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45アルベルト視点

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 俺の心には嵐が吹き荒れていた。

 愛しいシャルロット。こんなにも君の事を思っているのに、君は俺の事なんかなんとも思ってはいないのか?

 あの時過ごした出来事は君に取ったら何でもない事だったって?そう思ってるのか?

 ああ…この苦しい胸の内をどうしたらおさめることが出来るんだ?



 俺は書斎にこもって頭を抱えた。

 ふと父の日記の入った箱に目が行って、そんなことはしてはいられないんだと気づく。

 そうだ。今はランベラートとエリザベートを倒すことを最優先に考えなければならない。

 こんな事にくよくよしている暇はないんだから…



 ベッドに入ってもあまり眠れないまま夜が明けて早めに起きた。

 いつものようにひとり支度をする。

 するとトルーズの声がした。

 「アルベルト様!すみません朝早くから、よろしいでしょうか?」

 ドアがノックされ声がした。

 「ああ、トルーズか?入ってもいいぞ。もう起きている」

 「失礼します。ブランカスター公爵がお見えなんですが」

 「なに、こんな早くに?」

 「はい」

 「構わん。書斎にお通ししろ!」


 俺はすぐにブランカスター公爵と会った。

 ついでに簡単な朝食も一緒に取りながら話を聞く。

 「アルベルト様。朝早くから申し訳ない。実は昨日お伺いしようと思ったのですが、シャルロット様の救出でいらっしゃらなかったので、今朝早くになってしまいました。お疲れのところ申し訳ない。それで守備は?」

 「はい、無事に彼女を助け出しました。それで今朝はどんな要件で?」

 「ええ、実は私の領地内に伯爵だったジェラード・バーリントンという男がおりまして、バーリントン伯爵はブランカスターに大きな炭鉱を持っていたんですが2年前に大きな落盤事故がおきまして、そのせいで借金をする羽目になったんですが、結局爵位を皇王に返上する羽目になったのです」

 「ええ、まあそれはお気の毒ですが…」


 「ええ、問題はここからなんです。それと言うのもバーリントンは借金があることで税金の支払いを延期してくれる制度を先に行政府に申告していたそうなんです。でも実際にはその申告は受理された事にはなっていなくて、それで貴族にある支払利息免除制度も受けれなかった。そのせいで領地を借金のかたに取られて爵位を返上するしかなくなったのです。私が調べたところリシュリート領の貴族にはきちんと税金免除制度も支払利息免除も受けていることが分かったのです。それが驚いたことに行政府の府官はどちらもエストラード領の…」

 そこまで話を聞くとアルベルトは話を遮った。


 「それはランベラート派の貴族という事ですか?つまりブランカスター側の貴族にはわざ救済措置がされなかったという事なんですか?」


 「はい、バーリントンは今もその時の書類を保管していて受理されなかったことを証明できると。他にもヨーゼフから預かった証拠もあります。どれもありもしないことで投獄されたり爵位を奪われたもの達の家族からの証言や証拠書類です。これがあればランベラート皇王を追い落とすには充分かと…」


 「それはすごい証拠です。私の方も父の日記から父が毒を盛られたせいで亡くなった事が掛かれていました。私は明日、貴族議会を開くつもりです。その場でランベラート皇王の進退を議題としてあげようと思いますがいかがでしょうか?そしてエリザベートも聖女としての資格がない事を証明するつもりです。ブランカスター公爵それでよろしいですか?」


 「もちろんです。一日も早い決断がいいでしょう。もし何か起きてからでは遅いですから、私もバーリントンとカールを証人として一緒に出席させるつもりです」

 「それは心強い。ありがとうございます。彼らはシャルロットを救い出したことで躍起になって私たちを潰しにかかるでしょう。ブランカスター公爵も充分気を付けていてください」



 「ええ、わかりました。アルベルト様もお気をつけて、では私は忙しいのでこれで失礼します」

 「はい、では明日貴族議会の前にお会いしましょう。よろしくお願いします」

 話が終わるとブランカスター公爵は帰って行った。もちろん護衛の者を連れていた。

 

 何としてもランベラート皇王にはやめてもらう。そして俺は次の皇王になる。この国を安定させて人々の暮らしが安心して出来るような国を作りたい。

 その時にはシャルロットにそばにいて欲しい。

 彼女は聖女というわけにはいかないが優しくて力のある魔女なんだから…



 待てよ?シャルロットは前に聞いたことがあったな。

 俺に皇王になる気はないのかって、もしかして俺が皇王になったら彼女は振り向いてくれるって事か?

 俺が自分のやるべきことをやればきっとシャルロットは俺を認めて俺の気持ちを受け入れてくれるのかもしれない。


 さあ、忙しくなるぞ。ヨーゼフ先生達の事も明日議会ですべてが整えばすぐに牢から出せるはずだ。

 それがきちんとしたらレオンに様子を知らせなければ、あいつも心配してるだろう。

 きっとこんなことになるとは思ってもいなかっただろうな…

 俺はその日王城に出かけて貴族に招集をかけるよう指示を出した。明日議会を開くと。



 その日の夜シャルロットの様子を見に部屋に行った。

 「シャルロット?気分はどうだ」

 「アルベルト様、はい、おかげさまでほとんど毒はぬけたようです。かなり意識もはっきりしてきましたし、ありがとうございます」

 「それは良かった。明日貴族議会でランベラート皇王に退陣を要求するつもりなんだ」

 「まあ、それは素晴らしいですわ。では次の皇王はロベルト様に?」

 「いや、もともとランベラートは代理だったんだ。次の皇王は私がなろうと思っている」

 「あ、アルベルト様が?でも、嫌だっておっしゃってたじゃありませんか!」

 「ああ、確かに、でも君のおかげで気持ちが変わった。覚悟が出来たんだ。自分のやるべきことをするべきだって、だから…もし俺が皇王になったら…その…俺と」

 アルベルトはいつもと調子が違っていて、しどろもどろに話をする。



 そこに大声で叫び声が聞こえた。

 「アルベルト様お逃げください。敵が攻め込んできました」

 その声はリンデンだった。

  カッキーン!ギギギッ!

 剣を合わせる音が屋敷に響き渡り、何かがぶつかり合う音が聞こえた。

  ドスッ!

 「アルベルト様、ランベラート皇王直属の近衛兵たちです。すぐにお逃げください。さあ、早く!」

 部屋に飛び込んできたのはトルーズ様だった。

 「トルーズ慌てるな。いいか、シャルロットが先だ。彼女を安全な場所に…地下のトンネルを通って向かい側の茂みに出たらジェルディオン家のすぐ近くだ。ヨーゼフはいないがラッセルがいるはず、彼にシャルロットをかくまるように伝えてくれ。さあ、行くんだトルーズ」

 「ですが旦那様は?」

 「リンデンたちを助けに行く。いいから心配するな。叔父も俺に無茶なことは出来ないはずだ。さあ、早く…」

 「わかりました。旦那様くれぐれもご無事で、さあ、シャルロット様行きましょう」

 「嫌です。私も戦います。私のようなものでも少しは役に立ちます」

 「だめだ!いいからここは俺の言うことを聞け。トルーズ早くシャルロットを」



 私は無理やり腕を引っ張られて隠し扉の中に押し込まれた。すぐにアルベルト様が扉を閉めてしまった。

 「アルベルト様ここを開けてください。だめです。あなたを危険な目に遭わせるわけには…」

 「無駄です。シャルロット様、さあ、行きましょう。旦那様はきっと大丈夫です。彼はこの国の王となるべき人。ランベラート皇王もそこまで無茶なことは出来ないはずです」

 「アルベルトこそがこの国の王になるべき人。だからこそ危険なんです…ああ…アルベルトどうか無事で…」

 シャルロットはアルベルトの気持ちを汲んでトルーズと逃げた。そして無事にジェルディオン家に逃げ込んだ。



 アルベルトはリンデンたちとランベラート皇王直属の近衛兵と戦った。

 だが、相手は多勢でとうとう彼らに捕まってしまった。

 アルベルトやリンデンたちはその夜のうちに王城に連れて行かれてしまう。


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