我慢の限界が来たので反抗したら人生が変わりました

はなまる

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5闘い勃発!

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 王宮の外門をくぐり中に入ると城の入り口で近衛兵に引き止められた。

 ルドルフと入ろうとするとここからは護衛騎士でも中には入れないと。

 そう言えば王妃教育の時も同じことを言われたと気づく。 

 「ルドルフ私は平気だから。私が出てくるのをここで待っていてちょうだい」

 「ほんとに大丈夫ですか?」

 ルドルフはこれまで見たことがないような顔で私を見つめる。

 「ええ、近衛兵の方がいるもの。安心よ」

 「わかりました。ここでお待ちしております。ご用が終わり次第すぐにお戻り下さい」

 「ええ、そうします」

 私はこくんと頷いてルドルフを残して城内に入った。

 国王から呼び出されたと言うと近衛兵が伺っておりますと案内をしてくれたので父を待たずに中に入れた。

 近衛兵は国王の執務室の手前にある控えの間に案内してここで待つように言われた。


 しばらくそこで待っていると廊下から声が聞こえた。父の声だった。

 「ソルティはもうこちらに?」

 「はい、半時ほど前にお越しになり控えの間でお待ちです。すぐに執務室にご案内します」

 すぐに近衛兵が私を呼びに来て私は国王の待っている執務室に案内された。

 中にはすでにアルパーシー国王とばか王子のアルフォン殿下。そして父がいた。

 3人は私の乗馬服姿に驚いたようだったが国王がすぐに声をかけた。

 「おお、ソルティ嬢、さあ入って…こちらにかけなさい」

 「国王陛下、アルフォン殿下失礼します」

 私はひざを折りお辞儀をして言われるままゆっくりとソファーに進む。

 向かいに国王とアルフォン殿下が座る。続いて父が反対のソファーに腰かけたのを見て私は父の座ったソファーの一番端に腰かけた。


 「ソルティなんだその格好は…まったく国王陛下にお目にかかると言うのに…申し訳ありません。母親が早くに亡くなって躾がなっていませんで…」

 「何、構わん。ブリューノ、ドレスコードがあるわけではないだろう」

 国王はそう言って笑い飛ばす。

 「それよりソルティ嬢。顔が赤いがどうした?」

 (私は待ってましたと頬にそっと手を当てた)

 「はい、父に殴られました」

 私は俯き鼻をグスッと言わせる。

 「なんだと?ブリューノお前はこんなか弱い娘を殴ったのか?」

 「陛下。娘は婚約を解消したいとわがままを申しましたもので、つい…」

 父の視線が痛いほど私を睨んでいると感じる。

  「だが、女を殴るのは。なぁアルフォン」

 「はい、父上。女性はか弱い生き物ですから」

 私ははっと顔を上げてアルフォン殿下を見た。

 彼はうんうんと頷いていた。まったくの間抜けずらである。

 目が合う。

 「ソルティ痛みは?大丈夫か?もし必要なら手当てをするが…」

 アルフォン殿下が尋ねてくる。

 「いえ、その必要はありません。父に殴られるのは慣れてりますので…あの国王陛下それでお話とはどんな?」

 私はこれ以上この話はしたくないとばかりに。しかし、父には日常的に殴られていると伝えながら。


 国王は一瞬驚いたがそれでも、ああそうだったと言わんばかりに話しをし始めた。

 「ああ、それなんだが…アルフォンから聞いた。まったくけしからん話だが…婚約はこのまま続けてもらいたい。もちろん相手にはきちんとした対処をするつもりだ」

 すぐにアルフォン殿下が後を追うように話を続ける。

 「ソルティ嬢、俺の考えであんなことを言ったが間違っていた。父に先に相談すればよかったのに先走ったんだ。子供の事は何とかする。だから婚約はこのままにしてくれないか?」


 (はっ?せっかく喜んだのも束の間?結婚前から愛人がいる人と?そんなばかな事許せるわけがないじゃない!それにジャネットはどうするつもりなのよ。子供の事は何とかする?どうやって?)

 ふつふつと湧き上がる怒り。


 「いいえ、いくら国王でも結婚は当人同士がする事。一度その当事者から婚約破棄したいと言われたのです。アルフォン殿下がまだ未成年だとでも言うならまだわかりますが、成人した男性が一度口にしたことを翌日裏返すなどあってはならない事ではないでしょうか?ましてアルフォン殿下は国を代表する王族の一人なのです。そんな無責任な事言わないでもらえませんか。私はアルフォン殿下から婚約解消を申し込まれて了解しました。それでいいではないですか。すでにジャネット様は妊娠されていて、もし私が殿下と結婚と言うことになればジャネット様は日陰の身になるのでしょう?それに生まれてくる子も可哀想ではないですか。殿下が国王にでもなるお方ならばそれもいいかも知れませんがそうではないのですから…私にはそんな卑劣な事は出来ません」


 (ああ、嫌われても平気だと思えるのは何て気分がいいのかしら。こうなったら言いたいことはそれなりにはっきりと言ってやるんだから!私は間違っていないもの)


 そこまで言うといきなり父が私の腕をひねり上げた。

 「痛い!何するんです!放して」

 私は身体をひねってその拘束から逃れようとした。だが、父の力はますます強くなる。

 「お前は国王陛下に向かってなんて失礼なことを…申し訳ありません」

 「ブリューノ。いいから手を離せ!」

 国王は慌てて立ち上がる。

 「ですが…」


 国王が父と私の間に割って入ると私の方を向いた。

 (まずい気がする…)

 「ソルティ嬢の言うことはもっとも。さすがにブリューノ。お前の娘だけはあるな。私はソルティ嬢が気に入ったぞ。アルフォンにはこれくらい気概のある妻が必要だ。なぁ、ソルティ。アルフォンを鍛えてやってはくれまいか?子供の事は養子に出す事も出来るし相手は子爵家の娘しかも一度婚姻した女だ。だが、ソルティお前はヴィオレッテ公爵家の令嬢。格が違う。そうだろう?」

 (ああ…もう。無理。無理。無理。こんな結婚いやだ)

 さらに追い打ちが…

 「なあ、ソルティ嬢。俺も悪かった。これからは君だけに心を砕くと約束する。出来れば早めに式を挙げてはどうだろうか?なぁソルティ?」

 アルフォンは親しみを込めたつもりなのかいきなり私の名前を呼び捨てにした。

 真向かいから独特の笑みを浮かべ蒼翠色の瞳を潤ませたようにして私を見て来る。

 この眼差し恐いくらいきれい。

 私はふっと見惚れる。

 彼のそら美しいまでの顔に思わず魅了されそうになる。

 (ああ…もうどうすればいいの。このままじゃ婚約はこのままと言う事にされてしまう。何とかして…)

 ぎゅっと唇を噛みしめる。そして令嬢らしくもなく鼻で息を大きく呼吸をした。


 「いい加減にして下さい!もしこれ以上話をするならジャネット様をご同席でお願いします。彼女を蚊帳の外に置くことは出来ないはずです。これはアルフォン殿下が招いた火種です。きちんと責任を取っていただかなくては私は我慢できません。ジャネット様も私もが納得いくお話でなければこの婚約は解消します」


 「ああ、もちろん。ソルティ嬢の言うことはわかる。だが、先ほども申したようにジャネットは出戻り、しかも子爵家の…なぁソルティ?」

 (気持ちわるい。国王まで呼び捨て?まあ国王の考えはそうだろう。何しろ女は吐いて捨てるほどのものなのだ。こんな男に言い任されてたまるか!)

 何だか余計に腹が立って来た。

 「お話は以上です。これ以上この話をする事は無駄でしょう。私の言った条件が整えばまた話し合いの席に着くことも考えますがこのような話では…では私は失礼します!」

 私はソファーから立ち上がると扉の方に歩き始める。

 後ろから父が怒号を上げた。

 「ソルティ!お前という奴は…もう我慢ならん!お前はたった今ヴィオレッテ公爵家から除籍する。いいな。屋敷には帰って来ても入れんからな。二度と帰って来るな!」

 (後ろ向きの私は思わず苦笑する。お父様今言った事取り消しなしですよ。いいんですね?)

 「ええ、結構ですわ。お・と・う・さま。私もあなたのような暴力的な父親とこれ以上関わり合いたくはありませんので、除籍上等です。国王陛下そう言うことですので。たった今私はアルフォン殿下にふさわしい婚約者ではなくなりました。婚約は解消と言うことで…あっ、もちろん殿下の有責ですよね?殿下のせいで傷つき公爵家まで除籍されたのですから。慰謝料は殿下の4年分の年収で我慢します。では、失礼します」

 
 廊下に出ると脚ががくがくしていた。

 でも、私は言いたいことをすべて言ってたのだ。

 廊下を歩く脚取りは心も身体も軽かった。

 





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