殿下、決して盛ってなんかいません!私は真面目にやってるんです。おまけに魅了魔法効かないじゃないですか!どうするんです?

はなまる

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5-2いよいよ出発ですが

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 アリシアとヴィルフリートはアラーナ国に馬車で行くとばかりに思っていた。

 だが、ガイル大司教に鼻で笑われてしまう。

 大聖堂の祭壇の前に来たふたりは魔法陣が描かれたのを見て驚く。

 「まさか私たち転移するんですか?」

 アリシアは驚いた。だって大司教に転移魔法がつかえたなんて知らなかった。

 「おい、アリシアこれ大丈夫なのか?」

 不安そうな声を出した。

 ヴィルフリートは転移魔法など未知の世界だ。


 「心配ない。転移魔法はシーヴォルト殿下から申し出があった事だ。彼の力をもってすれば転移魔法など子供のまやかし。さあ、彼の許可は取ってある。きっと怪我を早く治してほしいんだろう。いいか、これからアラーナ国の王宮に移動する。着いたらすぐに殿下の治療にあたりそして事の一大事を告げて協力を頼め」

 「えっ?大司教、それはもう話が付いてるんじゃ?」

 だってこんな事をして直接王宮に出向くわけだし…今までその話する機会ありましたよね?

 「そんなこと口が裂けても言えるはずがないだろう。アリシアお前からていねいにお願いしてくれ。いいな」

 アリシアは大司教がご都合主義だと言うことを忘れていた。

 そうだった。大司教はいつでも自分の都合がいいようにしてしまう人だった。

 そういえばこんなことになったのはマイヤいえ、フィジェル元公爵のせいだって言ってたしね。

 そこまで自分がする必要がないとでも?でも国家の一大事なんですよ。


 もう、こんな事なら簡単に引き受けるんじゃなかった。

 シーヴォルト殿下がどんな人か全く知らないし。

 もう、どうやって彼に頼みを聞いてもらえばいいのかもわからない。

 そう嘆いた時、神の声がした!?

 ”魅了だ。魅了魔法で彼を篭絡しろ。そして魔狼退治をお願いするんだ。いいな?わかったか?”

 これって神の声じゃないから…ったく。

 大司教。私の脳内に話掛けるのやめてくださいってば!!

 「えっ?」

 アリシアは驚いて大司教を見た。



 大司教は手の平に乗るほどの鏡を持っている。

 「アリシアこれを…これは魔鏡と言ってこれに呼び出したい人の名前を言えば相手と会話が出来るものだ。お前の事だ。失くすといけないから首飾りにしてやった。どうだ?これなら聖女らしくも見えるだろう」

 アリシアの首にずしりと重い鏡の首飾りがかけられた。

 アリシアはその首飾りを手に取って見る。

 真ん中にプラムの実ほどの鏡がありその周りにはいろいろな輝石が散りばめてあるせいで大きさはかなり大きい。

 でも何となく神に使える聖女が持っている首飾りに見える。

 「でも、大司教いつも私の脳内に話しかけて来るじゃないですか。こんなものなくたって…」


 アリシアは大司教に向かって顔をしかめてみる。

 「ばかもの!アラーナ国とどれほど距離があると思っているんだ。そんな事が出来るのはせいぜいこの神殿ないくらいだ。とにかく何でもすぐに報告しろ。こちらからは何の手伝いも期待できんからな。君が頼りだ。アリシアを頼んだぞ!」

 「はぁ、とにかく全力でアリシアを守ればいいんですね?」

 「違う!この国を守るんだ。間違えるんじゃない。一番大切なのはどんな手段を使ってもシーボルト殿下に魔狼を退治してもらうことだ。それからこれはヴィルフリートに預かってもらおう」


 大司教は弓と矢をヴィルフリートに差し出した。

 「この弓は生命の樹と言われている神が最初に植えられた木の枝で作られた弓だ。こちらはオルグの泉がある洞窟の鍾乳石を結晶化させて作られた矢じりがついた矢。これを使えば魔狼を倒すことが出来るはずだ。何しろ神の力が宿っているからな。いいか、これをシーヴォルト殿下に渡して魔狼を退治してくれるように頼むんだ」

 ヴィルフリートは差しだされた弓矢を受け取る。

 「でも、アリシアの純潔も守って国も守れとは…俺にこんな大役が出来るか?」

 「クッ!兄妹揃って…いいからぐずぐず言うな。わかったな。ふたりとも!」

 「「はいっ!!」」

 大司教の怒りなのかイライラなのかわからない鋭い目つきに見据えられふたりは緊張しながらも同時に返事をした。


 アリシアは思う。もしかして私の初仕事ってまさかシーヴォルト殿下を誘惑すること?

 ない。そんなわけないから。そんなのやりたいことに入ってませんよ~。



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