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第25話
10人の悲劇
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培養液を使って、10名のデターを誕生させる事に成功したマーブル博士は今までの苦労を走馬灯のように思い返すと涙を浮かべていた。それと同時に昆虫人化プロジェクトの成功を大いに喜んでいた。
そんな中、弟のジョンはある事に疑問を抱いた。
「ところで兄さん、この10名のデターって、人間の細胞を元に培養液を作っているんですよね?」
「あぁ、その通りじゃがそれがどうしたんじゃ?」
「では、その元の人間っていうのは誰なんですか?彼らは一体・・・。」
「あぁ、実はな、ちと言いづらいんじゃが、このプロジェクトを持ちかけた政府との制約のひとつに『生きている人間の細胞を使用する事は禁じる』というのがあるんだよ。」
「生きた人間の細胞を使用してはいけないんですか?それは何故?」
「それが何故かは奴らは説明してないんじゃが、わしの予想では、自分とそっくりのコピーを作る事で、メリットもあるかも知れんが、デメリットもあるからじゃと思う。」
「それはどういう事ですか?」
「メリットとしては、例えば、同じ時間に仕事をそのコピーにやらせれば仕事の効率化を図れる。しかし逆にデメリットで言えば、自分の手を汚さずにコピーに仕事をやらせて、自分がやった事にする事もできる。もっというと犯罪に使う事だって出来る。これはあくまでわしの憶測じゃよ?政府が何を考えとるのかは分からんが、研究費を投資してくれている身としてはそんな事は気にしても何もならんからな。」
「しかし、わしもバカじゃあない。予め生きている人間の細胞を保存して、その人間が死んだら、検体に使用していた。
メデタが飲んだ培養液もメデルが亡くなった後にアイちゃんが開発した。」
「という事は、この10名のデターの元の人間も亡くなった方という事ですか?」
「あぁ、そうじゃ。この10名のデターの細胞提供者は、この研究所の研究員達じゃ。」
「えっ?!そうなんですか??ここの研究員?」
「あれは事故じゃった。ある日、ムカデを検体に使用していた時の事、政府が提供してくれた細胞を使用して、なんとか、さっきの様に人化まではしたものの見た目はただの化け物ムカデ人間になってしまった。完全に失敗じゃった。しかしそのムカデ人間は凶暴で、研究室内で暴れ回った。その時になんとか勇気ある10人の研究員がムカデ人間を縛り上げた。しかしその最中でムカデの毒にみんながやられてしまっていた。全てわしの責任。悔やんでも悔やみきれん。」
「そんな事があったんですか。」
「こんなプロジェクト辞めてしまおうとも考えた。じゃが、これまでに築き上げてきた。あの日悲劇を無駄にしちゃならん!そしてわしは、改めてこのプロジェクトを必ず成功させると心に誓ったんじゃ。」
「そしてプロジェクトは成功した。奇しくも亡くなった彼らの魂は今まさに形となって活かされたわけですね。すごい話しだ。」
「そんな中、ジョン、お前が来てくれたお陰で今、考えもしなかった事になっとる。人生、頑張って長く生きとると面白い事が起こるもんじゃな!」
「そうですよ!『生きてるだけで丸もうけ』っていうでしょ?亡くなった人の分まで生きて、人のために頑張りましょう!私も出来る限り力を貸しますから。」
「ありがとうジョン。」
「なんだか水くさいなぁ兄さん。困った時はお互い様でしょ?」
「そうじゃなっ。わはははは!」
その時、向こうの方から車が一台やって来るのが見えた。白い高級車の様だ。
「んっ?誰ですかね?」
ジョンはいち早く気付いた。
「あっ!忘れとった!そう言えば政府の役人にプロジェクト成功の報告をしとったんじゃった!」
「それじゃぁ、あの車は政府の車?」
「あぁ、そういう事じゃ。何もこんな早くに来んでも良いのにのぉ。」
政府の白い高級車は雑草が生い茂った道を抜けて研究所の前に車を停めた。
すると中から出てきたのは、最初にこのプロジェクトの話を持ち掛けたあの政府の役人だった。
そんな中、弟のジョンはある事に疑問を抱いた。
「ところで兄さん、この10名のデターって、人間の細胞を元に培養液を作っているんですよね?」
「あぁ、その通りじゃがそれがどうしたんじゃ?」
「では、その元の人間っていうのは誰なんですか?彼らは一体・・・。」
「あぁ、実はな、ちと言いづらいんじゃが、このプロジェクトを持ちかけた政府との制約のひとつに『生きている人間の細胞を使用する事は禁じる』というのがあるんだよ。」
「生きた人間の細胞を使用してはいけないんですか?それは何故?」
「それが何故かは奴らは説明してないんじゃが、わしの予想では、自分とそっくりのコピーを作る事で、メリットもあるかも知れんが、デメリットもあるからじゃと思う。」
「それはどういう事ですか?」
「メリットとしては、例えば、同じ時間に仕事をそのコピーにやらせれば仕事の効率化を図れる。しかし逆にデメリットで言えば、自分の手を汚さずにコピーに仕事をやらせて、自分がやった事にする事もできる。もっというと犯罪に使う事だって出来る。これはあくまでわしの憶測じゃよ?政府が何を考えとるのかは分からんが、研究費を投資してくれている身としてはそんな事は気にしても何もならんからな。」
「しかし、わしもバカじゃあない。予め生きている人間の細胞を保存して、その人間が死んだら、検体に使用していた。
メデタが飲んだ培養液もメデルが亡くなった後にアイちゃんが開発した。」
「という事は、この10名のデターの元の人間も亡くなった方という事ですか?」
「あぁ、そうじゃ。この10名のデターの細胞提供者は、この研究所の研究員達じゃ。」
「えっ?!そうなんですか??ここの研究員?」
「あれは事故じゃった。ある日、ムカデを検体に使用していた時の事、政府が提供してくれた細胞を使用して、なんとか、さっきの様に人化まではしたものの見た目はただの化け物ムカデ人間になってしまった。完全に失敗じゃった。しかしそのムカデ人間は凶暴で、研究室内で暴れ回った。その時になんとか勇気ある10人の研究員がムカデ人間を縛り上げた。しかしその最中でムカデの毒にみんながやられてしまっていた。全てわしの責任。悔やんでも悔やみきれん。」
「そんな事があったんですか。」
「こんなプロジェクト辞めてしまおうとも考えた。じゃが、これまでに築き上げてきた。あの日悲劇を無駄にしちゃならん!そしてわしは、改めてこのプロジェクトを必ず成功させると心に誓ったんじゃ。」
「そしてプロジェクトは成功した。奇しくも亡くなった彼らの魂は今まさに形となって活かされたわけですね。すごい話しだ。」
「そんな中、ジョン、お前が来てくれたお陰で今、考えもしなかった事になっとる。人生、頑張って長く生きとると面白い事が起こるもんじゃな!」
「そうですよ!『生きてるだけで丸もうけ』っていうでしょ?亡くなった人の分まで生きて、人のために頑張りましょう!私も出来る限り力を貸しますから。」
「ありがとうジョン。」
「なんだか水くさいなぁ兄さん。困った時はお互い様でしょ?」
「そうじゃなっ。わはははは!」
その時、向こうの方から車が一台やって来るのが見えた。白い高級車の様だ。
「んっ?誰ですかね?」
ジョンはいち早く気付いた。
「あっ!忘れとった!そう言えば政府の役人にプロジェクト成功の報告をしとったんじゃった!」
「それじゃぁ、あの車は政府の車?」
「あぁ、そういう事じゃ。何もこんな早くに来んでも良いのにのぉ。」
政府の白い高級車は雑草が生い茂った道を抜けて研究所の前に車を停めた。
すると中から出てきたのは、最初にこのプロジェクトの話を持ち掛けたあの政府の役人だった。
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