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しおりを挟むわたしは急いでその包みを開ける。きれいな銀色のケースに入ったペンダントはシルバーのチェーン。トップはハートの形で…‥
もぉ、こんなのめちゃくちゃ恥ずかしい。
「これわたしに?」
「他に誰に渡す?お前しかいないだろう」
「やだ、もう恥ずかしいじゃない。こんなにつけてたらまるで龍ちゃんの恋人みたいで」
「糸は俺が恋人じゃ嫌なのか?」
「いえ、そういう意味じゃ‥‥」
龍ちゃんが後ろに回ってペンダントを付けてくれた。
恥ずかしくて、首すじが火照る。
「糸のうなじ、きれいだ」
龍ちゃんの唇がちゅって吸い付いてチリっって傷みがはしる。
「俺の物だから」
「もぉ、龍ちゃんてっば!」
言葉は怒っててもちっとも怒ってないみたいに聞こえているはず。
鎖骨の下の真ん中。輝く銀色のハートがわたしの肌に龍ちゃんの印を焼き付けるみたいに肌がかぁっと熱くなっていく。
「龍ちゃん…ありがとう」やっと絞り出すようにお礼を言う。
「いいんだ。俺こそ好きって言ってくれてありがとう」
龍ちゃんがわたしをくるりと回す。
私たちは見つめ合って、龍ちゃんの顔が近付いて…‥
「ゆじゅるも、りゅ、ほちいぃぃぃ」
あっ!もう、弓弦。これからいいところなのにぃぃ!
弓弦が下ろされて威厳が悪くなったのかぐずり始める。
「ごめんな弓弦。今度買ってやるから、そうだ。お前はこれで我慢しろ」
龍ちゃんがポケットからパンダのマグネットを取り出す。
「ほら、これはパンダのマグネットだ。これを冷蔵庫とかに…なっ!」
弓弦はすぐに機嫌を直してパンダのマグネットに夢中になる。
その間に龍ちゃんはわたしにキスした。
「うふっ、もう龍ちゃん。すぐにご飯できるから」
わたしは急いでキーマカレーを温め直しながら思う。
花火大会の事いつ言おうか?
ご飯の時はさすがにまずいよね。
夕食は思った通り弓弦がカレーを一人で食べるって言ったから。
龍ちゃんは楽しそうだったけど、わたしはものすごく疲れる。
ああ…もう、ぐちゃぐちゃにして…これ後片付け大変なんだよって。
でも、龍ちゃんの嬉しそうな顔見たら少しはイライラも抑えられたかもしれないけど。
やっぱりかんがえてしまう。父親だからなの?
こんなにふたりが楽しそうにしてるのは?親子だから?
表情筋がピクリとなった。
キッチンで片づけをしながら思い悩む。
父親かぁ‥‥どうすればいいんだろうわたし。
弓弦は龍ちゃんの子供なんだよ。
それをいつ話せばいいのか。
龍ちゃんは好きって言ってくれたけど。
それとこれとは話が別のような気がして。
「ガチャッン!」って大きな音がした。拭いていたお皿を落としたらしい。
「大丈夫か?怪我は?」
龍ちゃんが慌てて駆け寄って来た。
わたしの手をつかんで怪我をしていないか確かめる。
「あっ、ううん。大丈夫。ごめん驚かせた。すぐ片付けるから」
「糸はそんな事しなくていい。俺がやるから」
龍ちゃんは割れたお皿の破片を拾っていく。
「龍ちゃん、ありがとう」
「いいんだ。糸が怪我してなけりゃ、良かった」
優しい瞳がわたしを見上げた。
今はそんな事を考えたくない。
龍ちゃんと一緒にいたい。
理屈に合わない情報は脳内で処理されてわたしは都合のいいように上書きした。
龍ちゃんが大好きだから。
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