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しおりを挟む陽介ははつねを抱きしめた。
たまらず彼女にキスをするとすぐにはつねは唇を開いた。
舌を滑り込ませると彼女はその舌を舐めとるように舌を絡ませてきた。
陽介はその舌を強く吸う。
何度も激しいキスを繰り返すうちに下半身は熱く高ぶっていく。
今すぐに彼女の中に己の分身を突きたてたい衝動に駆られる。
昨晩見てしまった記憶を消し去りたかった。
はつねはあいつの前で裸にされて…
そんなことを考えていたら昂った感情が冷えてしまって膨れ上がった分身は萎えて行った。
「さあ、もうやめないと…」
陽介ははつねから離れようと唇を離した。
だが、ふと彼女の胸元に赤いマークを見つけるとメラメラ嫉妬が燃え上がった。もう抑えがきかなくなった。
「これはだめだ。こんなもの…‥」
陽介はひとり我慢できないとばかりにいきなりはつねの胸元を強く吸い上げる。
あちこちにあるその印を消し去ろうと俺のものだと印を上書きして行く。
「もう、陽介さんったら…どうしたの?」
はつねはくすぐったそうに体をよじる。
突然彼の携帯電話が鳴り始めた。
「クッソ!…きっと仕事だ」
陽介は急いで電話に出る。
「ああ、すぐに行く」
彼は着替えをして急いで出る支度をした。
はつねをひとりにする事を考えるとぞっとした。
「はつねさん今日はどこにも行かないでここにいるんだ。あいつの事だ。君の家に来るかもしれない」
「ええ、そうかもしれない。恐い陽介さん」
「ここにいれば安心だ。約束して」
「ええ、だって恐いもの。あなたが帰って来るまでここにいさせて」
「ああ、もちろんだ。絶対にここを出てはいけない。何があってもだ」
はつねは怯えてこくんとうなずく。
あんまり怖がらせたくはなかったが、心配でたまらない。
陽介はやっとほっと息をつくと思い出す。
「そうだ、あいつの手、けがしてなかったか?はつねさんがひっかいた傷が?」
「まさか陽介さん、彼が襲ったって言うの?うそ…でも、そう言えば手首にひっかいたような傷があった」
「ほんとか?それで傷の事はなんて?」
「バイクが倒れそうになったとか」
「そうか。ちょっと帰りに白金署に寄って来る」
「それって、わたしの事件の事?」
「ああ、そうだ。あまり心配するな。ここにいて、帰りに何か買ってくる。何か欲しいものは?」
「ううん、食欲ないから」
「でも、何か食べたほうがいい。冷蔵庫にあるものは何でも食べていいからな」
陽介はしつこいくらいはつねにここを出るなよと言い聞かせてやっと部屋を出て行った。
今日は引き続き、海南署の事件の聞き込みに行く予定だった。
陽介は北村や森と落ち合うと事件現場の近くの聞き込みまわった。
コンビニの防犯カメラや道路の交通カメラなどの情報から、その時間頃にいた人物が洗い出されているので明日は目ぼしい人物に会って話を聞くことになって今日の捜査は終わった。
そこで陽介ははつねに電話をした。
「はつねさん?気分はどうか」
「ええ、もうすっかり良くなったから」
「そうか、今から白金署によって帰るから」
「わかった。夕食はカレーでも作ろうと思ってるから」
「ああ、でも無理して作らなくていい」
「うん、わかってるから…」
「じゃあ、後で」
「ええ、気を付けてね」
「ああ…」
電話を切ると陽介は何だかほっとした。
彼女が何も気づいていないとわかったからだろうか。
一刻も早く海斗と距離を置くようにしなければ…そのためにはどうすればいい?
そうだ!結婚をすることにすればいいんじゃないか?
そうすればもうあいつも近づくことは出来なくなる。
もちろんあくまでも偽装のためだ。
はつねと結婚か‥‥彼女に結婚を申し込むことを想像したらこっちがはずかしくなる。
途端に陽介はむせた「ごほっ。げほっ!」
陽介は白金署に出向くとはつねの暴行未遂事件のその後の状況を担当の捜査官に尋ねた。
「桐生捜査官、お言葉ですがそれらしい証拠もありませんし、今はまだ特に進展はありませんよ」
「コンビニのカメラはどうだった?」
「ええ、確かに胡桃沢さんがコンビニから出て行ってその後何人かが…」
「その映像は見れるか?」
「はいパソコンに取り込んでありますから…どうぞ」
陽介は驚いた。はつねがコンビニを出た後、海斗が後を追うように後ろを追いかける映像があった。
陽介は出がけにはつねが彼の手首に傷があったことを聞いていたので、やっぱり彼が犯人じゃないかと思い始めた。
俺はあいつの手首をつかんだからな。
傷を見落とした。昨日気づいていれば昼間に何かできたかも知れなかったのに…
あいつ自分で襲っておきながら彼女のところに心配したふりをして来たのかもしれない。
でもDNAは?
もしかして自分のものと誰かのをすり替えたのか?
はつねがひっかいた時のDNAをもう一度調べてあいつのDNAと照合すれば犯人と断定できる。
ひょっとして過去の事件もあいつの仕業じゃないのか?
高校生だったはつねさんを襲った暴行犯。
うまく行けば過去の事件も取り調べが出来るんじゃないか?
取り調べが出来れば俺がきっとあいつを落としてやる。
それにあの手口はさくらを襲った犯人と同じで彼の左手の甲にはやけどの跡もあったんだ。
でも、今は気づかれるわけにはいかない。
とにかくこうしてはいられない。
一刻も早く科捜研に行ってあのDNAを手に入れなければ…‥
陽介の気持ちは早まった。
陽介はいけないと分かっていながら人のいなくなった科捜研に入ってDNA保管庫を調べる。
持ち出したDNAが証拠のものだと分かるように陽介は携帯電話で科捜研に入るところから撮影を始めた。
そして証拠の品物を取り出す。
×月×日白金署管内、暴行未遂事件、被害者、胡桃沢はつね。証拠物件DNA
これだ。容器を全部を持って出るわけにはいかなかった。
近くあった容器にピンセットでほんの少し皮膚の欠片を入れると慎重に元の位置に戻す。
これを民間の調査会社をネットで調べて、その場で住所を書いて封筒に入れて封をした。
そしてポストに落とすところまでのすべてを録画した。
こうしておけばこれが証拠のDNAだと証明できるはずだ。
この結果が分かれば後はあいつのDNAと照合すればはっきりする。
でも彼女には今は知らせるわけにはいかない。
はっきりするまでは秘密にしておかないと。
陽介は急いで自宅のマンションに帰って来た。
気持ちは重かったが彼女に気づかれたくはなかった。
エントランスを入ると一度深呼吸をして自宅のチャイムを鳴らした。
もちろん彼女を驚かせないためだ。
「はい、どなたですか?」
はつねはすぐに応対した。
彼女の声を聞くと陽介はほっとした。
「俺だ。はつねさん大丈夫か?」
「陽介さん?ええ、大丈夫です」
「どうした?」
「いえ、何でもありません」
「あれ?開けてくれないのか?」
「あっ、すみません。今すぐ‥‥」
何だろう?
陽介は今まで感じたことのない彼女の態度にしっくりいかなかった。
しまった。何か気づいたのだろうか?
それともあいつから電話でもあって何か言われてのか?
本当はひとりになんかさせたくなかった。
でも仕事を休むわけにも行かない。
だから帰ったら一緒に食事でもして今夜はとびっきり彼女を喜ばせたいと思っていた。
そうだった。結婚の話も聞いてみなくては。
あくまで海斗との結婚をやめさせるための仮説の話だが‥‥
だが、今日は無理かもしれないな。
いくら嘘でも、つい本気でそんなことを考えてしまう。
はつねさんが俺に少しは脈があるといいんだが‥‥
陽介の手には、あの時聞いたピヨピヨ堂のプリンの包みが握られていた。
俺がこんなものを買って帰るなんてどうかしてるのかもしれない。
もしかして結婚したら俺は家庭的な夫になるのか?
陽介はエレベーターの中でひとりでニヤリと笑う。
何考えてるんだ?
彼女は若くてきれいで俺なんかにはもったいない。
それにわかっている。
彼女がそばにいて欲しいと言ったのはあくまで襲われて恐かったからで…
ったく!
俺はエレベーターの中で百面相でもしているのかと思うほど笑ったり難しい顔をしていた。
今の俺を知らない人が見たら気味悪がるだろうか‥‥
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