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しおりを挟む「ああ、でもまだ無理する必要ない」
陽介さんはわたしの握った手首を離そうとする。
「でも…男の人って我慢できないんじゃあ?」
だから、わたしはあんな目に遭ったに違いないんだから…
思わずあの時の恐怖を思い出してパッと陽介さんの手首を放した。
「はつねさんはあの事を気にしてるのか?だから無理しようとしてるんじゃないのか?」
はつねはなんて言っていいかわからなくなる。
だって本当の事だ。
陽介がはつねと向かい合わせになる。
「いいかはつねさん。あんな目に遭っても、君は何も変わってなんかいない。まして君に責任のあることでもない。だって君自身は何も変わってはいないんだ。もし俺が君を抱くとしても、俺はそんな事は一切気にしない。それは君があの犯人を憎いと思っても好意を持つことはないからだ。そんな事より前に恋人でもいて君がその人を忘れられないなんてことの方がよほど気になる。だから変に気を使わなくていいんだ。男が恐い気持ちはわかる…それで君を気遣っているだけだ。俺だって君がすごく欲しいけど、人を愛するってそれだけじゃないだろう?」
陽介さんはたまらないように唇を押し付けてきた。舌先で唇をこするように優しく愛撫されると自然と声が漏れた。
「ぁあっ‥‥はぁあ…‥」
舌先が絡み合い背筋がぞくぞくしてい痺れが走る。
それは切なくて甘くて苦しい刺激だった。
「は‥つね…」
彼の呼ぶ声が、吐息がはつねを飲み込んでいく。
全身の力が解けて行き体中の力がするりとほどけて行く。
彼の腕に抱かれて胸に頭を預ける。
「こうしてキスするだけで…それだけでもう十分満足なんだ」
かすれた声がはつねの心を溶かしていく。
彼の手がうなじをそっと這い優しく撫ぜ上げる。
その指は首筋を伝い耳朶をつまみそっと頬を撫ぜた。
そして目と目が合う。
彼が嘘を言っているのではないとすぐに分かった。
こんなに幸せそうな顔を見たのが初めてだったから…
はつねは男の人にこんなに触れられたことはない。
ずっと男に近づくことさえ出来なくていつもおびえていた。
でも彼は違う。わたしを心からリラックスさせてくれておまけに体まで熱くしてくれて、それでも彼は無理強いはしないと言ってくれる。
これが愛でなくて何なのだろうか。
愛してるからこそこんな行動が出来るのだ。
はつねは思い出す。もし父が無理やり海斗さんと結婚させようとしたら?
あの父ならそれくらいの事はやりかねないかも知れない。
今のうちに陽介さんと関係を持っておけばパパだってもうどうすることも出来ないはずなのでは?
わたしだって陽介さんと…彼とそんなことをしてみたい。
こんな気持ちになれるのはきっと彼しかいない。
「陽介さん、わたしシャワー借りてもいい?」
「いいけど、どうして?」
「今夜ここに泊ってもいいでしょう?もちろん無理してそんな事するつもりないけど。一緒にいたいし」
「ああ…うれしいよ。着替えどうする?」
「取って来る」
「そうだな、家、隣だし」
陽介が笑った。
「陽介さん笑った」
「俺だってうれしいときは笑うさ」
はつねはうなずくとすぐに着替えを取りに自宅に戻った。
いつものカバンを置くと、下着とスウェットタイプのパジャマと携帯電話の充電器。そうだ化粧品も…はつねはバタバタと持って行くものを別の籠に詰め込むとすぐに陽介の家に戻って来た。
陽介は寝室のベッドのシーツを交換していた。
「陽介さんったら、いいのに気を使わなくても」
「だって、これくらいさせてくれ。いいからシャワーに行って」
「ええ、じゃあお先に」
はつねは胸がざわめく。陽介さんてもう28歳よね。
今までいろんな女の人と付き合って来たんだろうな。
だってあんなにイケメンだし…わたしなんかまるで男関係ゼロで…‥
急に持ち上がってくる不安。
おまけにもし急に恐くなって出来なかったらどうしよう‥‥
バスルームで裸になると持って来たお気に入りのシャンプーで髪を洗う。このシャンプーの柑橘系の香りが気に入っていた。
そして体は彼の風呂場に会ったボディソープを使った。
はつねの期待を見事に裏切るようなごく普通のタイプのボディソープだった。
フフフ。思わず笑いがこぼれる。
こうやって見ると本当に彼の近くに女の人の影はないように思えた。
洗面台の中だってかみそりやシェービングクリームだけだったし、歯ブラシも一本だけで、タオルだって可愛いタオルなんか一枚もなかった。
やっぱり陽介さんって、フフフ。真面目なんだ。
はつねが風呂から上がると今度は入れ替わりに彼がシャワーをしに行った。
はつねはその間気を紛らわせようとピー助と遊んだ。
「ピー助、陽介さんは女の人を連れてきたりしないの?」
もう、わたしったら、なに聞いてるの。
相手はオカメインコなのに…いきなりやきもち焼いたりするなんて…
「ピーさくら…さくら好きピー…」
心臓が跳ね上がる。さくら好き?頭皮がびくっとなる。
もう…ピー助。
「ピー助。さくら好き?」
「ピーピーピーさくら好き好き」
「だよね。さくらちゃん好きだったんだよね。はつねも好きになってよ。はつね好きはつね好きって言ってよ」
「はつね拉致るピーピーピー」
また?それか。
「はつね何やってる?」
「あっ、陽介さん…ピー助さくら好きって言うんだね。可愛いよね」
「久しぶりだ。それ言ったの」
「そうなの。ピー助もう一回言って。さくら好きって…」
「ピーピーさくら好きさくら好き好きピー」
「そうか、ピー助はつねさんをさくらと思ったのか?」
「わたしってさくらさんに似てるの?」
「いや、体型とか感じが少しくらいかな」
「…‥もしかして陽介さん、わたしの事、妹変わりにしようなんて思ってないですよね?」
「当たり前だ。妹とキスしたいか?」
「じゃあ、陽介さん今夜わたしとエッチしてもらえませんか?」
ああ…ついに言ってしまった。もう後には引けない。
「そんなにおれを煽りたい?そんな事言われたら俺、余裕なくなるけど」
陽介が突然目の前に近づく。
「ひぃぇ!いえ、それは…性急に急いでいるわけではなくて…」
いきなり笑みを浮かべてはつねを見る。
「もういい、冗談だから。はつねさんも興味があるんだろう?じゃあ、出来るところまでやってみる?」
なんだろう。この展開は、なんだか想像していたものとは違う気が。
もう、それにお子様の講習会みたいな気もしなくもないが…
「はぁ…お願いします」
もっと言い方があるのじゃないの?
もう、ムードないなぁ…
ぎこちなくベッドの端に腰かけると陽介がはつねにキスをし始めた。
甘い口づけ、とろけるように口腔内をとろとろにされて、すぐにはつねは何も考えられなくなっていく。
そのうちに彼の手がスウェットの下から入ってきてブラジャーの上から胸を包み込んだ。
そっと布地越しに硬くなった胸の先端をつままれると、体はびくびくとはねた。
「恐くなったら言うんだ」
彼が甘い言葉で囁く。
その唇はそのまま喉を伝って首すじを伝って下りて行く。途中でまた唇に戻って来て唇を重ねられると、もう体中に甘いしびれがじわじわ広がっていく。
「あぅっ‥‥はぅ、あっ…」
こらえようもなく自然に声が漏れると彼が背中に手をまわしてブラジャーのホックをはずした。
胸との間に隙間が出来てその間からじかに胸のふくらみを揉みしだかれる。
ゆっくりとこねるように胸を揉まれ時おり胸の先のとがりを指先で器用に摘み上げられていく。
「ぅん‥‥やっ、んん…‥っ」
「感じる?」
そんな囁きさえ刺激となって腰のあたりがじんじんしてくると今度は下腹部が燃えるように熱くなっていく。
感じたこともない疼きが沸き起こりはつねはぎゅっと脚を擦り合わせる。
何度も胸の先を指の腹でこすられ摘み上げられるとショーツの中がぬちゅりと潤っていくのが分かった。
はあ…わたし…どうしよう…こんなの恥ずかしすぎる。
「どうした?恐くなった?」
わたしは激しく首を振る。そっちの恐さではない。そうではない。気持ちよくて恐い。
彼が再び唇を重ねて激しく舌をむさぼられる。
頭は真っ白になって何も考えれなくなっていき、わたしは彼の舌に自分の舌を絡ませその激しい波に乗った。
彼の唇をそっと噛んで彼の顔を見た。
陽介さんが目を見開いた。
何かが変わった。
「はつね…」彼がつぶやくと同時に彼の手はスウェットを押し上げ彼の前に胸をさらされた。
「脱がせていい?」
わたしは胸にひんやりした空気を感じながら恐る恐るうなずく。
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