妾に恋をした

はなまる

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17ご主人様が大変です

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 本邸に入りダイニングルームに入った。

 ガストン侯爵と大奥様はすでに席についていた。

 「こんばんは。今夜はお招きありがとうございます」

 「ああ、急で申し訳なかった。さあ、座って」

 「ええ、ミーシャきれいだわ。それにしてもネイトは遅いわね。少し様子を見て来てくれる?」

 大奥様は使用人に伝える。

 使用人の一人が急いでダイニングルームを出て行った。


 しばらくして慌てて使用人が戻って来た。

 「大奥様。ネイト様がすごくうなされておいでで…すぐ来てください」

 「まあ!」

 3人は同時に席を立った。

 両親の後に続いて私も後を追う。

 「ネイト?大丈夫か?」

 ガストン侯爵が彼の部屋の扉を開けると声をかける。

 「ネイト?」

 大奥様がその扉をすり抜けるように部屋に入って彼の様子を見に走る。

 私もその後を追って中に入った。

 彼はベッドで苦し気にしていた。

 「はぁはぁはぁ…母さん?身体が熱いんだ。それに喉も痛いし胸も苦しい。風邪かも知れない。俺に近づかない方がいい」

 「すぐに医者を呼ぶ」

 「ええ、あなたお願い」


 私は使用人に指示を出す。

 「誰か何か拭くものと頭を冷やすものを持って来て!温かいお湯も。そうだ。部屋も暖めて!あっ、熱さましや風邪薬ならあります。持ってきます」

 「ええ、助かるわ」

 私はドレスの裾をめくって走り出す。

 急いで離れまで走って行くと母が送って来た薬を持ってまた走った。

 でも、はたと思う。医者が来るまで勝手な事をするのはどうかと…

 彼の部屋に行って声をかけた。

 「大奥様、ご主人様の具合はどうですか?」

 「すごく体が熱いわ。それに汗はかいてないみたい」

 「ちょっとキッチンをお借りします」

 私はここにきて庭の散策くらいしかすることがなくてどこに何が植えてあるか知っていた。

 確かエルダーフラワーがあったはず。

 急いで花を取ってキッチンに走る。

 エルダーフラワーには解熱効果がある。乾燥花がいいけどそんな事を言ってられない。鍋に水と砂糖を入れて煮立たせるとそこに取って来たエルダーフラワーとスライスしたレモンを入れて煮込む。

 ほんとは一晩おいた方がいいけど勝手に薬を飲ませるわけにもいかないから、取りあえずこの薬湯を…

 
 私はそれを持って彼の部屋に行った。

 「大奥様これは解熱効果のある薬湯です。少しでも飲めそうなら…」

 「そうね。医者が来るのを待ってはいられないわ。ミーシャ薬は?」

 「お医者様が来られるなら今は飲まない方がいいかと…」

 「そうね。とにかくこれを…ネイト!ほら、しっかり」

 私は反対側に回って彼を起こす手伝いをする。

 かなりの熱のようで顔が真っ赤で触ったところが熱い。

 「うぅぅん…」

 意識も朦朧としているのか瞳はうつろだ。

 大奥様も狼狽えているのだろう。薬湯の入ったカップを手にしたままだ。

 私は大奥様の手からカップを奪うと彼に声をかけた。

 「ご主人様。ネイト様。しっかり。これを。さあ」

 彼の口元にカップの端をつける。

 ゆっくりカップを傾け薬湯を少しずつ口の中に流し込む。

 「うんぐぅ、ごくっ…」

 彼の喉の奥に薬湯が流れ込んでいく。

 そうやってカップの薬湯をほとんど飲ませた。


 大奥様は驚いてそれを見ていた。

 「まあ、ミーシャあなた手慣れてるわね」

 「母が病弱だったのでよく看病していましたから、こういう事に慣れているんです」

 「まあ、そうだったの。あなたも大変だったのね。そうだわ。次はどうしたらいい?」

 「寝間着が少し湿っていますから、部屋を暖かくしてから着替えを…身体も拭きますので温かい湯と拭くものを頼んでおきました。とにかくこれで頭を冷やしましょう」

 すでに使用人が冷たい水と布を持って来ていた。部屋にもストーブが持ち込まれている。

 「じゃあ、私はお湯の準備が出来たか見て来るからミーシャここでネイトを見ていてくれる?」

 「はい、もちろんです。こんなに苦しんでおられて…もっと早く気付いてあげれば良かったのに」

 「あなたは優しいのね…」


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