい。その、お風呂に入っているとばかり……」

 ドアの向こうから加奈子さんの声が聞こえる。
どうやら、花穂姉ちゃんは食後のデザートや夜食などを買い出しに行ったようだ。

「そうなんだ。もう、大丈夫だよ。入って洗濯機使って」
「はい……」

 そう言うと、加奈子さんは再び静かにドアを開いて脱衣場に入って来る。
カゴの中に入ったタオルを洗濯機の中に放り込んで、水着を手に持った。

「ごめんっ! 加奈子さん! つい魔が差して」
「……弟君……花穂さんが出かける前に言ってたんです」
「え?」
「"蒼太の背中を流してあげてもいいよ"と……」

 姉は加奈子さんが絶対そんなことをできないと思って口にしたのだ。
大人しくて、おしとやかで、控えめな加奈子さんを見誤っている。俺が知っている結城加奈子という女性は、姉たちほど強くはないが弱くもない。

「姉ちゃんって、まだ帰って来ないよね?」
「一時間は帰って来ません……」
「それじゃあ、加奈子さんに背中を流してもらう!」
「はい……水着で入ります。弟君、お先にどうぞ」

 俺は先に浴室に入って加奈子さんを待つことにした。
擦りガラスの向こう側で制服を脱ぐ姿が見える。シャワーを出して、汗を流しながら外の様子をうかがった。加奈子さんは、下着を脱いで水着に足を通したようだ。スルスルと上まであげて、肩紐を直している。

「……加奈子さんのスク水姿か」

 浴室のドアが開いて、加奈子さんが入って来る。
細くて、色白で、美しい。アップした髪型を見るのも珍しい。こんなに可愛くて、きれいな姿を水泳授業で見ることができる野郎共がいるのは許し難い。

「弟君。背中、洗いますね……」
「うん。あの、加奈子さん、さっきのことだけど」
「……洗ってないのに、干さないでくださいね」

 加奈子さんは、口元を抑えながらクスクスと笑みをこぼした。
その微笑で俺の中にあった罪悪感やらなんやらが一気に吹き飛んだ。

「ごめんね。全然乾かなかったよ」
「……当たり前です」

 背中を洗う手が度々止まるのは、加奈子さんが笑いを堪えきれなくなっているからだ。先ほどの俺の馬鹿な姿を思い出しているのだろう。本当にとんでもない失態である。今でこそ言えることだが、加奈子さんが恋人でよかったと心底思える。

「加奈子さん。水泳の補修は終わった?」
「あ、はい。今日で……」
「そっか。テスト期間までしなくてもいいのになぁ」
「必修科目なのでしかたないですね……」

 背中をスポンジで丁寧に洗い終え、シャワーで流してくれている。
浴室で水着姿は少し暑そうに見える。加奈子さんの額や首筋には汗が伝う。照れくさいからなのか、暑いからなのか、顔はずっと真っ赤なままだ。

「俺、このまま軽くシャワーして出るから、加奈子さんは風呂に入ってよ」
「え? でも、弟君……まだ浴槽に浸かってないです」
「加奈子さんも汗を流さないと。あと、その水着も洗濯するんでしょ?」
「あ、はい。そうですね……」

 お互いが別の意味で限界なのだ。
加奈子さんは、恥ずかしさと蒸し暑さで限界。俺は加奈子さんへの欲情と興奮で限界。水風呂があるのなら、飛び込みたい気分だ。

 全身をシャワーで流したあと、加奈子さんを浴室に残して脱衣場に出た。
胸がバクバクして呼吸が荒い。姉たちとの接触とは比べ物にならないほどの興奮度だ。加奈子さんを近くに感じる。今までよりもずっと近くに感じている。

「加奈子さん。俺は先にあがってるから! ゆっくり入って」
「あ……弟君。あとでお話ししたいことが……」
「話? わかった!」

 話の内容は察しがつく。加奈子さんのお説教が始まる予感がする。
たぶん、女の子の水着や下着に触ってはいけません、と注意される。
加奈子さんに限っては、別に水着や下着に触れたいだけではない。

 それよりも、俺が気になっているのは花穂姉ちゃんの行動だ。
買い出しは、自転車だから加奈子さんを連れて行けないのは理解できる。しかし、俺と加奈子さんの仲を疑っているのなら、二人きりにはさせないはずだと思っていた。

 姉は加奈子さんを見誤って、俺は姉を見誤っているのかもしれない。
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