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第27話
救世主
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メデタはマーブル博士が右手に持っているモノに気が付いた。
「マーブル博士?その手に持っているのは何ですか?」
「あぁ、これはなこれから新たに研究するために必要なモノじゃよ。」
「新たに研究するって何の研究ですか?」
「そうじゃなぁ、あまり詳しくは言えんのじゃが、ひと言で言うなら『人々を救うため』に必要な研究じゃな。」
「へぇ~!それって人々に喜ばれるって事ですよね?」
「あぁ、まぁ、必然的にそう言う事になるなぁ。」
「僕もその研究、手伝わせて下さい!」
「メデタくん、それはダメじゃ。」
「えっ!?どうしてですか??」
「これは本当に人々の命に関わる大事な研究になるじゃろう。メデタくん、君のの命の危険も考えられる大変な研究じゃ。」
「それなら尚更です!僕たちは人間の力になるために生まれてきました!命の事を言うなら、むしろこれまでに僕の仲間たちは数えきれないほどの命を落としてきました。ですが、それすら人間たちの平穏の為の犠牲に過ぎません。だから、この研究で僕たちの命が危険に晒されたとしても、人間の為の犠牲になれるのなら、僕たちは本望です!」
マーブル博士はメデタの言葉に言葉を失った。
「だから博士、僕もその研究の協力をさせて下さい。」
「メデタくんの気持ちは十分過ぎるほどに分かった。その想いを踏みにじる事は誰にも出来ん。出来る筈がなかろう。今まで君たちに人間がしてきた事を考えれば心苦しい。今、目の前にその相手が手を差し伸べてくれている。その手を握る事以外の選択肢はあるか?」
「ありませんね。」
一部始終を聞いていたローチは穏やかな声色で言った。
「それじゃぁ?」
「あぁ、宜しく頼むよ。メデタくん。君がわしら人間たちにとっての救世主になってくれ!」
「はい!喜んで‼︎」
メデタはマーブル博士の右手を両手で握った。
すると、パリンッという音がして、メデタとマーブル博士とローチはほぼ同時に「「「あっ‼︎」」」と言った。
「まさか、ウィルスの入った容器が!?」ローチは目を見開き、両手で大きく開いた口を覆っている。
もっぱらメデタとマーブル博士も似たような表情のまま、握っている手をゆっくりと離した。
すると2人の手の平には割れた容器の破片と、内容物がべっとりと付着している。
「マーブル博士ごめんなさい!」
とメデタは何を思ったか、マーブル博士の手の平に顔を近づけると、そのべっとりと付着した内容物をペロッと舐めはじめた。
「メデタくん何をしとるんじゃ!これは舐めていいモノじゃないんじゃぞ!早く!やめなさい!」
マーブル博士はメデタを力づくで右手から引き離した。
「うわ~ぁ‼︎なんてこった~‼︎」
ローチは頭を抱えている。
メデタは自分の右手も舐めている。
「マーブル博士、本当にごめんなさい。」
「いや、わしも突然の事で驚いてしまったが、呑気に驚いとる場合じゃない!アイちゃん!メデタくんを研究室に運んできてくれ!」
「はい!かしこまりました!」
するとアイはメデタを仰向けにして抱きかかえた。
「ローチくん、すまんが、そういうことじゃ!また連絡する!」
「はい!承知しました!くれぐれもお気をつけて下さいね!宜しくお願いしますよ!」
「ああ!ありがとう!」
そう言いながらマーブル博士たちは研究所内へと急いで入っていった。
「しかし、大丈夫かなぁメデタくん。でも元々ゴキブリ なんだから、もしかしたら大丈夫なのかも?いや、まさかなぁ。」
ローチは、先程の驚きが冷めやまぬ中、不安を抱えたまま車に乗り込み、エンジンをかけた。
2階にある研究室の一室。
「メデタくん!大丈夫か!?」
全身防護服に身を包んだマーブル博士が心配そうに声をかけた。
「はい、僕は全然大丈夫ですよ。」
メデタは親指を立てて笑顔で答えた。
「採血をする。少し痛いが我慢してくれよ。」
メデタの右腕に注射器の針がスッと入る。メデタは動じることなく至って冷静だ。
「これで血液検査の結果を待って、その後の対応を考えるから、メデタくんは当面はこの部屋で生活じゃ。いいな?」
「はい。マーブル博士、僕の体で調べられることを全部調べて下さいね!」
「あぁ、ありがとうな。さっきは驚いて突き飛ばしてしまって悪かったなぁ。」
「いえいえ、僕は全然大丈夫です。」
「そうか、何はともあれ、君がいてくれて良かった。わしもこの新たな依頼を請け負ったものの荷が重く感じとったんじゃ、メデタくん、ありがとう。」
マーブル博士は優しくにっこりと笑った。
「そう言っていただけると嬉しいです。1人でも多くの人たちを助けるためにこの依頼成功させましょう!」
「ああ!もちろんだとも!わしを誰だと心得る?」
「バイオ研究の権威!天才で変態のマーブル博士!」
「おいおい、ひとつ余計なのが付いとるぞ!」
「これは褒め言葉ですよっ!」
「褒められとったのか、それなら良い。」
「マーブル博士、アイ。」
メデタは2人の名前を呼んだ。
「なんじゃ?」
「どうしたの?」
2人は同時に返事をした。
「僕が生まれてきて、良かった?」
「ああ、もちろんじゃとも。」
「私の弟よ?当たり前でしょ。」
「良かった。」
と言った後、メデタは安堵の表情で突然眠りについた。
「何じゃ、死ぬ前みたいな事を言ってからに。」
異変に気付いたアイはメデタの脈を取った。
「マーブル博士、体温37.6分、微熱ではありますが、眠っています。
「前兆かもしれんな。アイちゃんは付きっきりで様子を見ていてくれ。」
「はい!」
「わしは調べ物をしてくる!何かあったら無線で連絡してくれ。」
「かしこまりました!」
そう言ってマーブル博士は部屋から出て行った。
「マーブル博士?その手に持っているのは何ですか?」
「あぁ、これはなこれから新たに研究するために必要なモノじゃよ。」
「新たに研究するって何の研究ですか?」
「そうじゃなぁ、あまり詳しくは言えんのじゃが、ひと言で言うなら『人々を救うため』に必要な研究じゃな。」
「へぇ~!それって人々に喜ばれるって事ですよね?」
「あぁ、まぁ、必然的にそう言う事になるなぁ。」
「僕もその研究、手伝わせて下さい!」
「メデタくん、それはダメじゃ。」
「えっ!?どうしてですか??」
「これは本当に人々の命に関わる大事な研究になるじゃろう。メデタくん、君のの命の危険も考えられる大変な研究じゃ。」
「それなら尚更です!僕たちは人間の力になるために生まれてきました!命の事を言うなら、むしろこれまでに僕の仲間たちは数えきれないほどの命を落としてきました。ですが、それすら人間たちの平穏の為の犠牲に過ぎません。だから、この研究で僕たちの命が危険に晒されたとしても、人間の為の犠牲になれるのなら、僕たちは本望です!」
マーブル博士はメデタの言葉に言葉を失った。
「だから博士、僕もその研究の協力をさせて下さい。」
「メデタくんの気持ちは十分過ぎるほどに分かった。その想いを踏みにじる事は誰にも出来ん。出来る筈がなかろう。今まで君たちに人間がしてきた事を考えれば心苦しい。今、目の前にその相手が手を差し伸べてくれている。その手を握る事以外の選択肢はあるか?」
「ありませんね。」
一部始終を聞いていたローチは穏やかな声色で言った。
「それじゃぁ?」
「あぁ、宜しく頼むよ。メデタくん。君がわしら人間たちにとっての救世主になってくれ!」
「はい!喜んで‼︎」
メデタはマーブル博士の右手を両手で握った。
すると、パリンッという音がして、メデタとマーブル博士とローチはほぼ同時に「「「あっ‼︎」」」と言った。
「まさか、ウィルスの入った容器が!?」ローチは目を見開き、両手で大きく開いた口を覆っている。
もっぱらメデタとマーブル博士も似たような表情のまま、握っている手をゆっくりと離した。
すると2人の手の平には割れた容器の破片と、内容物がべっとりと付着している。
「マーブル博士ごめんなさい!」
とメデタは何を思ったか、マーブル博士の手の平に顔を近づけると、そのべっとりと付着した内容物をペロッと舐めはじめた。
「メデタくん何をしとるんじゃ!これは舐めていいモノじゃないんじゃぞ!早く!やめなさい!」
マーブル博士はメデタを力づくで右手から引き離した。
「うわ~ぁ‼︎なんてこった~‼︎」
ローチは頭を抱えている。
メデタは自分の右手も舐めている。
「マーブル博士、本当にごめんなさい。」
「いや、わしも突然の事で驚いてしまったが、呑気に驚いとる場合じゃない!アイちゃん!メデタくんを研究室に運んできてくれ!」
「はい!かしこまりました!」
するとアイはメデタを仰向けにして抱きかかえた。
「ローチくん、すまんが、そういうことじゃ!また連絡する!」
「はい!承知しました!くれぐれもお気をつけて下さいね!宜しくお願いしますよ!」
「ああ!ありがとう!」
そう言いながらマーブル博士たちは研究所内へと急いで入っていった。
「しかし、大丈夫かなぁメデタくん。でも元々ゴキブリ なんだから、もしかしたら大丈夫なのかも?いや、まさかなぁ。」
ローチは、先程の驚きが冷めやまぬ中、不安を抱えたまま車に乗り込み、エンジンをかけた。
2階にある研究室の一室。
「メデタくん!大丈夫か!?」
全身防護服に身を包んだマーブル博士が心配そうに声をかけた。
「はい、僕は全然大丈夫ですよ。」
メデタは親指を立てて笑顔で答えた。
「採血をする。少し痛いが我慢してくれよ。」
メデタの右腕に注射器の針がスッと入る。メデタは動じることなく至って冷静だ。
「これで血液検査の結果を待って、その後の対応を考えるから、メデタくんは当面はこの部屋で生活じゃ。いいな?」
「はい。マーブル博士、僕の体で調べられることを全部調べて下さいね!」
「あぁ、ありがとうな。さっきは驚いて突き飛ばしてしまって悪かったなぁ。」
「いえいえ、僕は全然大丈夫です。」
「そうか、何はともあれ、君がいてくれて良かった。わしもこの新たな依頼を請け負ったものの荷が重く感じとったんじゃ、メデタくん、ありがとう。」
マーブル博士は優しくにっこりと笑った。
「そう言っていただけると嬉しいです。1人でも多くの人たちを助けるためにこの依頼成功させましょう!」
「ああ!もちろんだとも!わしを誰だと心得る?」
「バイオ研究の権威!天才で変態のマーブル博士!」
「おいおい、ひとつ余計なのが付いとるぞ!」
「これは褒め言葉ですよっ!」
「褒められとったのか、それなら良い。」
「マーブル博士、アイ。」
メデタは2人の名前を呼んだ。
「なんじゃ?」
「どうしたの?」
2人は同時に返事をした。
「僕が生まれてきて、良かった?」
「ああ、もちろんじゃとも。」
「私の弟よ?当たり前でしょ。」
「良かった。」
と言った後、メデタは安堵の表情で突然眠りについた。
「何じゃ、死ぬ前みたいな事を言ってからに。」
異変に気付いたアイはメデタの脈を取った。
「マーブル博士、体温37.6分、微熱ではありますが、眠っています。
「前兆かもしれんな。アイちゃんは付きっきりで様子を見ていてくれ。」
「はい!」
「わしは調べ物をしてくる!何かあったら無線で連絡してくれ。」
「かしこまりました!」
そう言ってマーブル博士は部屋から出て行った。
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