こんな仕打ち許せるわけありません。死に戻り令嬢は婚約破棄を所望する

はなまる

文字の大きさ
13 / 85

12シュナウト死に戻って

しおりを挟む

 俺は今猛烈に腹を立てていた。

 俺はリンローズに毒を飲まされて死んだ。

 なのに、なぜかあの時から半年前に戻っていた。

 自室のベッドで目が覚めて驚いた。

 俺、生きてるのか?どうして?訳も分からず毒を飲まされた時の事を思い出した。

 苦しい息の下でリンローズは慌てていた。苦しむ俺のそばで背中をさすったり大声で人を呼んだりしてすごく俺を心配していた。

 毒を盛ったくせに?

 俺が死ねばいいんだろう?

 どうせ俺みたいなくずなんかが生きていたってどうなるものでもないんだし…

 そうだ。なぜかあの時リンローズを憎いと思わなかった。俺はもうどうでもいい楽になれるならいいとさえ思った。

 俺なんか生まれて来たことが間違いだったんだと思っていたから。


 *~*~*


 俺は10歳の時魔力暴走を起こしてそれがきっかけで国王の子供だった事がわかった。

 孤児院に煌びやかな服を着た貴族がやって来て王宮に連れて行かれた。

 謁見の間とか言う部屋に連れて行かれる。

 でぶったおっさんが真っ白い毛皮のマントをつけてその中には素晴らしく光沢のある服を着て台座の上の宝石が散りばめてある玉座に座っていた。

 そのおっさんは立ちあがると俺の所まで来て俺の顎をぐっとつかんで顔を上げさせた。

 「小汚い小僧が…これが王の子なのか?本当に?」

 隣にはかしこまった服を着た男がいて「間違いありません。王家の紋章の指輪を持っていましたし、その頃の事を知っている証人も何人も確認しております。これがその指輪です」

 恭しくそれを差し出した。

 「それは俺の指輪だ。母さんの形見なんだからな、返せよ!」

 俺はぶっきらぼうな言葉でそう言った。


 母メリルは平民だったが、王都の劇場で歌を歌う芸人だった。美しい顔と均整の取れた体形で男には人気があったらしい。

 妊娠して仕事をやめてからは劇場の裏方の仕事に回されたけど、俺を可愛がってくれたしよく歌を歌ってくれた。

 そんな母は俺が6歳の頃に病になってあっけなく死んだ。それから俺は孤児院に引き取られて今は国王の子だとか言われてここにいる。

 まあ、ここなら食事にもあぶれることもないし、上の子にからかわれて殴られたりすることもない。だったらこのままここにいるのもいいかもな。

 俺は反抗的な態度を取りながらもそんな事を思った。

 「控えろ!この方は国王代理。とっても偉い方なんだ。そんな言葉を吐くんじゃない!」

 そう言ったのはそばにいた護衛騎士。

 騎士はかっこよかった。どうせなら俺も騎士がいいと思っていた。


 それから王宮に部屋が与えられ貴族のマナーだと教育だとか、色々うるさい教師が毎日朝から晩まで俺に勉強をさせられた。

 息が詰まりそうな空間でこんな所出て行ってやると思ったが、しばらくして1週間に一度魔力暴走を抑えるために俺のところに女の子が来てくれるようになった。

 名前はリンローズ。ホワイトゴールドの髪がすごくきれいで瞳は紫色。

 その瞳はすごくきれいで俺は吸い込まれそうな気持になっていつもまともに顔を見ることが出来なかった。

 女の子に魔力の制御なんかしてもらうのも嫌だった。

 俺は男だ。孤児院でだって女の子なんかに負けたりしなかったって言うのに。

 自分が弱くなった気がして嫌な気分だった。でも、リンローズが魔力制御をしてくれるとすごく体が楽になって、それに彼女に会えると思うとうれしくなるようになった。

 (考えてみれば俺は初めてリンローズを見た時に好きになってたんだろうか)

 婚約者になってからも、俺はいつも偉そうにしてありがとうの一つも言えなかった。

 恥ずかしいのと優しい事でも言うとやっぱり弱みを見せるみたいで言えなかった。


 それと同時に、あの男。国王代理のロンドスキーの奴に毎日毎日嫌なことを言われるようになった。

 「いいか。お前はどんなに頑張っても元は平民の子供。王の血を引いているからって思いあがるなよ。次期億王にはもうドーナン殿下がいらっしゃるんだ。お前はな。王家の恥さらし。王宮の中で生きていくことは許すが余計なことは何もするなよ。いいか。お前が何かすれば王家の恥になるんだ。お前は身分の一番低いいわば底辺の人間なんだからな。とにかく私の言う事だけを聞いていれば住まうところと食べる事少しばかりの小遣いは与えてやる。わかったか?」

 そんな事言われなくたって知っている。でも、お前たちが無理やりここに連れて来たんだ。

 反抗して返事なんかしたくなかった。

 「……」

 「おい!返事は?」

 でも、返事をしないと一緒にいた護衛騎士に殴られたり蹴られた。痣が付いても誰も見て見ぬふりだった。

 俺はとうとう力に屈した。その方が楽だったから。

 「わかりました」

 まだ10歳の俺に出来る事はなかったと思う。

 孤児院に帰ってもきっとすぐに連れ戻されるだろう。どこかに逃げようが絶対に見つけ出すとも脅された。

 そうやって毎日脅され殴られるうちに俺は次第に何もかも諦めるようになった。

 面白おかしく生きれるんだ。それでいいじゃないかって思うようになった。


 学園に入ってもやる気のない生活を送っていた。俺は側近と言われる令息たちとばかをやったり身分の低い令嬢たちと遊ぶようにもなった。

 ラドールはその時の側近の一人だった。彼は他の奴とは違って真面目だった。

 あの頃の俺の心は空っぽだった。ただ面白おかしく過ごしているだけの生活は何だか空しかった。

 ただリンローズとの時間だけは俺の癒しの時間だった。

 俺の婚約者。リンローズはずっと俺のそばにいてくれる。そう思うとなぜか心が落ち着いたものだった。

 好き勝手なことをしているくせにだ。俺は勝手だな。これで良く婚約者だって言えるもんだ。

 だが、3年生になってアシュリーと出会った。

 彼女は子犬みたいに俺にすり寄って来た。誰かに頼られた事がなかった俺は甘えて来るアシュリーが可愛いと思った。

 それからアシュリーとはよく一緒にいるようになったと思う。

 俺が学園を卒業するとアシュリーは王宮にまでやって来て俺にあの疲労回復薬を飲ませるようになった。

 それからアシュリーに対する思いが異常になった気がする。

 あの薬何だかおかしいんだ。あれを飲むと猛烈にアシュリーが恋しいって言うか求めてしまうと言うか…自分でも訳が分からなくなって。

 正直なぜか俺は苦しかった。

 婚約者で俺をいつも慕ってくれるリンローズに対する気持ちとアシュリーに対する気持ちのギャップで何だかもうどうでもいい感じがしていた。

 それにアシュリーがリンローズと婚約を解消して欲しいと言っていたのでそれもいいとさえ思っていた。

 実際リンローズとの婚約の理由は国王代理ブルトの孫だからって言うのが大きかったんだし。

 いつもあいつの顔色ばかり伺って来たけどもうそろそろ限界なんだよな。

 まっ、リンローズには悪いけど、俺の側妃にして専属の治癒士としてそばに置けばいいだけの事。コリー侯爵家との縁組の体裁が整えば文句も言われることもないのではとさえ思っていた。

 酷い奴だな俺は。

 だからリンローズが毒を盛っても俺は怒りをあんまり感じなかったんだろうか。


 昨日気づいたんだがリンローズに魔力制御をしてもらうとすっとあの気持ちがなくなった。頭の中がはっきりするみたいな。

 そうするとあれ?俺ってアシュリーの事本当に好きなのかと疑問を感じる俺がいたんだ。

 やっぱり何だかおかしいだろう?

 これからはアシュリーが持って来るあの薬飲まない方がいい気がした。

 って言うか学園にいた時はアシュリーが可愛いなんて思った事もあったけど最近煩わしいんだよな。

 はっきり言って今なんかもう勘弁しろよって感じ。

 あの態度や言葉使いもなんかわざとらしいしな。そう思うと最初から計算ずくだったのかとも思えるんだよな。

 それに比べてリンローズの健気さと言ったら…いや待て。リンローズは俺と婚約を解消すると言って。

 俺は慌ててそれを出来ないと言った。どうして?散々泣かしたくせに?

 でも、リンローズ。俺を殺したじゃないか。だからもう一度チャンスをくれないか?

 何だかそんな気持ちなんだ。

 俺、今までずっとやる気のない人生を送って来た。だからもう一度きちんと考えたいんだ。

 真剣にリンローズとの事。

 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

処理中です...