よりによって人生で最悪な時に再会した初恋の人がじれじれの皇太子だったなんておまけに私死んだことになってましたから

はなまる

文字の大きさ
上 下
19 / 61

19

しおりを挟む

 
 私は食事を済ませると早速宿の人に治癒師に紹介されることになった。

 というのもその治癒師がけがをした女性の手当てに来たからだ。


 「ヨーゼフ先生この女性が手当てをしてくれて助かったんです。何でも仕事を探しているとかでどうです?先生の所で使ってあげては?」

 私は宿に人にデルハラドには仕事を探しに行くと嘘を言った。

 こんな時にそれを言うとは思ってもいなかった。

 「そうですね。確かに人手不足でね。何しろ魔女という魔女は王宮に召し抱えられて、薬草の知識や治癒魔法が使える人がほとんどいないからね。君名前は?」



 「あっ…はい。シャルロットと言います。魔術の方はまだまだですが薬草の知識はありますが」

 「薬草の知識があるだけでも貴重だよ。じゃあ、この後私の治療院までの地図を書こう。仕事は…こっちは明日からでもいいけど?」

 「はい、ヨーゼフ先生…あのヨーゼフ先生はもしかしてヨーゼフ・ジェルディオンと言われるのではありませんか?」

 「ああ、そうだが、僕を知ってるの?」

 「いえ…実は私カロリーナ様の所で見習いをしていたんです。彼女は亡くなって私一人であそこをやって行くのは無理で、それで街に出て仕事をしようと思ってたんです」

 うまく信じてくれるだろうか?

 それにしてもこの人が私の叔父さんになるの?ずいぶん若く感じた。



 「カロリーナが亡くなった?」

 「はい…」殺されたなんて言うのはとても言えなくて言葉に詰まった。



 ヨーゼフ先生の顔が一瞬強張った。すごく残念な顔をして俯いていたがしばらくしてやっと私の方を向いた。

 「そうだったのか。だったらシャルロットなおの事うちで働けばいい。そうだ。もしよかったら今晩この女性に付き添ってくれないか?途中で痛がるようなら、これを水で溶いて飲ませてくれないか?」

 「はい、あの先生、私、勝手にベラドンナの粉末を少し飲ませたんですけど、良かったでしょうか?」

 「ああ、それでかなり楽そうにしてたんだね。私の渡した薬もベラドンナだよ。君は本当に知識があるようだ。明日からが楽しみだ。それから、外に出るときは顔を隠した方がいい。赤い瞳は魔女ですって言ってるようなもんだから。話したように魔女とわかったら王宮にすぐに連れていかれるかもしれないからね。シャルロットは瞳を変える薬草を持ってるかい?」

 「わかりました。気を付けます。ちょうど瞳の色を変える薬草を持っていますから」



 「良かった。私は今夜中にデルハラドに帰らなくてはならないんだ。一緒に連れていけたらいいんだが…」

 「いえ、大丈夫です。それにこの方の具合も心配ですし」

 「そうだね。助かるよ。じゃあ明日待ってるから、気を付けてくるんだよ」

 「はい、ヨーゼフ先生ありがとうございます」

 ヨーゼフ先生はまだ近くの家に往診があるとかで帰って行った。

 良かったわ。彼はカロリーナの弟子だったという話を信じてくれたみたい。

 これで難関を一つ突破かしら…

 でも、問題は魔力がうまく使えるかだけど…



 ヨーゼフ先生は早くから薬草に興味を持たれて色々な知識を学ばれたらしい。魔術が使えるわけではないが、薬草の知識とこれまでの経験でみんなに頼りにされている治癒師だったと宿の人が話してくれた。



 私は言われた通り怪我をした女性のそばで看病することになった。

 数時間がすぎその女性が目を覚ました。

 「あの…ここは?」

 私はうとうとしかけていて声を掛けられてはっと目を覚ました。

 「大丈夫ですか?痛みはありませんか?」

 「はい、あの…私は」



 「ここはザシールの宿場にある宿です。あなたはひどいけがをしてここに運び込まれて、でも安心して下さい。怪我は大したことはありません。打ち身と切り傷だけですからね。しばらくすればすぐに良くなりますよ」

 「ありがとうございます。どなたかわかりませんが親切にして頂いて…」

 「いえ、私は…お礼はここの宿の方に、それとヨーゼフ先生におしゃって下さい。それはそうとあなたのあ名前は?ご心配されている方がいらっしゃるのではないんですか?」

 「はい、家族はいませんが、お世話になっているお屋敷に知らせていただけると、用に出たきりできっと心配していると思いますので…私の名前はアビーと言います。お屋敷はデルハラドにあるルミドブール公爵様のお屋敷で働かせていただいております」



 「わかりました。早速宿の人に伝えてきます。ルミドブール公爵様ですね」

 「はい、ありがとうございます。あの、あなたのお名前は?」

 「私はシャルロットと申します。これからヨーゼフ先生のところで働かせていただくことになりましたからよろしくお願いしますねアビーさん」

 「はい、シャルロット様」

 「シャルロットと呼んで下さい。様はいいんですよアビーさん。もう安心して休んでくださいね。それより何か食べませんか?私ちょっと食べるものをもらってきますから」

 「そう言えば喉が渇きました。ありがとうございます」


 シャルロットは急いで宿の人に彼女の屋敷と何か食べ物をもらえないかと伝えた。

 宿の主人は夜遅いにもかかわらず愛想良く、パンとスープを用意してくれて、ルミドブール公爵様の所なら知っていると言った。でももう遅いから朝一番で使いを出すと言ってくれた。



 アビーと話すうち、シャルロットは来たばかりでデルハラドで住むところを探していることを知ったアビーが公爵様の家に住んだらどうかと言ってくれた。

 ご主人はいつも留守がちで部屋はたくさん開いているし、魔女様なら喜んで部屋を貸してくれるはずだといい張るので、もし公爵様に良い返事がもらえたらということにした。



 翌朝早く知らせをもってルミドブール公爵家に行ってもらった。

 お昼前に公爵家の人がやって来た。

 「お忙しいところ申し訳ない。こちらにルミドブール家で働いている侍女のアビーというものがお世話になっていると聞いてまいりました」

 「あなた様は?」

 「申し遅れました。私はルミドブール公爵家で執事をしておりますトルーズと申します。この度はご親切にありがとうございました。それで彼女の具合はいかがでしょうか?」

 「はい、お怪我は打撲と切り傷を伺っております。昨晩ヨーゼフ先生に来ていただいて、それにちょうど魔女様がお泊りでしてその方が夜通し看病をして下さって、もうすっかり元気を取り戻されております。しばらくは養生が必要でしょうが心配には及びません」

 「そうですか。後程ヨーゼフ先生にはこちらからご挨拶に伺いますので」

 「まあ、すみません。さあ、どうぞお上がり下さい」


 そして執事のトルーズがアビーの部屋に入って来た。

 「アビー大丈夫か?心配してたんだ。でも良かった。大したけがではないそうで」

 「まあ、これはトルーズ様、申し訳ありませんご心配おかけして、暗くなって急いでいたのがいけなかったんです。馬車が来るのに気づくのが遅れてしまって…」

 「いや、いいんだ。あなたが無事なら…こちらが魔女殿か?」



 「はい、シャルロットと申します。どうぞよろしく。でも私、魔術もろくに使えない見習い魔女ですのでどうぞ名前で呼んで下さい」

 「いや、それでも助かりました。どうもありがとうございました」

 「トルーズ様、もしよければ魔女様にしばらく部屋をお貸し願えませんか?シャルロット様はデルハラドに行かれるのですがまだ住むところが決まってないんです。お願いします。私の命の恩人なんです。どうか願いを聞いてくださいませんか?」

 「アビー?どういうことだ?」



 「トルーズ様アビーさんを叱らないで下さい。私、自分で住むところは探しますから、仕事は見つかりましたし大丈夫ですから」

 「仕事は何をされるんです?」

 「ヨーゼフ先生のところでは働けることになりました」


 トルーズはしばらく考えてから話を始めた。

 「そう言う事でしたら、お部屋を一部屋お貸ししてもいいですよ。主人には私から連絡しておきますのでご安心下さい。何しろ最近は魔女と分かっただけですぐに王宮に連れていかれるんです…とにかく危険なんです。あなたも充分気を付けてください」

 「わかりました。ではお言葉に甘えてしばらくお世話になります」


 こうして私はルミドブール公爵家でしばらくお世話になることになった。

 もちろん部屋が決まったら出て行くつもりです。

 運よくヨーゼフ様に出会えるなんて奇跡的な巡りあわせに驚くばかりです。

 でもこれからちゃんとやって行けるのか心配ですけど…

 何しろ見習い魔女ってことになったので…



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。 ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。 そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。 真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

処理中です...