26 / 44
26あなたのせいよ(メリンダ)
しおりを挟む私(メリンダ)は実家に帰って後悔した。
姉の子供が生まれ両親は可愛い孫にデレデレだった。
実家に帰って2週間ほどが過ぎた。
予想通りだった。
今日もパパに嫌味を言われた。
「メリンダ。お前はどうなんだ?ネイトとはうまく言ってるんだろうな?いつまでも家にいていいのか?」
父親のアドルフは宰相をしている。
(王宮でネイトとはよく顔も合わせているだろう。あまりうまくいっていない事くらいわかってるくせに)と思う。
「う、うまく言ってるわよ。こんな事は授かり事なんだから…」と誤魔化す。
「そうよ。パパ。これはデリケートな問題なんだから。でも、メリンダには無理かもね。だって潔癖すぎるもの。ほほほ…」そう言ったのは姉のジュリーだ。
(これで何度目?わかっているわよ)と言いたくなる。
「あら、潔癖のどこが悪いの?ジュリーこそ、マリン(孫の名)の持っているおもちゃをもっときれいにしてあげなくちゃダメじゃない。ほら、ここ汚れじゃない‥マリン。おばあちゃまがきれいにしてあげるからね」病的にきれい好きな母親のイリーネだ。
(こんなになったのはママのせいでもあるのよ)って言いたい。
「また!ママがそんなに黴菌が黴菌がって言うからメリンダはこんな子になったのよ。少しくらい汚れたっていいのよ。それはマリンが舐めてついたよだれなんだから!」
(私もジュリー姉さんみたいになりたかったわよ)
「もう、いいから静かにしてよ。私部屋に戻るわ」
私は頭痛がして来た。
「メリンダ様大丈夫ですか。部屋まで送ります」
そう言ってくれたのは我が家の警護騎士デュークだ。
私は差し出された手にそっと手を乗せる。
なぜか彼に触れても嫌な気にはならない。その理由はわかっている。
最初からこの結婚はいやだと言っていた。
でも、貴族にそんなわがままは通用しないとパパに一喝されて話は終わった。
私には秘かに好きな人がいた。我が家の警護騎士で伯爵家の次男。金色の髪に紺碧の瞳。私と同じ色の瞳。
彼の名前はデューク・ベトラーナ。ネイトとも同僚だ。それは後で知って驚いたけど。
彼はこんな潔癖すぎる私でもおかしな態度も取らずせず接してくれた。
今回実家に帰って来たのもデュークに会いたかったから。
彼には婚約者もいないしもちろん結婚もまだだ。
だってデュークは私を好きだから…
ネイトと結婚することになって。ううん、相手は関係なかった。ブルーノだろうとネイトだろうと私はほんとに嫌だった。
私はデュークに部屋まで手を取られ手は言った。
「横になりたいの」
「わかりました」
彼がベッドまで連れて行ってくれる。デュークはまだ手を離そうとしない。
ベッドに浅く腰掛けると私はちらりとデュークを見上げた。
その紺碧の瞳は心配なんですと書かれてあるみたいに揺れている。
デュークが「何か飲まれますか?」優しく声を掛けてくれた。
「ううん」
彼は元気づけるように私と同じ目線になるように跪くと言った。
「旦那様の言われたことは気にしてはいけません。メリンダ様はきっと今に子に恵まれます」
「無理よ。私には無理なの…夫に触れられると思うだけでわたし…」
私はデュークの手を引き寄せてその手を握りしめた。
「メリンダさま…あなたの苦しみを拭ってあげたい。私はずっとあなたの…いいえ、あなたに無理なことなどありません。あなたは私の女神。どんな苦難も乗り越えれるはず、私はあなたのためならどんな事でもします。どうか気をしっかりお持ちください」
「ああ…デューク…」
私はデュークを引き寄せ抱きついた。
彼の胸に顔を埋め彼の香りをかいでも吐き気もない。寧ろもっとこうしていたいと思ってしまう。
ふいにデュークが私に口づけをした。
私は待ち望んだようにそれを受け入れた。
その後はなし崩し的にふたりでベッドに転がった。
そして気が付くと私はデュークと結ばれていた。
不思議だった。
(こんな潔癖な私が好きな人ならそんな気持ちにならないのだろうかと)
でも、後悔はなかった。
「メリンダ様、この責任は私が取ります。どうか私と結婚して下さい」
「ああ…デュークだめよ。ごめんなさい」
すぐに後悔に襲われた。
「私は人妻。そんな事をすればあなたはただでは済まないわ。この家からも追い出され騎士団にもいられなくなる。仕事を失うし醜態をさらして伯爵家にも迷惑をかけることになるのよ。これはただの過ち。さあ、あなたは早くここから出て行って…私はもう帰るからこの事は絶対に秘密にするの。いい?わかったデューク?」
「ですが…」
「いいから私の言う通りにして!お願い。早く出て行って」
そうして私は急いで実家から引き揚げて来た。
そして夫がミーシャと仲良くしているのを見てカチンと来た。
あんなに優しくしてもらったことなどなかった。
あんな穏やかな微笑みを向けられたこともなかった。
だから腹が立った。
だってもしネイトが少しでも私にそんなそぶりを見せてくれていたらって思った。
だってデュークとは出来たから…もしかしたらって思った。
自分のしたことを棚に上げて…
でも、絶対に気づかれるわけにはいかない。
私はネイトに今まで以上に冷たい態度を取るようになった。
356
お気に入りに追加
1,025
あなたにおすすめの小説
【完結】初夜の晩からすれ違う夫婦は、ある雨の晩に心を交わす
春風由実
恋愛
公爵令嬢のリーナは、半年前に侯爵であるアーネストの元に嫁いできた。
所謂、政略結婚で、結婚式の後の義務的な初夜を終えてからは、二人は同じ邸内にありながらも顔も合わせない日々を過ごしていたのだが──
ある雨の晩に、それが一変する。
※六話で完結します。一万字に足りない短いお話。ざまぁとかありません。ただただ愛し合う夫婦の話となります。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です。
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

いつかの空を見る日まで
たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。
------------
復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。
悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。
中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。
どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。
(うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります)
他サイトでも掲載しています。

【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる