上 下
21 / 54

20ローリーとアルナンドお似合いなんじゃないですか?

しおりを挟む

 私たちは馬車から下りると機織り工房を目指した。

 通りにはいくつものも機織り工房が立ち並んで人通りも多かった。

 カイトから聞いた工房に着くとプリムローズは販売をしているらしい店舗の入り口を開けてローリーに事を訪ねる。

 「すみません。こちらの工房でローリーと言う18歳の女性が働いていると聞いたんですが?」

 「ローリーに会いたいって?あなたは?」

 応対に出たのは年の頃なら40代くらいの女性でここの販売員だろうか。

 店には織り上がった布がいくつも売られていてる。きっとここは機織りと販売を兼ねているのだろうと判断する。

 「私は幼なじみのプリムローズと言います。3年前に別れたきりで最近同郷の人と出会ってここで働いていると聞いてどうしても会いたくなって尋ねました。どうか合わせて頂けませんか?」

 「少しお待ちを、ただいま店主に聞いてみますので」

 「はい、よろしくお願いします。すこしお店の中を見せて頂いていてもよろしいですか?」

 「はい、もちろんです。どうぞごゆっくりご覧ください」

 店には他にも客がいて色々な布を手に取っているのが見えた。

 プリムローズも客と同じようにきれいな布を手に取った。

 アルナンドも一緒に店の中に入っていたが少し居づらくなったのか「俺は外で待っているから」とそそくさと店の外に出て行った。



 プリムローズは店の中でも一段と目を引く白金の糸が織り込まれた布に目が吸い込まれた。

 その布は軽くとてもなめらかでそれでいて華やかで美しかった。

 (こんな布を織るなんてすごいわ。これで着物なんか作ったらとても綺麗だろうな)などと想いを馳せる。

 しばらくすると店員が現れてローリーが表に来ると告げられた。

 「お忙しい所本当にありがとうございます。あの、また今度是非買い物に来させてください。この布すごくきれいです」

 「ああ、客様はお目が高いですね。これはあなたの尋ねて来られたローリー織ったものなんですよ。彼女の織る布はとても評判がいいんです」

 プリムローズは驚く。

 (えっ?ローリーがこんな立派な織物を織ってるの?私がくよくよしている間にローリーは頑張ったのね。すごいわ。彼女耳が聞こえなくなってすごく落ち込んでたのにほんとに立派だわ…)

 「そうなんですか。ローリーに会うのが楽しみです。ありがとうございます。では、失礼します」

 プリムローズはお礼の言うと表に出た。


 はっとする。

 ローリーの面影ははっきり覚えていた。白金の髪に緋色の瞳。少女の頃の面影は活発で元気いっぱいのローリーだったが10歳の時熱病にかかって耳が聞こえなくなってからは人前に余り出なくなって口数も減った。

 それでも友達はローリーの家にしょっちゅう遊びに行ってローリーを仲間はずれにはしなかった。

 プリムローズもカイトもそれは同じだった。

 15歳の時辺境伯に引き取られるまでは…


 プリムローズは通りを見渡した。

 「あっ!」思わず声が漏れた。

 アルナンドとローリーがまるで会話をしているように見えた。

 ふたりはアイコンタクトとでもいうのかお互いの思っていることが分かるみたいに見つめ合って微笑みあっている。

 プリムローズはそんなふたりにゆっくり近づくとローリーの目の前に立ってゆっくりと話しかける。彼女は10歳までは耳が聞こえていたのでゆっくり話せば話している内容が分かるし喋ることも少しなら出来るのだ。

 「あの…ローリー?…私がわかる?」

 ローリーは、私の顔をまじまじと見つめる。そしてその顔が一面の笑顔に変わって行く。

 「ぷ、りむ、ろー、ず?」たどたどしくゆっくりだけどローリーが名前を言った。

 プリムローズはうれしくて思わずローリーの手を取って何度もうなずく。

 「うん、そうだよ。ローリー会いたかった。元気にしてた?」

 「わたしも、あいた、かった…」

 アルナンドが驚いて聞いた。

 「彼女がプリムローズの友達か?そうか。会えて良かったな」

 プリムローズはそう言えばと聞いた。

 「アルナンドさん、ローリーと話してませんでした?何だかそんな風に見えたんですけど」

 「ああ、さっき彼女とぶつかって、最初は耳が悪いと分からなかった。でも、彼女とは意思の疎通が出来るみたいなんだ。脳内に彼女の言いたいことが伝わるって言うか…どうも竜人には人の不自由な部分を補う力があるらしいから」

 「それであんなに自然に?それってすごいじゃないですか。ねぇローリー。彼はアルナンド。竜人なの。彼ってあなたの考えてることが分かるんだって」

 「ぷ、ぷりむ、ろーず、わからない。もっと、ゆっくり…」

 「ああ、ごめん。アルナンドさん説明してあげてよ」

 アルナンドがローリーにそのことを伝えるとローリーはまた嬉しそうにほほ笑む。

 プリムローズの脳内にパチンと電気が灯る。

 (これってもしかして凄い事じゃ…竜人とならローリーもお付き合いできるって事とね?)

 「アルナンドさん、私たちが結婚相談所をやってるって伝えてもらえませんか?ローリーも結婚できるって!」

 プリムローズはうれしさのあまりまくし立てた。

 「ああ、わかった」

 アルナンドは言われた通りローリーにそう伝える。

 ローリーはプリムローズを見て驚いた顔をする。

 「そうなの。私、この人と仕事してるの」

 ローリーはまたまた驚いてアルナンドを見る。

 プリムローズはまた閃く。パチンと手のひらを叩く。

 「そうだ!アルナンドさんならピッタリじゃないですか?」

 「なにが?」

 「ローリーの相手にですよ。ふたりともお似合いですよ」

 「はっ?おい、彼女を俺の嫁に?」

 アルナンドはこの日、生まれてはじめて気を失いそうになった。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。

聖獣の卵を保護するため、騎士団長と契約結婚いたします。仮の妻なのに、なぜか大切にされすぎていて、溺愛されていると勘違いしてしまいそうです

石河 翠
恋愛
騎士団の食堂で働くエリカは、自宅の庭で聖獣の卵を発見する。 聖獣が大好きなエリカは保護を希望するが、領主に卵を預けるようにと言われてしまった。卵の保護主は、魔力や財力、社会的な地位が重要視されるというのだ。 やけになったエリカは場末の酒場で酔っ払ったあげく、通りすがりの騎士団長に契約結婚してほしいと唐突に泣きつく。すると意外にもその場で承諾されてしまった。 女っ気のない堅物な騎士団長だったはずが、妻となったエリカへの態度は甘く優しいもので、彼女は思わずときめいてしまい……。 素直でまっすぐ一生懸命なヒロインと、実はヒロインにずっと片思いしていた真面目な騎士団長の恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID749781)をお借りしております。

溺愛の始まりは魔眼でした。騎士団事務員の貧乏令嬢、片想いの騎士団長と婚約?!

恋愛
 男爵令嬢ミナは実家が貧乏で騎士団の事務員と騎士団寮の炊事洗濯を掛け持ちして働いていた。ミナは騎士団長オレンに片想いしている。バレないようにしつつ長年真面目に働きオレンの信頼も得、休憩のお茶まで一緒にするようになった。  ある日、謎の香料を口にしてミナは魔法が宿る眼、魔眼に目覚める。魔眼のスキルは、筋肉のステータスが見え、良い筋肉が目の前にあると相手の服が破けてしまうものだった。ミナは無類の筋肉好きで、筋肉が近くで見られる騎士団は彼女にとっては天職だ。魔眼のせいでクビにされるわけにはいかない。なのにオレンの服をびりびりに破いてしまい魔眼のスキルを話さなければいけない状況になった。  全てを話すと、オレンはミナと協力して魔眼を治そうと提案する。対処法で筋肉を見たり触ったりすることから始まった。ミナが長い間封印していた絵描きの趣味も魔眼対策で復活し、よりオレンとの時間が増えていく。片想いがバレないようにするも何故か魔眼がバレてからオレンが好意的で距離も近くなり甘やかされてばかりでミナは戸惑う。別の日には我慢しすぎて自分の服を魔眼で破り真っ裸になった所をオレンに見られ彼は責任を取るとまで言いだして?! ※結構ふざけたラブコメです。 恋愛が苦手な女性シリーズ、前作と同じ世界線で描かれた2作品目です(続きものではなく単品で読めます)。今回は無自覚系恋愛苦手女性。 ヒロインによる一人称視点。全56話、一話あたり概ね1000~2000字程度で公開。 前々作「訳あり女装夫は契約結婚した副業男装妻の推し」前作「身体強化魔法で拳交える外交令嬢の拗らせ恋愛~隣国の悪役令嬢を妻にと連れてきた王子に本来の婚約者がいないとでも?~」と同じ時代・世界です。 ※小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しています。※R15は保険です。

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

お金目的で王子様に近づいたら、いつの間にか外堀埋められて逃げられなくなっていた……

木野ダック
恋愛
いよいよ食卓が茹でジャガイモ一色で飾られることになった日の朝。貧乏伯爵令嬢ミラ・オーフェルは、決意する。  恋人を作ろう!と。  そして、お金を恵んでもらおう!と。  ターゲットは、おあつらえむきに中庭で読書を楽しむ王子様。  捨て身になった私は、無謀にも無縁の王子様に告白する。勿論、ダメ元。無理だろうなぁって思ったその返事は、まさかの快諾で……?  聞けば、王子にも事情があるみたい!  それならWINWINな関係で丁度良いよね……って思ってたはずなのに!  まさかの狙いは私だった⁉︎  ちょっと浅薄な貧乏令嬢と、狂愛一途な完璧王子の追いかけっこ恋愛譚。  ※王子がストーカー気質なので、苦手な方はご注意いただければ幸いです。

処理中です...