妾に恋をした

はなまる

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26あなたのせいよ(メリンダ)

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 私(メリンダ)は実家に帰って後悔した。

 姉の子供が生まれ両親は可愛い孫にデレデレだった。

 実家に帰って2週間ほどが過ぎた。

 予想通りだった。

 今日もパパに嫌味を言われた。

 「メリンダ。お前はどうなんだ?ネイトとはうまく言ってるんだろうな?いつまでも家にいていいのか?」

 父親のアドルフは宰相をしている。

 (王宮でネイトとはよく顔も合わせているだろう。あまりうまくいっていない事くらいわかってるくせに)と思う。

 「う、うまく言ってるわよ。こんな事は授かり事なんだから…」と誤魔化す。

 「そうよ。パパ。これはデリケートな問題なんだから。でも、メリンダには無理かもね。だって潔癖すぎるもの。ほほほ…」そう言ったのは姉のジュリーだ。

 (これで何度目?わかっているわよ)と言いたくなる。

 「あら、潔癖のどこが悪いの?ジュリーこそ、マリン(孫の名)の持っているおもちゃをもっときれいにしてあげなくちゃダメじゃない。ほら、ここ汚れじゃない‥マリン。おばあちゃまがきれいにしてあげるからね」病的にきれい好きな母親のイリーネだ。

 (こんなになったのはママのせいでもあるのよ)って言いたい。

 「また!ママがそんなに黴菌が黴菌がって言うからメリンダはこんな子になったのよ。少しくらい汚れたっていいのよ。それはマリンが舐めてついたよだれなんだから!」

 (私もジュリー姉さんみたいになりたかったわよ)

 「もう、いいから静かにしてよ。私部屋に戻るわ」

 私は頭痛がして来た。

 「メリンダ様大丈夫ですか。部屋まで送ります」

 そう言ってくれたのは我が家の警護騎士デュークだ。

 私は差し出された手にそっと手を乗せる。

 なぜか彼に触れても嫌な気にはならない。その理由はわかっている。


 最初からこの結婚はいやだと言っていた。

 でも、貴族にそんなわがままは通用しないとパパに一喝されて話は終わった。

 私には秘かに好きな人がいた。我が家の警護騎士で伯爵家の次男。金色の髪に紺碧の瞳。私と同じ色の瞳。

 彼の名前はデューク・ベトラーナ。ネイトとも同僚だ。それは後で知って驚いたけど。

 彼はこんな潔癖すぎる私でもおかしな態度も取らずせず接してくれた。

 今回実家に帰って来たのもデュークに会いたかったから。

 彼には婚約者もいないしもちろん結婚もまだだ。

 だってデュークは私を好きだから…


 ネイトと結婚することになって。ううん、相手は関係なかった。ブルーノだろうとネイトだろうと私はほんとに嫌だった。


 私はデュークに部屋まで手を取られ手は言った。

 「横になりたいの」

 「わかりました」

 彼がベッドまで連れて行ってくれる。デュークはまだ手を離そうとしない。

 ベッドに浅く腰掛けると私はちらりとデュークを見上げた。

 その紺碧の瞳は心配なんですと書かれてあるみたいに揺れている。

 デュークが「何か飲まれますか?」優しく声を掛けてくれた。

 「ううん」

 彼は元気づけるように私と同じ目線になるように跪くと言った。

 「旦那様の言われたことは気にしてはいけません。メリンダ様はきっと今に子に恵まれます」

 「無理よ。私には無理なの…夫に触れられると思うだけでわたし…」

 私はデュークの手を引き寄せてその手を握りしめた。

 「メリンダさま…あなたの苦しみを拭ってあげたい。私はずっとあなたの…いいえ、あなたに無理なことなどありません。あなたは私の女神。どんな苦難も乗り越えれるはず、私はあなたのためならどんな事でもします。どうか気をしっかりお持ちください」

 「ああ…デューク…」

 私はデュークを引き寄せ抱きついた。

 彼の胸に顔を埋め彼の香りをかいでも吐き気もない。寧ろもっとこうしていたいと思ってしまう。

 ふいにデュークが私に口づけをした。

 私は待ち望んだようにそれを受け入れた。

 その後はなし崩し的にふたりでベッドに転がった。


 そして気が付くと私はデュークと結ばれていた。

 不思議だった。

 (こんな潔癖な私が好きな人ならそんな気持ちにならないのだろうかと)

 でも、後悔はなかった。

 「メリンダ様、この責任は私が取ります。どうか私と結婚して下さい」

 「ああ…デュークだめよ。ごめんなさい」

 すぐに後悔に襲われた。

 「私は人妻。そんな事をすればあなたはただでは済まないわ。この家からも追い出され騎士団にもいられなくなる。仕事を失うし醜態をさらして伯爵家にも迷惑をかけることになるのよ。これはただの過ち。さあ、あなたは早くここから出て行って…私はもう帰るからこの事は絶対に秘密にするの。いい?わかったデューク?」

 「ですが…」

 「いいから私の言う通りにして!お願い。早く出て行って」

 そうして私は急いで実家から引き揚げて来た。


 そして夫がミーシャと仲良くしているのを見てカチンと来た。

 あんなに優しくしてもらったことなどなかった。

 あんな穏やかな微笑みを向けられたこともなかった。

 だから腹が立った。

 だってもしネイトが少しでも私にそんなそぶりを見せてくれていたらって思った。

 だってデュークとは出来たから…もしかしたらって思った。

 自分のしたことを棚に上げて…

 でも、絶対に気づかれるわけにはいかない。

 私はネイトに今まで以上に冷たい態度を取るようになった。



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