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67最終話
しおりを挟むなのに、まだ、まだ…はぁぁぁ今さら?
わたしは何処まで意気地なしなのか。
記憶は3年前の事を持ち出す。
龍ちゃんが3年前に来てたらこんな事にはならなかったんじゃない!
何を言ってるのか?
焦る気持ちについて行けない自分。
バク付く心臓。
じゃあ、どうして、どうして3年前に来てくれなかったのかって腹が立ってきておかしな方向に話が。
って頭がブチんって切れた。
こらっ!弁財天様の教えはどうしたんだ?
だってぇぇぇぇぇぇ。
「じゃあ、どうして…どうして来てくれなかったの?3年前わたし待ってたんだよ。それで龍ちゃんはわたしを好きじゃなかったんだって思ったから、だから勝手に弓弦を生んだのよ。けど。けど。それは龍ちゃんの子供だからで、だって龍ちゃんがわたしを好きでなくても、弓弦はわたしだけのものに出来るって…だから弓弦は龍ちゃんの子供で。わたし…」
あっ!もぉぉぉぉ…わたしったら…何言ってるの?
気づいたら、何もかもぶちまけていた。何を言ってるかさえわからないまま。
はぁぁぁぁ、やってしまった。これって弁財天様のおかげ?
龍ちゃんはわたしをぎゅうって抱きしめた。
「いと、愛してる。ずっと、ずっと、ずっとお前を愛してたんだ。ごめんないと」
温かい、ううん。熱くなった身体。龍ちゃんがずっと追いかけて来てたってわかっていたよ。一生懸命わたしを追いかけてくるのも。
だから、だからこんなに身体、熱くなって、心臓バクバクしてるの?
ごめんね龍ちゃん。
だって、恥ずかしくてわたし、きっと弓弦の事聞いてくると思ってたし、話そうと思ってたんだよ。
ずっと前から。
でもどこから話せばいいかわからなくて。
気づけばわたし、こんなことになってて。
もっ、うれし過ぎて。つい暴走。
「ごめん。龍ちゃんに話すべきだったよ。でも恐かった。‥‥龍ちゃんわたしの事もっと嫌いになるかもって、龍ちゃんに嫌われたら生きていけないよぉ。わたし龍ちゃんを愛してるから…‥龍ちゃんがいないと生きていけないのぉ…ヒック…」
わたしは泣きじゃくって龍ちゃんの胸に顔を押し付けた。
「ごめんな糸。3年前叔父さんに糸は結婚したって言われたんだ。だから今回出会った時も弓弦は俺の子じゃないって思った。考えたら、計算したら。よく見たら弓弦は俺の子供だってわかったはずなのに。ごめんな糸。俺がバカだった」
わたしの耳の奥で龍ちゃんの声がくぐもって聞こえる。でも確かに理由ははっきりわかった。叔父さんが言ったんだ。わたしが結婚したって、そっか、それで龍ちゃん追いかけて来なかったんだ。
ううん、追いかけてきてくれたんだ。
「ううん、龍ちゃんは悪くないよ…」
身体の力が抜けて行って何もかも龍ちゃんに預けてしまう。
龍ちゃんの胸の中でつぶやく。
「ごめん龍ちゃん。そんな事知らなかったから…わたし…」
龍ちゃんはわたしの頬を挟んで顎を上向きにして見つめた。
「俺達、随分回り道して来たよな。もうこれからはそんな事はなしだ。今すぐ結婚して欲しい」
「うん、龍ちゃんのお嫁さんになれるんだね。うれしい」
「糸、申し込みを受けてくれてありがとうな」
わたしの顔は涙でぐちゃぐちゃのまま。
龍ちゃんはポケットからゴソゴソ指輪の箱を出すと指輪をわたしの薬指にはめてくれた。
「すごくきれい」
わたしは美しいパールに見とれた。
そのパールにポトリと涙が落ちた。
龍ちゃんが親指でわたしの涙をぬぐう。
「それからこれも…」
「それ、龍ちゃんに返した?グスッ…」
「あの翌日ドアノブ所にかかってたのを見つけて、もう死ぬかと思った。俺糸が何か事件にでも巻き込まれたんじゃないかって、死ぬほど心配したんだぞ!」
「ごめんね」
「もう、絶対勝手なことするなよ。何があっても必ず連絡するって約束してくれ!」
「約束する。もう二度と黙っていなくなったりしないからね龍ちゃん」
「うん、ありがとう糸。それからこの万年筆ありがとう。でも友情ってのはどういうことだ?」
龍ちゃんはそのペンダントをわたしにつけると耳朶に唇を近づけて聞く。
「りゅうちゃーん…ズズッ…あ、あれは…愛の間違いです」
鼻水をすすりながら。
もう、こんな時に…
「だろうな。これからもよろしくな糸」
「うん、龍ちゃんわたしこそよろしくね」
私たちは、互いに見つめ合って大きく息をつくと笑った。
「糸、お前うさぎみたいだ。もう、可愛いすぎ」
また龍ちゃんに抱きつかれた。
「うそ!こんな顔で?もう、いやだ。りゅう、ちゃん…」
俯いてりゅうちゃんにすがる。うれしくて笑みがこぼれた。
それにしてもちょっと疲れた。あまりに急いで歩いていたし、緊張がどっと抜けて一気に気持ちが緩んで。
わたしが顔を上げると龍ちゃんと視線が絡んでまた笑いあう。
幸せ過ぎて恐いくらいだ。
私たちは、しばらくしてやっと立ち上がって歩き始める。
もちろん龍ちゃんがすぐに手をつないできた。
くすぐったい感触。
これって幸せの極みなのかなって。
「あっ、糸これ見てみろ」
龍ちゃんが指さしたのは龍の宮の横にある墓標。
<弁財天・五頭龍の結婚が決まった地所>
「あの語。あれ?これ…五頭龍の話の続きじゃないか?」
「何それ?」
「五頭龍が龍之口神社に弁財天様を隠してそれで結婚することになっただろう?だけど、一度結婚を申し込まれたけど弁財天様はこの神社に帰って来たらしい。そしてここでやっと弁財天が五頭龍の結婚を受け入れたって。それでここにも龍の宮があるってわけか」
「じゃあ、私たちって、その五頭龍と弁財天様と同じことをしたの?」
「ああ、そうみたいだ。おまけに糸まるで天女みたいだし。弁財天様は天女とも言われてるんだぞ」
龍ちゃんはわたしの浴衣の襟をすっと撫ぜて恐いくらい魅力的な瞳でわたしを見つめる。
ゾクリと湧き上がる熱。
「そう言う龍ちゃんだってその頭かなりやばい事になってるみたいよ。まるで五頭龍みたいじゃない?」
わたしはわざと龍ちゃんの頭をクシャクシャとした。
「じゃあ、俺達お似合いって事だな」
「もう、それより、早く帰らなくちゃ、弓弦預けっぱなしなのよ」
「ああ、みんなわかってると思うぞ。俺、弓弦の父親だってばれてるみたいだし、少しくらい遅くなっても多めに見てくれるさ」
龍ちゃんがニンマリ笑う。
「何するつもり?ここは人がいるのよ」
襲われる?ううん、愛される?
「なにって?お参りして帰ろうかと思って、だって夫婦なんだぞ。龍之口神社と江島神社は」
「ええ、そうね。一緒にお参りしたい」
あぁぁ、良かった。わたし浴衣ひとりで着れないんだからね。いえそうではなくて。アハハ!
「ああ、向こうに岩屋があるだろう?そこ恋愛スポットらしいから」
「そうなの?」
岩屋の前にたどり着く。
さして代わり映えない岩に驚くが。
「いと?」
「うん?‥‥」
突然!龍ちゃんの唇が重なった。わたしは彼の腕の中でその唇を受ける。
甘い蕩けそうなその唇に脳芯が痺れた。
りゅうちゃん‥‥
もっと、もっと、ずぅぅっと龍ちゃんを求めていた。
もっと会いたい。
もっと甘えたいって。
私たちは飽きることなく唇と唇を重ねあったままだった。
やっと唇が話された時、わたしはやっと羞恥が沸き上がって来て急いで顔を両手で覆い隠した。
「今さら?」
龍ちゃんが平気な顔で言う。
「だ、だって…」
「いいから、ここは恋人たちの聖地なんだから。まっ、続きは後でたっぷりと。さあ行こう。もう絶対に離さないからな」
「もう、りゅ、龍ちゃんったら」
「嫌なのか?」
「ううん‥‥もう、絶対にはなれるつもりはありませんから、龍ちゃん覚悟してよ」
「糸こそ覚悟しろよ。生まれた時からの愛の重みを思い知らせてやる」
「そんな思い受けきれないから」
「待て、そんな事言うなよ」
「冗談よ。愛してる龍ちゃん」
「ああ、それ以上愛してるよ糸」
「うふっ…」
私たちはこれ以上ないって程密着していた。
それは身体だけじゃなく。
まさに身も心も。
やっと私たちは一つになれたって気がした。
わたしはあの夢の話を龍ちゃんにしようかとも思った。
でもあれは女と女の話で、でもわたしはずっとこれからもあの弁財天様が言ってくれたことを心に刻みつけておくつもりだ。
何かがあっても、龍ちゃんは信頼できるいい男なのだから。
彼を信じて信じて死ぬまでずっと愛していきたいと思ってます。
弁財天様本当にありがとうございましたと糸は心の中で言った。
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