14 / 25
14ジャネットの誤算
しおりを挟むジャネットはアルフォンに呼び出されてうきうきした気分で待ち合わせ場所に向かった。
もちろん呼び出されたのは王宮ではなく王都アルモントにあるカフェだった。
最近オープンしたカフェはおしゃれで街でも人気の店でそんな店に呼び出されたジャネットは気分も上がった。
アルフォン殿下は先に来ていて個室で待っていた。部屋の外には護衛騎士がふたりいた。
「アルフォン殿下。お待たせしました」
ジャネットは部屋に案内され中に入った。
部屋はもちろんアルフォンとふたりきりだった。
「ああ、ジャネット座って」
そう言われてアルフォンのすぐ隣にべったりと張り付いた。
彼は腕に絡ませた手をすっと引き抜きすぐに身体を離した。
「向かいの席に座ってくれないか」
「えっ?ええ、ごめんなさい。護衛の方がいるものね」
(もう、アルフォンったら照れてるの?)
「実は話が合って呼び出した。妊娠の事だが…」
「まあ、うれしいわ。心配してるのね。うん、大丈夫。私悪阻はあまりひどくないみたい。良く気分が悪くて寝込む人もいるって聞くけど今のところ全然平気なの。だからあっちの方もいつでもお相手出来るから、遠慮なく言ってね」
ジャネットはアルフォンが一言いえば四言五言返した。
アルフォンは昨日までそうやってすり寄って来るジャネットは可愛いとさえ思っていた。
だが、今となってはうっとおしいだけのいやな女になった。
「はっきり言おうジャネット。君は俺以外の男とも付き合ってたんだな。君を信じてたのに…妊娠は誰の子かわからないと言うことだ。だってそうだろう?俺は避妊も頼んだし中に出したことだってなかった。なのに妊娠なんておかしいと思ったんだ。そしたら他にも男と付き合っていたと報告が上がって来た。諜報機関が君を調べないとでも思ってたのか?調べるに決まってる。だって俺の子は王族になるんだ。それが確かなものかどうか調べるに決まってる。浅はかだったな。それにアーロン(ジャネットの元夫)も騙したんだってな。どうやったかは知らないが君の正体がわかって良かったよ。俺には二度と近づかないでくれ。それからソルティとの婚約はこのままになった。彼女におかしな真似をしたら今度こそ許さないからな。いいか?」
「そんな事言われたって…お腹の子は絶対にあなたの子よ。私はそんなへまはしないもの。避妊したって言ったけどあなたにはしていなかったの。私あなたがずっと好きだったから…嘘じゃないわ。あなたの子供なの。ほんとよ。信じてアルフォン。お願い。嘘じゃないわ。この子は…間違いなくあなたの子なの!」
ジャネットは涙を浮かべて声を震わせて必死でそう言い募って来た。
でも、そんな必至の姿も一皮むけた今となってはただのお情けちょうだいの芝居にしか見えなかった。
「悪いがそんな話信じれないし又信じろと言う方がおかしいだろう?ジャネット自分のしたことだ。責任を取れ。俺は二度とお前とは関わらない。お腹の子供は始末するなり養子に出すなり好きにすればいい!」
「…マリーおばさんに言うわ。あなたが私を捨てるって…おばさんは許さないわ。国王に言って私を妻にしろって言うわよ」
「ジャネット良く聞け。いいか。これは国王の命令なんだ。お前とは手を切ってソルティと結婚しろってっそう言われたんだ。はっきりとな。いいから二度と顔を見せるな。わかったらさっさと行け!お前の顔は二度と見たくない」
ジャネットは外にいた護衛騎士にカフェからつまみ出された。
妊娠しているのに後ろから突き飛ばされ道路につまずいて転んだ。
何よ!何なのよ!あんなくそ男相手にしてやったのに。
あんたなんか女の敵なのに。
あんたの子を妊娠したのは何のためだと思ってるのよ。
私は王族にふさわしい人間なのよ。
叔母様みたいに王宮で子供を産んでいい暮らしをするだけの価値がある女なのに。
ジャネットはしばらくその場にうずくまり泣き続けた。
それから後はジャネットの事を噂するものはいなくなった。
何もなかったかのように王宮内は静かになったのだった。
もちろん第3王妃もマリーも何もなかったかのように余計なことはなにも言わなくなった。
それからしばらくしてジャネットはスベトラーナ家の領地に引っ込んだらしいと風の噂になるのだった。
260
お気に入りに追加
487
あなたにおすすめの小説

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

生命(きみ)を手放す
基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。
平凡な容姿の伯爵令嬢。
妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。
なぜこれが王太子の婚約者なのか。
伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。
※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。
にんにん。

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

花嫁は忘れたい
基本二度寝
恋愛
術師のもとに訪れたレイアは愛する人を忘れたいと願った。
結婚を控えた身。
だから、結婚式までに愛した相手を忘れたいのだ。
政略結婚なので夫となる人に愛情はない。
結婚後に愛人を家に入れるといった男に愛情が湧こうはずがない。
絶望しか見えない結婚生活だ。
愛した男を思えば逃げ出したくなる。
だから、家のために嫁ぐレイアに希望はいらない。
愛した彼を忘れさせてほしい。
レイアはそう願った。
完結済。
番外アップ済。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。


魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる