よりによって人生で最悪な時に再会した初恋の人がじれじれの皇太子だったなんておまけに私死んだことになってましたから

はなまる

文字の大きさ
上 下
41 / 61

41

しおりを挟む

 
 私は次第に冷たくなっていった。

 寒気がして身体が震えた。

 何とか呼吸をしなければ本当に死んでしまうと呼吸をすることに必死になった。

 それでもじわじわと真っ暗な暗闇から今にも魔物が現れて連れ去られてしまいそうな恐怖が込み上げた。

 恐い…誰か助けて、お願い誰か…誰かいないの?お願い助けて…

 声にならない叫びを上げても誰も応えてはくれなかった。



 どれくらいそうしていただろうか。

 いつからか寒くて凍そうだった身体が少しずつ温かさを取り戻し、呼吸も楽になって行った。

 そして信じられないがアルベルト様の匂いがしてきた気もした。

 私はきっとこんな生死の境をさまよっていてそんなありもしない事を感じているんだわ。



 だが、時間がたつほど温もりはどんどん増して行きアルベルト様の匂いも強くなった。

 もうすぐそばに彼がいるのではないかと思うほどの感覚に襲われて、自分でも驚いていた時に、また誰かが部屋に入って来たらしかった。


 「もう、こんな事するなんて信じれないわ。エリザベートってやっぱり最悪な女だわ。夜会であんなことになるなんて知らなかった。おまけにこの人はみんなを助けたのに…それなのに…毒を飲ませろなんてひどすぎない?私もうほんとに嫌になったわ。早くアビーのいるところに逃げださなきゃ。まったく魔女というだけでこのお城に連れて来られてからずっとおかしなことばかりさせられてきた。もう、ほんとにいい迷惑。でもこの薬を飲ませなかったら私が痛い思いをすることになる…ああ、ほんとに困るわ…」


 誰だろう?さっきのフランツ先生とは違うわ。

 この人こんなことをするのを嫌がってるのね。

 不意に心の中に希望が湧いてくる。

 何とかこの人と意志を通じる手立てはないかしら…

 彼女も魔女だと言ったわね。もしかしたら…

 私は神経を集中させてそばにいる気配に念じてみる。



 ”お願い助けて、あなたはとっても優しい人。私に毒を飲ませる事を嫌がってるんでしょう。あなたは正しいわ。お願い。私がここにいることをある人に伝えて欲しいの。名前はアルベルト・ルミドブール・エストラード公爵。この人に私のいる場所を知らせてお願い。”

 私は自分でも驚いた。

 アルベルト様が本当に私を助けに来てくれるかわからないのに…

 でも、彼は私を守ろうとしてくれていたわ。

 きっとアルベルト様なら私を助け出してくれるわ。

 だって彼は私の愛する人なんだから…信じたかった。あんなことばかり言っていたけど彼は本当は勇気のある立派な人だと…



 "あなた意識があるの?こんな毒を盛られているのに?”



 "通じたの?良かった。ええ、意識はあるわ。でも、いつまでもつかもう分からない。力は完全に枯渇しているし、ただ誰かが私を守っているような気はするけど、お願い急いで私の居場所をルミドブール公爵に…”

 私は念じる。だが、これはかなり力を使うらしくひどく体が重くなった。

 ”いつまであなたとこうしていられるかわから……”



 私の意識はそこで途絶えた。



 ”しっかりしてシャルロット!これが貴方の名前でしょう?あなたの言う通りすぐに助けを呼ぶから、しっかりしてね。私はマリーって言うの”



 「そうだわ。これを飲んで」

 マリーはスベリヒュを乾燥させて作った丸薬を私の口に入れた。

 「これは解毒の効果があるから…待っててシャルロット」

 マリーという女性が部屋から出て行く気配がしてドアがバタンと締まった。

 私は彼女が口に入れてくれた丸薬をゆっくり口の中で溶かして喉に少しずつ流し込んだ。

 スベリヒュは確かに解毒の効果がある薬草だから、きっと少しは毒が弱まるかもしれない。

 アルベルト様が来てくれるまでに少しでも動けるようになっていれたらいいんだけど…

 そんな事を考えているうちに私はまた意識を失ってしまったらしい。

 お願いアルベルト様。早く、早く来て…



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

麗しの勘違い令嬢と不器用で猛獣のような騎士団長様の純愛物語?!

miyoko
恋愛
この国の宰相であるお父様とパーティー会場に向かう馬車の中、突然前世の記憶を思い出したロザリー。この国一番の美少女と言われる令嬢であるロザリーは前世では平凡すぎるOLだった。顔も普通、体系はややぽっちゃり、背もそこそこ、運動は苦手、勉強も得意ではないだからと言って馬鹿でもない。目立たないため存在を消す必要のないOL。そんな私が唯一楽しみにしていたのが筋肉を愛でること。ボディビルほどじゃなくてもいいの。工事現場のお兄様の砂袋を軽々と運ぶ腕を見て、にやにやしながら頭の中では私もひょいっと持ち上げて欲しいわと思っているような女の子。せっかく、美少女に生まれ変わっても、この世界では筋肉質の男性がそもそも少ない。唯一ドストライクの理想の方がいるにはいるけど…カルロス様は女嫌いだというし、絶対に筋肉質の理想の婚約相手を見つけるわよ。 ※設定ゆるく、誤字脱字多いと思います。気に入っていただけたら、ポチっと投票してくださると嬉しいですm(_ _)m

脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。 ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。 そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。 真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

処理中です...