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しおりを挟む「はつね、いたのか。何度もチャイム鳴らしたんだぞ。でも明かりもついてるみたいだったし、部屋まで行ってみようって思って…」
えっ?海斗さん…どうしてこんな所にいるの?
部屋の明かり…そうか、寝坊して消すのを忘れたのかも…でも…
「もう、海斗さん、いきなり驚くじゃない。でもどうやってここに入ったの?わたし暗証番号教えていなかったよね…」
訳の分からない悪寒がする。
「どうやってって…人聞き悪いな。暗証番号は流星に聞いたんだ。それよりはつねどこにいたんだ?」
そうなんだ。でも、海斗さんどうしてそんなに怒ってるのだろう?
「どこって…お隣に」
もう、どうしてこんな日に来るのよ!
「隣って何の用?」
「そ、そんな事いちいち報告しなきゃいけない?」
「いや、いいんだけど。それよりはつねさん食事行かないか。今日は休みだろう。俺もちょうど近くに来たから、そういえばまだ一度もはつねの所行ってないって思ってさ」
「そう…‥だったら連絡してくれれば良かったのに。悪いけど食事の約束しちゃったから。残念だけどまたにしてもらえない?」
「そうか。その相手ってまさか男じゃないよな」
海斗が睨むようにはつねを見る。
「そんなの海斗さんに関係ある?わたしはもう22歳なのよ。男の人と食事くらいしてもおかしくないと思うけど…」
「別に怒ってるわけじゃないさ。はつねが大丈夫かと思っただけだ」
「わたしだっていつまでも子供じゃないのよ。誰と何をしようと勝手じゃない!」
「ああ、そうだけど…じゃあ俺、帰るから、いきなり悪かったな」
「あっ、ごめんなさい海斗さんそんなつもりじゃなかったの。また今度遊びに来てね」
はつねは急に海斗に悪い気がしてそう言った。
海斗は、しょげたみたいに返事も聞かないうちに廊下をエレベーターに向かって歩き始めていた。
でも、こんな海斗さん初めて見たな‥‥そんなに心配なものなの?妹みたいだから?
はつねが海斗を見送り部屋に入ろうとすると陽介が声をかけてきた。
「彼、はつねさんの知り合いか?」
「えっ?陽介さん見てたの」
「ああ、見られたら困るのか?」
何よ?いきなりその態度…と思うがそこは大人対応で。
「ううん、そんなことないわ。彼は兄の友人で子供の頃から知り合いなの」
「ほんとにそれだけの関係なのか?」
いきなり陽介さんの顔が強張り口調が厳しくなる。
さっきから何?オール?マークの連発にいい気がしなくなった。
「ほんとにって?陽介さんわたしが二股でもかけてるとでも言いたいの?」
何よ。まるで取り調べみたい。はつねはつい口調がきつくなる。
でも、さっきの事で陽介さんはすっかり気を悪くしたみたいだ。
「やっぱり今夜は出掛けるのはやめよう。こんな気分では…悪いが食事はまた今度にしよう。はつねさんおやすみ」
陽介は他人行儀に挨拶をするとさっさと部屋に帰ってしまった。
なによ。勝手に想像すればいいんだわ。
男って勝手だわ。
はつねは怒って部屋に入った。
リビングのソファーに座り込むと考えた。
それにしてもいきなり海斗さんが来るなんておかしなこともある。
そう言えばわたし、海斗さんの事あんなに憧れていたのに、今日会った時なにも感じなかった。
彼はただの友人って感じ。おまけに心配しすぎなお兄さんって感じで…
はつねはせっかくのいい気分を壊した海斗に腹が立っていた。
もう海斗さんって最悪!こんな時に偶然来るなんて‥‥
それに陽介さんがあんなに怒ったところ初めて見た。
なによ。なによ。どうして。あんな言い方しなくても…
えっ?もしかしてヤキモチ?
だったらどんなにうれしいか。
その頃海斗は、はつねのマンションを出ると乗って来たバイクのところま来ると考え込んだ。
ずっとはつねは男を作らないと思っていたのに、俺としたことが油断していた。
はつねの持っているインコのマスコットキーホルダーには盗聴器が仕掛けてあって、海斗はずっとはつねの様子を監視していた。
大学生の時もはつねは男を恐れて全く男を寄せ付けなかった。だからすっかり安心していたのに‥‥
就職したとたん音信が途絶えて心配したが、先日あった時、はつねはインコのキーホルダーをカバンにつけていて俺は一安心した。
ここ何週間か通信が途絶えていて、その理由を知ろうと流星についてあいつの自宅に行ったらちょうどはつねに出会えてハッピーだった。
でも、あの日だったよな、はつねがおかしな男と出会ったみたいだったのは…‥
彼女が16歳の時バージンを奪ったのは俺だ。彼女はもう俺のものなのに…
そうか、きっとあの日出会った男に違いない。確か”ようすけ”とか言っていたな。
とにかくこうしてはいられないはつねが他の男に目を向けるなんて許さない。
彼女は俺のものなんだから…
何とかして彼女を僕から手放さない方法は?
そうだ、もう一度彼女を襲ったらどうだろう?
あの後彼女は男を恐がるようになったじゃないか。
また暴行されれば今度こそ他の男に目を向けることはなくなる。
きっとそうなるに違いない。
絶対に俺だとわからないように、前回と同じようにすぐに気を失わせて…
彼女の中に俺の分身を、俺の物だって証を、彼女が目覚めてもあそこに何が入ったのかわかるほど、あそこがすれて痛いほど突き立ててやるからな。
だが、保育園からマンションまでの間でいい場所があっただろうか?
少し下調べをしなくては、絶対に証拠を残してはならないからな。
海斗は考えをまとめると、うす暗い駐車場の中でほくそ笑んだ。
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