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27おかしな誘い(ネイト)
しおりを挟む俺は翌朝キッチンの扉を開けて驚いた。
「メリンダ…お前…」
「おはようございます。なにか?」
そうだった。昨日メリンダは帰って来たんだった。
ミーシャと呼び掛けて入って来なくてよかった。
昼の弁当は…もちろんないな。とろふわオムレツ楽しみだったのにな。
俺は何だかがっくり来てすぐキッチンを後にした。そのまま朝食も取らずに屋敷を後にした。
夕方仕事から帰ってやっとミーシャが実家に帰った事を知った。
お母さんが危篤だと知っていれば一緒について行ったのにと悔やんだ。
「母さんどうしてもっと早く教えてくれなかったんだ?」
「そうは言うけど朝が早かったの。手紙は早朝に届いたのよ。それにあなたが行ってどうするつもりよ?ネイトは夫じゃないのよ。でも、しばらくは帰って来れないわね。まあ、仕方がないけど…」
「ああ、そうだな」
俺の機嫌は一気に悪くなる。
メリンダとも口を利かない日が続いた。
数日してミーシャから手紙が届いた。
~ガストン侯爵様
母が亡くなりました。申し訳ありませんがしばらく葬儀や領地の管理などの事でそちらに帰れそうにありません。
出来れば1か月ほど実家で過ごしたいのですがご無理を言わせてもらってよろしいでしょうか。
まだ1か月も経っていないのに本当に申し訳ございません。
どうしても無理だと言われるならなるべく早くに帰るようにいたしますのでご一考下さい。
ミーシャ・ベルランド~
もちろん父はゆっくりしてくるようにと返事を書いた。
こうしてミーシャは1カ月ほど我が家を留守にすることになった。
俺は考えた。
ミーシャが帰ってくるまでに何とかメリンダと話が着けばと嫌がるメリンダの所に何度も離縁の話をしに行った。
これから先の結婚生活には何の未来もないというのにメリンダは絶対に離縁には応じないと言い張った。
俺の心はくじけそうになりはじめていた。
そしてもうすぐ1か月が来ようとする頃メリンダからおかしな話が来た。
侍女のパミラが話があると言って来た。
俺は自室で話を聞いた。
「若旦那様。メリンダ様は実家からお戻りになられてかなりふさぎ込んでおられました。それも若旦那様とのご関係についてです」
「俺との関係?」
俺はおかしなことを言うと思った。
「本当はミーシャ様をお迎えになりメリンダ様はかなり不安定な心持になられてご自分のわがままが過ぎたと反省しておられたのです。離縁のお話に応じられないのもそのためです。それで今夜メリンダ様のお部屋にお越しくださいとの事なんですが…」
「それはどういうことだ?パミラわかるようにはっきり言ってくれないか?」
「若旦那様と閨を共にされたいそうです」
「はっ?今更…今まで何度も試しただろう?あんなに嫌がっていたじゃないか。それなのにどういう心境の変化だ?いや、万が一にも気持ちはあっても身体が受け付けないんじゃないのか?俺は無理だと思うが」
「ですが…そこは申し訳なく思っておられるのです」
「だったら本人の口からそう言うべきだと思うが…」
「ですが…この1か月の若旦那様のご様子をみられてメリンダ様は本当に落ち込んでいらっしゃって…自分が誘っても絶対に聞き入れては下さらないとの一点張りで…どうかメリンダ様のお気持ちをご理解頂けませんか?一度だけ、一度だけチャンスをお願いします」
パミラがこれ以上身体はおり曲がらないと言うほど頭を下げて来るので俺は仕方なく部屋に行く事を了解した。
俺はずっとミーシャからの知らせを待っていた。
父が了解の手紙を送るとミーシャから1カ月ほどしたら帰るからと返信があった。
それっきりミーシャからは連絡がなかった。
帰って来るとは信じたかった。だが、俺はあの日ミーシャにとんでもないことを言った。
結婚して欲しいと…今思えば勇み足だった。もっとメリンダとのことがはっきりしてから言うべきことだった。あのに俺はメリンダに蔑まれて悲しそうな彼女を見た途端我慢できなくなっていた。
俺は君を愛してるんだミーシャ。あんなろくでもないメリンダなんか妻とも思っていない。
それをはっきりしたくなってつい…
もしかしてミーシャはもう帰ってこないつもりかもしれない。
俺はどうすればいい?
心は流れる雲のように乱れた。
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