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14ジャネットの誤算
しおりを挟むジャネットはアルフォンに呼び出されてうきうきした気分で待ち合わせ場所に向かった。
もちろん呼び出されたのは王宮ではなく王都アルモントにあるカフェだった。
最近オープンしたカフェはおしゃれで街でも人気の店でそんな店に呼び出されたジャネットは気分も上がった。
アルフォン殿下は先に来ていて個室で待っていた。部屋の外には護衛騎士がふたりいた。
「アルフォン殿下。お待たせしました」
ジャネットは部屋に案内され中に入った。
部屋はもちろんアルフォンとふたりきりだった。
「ああ、ジャネット座って」
そう言われてアルフォンのすぐ隣にべったりと張り付いた。
彼は腕に絡ませた手をすっと引き抜きすぐに身体を離した。
「向かいの席に座ってくれないか」
「えっ?ええ、ごめんなさい。護衛の方がいるものね」
(もう、アルフォンったら照れてるの?)
「実は話が合って呼び出した。妊娠の事だが…」
「まあ、うれしいわ。心配してるのね。うん、大丈夫。私悪阻はあまりひどくないみたい。良く気分が悪くて寝込む人もいるって聞くけど今のところ全然平気なの。だからあっちの方もいつでもお相手出来るから、遠慮なく言ってね」
ジャネットはアルフォンが一言いえば四言五言返した。
アルフォンは昨日までそうやってすり寄って来るジャネットは可愛いとさえ思っていた。
だが、今となってはうっとおしいだけのいやな女になった。
「はっきり言おうジャネット。君は俺以外の男とも付き合ってたんだな。君を信じてたのに…妊娠は誰の子かわからないと言うことだ。だってそうだろう?俺は避妊も頼んだし中に出したことだってなかった。なのに妊娠なんておかしいと思ったんだ。そしたら他にも男と付き合っていたと報告が上がって来た。諜報機関が君を調べないとでも思ってたのか?調べるに決まってる。だって俺の子は王族になるんだ。それが確かなものかどうか調べるに決まってる。浅はかだったな。それにアーロン(ジャネットの元夫)も騙したんだってな。どうやったかは知らないが君の正体がわかって良かったよ。俺には二度と近づかないでくれ。それからソルティとの婚約はこのままになった。彼女におかしな真似をしたら今度こそ許さないからな。いいか?」
「そんな事言われたって…お腹の子は絶対にあなたの子よ。私はそんなへまはしないもの。避妊したって言ったけどあなたにはしていなかったの。私あなたがずっと好きだったから…嘘じゃないわ。あなたの子供なの。ほんとよ。信じてアルフォン。お願い。嘘じゃないわ。この子は…間違いなくあなたの子なの!」
ジャネットは涙を浮かべて声を震わせて必死でそう言い募って来た。
でも、そんな必至の姿も一皮むけた今となってはただのお情けちょうだいの芝居にしか見えなかった。
「悪いがそんな話信じれないし又信じろと言う方がおかしいだろう?ジャネット自分のしたことだ。責任を取れ。俺は二度とお前とは関わらない。お腹の子供は始末するなり養子に出すなり好きにすればいい!」
「…マリーおばさんに言うわ。あなたが私を捨てるって…おばさんは許さないわ。国王に言って私を妻にしろって言うわよ」
「ジャネット良く聞け。いいか。これは国王の命令なんだ。お前とは手を切ってソルティと結婚しろってっそう言われたんだ。はっきりとな。いいから二度と顔を見せるな。わかったらさっさと行け!お前の顔は二度と見たくない」
ジャネットは外にいた護衛騎士にカフェからつまみ出された。
妊娠しているのに後ろから突き飛ばされ道路につまずいて転んだ。
何よ!何なのよ!あんなくそ男相手にしてやったのに。
あんたなんか女の敵なのに。
あんたの子を妊娠したのは何のためだと思ってるのよ。
私は王族にふさわしい人間なのよ。
叔母様みたいに王宮で子供を産んでいい暮らしをするだけの価値がある女なのに。
ジャネットはしばらくその場にうずくまり泣き続けた。
それから後はジャネットの事を噂するものはいなくなった。
何もなかったかのように王宮内は静かになったのだった。
もちろん第3王妃もマリーも何もなかったかのように余計なことはなにも言わなくなった。
それからしばらくしてジャネットはスベトラーナ家の領地に引っ込んだらしいと風の噂になるのだった。
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