転生したら災難にあいましたが前世で好きだった人と再会~おまけに凄い力がありそうです

はなまる

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  翌日はルヴィアナはお母様と一緒に結婚式のドレスを決めるために王宮に出向いた。

 すでにいろいろな布地が運び込まれて部屋には、洋裁師が来ておりすぐにルヴィアナの採寸が始まる。

 そしてドレスのデザインを決める事に…

 「お嬢様はスタイルもよろしくどのようなデザインでも着こなせるとは思いますがやはり結婚式と言えば、このような定番のスタイルがいいかと王妃様から伺っております」

 「まあ、王妃様が直接ですの?」

 ミシェルが眉を上げる。



 そこには上半身を総レースで包み込み腰から下が幾重にもドレープが重なったいわゆる定番のウエディングドレスがあった。

 もちろん刺繡はすべて金糸や銀糸で施されそれは見事としか言いようのないもので色は淡いオフホワイトだった。

 「はい、結婚式は国を挙げての事ですし、殿下の晴れ舞台でもあるからとおっしゃって花嫁には是非にこちらのドレスをと…」

 「まあ、これではもう決まっているようなものですわね。ルヴィアナ、王妃様が選んで下さったドレスです。これにしましょう」

 ミシェルは息ひとつせず決めた。

 もし一度でもためらえば、娘の花嫁衣装を選びたい気持ちがせり上がって来そうなのだ。

 「ですがお母様、これは私の結婚式でもあるんです。デザインはともかく、せめて出来ればドレスは真っ白にしてほしいのですが、いかがでしょうか?」

 これは杏奈的発想だった。だってウエディングドレスは純白って相場は決まってます。

 

 「まあ、そうですが…いかがでしょう。デザインはそのままでお色だけ変える事は出来ますかしら?」

 ミシェルもそう考えていたらしい。

 「ええ、もちろん出来ます.これから裁断をして縫い始めるのでまだ間に合いますが…いいのですか?王妃様はしばらくカルバロス国に帰られていますので、お返事を待っていては間に合わなくなりますし…また、そのために先にこれをわたくし共に…」

 「デザインはそのままですし、色もオフホワイトから白色に変わるくらいなら王妃様も許して下さるでしょう。白色にして下さい。もちろんデザインはそのままでよろしくてよ」

 「はい、わかりました。では1か月後には仮縫いも終わると思いますのでもう一度お合わせをお願いいたします」

 「ええ、わかりました。今度はお店の方に伺ってよろしいかしら?」

 「はい、もちろんでございます。ではわたくしはこれで失礼いたします」



 無事にドレスの採寸が終わるとルヴィアナは昨日と同様にディミトリーの執務室を訪れた。

 お母様は国王にご挨拶すると言われて国王の執務室に出向かれた。



 「ローラン様おはようございます。今日はまだおひとりですか?」

 「おはようございます。はい、シャドドゥール公爵は少し遅れるそうです。それで申し訳ありませんが面会の方に代わりに会っていただけますか?」

 「でも、私でいいんですか?」

 今まで面会などは殿下がすべてやっていたのに。

 「仕方がありません。他にいませんから、これから会うのは辺境伯のゼルク・ダンテスとおっしゃる伯爵で、辺境で魔族の森の近くで暮らしておられる方でして」

 「そんな遠くからどんなご要望なんでしょう?」

 「きっと魔獣で困っておられるのではないかと、シャドドゥール公爵がいて下さるといいのですが、あの方は騎士隊の隊長もされていますし魔族の事にも詳しいご様子ですので」

 「そう言うことでしたらシャドドゥール公爵が来るのを待ってもらうわけにはいきませんか?その方が話が早いでしょうし‥」



 「すまん、遅れて」

 そこにシャドドゥール公爵がいきなり入って来られた。

 かなり急いで来られたご様子で髪は乱れて息を肩でしておられる。

 「ランフォード様驚きました。おはようございます…」

 そんな乱れたご様子にでさえどきりとしてしまう。

 ルヴィアナはそんな自分に舌打ちする。



 「ああ、おはようルヴィアナ嬢。何か?」

 ランフォード様がいぶかしげな顔をされた。

 「いえ、何でもありませんわ…」

 「そうか、ローラン仕事に取り掛かろうか。今日は後で騎士隊に顔を出すのですまんが午前中しかここにはいられそうにない」

 「そうですか、それは丁度良いところに…」

 ローラン様が説明してダンテス伯爵との面会はシャドドゥール公爵が行かれることになった。



 ルヴィアナはその間に書類仕事を済ませて、アバルキア国の特使の事を執事たちに伝えて準備をしておくように伝える。そして昨日買った品物の事も話しておいた。

 今日は図書館でシュターツで見ごたえのある場所を探すつもりだった。

 博物館や騎士隊の訓練などはどうかしら?それともオペラの観劇もいいかもしれない、泊るのはもちろん王宮内の客間をご用意して、馬車は王国の特別手配の馬車にしましょう。

 魔石を作っている所の見学とかどうだろう?これってシャドドゥール公爵に聞いて見たらいいかも知れないと考える。

 もちろん案内役はルヴィアナになるだろう。そんな大役が務まるのかと気が重い。




 1時間ほどしてシャドドゥール公爵が戻って来た。

 「お帰りなさい。いかがでしたか?」

 「ああ、一度あちらに出向かなければならないかもしれない。魔獣がひどく領地を荒らしているらしい。森も天候不順で食べ物が不足しているのだろうか。人にまで危害を加えているらしい」

 「でも、魔獣にはいけにえを差しだしているんですよね?そんな事をしない約束ではないのでは?」

 えっ?いけにえって。いきなり難解ワード。

 ルヴィアナの記憶に100年に一度いけにえを差しだすという記憶があって、つい半年くらい前に行われたらしいと…

 ルヴィアナは何の考えもなしにその話を口にしてしまう。



 「ほぉ…そのような話どこから聞かれたルヴィアナ嬢?」

 ランフォード様の瞳にぎろりと見据えられる。瞳の中の瞳孔がスゥっと細くなって恐い。

 あの、そんなに触れてはいけないお話だとは知りませんでしたの…オホホホ。では済まされそうにない雰囲気が漂って…



 「クーベリーシェ嬢は王太子の婚約者ですので、そのお話はお聞きの事と…」

 ローラン様が助け舟を…



 「ですがシャドドゥール公爵の妹ぎみがそのいけにえになられたことは…だからこの話は非常にまずいはずで…」

 ローラン様がルヴィアナのそばに来て耳打ちした。

 「それは本当の事なのローラン様」

 つい言葉がもれてしまう。

 ああ…もう、ルヴィアナあなたって人はそんな大事な事どうして覚えてないのよ。

 それなのにそんな無神経な発言、ランフォード様のお怒りはごもっともですわ。

 でもこの場をどうすればいいのでしょう…戸惑いが体中から溢れて思わず身震いする。





 「いや、いいんだ。すまん。この話になるとつい感情が高ぶってしまって…」

 ランフォード様は顔を反らしたままでそう言われた。

 思わず心がくじけそうになる。ここまでひどいとは…

 「それは私の言う事です。無神経なことを言ってすみません。ランフォード様本当に心から無礼をお詫びします」

 ルヴィアナは深々と頭を下げて心から謝罪した。

 だが、ランフォード様がルヴィアナに振り向くことはなかった。



 彼はローラン様に向いて話を始める。

 「この話は王宮の人間なら誰でも知っていること、貴族の間でも知らない者はいないだろう。魔族ともめごとを起こさないためにいけにえを差し出した。みんなに取ったらその程度の事だろう」

 「いいえ、そんなつもりではなかったんです…ら、ランフォード様…」

 またしても無視された。



 「だがこっちは深刻だ。ダンテス伯爵に話によれば、一部の魔族が魔王のやり方に反発して、境界線など気にもしない魔族がいるらしい。そいつらは人間の領地に足を踏み入れて勝手なことをしてもかまわないと考えているから始末に負えないそうだ。魔王の力が強ければそんな奴らも抑え込まれて何も出来ないらしいが、今は魔王が代替わりして新しい魔王になり半勢力の魔族が勝手なことをしているらしい。俺もそんな事は知らなかった。すぐに国王とも話をして魔族征伐の許可を頂くことになるかもしれない。俺は今からダンテス伯爵と国王にあって来る」

 「まあ、そんな急なお話なんですの?」

 また、ルヴィアナ余計なことを。どこからそんな素っ頓狂な声が出た?



 「ああ、領民が危険な目に遭っているのに放ってはおけない」

 彼は答えてはくれたのかつぶやいたのかはわからなかった。



 ルヴィアナはランフォード様が行くつもりなのではと心配になる。どうしてそんなに彼が気になるのよ。

 彼は大きなけがが治ったばかりだと聞いた。

 「あの、ひょっとしてランフォード様も出向かれるのですか?」

 「そのつもりだ。これでも騎士隊長していますので」

 「でも、もしあなたの身に何かあったらどうされるんです?前回も大けがをされたんでしょう?あなたまで危険な目に合わなくてもいいのではありませんか?」

 ルヴィアナは知らず知らずの間にランフォード様のすぐ目の前に近づいていた。

 言葉の語尾は???のオンパレードで。

 彼を見上げる瞳には薄っすらと涙の膜が張り始めていて、アメジスト色の瞳は一層キラキラ輝き、両手はぎゅっと胸の前で握りしめられていて、指の関節が真っ白になるほど力が入っていた。



 「ルヴィアナ嬢、そんな心配をなぜあなたが…?」

 そんな事は関係ないでしょうとでも言いたげなランフォード様は眉間にしわが寄っていかめしい顔つきになっている。

 

 「わたくしにもわかりません。でもどうしようもなくあなたが心配なのです。ごめんなさい。私ったら訳の分からない事ばかり言ってしまって…もう失礼しますわ」

 ルヴィアナはランフォードの前をすり抜けようとした。

 「待ってルヴィアナ!あなたが心配する必要はないでしょう。あなたは心配するべき人が違います。ですから…失礼する」

 ランフォード様はその場から立ち去ってしまった。



 ルヴィアナは取り残されたまま、彼の言った言葉にナイフの先で心臓をえぐられるような気持ちになってしまった。

 私ったら、なんてはしたないことを…

 ランフォード様はきっと呆れているに違いないわ。

 はぁ…しっかりしなさいよ。ディミトリー殿下が帰って来るまでランフォード様とは会わない方がいい。

 そうすればきっと気持ちの整理もつくはずだもの。



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