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しおりを挟む私は次第に冷たくなっていった。
寒気がして身体が震えた。
何とか呼吸をしなければ本当に死んでしまうと呼吸をすることに必死になった。
それでもじわじわと真っ暗な暗闇から今にも魔物が現れて連れ去られてしまいそうな恐怖が込み上げた。
恐い…誰か助けて、お願い誰か…誰かいないの?お願い助けて…
声にならない叫びを上げても誰も応えてはくれなかった。
どれくらいそうしていただろうか。
いつからか寒くて凍そうだった身体が少しずつ温かさを取り戻し、呼吸も楽になって行った。
そして信じられないがアルベルト様の匂いがしてきた気もした。
私はきっとこんな生死の境をさまよっていてそんなありもしない事を感じているんだわ。
だが、時間がたつほど温もりはどんどん増して行きアルベルト様の匂いも強くなった。
もうすぐそばに彼がいるのではないかと思うほどの感覚に襲われて、自分でも驚いていた時に、また誰かが部屋に入って来たらしかった。
「もう、こんな事するなんて信じれないわ。エリザベートってやっぱり最悪な女だわ。夜会であんなことになるなんて知らなかった。おまけにこの人はみんなを助けたのに…それなのに…毒を飲ませろなんてひどすぎない?私もうほんとに嫌になったわ。早くアビーのいるところに逃げださなきゃ。まったく魔女というだけでこのお城に連れて来られてからずっとおかしなことばかりさせられてきた。もう、ほんとにいい迷惑。でもこの薬を飲ませなかったら私が痛い思いをすることになる…ああ、ほんとに困るわ…」
誰だろう?さっきのフランツ先生とは違うわ。
この人こんなことをするのを嫌がってるのね。
不意に心の中に希望が湧いてくる。
何とかこの人と意志を通じる手立てはないかしら…
彼女も魔女だと言ったわね。もしかしたら…
私は神経を集中させてそばにいる気配に念じてみる。
”お願い助けて、あなたはとっても優しい人。私に毒を飲ませる事を嫌がってるんでしょう。あなたは正しいわ。お願い。私がここにいることをある人に伝えて欲しいの。名前はアルベルト・ルミドブール・エストラード公爵。この人に私のいる場所を知らせてお願い。”
私は自分でも驚いた。
アルベルト様が本当に私を助けに来てくれるかわからないのに…
でも、彼は私を守ろうとしてくれていたわ。
きっとアルベルト様なら私を助け出してくれるわ。
だって彼は私の愛する人なんだから…信じたかった。あんなことばかり言っていたけど彼は本当は勇気のある立派な人だと…
"あなた意識があるの?こんな毒を盛られているのに?”
"通じたの?良かった。ええ、意識はあるわ。でも、いつまでもつかもう分からない。力は完全に枯渇しているし、ただ誰かが私を守っているような気はするけど、お願い急いで私の居場所をルミドブール公爵に…”
私は念じる。だが、これはかなり力を使うらしくひどく体が重くなった。
”いつまであなたとこうしていられるかわから……”
私の意識はそこで途絶えた。
”しっかりしてシャルロット!これが貴方の名前でしょう?あなたの言う通りすぐに助けを呼ぶから、しっかりしてね。私はマリーって言うの”
「そうだわ。これを飲んで」
マリーはスベリヒュを乾燥させて作った丸薬を私の口に入れた。
「これは解毒の効果があるから…待っててシャルロット」
マリーという女性が部屋から出て行く気配がしてドアがバタンと締まった。
私は彼女が口に入れてくれた丸薬をゆっくり口の中で溶かして喉に少しずつ流し込んだ。
スベリヒュは確かに解毒の効果がある薬草だから、きっと少しは毒が弱まるかもしれない。
アルベルト様が来てくれるまでに少しでも動けるようになっていれたらいいんだけど…
そんな事を考えているうちに私はまた意識を失ってしまったらしい。
お願いアルベルト様。早く、早く来て…
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