19 / 44
19看病します(2)
しおりを挟むそれから少し薬が効いてきたようなので頼んでおいたパンがゆとスープを少しずつ彼に食べさせる。
クッションをたくさん置いて上半身を起こし首にはよだれかけのように布をかけてこぼしてもいいようにしてスプーンを運ぶ。
「はい、あ~んして下さい」
「あ~ん。ごくん。いてっ!」
「喉が痛いんですか?」
「ああ、ミーシャ。でも我慢する。君が食べさせてくれるんだ。はい。あ~ん」
彼は少し楽になったのかそんな冗談を言いながらすべて食べ終えた。
「すごいです。完食ですね」
彼の顔がエッヘンと言う顔になる。
(おかしい。可愛すぎるではないか。これはもう兵器なのでは?)
きっと私の顔は鼻の舌が伸びるという表現がぴったりだったのではと思う。
どうして私はこの人を前にするとこうもおかしな気分になるのか。
つい数日は芋の栽培など落ち着いた日々だったというのに…
「コホン。薬湯を…」
それから気を取り直してもう一度咳止めの薬湯を飲ませてまた横になってもらう。
「食器を下げて来ますから」
ついでに夕食をぱっぱと食べて来ようと思った。
「廊下に置いておけばいい」
「もう、すぐに帰りますから」
「ほんとに?すぐ?」
「ええ、じゃあ私も何か摘まめるものでも貰って来ます」
「ああ、でも早くしてくれよミーシャ」
「はいはい、そんなわがままも今夜だけですからね」
「やだ。ずっとがいい」
「ご主人様。怒りますよ。クスッ」
甘えん坊なご主人に母性本能をくすぐられまくり笑みがこぼれる。
ちっとも怒ってないとばれてしまうではないか。
「ミーシャ」
「あっ、声出るようになりましたね」
「あぐっ、痛い!」
「ばれてますよ」
私はそんな事を言いながらも急いでキッチンに行く。
夕食のローストチキンをパンにはさむ。
こんな事をしなくてもと使用人が言ってくれたが貧乏性なのだろう何でも自分でやってしまう癖なのと言って笑ってキッチンからご主人の元に駆け戻った。
彼は眠っていた。
ほっとした。
私はパンを食べまた額の当てた布を変える。そんな事を繰り返し看病した。
しばらく調子が良くなったと思ったらまた熱が高くなった。
私は彼の額の布を取り替え汗をぬぐい、咳をする彼の胸をさすっていると大奥様が様子を見に来られた。
「ミーシャもう休みなさい。今度は私が変わりましょう」
「いえ、こんなの慣れてますから、大奥様は休んでください。きっと明日には良くなります」
「そう?じゃあ、お願いするわ。あっ、これを掛けて」
大奥様は肩にかけていたショールを私に手渡した。
「ありがとうございます」
私はそのショールを肩にかけた。
そして何時しか疲れて眠っていた。
374
お気に入りに追加
1,025
あなたにおすすめの小説
【完結】初夜の晩からすれ違う夫婦は、ある雨の晩に心を交わす
春風由実
恋愛
公爵令嬢のリーナは、半年前に侯爵であるアーネストの元に嫁いできた。
所謂、政略結婚で、結婚式の後の義務的な初夜を終えてからは、二人は同じ邸内にありながらも顔も合わせない日々を過ごしていたのだが──
ある雨の晩に、それが一変する。
※六話で完結します。一万字に足りない短いお話。ざまぁとかありません。ただただ愛し合う夫婦の話となります。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です。
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」

ワケあり令嬢と騎士
リオ
恋愛
とある子どものできない貴族に養子として引き取られた娘ーーノノアント。しかし一人の女の子が産まれ、姉となった。貴族の血筋の引く妹ができたことにより『いらない子』となってしまったノノアント。元から自分の存在意義を求めることをやめていた。そんな時、少年の暖かさがノノアントの冷めきった心を微かに温めた。唯一気を許せる存在となりつつあった少年はある日から姿を見せなくなり、十年後にその姿を現した。妹の騎士として。
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

いつかの空を見る日まで
たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。
------------
復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。
悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。
中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。
どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。
(うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります)
他サイトでも掲載しています。

【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる